【清肺湯】わかりやすい解説(せいはいとう)~痰がつづくせきに
目次
清肺湯
清肺湯の働きを添付文書の効能効果から掘り下げて、考えたいと思います。
薬局製剤 清肺湯の効能効果には
「体力中等度で、せきが続き、たんが多くて切れにくいものの次の諸症:たんの多く出るせき、気管支炎」
と記載されています。
清肺湯は市販では小林製薬から「ダスモック」という商品名で販売されています。
小林製薬のキャッチコピーには「タバコ・排気ガスなどでつらいせき・たんなどに。気管支の汚れをキレイにして、せき・たんを治し、呼吸を楽に!」とあります。
添付文書の意味が分かりやすいように解説したいと思います。
ただし、商品によって効能効果は異なるので、ご購入の際は商品説明をきちんとお読みください。
構成
清肺湯は、黄芩、桔梗、桑白皮、杏仁、山梔子、天門冬、貝母、陳皮、大棗、竹茹、茯苓、当帰、麦門冬、五味子、生姜、甘草から構成されています。
熱を冷ます
清肺湯の黄芩・山梔子は熱を冷ます生薬です。
黄芩(おうごん)・山梔子(さんしし)は肺に働き、熱を冷まします。
漢方では熱を冷ます働きのことを漢方では清熱といい、特に肺を清熱するときは清肺ともいいます。
熱があることによって、炎症が生じ、水が煮詰まり痰になり、肺が渇いていきます。
黄芩・山梔子が咳や痰の原因となる熱を冷ますことで、清肺します。
せきを抑える
清肺湯の杏仁・桔梗・五味子は咳を抑える働きの生薬です。
杏仁(きょうにん)は肺の気のめぐりを改善することでせきを抑えます。
桔梗(ききょう)も肺の気のめぐりを改善させ、咳嗽につかいます。
杏仁は下向きに、桔梗は上向きに働く生薬で、2つを組み合わせることで効率的に上下に気がめぐり、一緒につかうことも多い生薬です。
五味子は酸味のある生薬で、肺の働きを引き締めることでせきをおさえます。
次に説明する痰を出す生薬、潤す生薬にも咳を抑える働きがあり、清肺湯にはたくさんの咳を抑える生薬が入っています。
たんを出す
清肺湯の桑白皮・貝母・竹茹・陳皮はたんを出すのに働きます。
桑白皮は寒性の生薬で、こもっている熱を冷やしながら痰をとり、咳を抑えます。
貝母は切れにくい痰を潤しながら痰を取り、咳を抑えます。
竹茹は清熱し、肺・胃の痰をとります。
陳皮は胃腸の調子を整えながら、痰をとります。
たんを出すと言っても、生薬によって働き方が異なり、様々な相乗効果で去痰します。
潤す
清肺湯の麦門冬・天門冬は潤し、冷やす働きがあります。
清肺湯の効能効果には「たんが多くて切れにくい」とあります。
切れにくいたんというは、水分が少なく粘り気が多い痰のことです。
切れにくい痰を出すためには潤す必要があります。
潤うことで痰を出しやすくなります。
麦門冬・天門冬は痰を潤し、出しやすくするだけでなく、熱によって不足した肺の水分を補ってくれます。
構成のまとめ
清肺湯には咳を抑える生薬がたくさん入り、痰を出す生薬も多く、潤す生薬、熱を冷ます生薬から構成されることで効果を発揮します。
清肺湯の黄芩・山梔子がせき・痰の原因となる熱を冷まし、杏仁・桔梗・五味子が咳をおさえ、桑白皮・貝母・竹茹・陳皮が痰を出し、麦門冬・天門冬が潤し、冷やすことで痰を出しやすく、肺に水を補います。当帰が入り、血も補ってくれます。
効能効果なぜ?
