更年期障害を改善するための漢方薬の選び方とおすすめの食事、生活習慣

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西山光です
質問

・更年期に漢方は効くの?
・どう使い分けるの?

このブログでは更年期障害の症状による漢方薬の使い分けについて説明しています。

漢方薬が更年期の不調の改善に役立てばと思います。

このブログを読むことで、ご自身にあったものを選んでいただけるようになります。

・更年期のイライラ、疲れやすさ、冷えには芎帰調血飲第一加減
イライラと火照りがあるときは加味逍遙散
・我慢できないイライラには抑肝散
ホットフラッシュ、火照りに知柏地黄丸
・冷え、頻尿、夜間尿には八味地黄丸
冷えのぼせには桂枝茯苓丸
・めまい、ふらつきには連珠飲
・むくみには当帰芍薬散

・けん怠感には十全大補湯
・不安感、気分の落ち込みには帰脾湯

 この記事を読んでわかること
・更年期の症状、原因
・漢方での更年期の原因
・おすすめの漢方薬
・おすすめの食べ物、生活習慣、ツボ

目次

更年期障害の症状

更年期障害では身体的な症状、精神的な症状もあり、多種多様です。

身体的症状ではホットフラッシュ、ほてり、発汗、 めまい、頭痛、動悸、関節痛、冷え、けん怠感、乾燥があり、精神的症状ではイライラ、気分の落ち込み、不安、不眠、無気力などがみられます。

更年期の症状については、youtubeでの予防医学chの「絶対に知っておきたい「更年期障害」はじまりのサイン。自宅でのチェック方法や対策まで医師が徹底解説!」という動画がとてもわかりやすいです。とても参考になるのでおすすめです。

更年期の原因は?

更年期障害の原因は閉経前後のエストロゲンの急激な減少です。

エストロゲンとは女性ホルモンの一種です。女性ホルモンが閉経と一緒に分泌されにくくなり、不調を来します。

上のグラフは年齢と、エストロゲンの量の変化です。

・20代、30代につれ、エストロゲンの量は増えていきます。
・30代後半から徐々にエストロゲンの量は減っていきます。
・40代後半からエストロゲンが急激に減ってきます。

最近では30代後半からプレ更年期ともいわれ、エストロゲンの徐々な減少と自律神経の乱れから不調を訴える方が増えてきます。

このプレ更年期の時期は、更年期のようなエストロゲンの急激な減少ではなく、緩やかな減少にとどまり、40代、50代に向けて身体を調整している段階だといえます。

50歳前後になると、生理が止まり、閉経します。この50歳前後の期間を更年期と表現します。

閉経にむけてエストロゲンが急激に減少していくため、40代後半から疲れやすさ、目の疲れ、肩こりなどの症状がでてきやすくなります。

更年期におすすめの食べ物

更年期におすすめの食べ物は、体質別に異なります。

・イライラしやすい方は香りのいい食べ
・気力がない方は優しい甘味の食べ物
・ふらつき・貧血には色の濃い野菜・たんぱく質
・血の巡りが悪い方は適度な辛味の食べもの
・潤い不足の方には甘味と酸味のあるもの
・水滞には味のあっさりした食べ物
・腎虚にはヤマイモ、色の濃い野菜、たんぱく質がおすすめです。

