肩こりを改善するための漢方薬の選び方とその使い方

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西山光です

首と肩の周辺には、さまざまな筋肉があります。

筋肉は重い頭や腕を支えて立っているだけで、日々緊張し続けています。

頭の重さだけでも5キロ前後あるといわれ、それを支えているだけでも筋肉に負荷がかかるのは想像できます。

緊張が続くと筋肉は疲れ、疲労物質がたまりやすくなり、次第に硬くなります。

固くなった筋肉が血管を圧迫して血液の循環を悪くしたり、末梢神経を傷つけたりして、コリや傷みを起こします。

首と肩の筋肉が姿勢を保つために緊張→血のめぐりが悪くなる→肩こり

目次

肩こりにつかう漢方薬は?

肩こりの効能効果のある漢方薬に加味逍遙散、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、呉茱萸湯、大柴胡湯、二朮湯、独活葛根湯、釣藤散などがあります。

肩こりの漢方での原因は?

漢方で肩こりの要因を考えると、気滞、肝陽上亢、血瘀、寒飲、風寒、痰結の状態が考えられます。

・気滞(いらいら、抑うつ)
・肝陽上亢(いらいら、頭痛)
・血瘀(揉んでも改善しない、生理痛)
・寒飲(冷え、頭痛)
・風寒(寒気)
・痰結(四十肩、五十肩)

大きく分けると上記の6つの体質に分類することができます。

実際には何かしらの不調があると、気血のめぐりが悪くなるため、同時に肩こりが起こりやすくなります。

当薬局に来られる方で、肩こりをメインの相談にすることはありませんが、相談される方のほとんどの方に肩こりの自覚はみられます。

主訴の症状が改善していくと、一緒に肩こりも解消していく方が多いです。

次に、肩こりが起こりやすい各状態について説明します。

気滞

気滞というの気のめぐりが悪い状態のことです。

気のめぐりが悪くなることで肩こりとなります。

とくに肩、首筋は経絡が多く通る部位でもあるため、経絡に気の鬱滞があるだけで肩こりになりやすくなります。

うなじだけでなく、肩の凝りが強いときは気滞タイプの肩こりとなります。

・いらいら
・ストレス
・抑うつ
・緊張

これらにあてはまるときは気滞の肩こりの可能性があります。

原因となっている気のめぐりをよくする漢方薬に、加味逍遙散、大柴胡湯などがあります。

加味逍遙散

加味逍遙散は婦人科で頻用の漢方薬の1つです。

加味逍遙散は気・血のめぐりをバランス良く整えてくれます。

気・血のめぐりが改善することが肩こりに効果があります。

血のめぐりも改善するため、肩こりと生理不順、いらいらなどがあれば加味逍遙散が適しています

大柴胡湯

大柴胡湯は柴胡・枳実という気のめぐりを改善する生薬が入っています。

大黄という便秘を整える生薬も入っています。

肩こり、便秘、いらいらがあれば大柴胡湯が適しています。

肝陽上亢

肝陽上亢は、気滞よりも気の高ぶりが強い状態です。

気滞では気の鬱滞と表現し、それが極まり、症状が強くなると肝陽上亢と表現します。

・いらいら
・怒りやすい

・頭痛
・血圧が上がりやすい

これらにあてはまるときは肝陽上亢による肩こりの可能性があります。

肝陽を鎮める漢方薬に釣藤散(ちょうとうさん)があります。

釣藤散

釣藤散の効能効果をみると、「慢性に経過する頭痛、めまい、肩こりなどがあるもの」と記載されています。

釣藤散には釣藤鈎(ちょうとうこう)・菊花が入り、高ぶった気を鎮め、肩こりと高血圧、もしくは頭痛がある方に効能効果があります。

血瘀

血瘀(けつお)というのは血の滞りのことをいいます。

血の滞りがあると、気の流れが邪魔され、気が正常に流れることができなくなり、肩こりとなります。

血瘀(血の滞り)→気血のめぐりが悪い→肩こり

気滞の肩こりと、血瘀の肩こりの違いは、揉んで改善するかどうかです。

気は動きやすく、気の滞りは揉めば流れが改善し、肩こりも一時的に改善します。

血は物質になるため、気のように動くことができず、揉んでも肩こりが改善しにくいのが特徴です。

・慢性的な肩こり
・強い生理痛
・生理血に血の塊
・肩をもんでも改善しない

これらにあてはまるとき血瘀の肩こりの可能性があります。

血の滞りが原因であるため、血をめぐらせる桂枝茯苓丸、桃核承気湯などの漢方薬をつかいます。

桂枝茯苓丸

桂枝茯苓丸は血のめぐりを改善する代表的な漢方薬です。

桂枝茯苓丸は血のめぐりを改善するため、生理痛、生理不順、にきびなどがある方にもよく使われる漢方薬です。

婦人科でも頻用の漢方薬の1つです。

桃核承気湯

桃核承気湯も血のめぐりを改善する漢方薬です。

桂枝茯苓丸と異なるのは、便通を改善する生薬が入っていることです。

生理痛、生理不順、便秘もあれば桃核承気湯が向いています。

寒飲

寒飲とは、水分が停滞し、冷えている状態です。

寒飲による肩こりの場合は、冷えがみられます。

冷えによって、気のめぐりが悪くなり、肩こり、頭痛、吐き気が生じやすくなります。

・肩こり
・頭痛
・吐き気

これらにあてはまるときは寒飲による肩こりの可能性があります。

寒飲による肩こりの漢方薬に呉茱萸湯(ごしゅゆとう)があります。

呉茱萸湯

呉茱萸湯の効能効果に「手足が冷えて肩がこり」とあり、冷えが原因であることがわかります。

呉茱萸湯の呉茱萸(ごしゅゆ)が温め、気のめぐりを改善し、肩こり、偏頭痛、吐き気なども改善してくれます。

風寒

風寒というのは、外から風寒の邪が入ってくることによって経絡のめぐりが悪くなり、肩こりとなります。

カゼひいたときに、首筋が重たく感じるのは風寒が原因です。

カゼを引いていなくても、寒気を伴う肩こりの場合は風寒が原因の可能性があります。

・うなじがこわばる
・頭痛
・寒気
・発熱

これらにあてはまるときは風寒による肩こりの可能性があります。

風寒を追い出すような温める漢方薬に葛根湯、独活葛根湯があります。

葛根湯

葛根湯はカゼ薬でも有名で、肩こりでもつかわれる温める漢方薬です。

葛根湯は温める漢方薬であるため、長期服用、熱感がある場合などは適していません。

独活葛根湯

独活葛根湯葛根湯に独活・地黄という生薬を足した漢方薬です。

独活葛根湯=葛根湯+独活・地黄

独活は風寒を追い出す生薬で、地黄は渇いた筋肉を潤す生薬です。

独活が加わることで温める働きをプラスし、地黄が温めることで筋肉が渇くのを防いでくれます。

独活葛根湯葛根湯に生薬が加わり、独活葛根湯の適応は肩こりや、四十肩・五十肩、寝違えにもつかうことができます。

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