薬局製剤 清肺湯の効能効果には
「体力中等度で、せきが続き、たんが多くて切れにくいものの次の諸症:たんの多く出るせき、気管支炎」
とあります。
なぜこのような効能効果なのか考えたいと思います。
体力中程度
→清肺湯には黄芩・山梔子の冷やす生薬が入っているため、虚弱すぎる方には向いていません。反対に体力充実し過ぎている方に使うほど攻める性質の生薬は入っていません。そのため、清肺湯は体力中程度と幅広い多くの方が服用しやすい漢方薬です。
せきが続き
→熱がこもっていることでせきが生じます。せきが続くのは、熱によって肺の水が不足し、肺が渇いている状態のためです。熱を冷まし、肺を潤すことでせきが落ち着きます。清肺湯は清熱と滋潤のどちらの働きもあります。
たんが多くて切れにくいもの
→熱によって水が煮詰まっていき、痰が生じます。痰でも水分が多ければ比較的出しやすいです。反対に水分が少なく、やや渇き気味の痰は粘りが強く、切れにくくなります。清肺湯の麦門冬・天門冬・貝母は潤す働きがあり、切れにくい痰を潤しながら去痰します。
たんの多く出るせき
→清肺湯には咳の生薬、痰の生薬のどちらにも対応しています。咳も痰もどちらもある状態に向いています。
気管支炎
→気管支炎にもいくつか要因がありますが、清肺湯が対応できる気管支炎はせきが続き、たんが多くて切れにくいものです。咳だけが強かったり、痰が全くない気管支炎には向いていません。
清肺湯と辛夷清肺湯の違いは?
清肺湯と辛夷清肺湯の違いは、清肺湯が去痰・鎮咳に特化した漢方薬で、辛夷清肺湯が炎症を抑え、鼻通りを良くすることに特化した漢方です。
清肺湯と辛夷清肺湯は名前が良く似ている漢方薬です。
名前だけみると、清肺湯に辛夷(しんい)を足すと辛夷清肺湯になりそうですが、構成が異なります。
清肺湯は、黄芩、桔梗、桑白皮、杏仁、山梔子、天門冬、貝母、陳皮、大棗、竹茹、茯苓、当帰、麦門冬、五味子、生姜、甘草から構成されています。
辛夷清肺湯は知母・黄芩・山梔子・麦門冬・石膏・升麻・辛夷・百合・枇杷葉から構成されています。
黄芩・山梔子・麦門冬は清肺湯も辛夷清肺湯も共通していますが、それ以外は異なる生薬です。
蓄膿症などの鼻の症状を得意としているものが辛夷清肺湯で、咳・痰を得意としているものが清肺湯です。
清肺湯が効かない理由は?
漢方薬は体質が合っていないと効果を発揮しません。清肺湯は冷やし、潤し、咳を抑え、痰をとる漢方薬です。咳がひどく、胸痛までする場合は柴陥湯、咳だけが強い場合は麻杏甘石湯、咳と比較的サラッとした痰の場合は五虎湯、乾きからくる痰には麦門冬湯、滋陰降火湯など、咳と痰といっても咳の程度、痰の性質によって漢方薬を使い分ける必要があります。
清肺湯はコロナに効く?
清肺湯の効能効果にコロナについての記載はありません。しかし、漢方薬は体質と症状があっていれば服用できます。コロナであっても、慢性的な症状であっても、添付文書に記載されている体力中等度で、せきが続き、たんが多くて切れにくい方のたんの多く出るせきに当てはまるのであれば清肺湯は服用できます。
清肺湯はCOPDに効く?
清肺湯の効能効果にCOPDについての記載はありません。しかし、漢方薬は体質と症状があっていれば服用できます。COPD(慢性閉塞性肺疾患)の症状は咳が特徴的です。添付文書に記載されている体力中等度で、せきが続き、たんが多くて切れにくい方のたんの多く出るせき、気管支炎に当てはまるのであれば清肺湯は服用できます。
まとめ
清肺湯の働きについて、添付文書から解説しました。
清肺湯は熱を冷ますこと、咳を抑えること、痰を出すこと、潤すことに対応した生薬が多く入ることで「体力中等度で、せきが続き、たんが多くて切れにくいものの次の諸症:たんの多く出るせき、気管支炎」の効能効果があります。