詳しい体質別の症状については次の章で解説しています。

気滞タイプの食べ物・生活習慣

気滞タイプはイライラ、胸の張りなどの症状がみられるタイプです。

気滞タイプの更年期におすすめの食べ物は香りのいいもの

良い香りは気を巡らせてくれます。

紫蘇、薄荷、セロリ、三つ葉などの香味野菜、お茶であればジャスミンティーがおすすめです。

気滞タイプの更年期におすすめの生活習慣は軽い運動

気を巡らせるためには運動が重要です。運動してしっかり肺をつかうことで、気がめぐっていきます。

ジョギング、ウォーキング、時間がない時は深呼吸をするだけでも気をめぐらせることができます。

気虚タイプの食べ物・生活習慣

気が不足することで、身体の元気がなくなり、疲労倦怠感、無気力感がでてきます。

気虚タイプの更年期におすすめの食べものは適度な辛味のある食べ物

気を補うためには優しい甘味の食べ物が重要です。甘味が気を補います。

白米、卵、ショウガ、穀物類がおすすめです。

気虚タイプの更年期におすすめの生活習慣はウォーキング

気虚タイプは激しい運動をすると、余計に体力を消耗してしまいます。

ウォーキングにて適度に身体を動かすことがおすすめです。

瘀血タイプの食べ物・生活習慣

瘀血タイプは血の巡りが悪いことで、冷えのぼせ、生理痛がみられます。

瘀血タイプの更年期におすすめの食べものは適度な辛味のある食べ物

冷えのぼせがあるときは適度な辛味で血を巡らせます。

ネギ、タマネギ、ナス、べにばな、青魚、黒酢がおすすめです。

瘀血タイプの更年期におすすめの生活習慣はストレッチ、入浴

瘀血は血の巡りが悪い状態なので、ストレッチをして、血行を良くすることがおすすめです。

冷えから血の巡り悪くなることが多いので、入浴して身体を温めることも重要です。

血虚タイプの食べ物・生活習慣

血虚という身体の栄養が不足した状態のため、気分の落ち込み、強い不安感につながります。

血虚タイプの更年期におすすめの食べものは味の色の濃い野菜

色の濃い野菜は血を養ってくれます。

人参、きくらげ、ほうれん草、卵、肉類、魚類、ゼラチン、なつめ、クコの実、りゅうがんにくがおすすめです。

血虚タイプの更年期におすすめの生活習慣はしっかり食事を食べること

血を養うためには食事が重要です。ダイエットは禁忌です。

目の使いすぎも血を消耗するのでおすすめできません。

水滞タイプの食べ物・生活習慣

水がたまることで、むくみ、動悸、めまいにつながります。

水滞タイプの更年期におすすめの食べものは味のあっさりした食べ物

味のアッサリした食べ物が水を出す働きがあります。

大根、冬瓜、キュウリ、トマト、昆布、わかめ、小豆、バナン、スイカがおすすめです。

水滞タイプの更年期におすすめの生活習慣は汗をかく運動

水のめぐりが悪い状態なので、しっかり運動して汗をかきましょう。

水を1日2Lも飲まれている方がいらっしゃいます。漢方としては基本的に身体が必要としては水を欲します。反対に、無理して服用すると水毒になります。

腎虚タイプの食べ物・生活習慣

腎虚タイプは火照り、もしくは冷え、頻尿などがみられます。

腎虚タイプの更年期におすすめの食べものはヤマイモ、長芋

腎を補う食べ物として有名なものはヤマイモです。粘り気があるものは精力がつくといいますが、漢方でも同じようにいえます。

ほかにも色の濃い野菜、たんぱく質、骨のついたお肉もおすすめです。

腎虚タイプの更年期におすすめの生活習慣はウォーキング

腎虚は身体が弱っている状態ですので、無理をしない、ウォーキングがおすすめです。

更年期の漢方での原因は?

