灯心堂漢方薬局

【漢方】湿疹・皮膚炎の原因は?7つの体質~アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎など~

湿疹・皮膚炎

 

湿疹とは、皮膚の表層におこる炎症の総称のことです。

 

湿疹は皮膚炎ともいいます。

 

湿疹はかゆみ、赤み、ブツブツ、水膨れ、膿などがみられ、慢性化すると肌の状態まで変化し、ガサガサ、ゴワゴワ、色素沈着、肌の乾燥などの症状もみられるようになります。

 

湿疹・皮膚炎のみられる疾患に、湿疹、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹、貨幣状湿疹、乾癬などがあります。

 

湿疹についての詳しい説明はこちらのサイトを参考にしてください→

 

ここでは漢方目線での湿疹・皮膚炎の原因、考え方を説明したいと思います。

 

湿疹・皮膚炎には様々な名前がありますが、漢方的な考え方は共通しているため、広く湿疹・皮膚炎に応用できます。

 

湿疹の漢方での原因は?

湿疹の漢方での原因として、風、熱、燥、水滞・痰湿、気虚、血虚、痰湿、瘀血、気滞などが考えられます。

湿疹・皮膚炎の原因となる風邪、燥邪、火邪、湿邪

 
 
 

漢方において、かゆみは風(ふう)が原因です。

 

かゆみはかぜのように急に起こり、症状も強いものになります。

 

皮膚に風が起こることでかゆみとなっています。

 

風の生じたところに熱・火があれば、風が火を煽り、より一層症状が強いものになります。

 

なじみのない考えだと思うので、漢方ではかゆみを風と捉えることだけ覚えてください。

漢方ではかゆみは風が原因

かゆみを抑える代表的な漢方薬に「消風散」があります。

 

まさにかゆみの風を消す漢方薬という意味です。

 

炎症性のものは熱が原因です。

 

肌に熱があることで炎症になり、炎症があることで熱となります。

 

漢方ではさらに熱にも深さの概念があります。

 

熱が皮膚のどこの位置にあるかによって、つかう生薬が変わってきます。

 

上記の写真のように、左側の写真は肌の表面だけが赤くなっていますが、右側の写真では肌の赤みも濃く、赤黒い色をしています。

 

皮膚の赤身の度合いが異なれば、つかう薬も変わってくると思いませんか?

 

 

漢方では、体表は気分の領域、少し深くなると血分の領域となります。

 

例えば蚊に刺されると肌がデコボコに膨らみます。

 

強いかゆみがありますが、肌が乾燥したり、ゴワゴワしたり、肌質にまで影響はないと思います。

 

蚊にさされるのは一過性のものであり、肌の表面の気の領域に病因がとどまっています。

 

しかしアトピー性皮膚炎のような慢性的な湿疹・皮膚炎の場合、肌がかゆいだけでなく、肌質も変わり、乾燥、カサカサ、ゴワゴワしてくると思います。

 

肌質まで変化しているのは、漢方においては、病因が体表の気分の領域から、やや深い血分の領域の問題に入って来ていると捉えることができます。

 

身体の表面に熱があるときは、石膏などの気分領域を冷やす生薬をつかいます。

 

病気が慢性化し、やや深い領域に進行してきているときは、黄連・地黄などの血分領域を冷やす生薬をつかいます。

 

熱といっても、漢方においては深さを考える必要があります。

 

深さを知るために、肌の状態だけでなく、舌診からも考えていきます。

 

 

乾燥があることで肌の不調につながります。

 

乾燥があることだけで、かゆみが生じます。

 

漢方では乾燥からのかゆみを血虚生風といいます。

 

肌の栄養となる血が不足していると、かゆみの風を引き起こします。

 

また乾燥していると、皮膚を冷やすことができず、熱感・炎症が強くなります。

 

 

「燥」は2つの状態でよくみられます。

 

1つは慢性的な炎症。2つめはご年配の方です。

 

