灯心堂漢方薬局

【漢方】不眠症の7つの体質~漢方で考えると不眠の原因があるかもしれません~

不眠症とは

 

不眠症とは、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害などの睡眠問題が1ヶ月以上続き、日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する病気です。

 

不眠の原因としてはストレス、こころや身体の不調など様々です。

 

 

不眠症にもいくつかタイプがあります。

 

寝つきが悪いときは入眠障害、途中で目が覚めてしまうときは中途覚醒、朝に目が覚めやすくなる早朝覚醒、熟睡感があまり得られない熟眠障害といわれます。

 

不眠症についての詳しい説明はこちらのサイトを参考にしてください→

 

 

不眠症の西洋薬

西洋医学では不眠症の薬としてベンゾジアゼピン系の薬が多くつかわれ、オレキシン受容体阻害薬や、抗うつ薬で眠気が強く出るタイプのトラゾドンミルタザピンなどもつかわれます。

 

ベンゾジアゼピン系薬

ベンゾジアゼピンというのは薬の1つの骨格のことで、その骨格をもとにできた薬をベンゾジアゼピン薬といいます。

 

ベンゾジアゼピンという骨格に異なる分子が派生していくことで、作用時間・作用の強さも異なってきますが、催眠作用がでるメカニズムは基本的に同じです。

 

ベンゾジアゼピン系薬は服用後、血の中に取り込まれ、脳内をめぐります。

 

脳内にいったベンゾジアゼピン系薬は脳内のGABA(ギャバ)受容体にくっつきます。

 

GABA受容体にくっつくと、Clイオンが細胞内に入りやすくなります。

 

Clイオンが細胞内に入るとどうなるのかというと、Clイオンはマイナスのイオンであるため細胞内はマイナスに傾きます。

 

細胞内のマイナスが増えることで、ちょっとした刺激によってプラスになりにくくなり、気持ちが落ち着き、催眠作用があらわれます。

 

 

睡眠導入剤、抗不安薬としてのベンゾジアゼピン系薬は20種類近くあり、それぞれ作用時間が異なり、不眠の時間帯によって使い分けます。

 

入眠障害の入眠するときだけに効果を発揮したい場合は、作用時間の短いベンゾジアゼピン系薬にゾルピデム、トリアゾラムなどがあります。ベンゾジアゼピン系薬が睡眠の導入を助け、次の日に残らないように素早く分解されるタイプです。

 

途中で目が覚めるようなときは、作用時間が長いものがつかわれることが多いです。作用時間が長いため、中途覚醒を防ぎますが、その分、薬を持ち越しやすくなり、朝方でも眠気が残る恐れがあります。

 

オレキシン受容体阻害薬

最近ではオレキシン受容体阻害薬も広くつかわれてきています。

 

オレキシンというのは脳内で覚醒をつかさどる物質です。

 

オレキシンが覚醒を維持し、覚醒をコントロールしています。

 

オレキシンによって覚醒し、目が覚めるため、オレキシンが働く邪魔をすれば睡眠ができるようになります。

 

オレキシンが働くのを邪魔する薬がオレキシン受容体阻害薬です。

 

オレキシン受容体阻害薬によって覚醒せず、睡眠しやすくなります。

 

オレキシン受容体阻害薬にはスボレキサント(ベルソムラ)、レンボレキサント(デエビゴ)があります。

 

レンボレキサントの方が受容体に強く働くといわれています。

 

オレキシン受容体阻害薬はベンゾジアゼピン系薬と違い、依存性が低く、筋弛緩作用も弱いとされています。

 

 

漢方での不眠の考え方

漢方で睡眠を考えるうえで、気の働きを知る必要があります。

 

気は昼間と夜間とでは動き方が異なります。

 

昼間は気が身体の周りをめぐり、身体を活発に動かしてくれます。

 

夜になると気は活発に動く必要がなくなり、落ち着く必要があるため、身体の陰のなかに戻ってきます。

 

夜間に陰のなかに気が戻ることで睡眠できるようになります。

反対に気が陰のなかに戻れなければ睡眠はできなくなります。

昼間:気が外をめぐっている→身体を活発に動かす

夜間:気が身体の陰に戻ってくる→眠りにつくことができる

 

漢方での睡眠のメカニズム

 

もし気の戻る場所となる陰が不足していたらどうなるでしょうか?