アトピーのように慢性的に炎症があると、炎症の熱が皮膚の水・血を焼いてしまいます。

 

慢性的な炎症があるだけで乾燥の状態を悪化していきます。

 

炎症と乾燥のどちらもみられるときは、熱を冷ますことと、潤すことを同時にしていく必要があります。

 

 

またご年配の方の肌は乾燥しています。

 

加齢とともに水分を保つ力が弱くなっていき、次第に肌は乾燥していきます。

 

いわゆる皮脂欠乏性湿疹の状態に近いと考えられます。

 

皮脂が欠乏した状態も血虚ととられることができます。

 

当帰飲子(煎じ薬エキス細粒)はよくご年配の方の、乾燥からくる皮膚にかゆみに頻用されます。

 

燥と熱がどちらもある

上記では風・熱・燥のそれぞれの要素を説明しましたが、各要素が合併していることがほとんどです。

 

例えば燥熱、風熱、湿熱などがあります。

 

とくによくみられるのが、燥熱です。

 

皮膚疾患で慢性的に炎症があると、皮膚の潤いが焼かれていき、乾燥が生じていきます。

 

乾燥が生じると、皮膚を冷やすことができず、炎症がより一層強くなります。

 

熱と燥があると、肌では悪循環になります。

 

皮膚に乾燥と熱があるときは、潤しつつ、熱を冷ますことが必要です。

 

潤しつつ、熱を冷ます漢方薬に温清飲があります。

 

温清飲は黄連解毒湯と四物湯があわさった漢方薬です。

 

黄連解毒湯は熱を冷ます働きは強いのですが、副作用で乾かす性質があります。

 

そのため熱感と乾燥があるときに黄連解毒湯を使うと、かえって乾燥を悪化させます。

 

そこに皮膚を潤す四物湯が合わさることで、滋潤と清熱を兼ね備えることができます。

 

皮膚の乾燥と熱感がどちらもあるときは温清飲が適しています。

 

 
 

水飲・痰湿

水飲・痰湿というのは漢方において、余分な水・湿気を意味します。
 
過剰な水が停滞することで、徐々に鬱熱がこもり、水に熱をもち、粘り気をもったものを痰と表現します。
 
痰湿は余分な水であるため、水疱、ジクジク、分泌物が多くなります。
 
とくにお子さんの場合は、身体に占める水分の割合が多く、ジクジクした湿疹・皮膚炎になりやすいです。
 
水を追い出す生薬に蒼朮、木通などがあります。
 
湿気と熱が合わさることで湿熱、湿気と風が合わさることで風湿とも表現します。
 
分泌物のあるかゆみがある湿疹・皮膚炎には消風散が使用されます。
 

 

気虚

気の不足によって、身体のバリア機能が弱り、湿疹・皮膚炎になりやすくなります。

 

気は身体の表面をめぐり、肌を守っています。

 

身体の表面にまで気をめぐらせる生薬に黄耆などがあります。

 

黄耆が体表まで気を補い、めぐらせてくれます。

 

 

皮膚症状なので、身体の表面の気は当然重要なのですが、身体の内側の気の配慮も重要です。

 

胃腸の気が弱っていると、栄養を吸収できず、皮膚に栄養を送っていくことができません。

 

とくにお子さんの場合は、成人に比べ、胃腸の発達が未熟です。

 

胃腸の弱さは身体・皮膚の弱さにもつながります。

 

実際にアトピーのお子さんはやせ型の方が多いといわれており、漢方で考えると自然なことだと考えられます。

 

お子さんで虚弱体質と湿疹・皮膚炎がみられる場合は、黄耆建中湯(煎じ薬エキス細粒)が使用されます。

 

皮膚という字の「膚」には「胃」という文字が隠れていますよね?

(ちなみに、「膚」に「胃」の字が入っているのは、実際は胃は関係なく、「臚」という字を略したものといわれています。)

 

胃腸の気の強さも必要になることがわかります。

 

 

血虚

血虚とは血が不足している状態です。血は漢方では栄養状態のことを意味します。
 
皮膚の血虚、つまり栄養が不足することで肌が乾燥し、色つやが悪くなります。
 
血の不足によって肌は乾燥し、皮膚を冷やすことができなくなります。
 
皮膚を冷やすことができないと、熱感が生じやすくなり、かゆみにもつながります。
 
血を養う生薬には当帰などがあります。
 
 

瘀血

瘀血(おけつ)は血の滞りのことを意味します。
 
瘀血があると、皮膚が厚くなり、肌が固く、苔癬化がみられたりします。
 
皮膚が厚く、固いとき、慢性的な難治性の皮膚疾患の場合は瘀血が原因と考えられます。
 
瘀血がみられるときは、桃仁、牡丹皮などの生薬が入った漢方薬をつかいます。
 
 

湿疹・皮膚炎の漢方薬は?

 
湿疹・皮膚炎の漢方薬に、消風散、当帰飲子、十味敗毒湯、黄連解毒湯、温清飲、白虎加人参湯、荊防敗毒散、桂枝茯苓丸、桂枝茯苓丸加薏苡仁、加味逍遙散加川芎地黄、柴胡清肝湯などがあります。湿疹、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹などの湿疹・皮膚炎のある方につかうことができます。
 
 

消風散

消風散は湿疹・皮膚炎につかう代表的な漢方薬で、かゆみが強い方に向いています。
 

かゆみの原因となる「風」を「消」す漢方薬です。

 

消風散には防風・牛房子・蝉退・荊芥の風を発散する生薬が多く入っています。これらの生薬がかゆみの原因となる風を取り除きます。

 

消風散の石膏・苦参は冷やす漢方薬です。冷やすことで肌の炎症を抑え、熱感を去り、かゆみを抑えます。石膏が気分の熱を冷やし、苦参が血分の熱を冷やし、気血のどちらの熱のも対応しています。

 

消風散の蒼朮・木通は水のめぐりを改善する生薬です。余分な水がたまることで肌がジクジク、分泌物がでるため、水を追い出します。

 

消風散の当帰・地黄は血を補う生薬です。血を補うことで、肌が潤い、乾燥を防ぎます。血が養われることで、熱感も抑えられ、かゆみを防ぐことにもつながります。

消風散は風、気分の熱、血分の熱、痰飲、血虚に対応した漢方薬で、バランス良く配合され、かゆみが強い方の湿疹・皮膚炎に効能効果があります。

 

当帰飲子

当帰飲子(とうきいんし)は乾燥した肌のかゆみに特化した漢方薬です。

 

当帰飲子にはかゆみの原因となる風に対して、防風・荊芥・刺蒺藜が入っています。この3つの生薬で風を発散します。

 

当帰飲子の黄耆(おうぎ)という生薬は、体表の気を補う生薬であり、身体の内側から皮膚へ気を補い、肌の調子を整えます。

 

当帰飲子で多く入っているのが、血を養う生薬です。当帰・芍薬・川芎・地黄・何首烏の5つの生薬が強く血を養ってくれます。

 

漢方において、血は栄養状態と関係しており、血の不足は肌の栄養不足、肌の乾燥、カサカサにつながります。

 

当帰飲子は血を養う生薬が多く入っているため、肌の乾燥がある方に適しています。

 

肌の乾燥が強い、かゆみがある方には当帰飲子が向いています。

 

 

白虎加人参湯

白虎加人参湯、黄連解毒湯は熱を冷やす漢方薬です。
 
白虎加人参湯と、黄連解毒湯とでは働く皮膚の深さが異なります。
 
白虎加人参湯は石膏・知母が入り、皮膚の表面、浅い位置の気分の領域を冷やします。
 
肌表面の気分の熱感、かゆみがあるときは、白虎加人参湯が原因となる熱をとり、湿疹・皮膚炎につかいます。
 
 