 

気は十分に陰に納められず、不眠症となります。

 

 

もし気が過剰になっていたら、どうなるでしょうか?

 

この場合も気の量が多いため陰に納められず、不眠症となります。

 

 

もし気の流れを邪魔するものがあったらどうなるでしょうか?

 

気が陰に戻る邪魔をされてしまうため、陰に納まることができず、不眠症となります。

 

・陰の不足→気が陰に納まりきらなくなる

・気の過剰→気が陰に納まりきらなくなる

・気の流れの邪魔→気が陰に納まりきれなくなる

 

 

 

不眠の漢方での原因は?

不眠の漢方での原因として、心陰虚、心脾両虚、心腎不交、肝鬱化火、胆虚、肝鬱気滞、痰熱などの体質が考えられます。

 

陰が不足していることで気の戻る場所がなくなったり、気の流れを邪魔するものがあれば、気が戻れず不眠になりやすくなります。

 

 

不眠症につかう漢方薬は?

不眠症につかう漢方薬に酸棗仁湯、帰脾湯、加味帰脾湯、黄連阿膠湯、黄連解毒湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、抑肝散、逍遙散、加味逍遙散、加味逍遙散加川芎地黄、温胆湯などがあります。

 

疲れやすい、元気がない、あざができやすい方の不眠

体質として胃腸が弱いと食べ物から栄養を吸収しづらくなります。

 

栄養を十分に吸収できなければ気血不足しやすい状態になります。

 

とくに血の不足は睡眠と強く関係しています。

 

血が不足していると気の戻る場所がなくなるため、血の不足から不眠になりやすくなります。

・疲れ
・不眠
・不安感
・イライラ
・あざができやすい

症状にあざができやすいとありますが、気血が不足することで血を血管内にとどめることができず、あざができやすくなります。

 

普段からあざができやすいという方は気の不足があるかもしれません。

 

気血不足からくる不眠には酸棗仁湯、帰脾湯、加味帰脾湯があります。

 

酸棗仁湯(さんそうにんとう)には酸棗仁がたくさん入っています。酸棗仁が血を養い、陰を補い、気が戻る場所をつくり不眠に効能効果を発揮します。

 

帰脾湯(きひとう)には酸棗仁・竜眼肉が入り、血を養ってくれます。さらに人参・黄耆も入り、気も強く補ってくれます。気と血もどちらも不足している不眠には帰脾湯が適しています。

 

加味帰脾湯(かみきひとう)帰脾湯に柴胡(さいこ)・山梔子(さんしし)という生薬が加わったものです。柴胡は気をめぐらせる生薬で、山梔子は熱を冷ます生薬です。気血が不足した帰脾湯の状態に、イライラなどの精神症状もある場合は加味帰脾湯が向いています。

 

 

熱感、口渇、便秘のある不眠

夜は気が血に収まることで眠れますが、心血が不足していると相対的に気(熱)が強まり眠れなくなります。

 

心の陰血が不足することで、心火を冷やすことできなくなります。

 

心火の気が過剰になることで、熱感、不眠の症状があらわれやすくなります。

・眠りが浅い
・不安
・動悸
・熱感

以上の症状があるときは心陰虚の恐れがあります。

 

心陰虚による不眠には天王補心丹をつかいます。

 

 

イライラ、ほてりのある方の不眠

心と腎が交通できないことでも不眠が生じます。

 

五臓において腎は水の臓、心は火の臓とされ、腎の水によって心の火を適度に冷ましています。

 

心火を腎水が冷やしているのですが、心腎が交通できなくなると心火を冷やせなくなり、イライラ・不眠が起こります。

 

心火という気の働きが活発になることで不眠になっています。

・のぼせ
・胸苦しさ
・耳鳴り
・口渇

心腎不交のときには黄連阿膠湯、心火を冷ますときには黄連解毒湯をつかいます。

 

黄連解毒湯は黄連・黄芩・黄柏・山梔子の清熱の生薬が多く入っています。熱感によるのぼせ、不眠があるときには、強く冷やす黄連解毒湯が適しています。

 

 

イライラ・不安と不眠のある方

気の鬱滞から、気のめぐりが悪くなり、不眠になります。

 

気の鬱滞があるだけでは肝鬱気滞や肝気鬱結ということが多いですが、気滞の程度が強ければ肝鬱化火と表現します。

 