黄連解毒湯

黄連解毒湯は皮膚の血を冷やす漢方薬です。
 
白虎加人参湯も冷やす漢方薬ですが、黄連解毒湯の方が深く血の領域に働きます。
 
黄連解毒湯は苦味にて、血分に入り、炎症の原因となる熱を冷やします。
 
湿疹・皮膚炎でものぼせ気味で、顔色が赤い体質のときは黄連解毒湯が適しています。
 
ただし黄連解毒湯は熱を冷ます働きは強いですが、乾燥させる働きもあります。
 
湿疹・皮膚炎の熱感があっても、肌の乾燥があるときは黄連解毒湯はおすすめできません。
 
肌の乾燥と熱感があるときは、次の温清飲が向いています。
 
 

温清飲

温清飲(うんせいいん)は黄連解毒湯と四物湯をあわせた漢方薬です。
温清飲=黄連解毒湯+四物湯
温清飲に含まれている、黄連解毒湯は皮膚の炎症を抑えますが、副作用として乾燥させる性質も持っています。
 
温清飲には四物湯が含まれています。四物湯は血を養う漢方薬で、肌を潤し、乾燥を防いでくれます。
 
黄連解毒湯は肌の乾燥がある方には使うことはできませんが、温清飲は肌の乾燥があっても熱感がある方の湿疹・皮膚炎に適した漢方薬です。
 
温清飲は皮膚はかさかさして色つやが悪く、のぼせるものの湿疹・皮膚炎に効能効果があります。
 
 

柴胡清肝湯

柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)は温清飲に連翹・牛房子などの風を発散する生薬を加えた漢方薬です。
柴胡清肝湯=温清飲+柴胡・栝楼根・薄荷・連翹・桔梗・牛房子
柴胡清肝湯に含まれる温清飲は肌の乾燥、炎症に対応しています。
 
薄荷・連翹・牛房子は風熱を発散する生薬で、かゆみに対応しています。
 
柴胡清肝湯はその性質から湿疹・皮膚炎だけでなく、慢性扁桃炎にも効能効果があります。
 
 

十味敗毒湯

十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)は膿出しに特化した漢方薬です。
 
十味敗毒湯には桔梗が入り、排膿の働きがあります。
 
独活・防風・荊芥は風を発散する働きがあり、かゆみにも対応しています。
 
桜皮も入り、解毒の作用もあります。
 
化膿しやすい方の湿疹・皮膚炎には十味敗毒湯が適してます。
 
 

桂枝茯苓丸、桂枝茯苓丸加薏苡仁

桂枝茯苓丸、桂枝茯苓丸加薏苡仁は血をめぐらせる漢方薬です。
 
桂枝茯苓丸の桃仁・牡丹皮が活血し、瘀血を動かしてくれます。
 
桂枝茯苓丸、桂枝茯苓丸加薏苡仁は瘀血が原因であるしみ、湿疹・皮膚炎に効能効果があります。
 
 
 

自家感作性皮膚炎の漢方相談

40代女性。

最初は足のふくらはぎの虫刺され。絆創膏を貼っていたら、膿んで、ほかのところにもブツブツがでてきた。

病院に受診し、自家感作性皮膚炎といわれ、抗アレルギー薬、ステロイドを使用中。

ステロイドを塗ると、炎症は落ち着くが、数日するとまたかゆくなってくる。

最近になり、湿疹の範囲、かゆみが増えてきており、当薬局に相談に来店。

皮膚の炎症は最近は膿んでおらず、湿疹とかゆみが症状の中心とのこと。

 

かゆみに対する漢方薬と、炎症を抑える漢方薬をおすすめさせていただいた。

 

まずは2週間、服用していただく。

 

2週間後、効いている感じがするため、再度来店。同じものを1か月分お渡しした。

 

その後再び来店し、調子もいいので最後にまた1か月分お渡しした。

 

 

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