漢方の世界では、気のめぐりは肝が調整しています。

 

肝はストレスに弱い臓腑であり、肝が調子が悪くなると、精神的な症状がでてきます。

 

気の鬱滞が強いと、イライラ・不安感、不眠があらわれやすくなります。

・イライラ
・不眠
・不安

仕事、人間関係、ストレスで思い悩んだり、仕事前に緊張して眠れないときに、肝の疏泄が失調し、イライラ・不安があるときは柴胡加竜骨牡蛎湯が適しています。

 

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)の柴胡は気の巡りを改善し、竜骨・牡蛎は不安・イライラの精神症状の高ぶりを鎮めてくれます。

 

柴胡加竜骨牡蛎湯はイライラにも不安にも不眠にも対応した漢方薬で、広くつかわれいる漢方薬の1つです。

 

不安はほとんどなく、イライラが強いときには抑肝散が適しています。抑肝散には気をめぐらせる柴胡と、気の高ぶりを鎮める釣藤鈎(ちょうとうこう)が入っています。抑肝散が気を鎮め、気の高ぶりによるイライラ、不眠症に対応しています。

 

 

ささいなことが気になる方の不眠

怖がりやすさ、オドオドしやすいのが胆虚が原因です。

 

胆は中正の官といわれ、胆は決断をつかさどると言います。

 

胆が弱っていると、気持ちを落ち着けることができず、決断をできず、オドオドしやすくなります。

 

胆虚で気を落ち着けることができなくなることで不眠にもなります。

・決断できない
・オドオドする
・怖がって眠れなくなる
・抑うつ

不安感を鎮める漢方薬に桂枝加竜骨牡蛎湯があります。

 

桂枝加竜骨牡蛎湯の竜骨と牡蛎には不安な気持ちを鎮める働きがあります。不安な気持ちを鎮めることで、気持ちが落ち着き、不眠症にも効果を発揮します。

 

 

イライラと生理不順・更年期もある方の不眠

女性は生理があり、気と血の流れの考えがとても重要になります。

 

女性は生理があり、血がスムーズに流れる必要があり、常に血が不足しやすい状態であるといえます。

 

血が不足すると血の流れが悪くなり、生理不順、生理痛の症状がでやすくなります。

血の鬱滞は気の流れにも影響し、気のめぐりも悪くなり、イライラ・不眠の症状につながります。

・生理不順
・更年期
・冷え性
・不眠
・イライラ

気と血をめぐらせる漢方薬に加味逍遙散、加味逍遙散加川芎地黄があります。

 

加味逍遙散(かみしょうようさん)は婦人科の頻用の漢方薬です。加味逍遙散の柴胡・薄荷が気のめぐりを改善し、当帰・芍薬が血を補い、血のめぐりを改善します。加味逍遙散は気のめぐりと、血のめぐりを改善する漢方薬です。

 

加味逍遙散加川芎地黄加味逍遙散に川芎・地黄が加わったものです。川芎・地黄が加わることで血を養う働きが強化されています。加味逍遙散のイライラなどの気の鬱滞の症状に、肌の乾燥などの血の不足の症状もあるときは、加味逍遙散加川芎地黄が適しています。

 

 

痰熱内擾の不眠

一般的には痰というとカゼひいたときにのどに溜まるものの印象があると思います。

 

漢方の世界においては痰というのは喉だけでなく、身体にも溜まります。

 

痰というのは、身体に余分な水が鬱滞し、鬱熱から煮詰められることで生じます。

痰はやまいだれに火が2つと書くことからも、火の性質があることがわかります。

 

痰は粘性をもった水で、気血の流れを邪魔する性質があります。

 

痰によって気血の流れが邪魔され、不眠症になります。

 

痰は食事の不摂生による食滞からも生じ、痰が熱となり、痰熱によって不眠となります。

 

味の濃い食事、油ものによって食滞が生じやすく、現代人にとって痰による不眠が多くなっています。

・不眠
・胸苦しさ
・抑うつ
・不安

痰による熱、気機の流れの普通による不眠には温胆湯があります。

 

温胆湯(うんたんとう)には半夏(はんげ)・竹茹(ちくじょ)の痰をとる生薬が入っています。温胆湯は気血の流れを邪魔する原因の痰をとることで不眠症や神経症につかわれる漢方薬です。

 

 

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