更年期の原因を漢方で考えると、気、血、水、腎が関係しています。

気滞

気滞は気のめぐりが悪い状態のことです。気滞になることで、全体的に滞った症状がでてきます。

気滞の症状
・イライラ
・不安
・不眠
・頭痛
・胸の張り
・のどのつかえ
・吐き気
・逆流性食道炎
・つわりのような症状
・自律神経失調症

気滞は精神ではイライラ、不安になります。

気滞は身体的な症状として頭痛、胸の張り、のどのつかえ、吐き気にも関係しています。

気虚

気は身体のエネルギーの源です。気が虚すことで、身体全体の元気がなくなります。

気虚の症状
・けん怠感
・無気力
・眠い
・やる気がでない
・あざができやすい

気虚になると、身体の活力が低下症状がみられやすいです。

瘀血

瘀血(おけつ)は血の巡りが悪い状態のことです。

瘀血の症状
・肩こり

・手足の冷え
・生理痛
・生理血が暗い色

また瘀血はしみの原因にもなります。

血虚

血虚は身体の栄養が不足した状態です。

漢方では血の栄養が充実することで肌が潤い、爪が固く、髪につやがでてきます。

血虚の症状
・強く不安感
・気分の落ち込み
・不眠
・冷え
・肌の乾燥
・爪が割れる
・髪がパサつく
・髪が抜ける
・足がつる

血虚、とくに心の血が不足することで精神が不安定になりやすくなります。

血虚になると身体的に肌・爪・髪・筋肉の潤いがなくなっていきます。

水滞

水滞は水が過剰にたまっている状態のことです。

水滞の症状
・めまい
・吐き気
・ふわふわ感
・動悸
・むくみ

水がたまると、めまい、動悸に原因になります。

陰虚

陰虚は身体の潤いが不足した状態です。

陰虚の症状
・口渇、口が渇く
・ほてり

陰虚になり、身体の潤いが不足することで、口が渇きやすくなります。

腎虚

漢方では「腎」は精をつかさどり、生命力の源と考えられています。

生命力は年齢とともに衰えてくるように、腎は加齢によって弱ってくる臓腑です。

腎虚の症状
・ほてり
・ホットフラッシュ
・冷え性
・耳鳴り
・口渇

・頻尿
・夜間尿
・生理のときに腰痛

腎は潤す働きと、温める働きがあります。

腎陰虚になると、ほてり、ホットフラッシュ、口渇などの水不足の症状がみられやすくなります。

腎陽虚の温める働きが弱くなると、冷えが強くでてきます。

更年期につかうおすすめの漢方薬は?

更年期障害の症状にあわせて、芎帰調血飲第一加減、加味逍遙散、抑肝散、知柏地黄丸、八味地黄丸、桂枝茯苓丸、連珠飲、当帰芍薬散、十全大補湯などの漢方薬がおすすめです。

更年期のイライラ、疲れやすさには芎帰調血飲第一加減

更年期障害といえば、芎帰調血飲第一加減がおすすめです。

更年期の時期にみられる気滞・瘀血・血虚・気滞、少し腎虚傾向に適した漢方薬です。

・イライラ、不安
・冷えと火照り
・疲労倦怠感
・生理が不安定

芎帰調血飲第一加減の枳実・木香が気を巡らせ、白朮・茯苓が気を補い、桃仁・紅花が血をめぐらせ、当帰・芍薬が血を補い、ホルモンバランを整え、地黄が腎を補います。

芎帰調血飲第一加減は多くの症状に対応する生薬が入り、バランスのいい漢方薬です。

更年期のイライラ、冷え、のぼせ、つかれやすいときには芎帰調血飲第一加減がおすすめです。

いらいらが強いときは抑肝散

いらいらが強いときは気滞が強いと考えられます。

・いらいら
・すぐに怒ってしまう
・怒りをコントロールできない

抑肝散の柴胡・釣藤鈎が気を巡らせ、イライラを鎮めます。

イライラ、怒りの症状が中心のときは抑肝散です。

イライラ、不安、ほてりがあるときは加味逍遙散

イライラ・不安は気滞で、ほてりは熱感がこもっています。

・イライラ
・不安
・肩こり
・火照り

・胸の張り

加味逍遙散の柴胡が気を巡らせ、薄荷が熱を発散してくれます。当帰・芍薬がホルモンバランスの乱れの原因となる血を補ってくれます。

イライラ、不安の気滞と、ほてりの熱感もあるときは加味逍遙散が適しています。

ほてりの症状が強いときは知柏地黄丸

ほてりが強いときは腎陰虚と考えられます。

・ほてり
・熱感
・汗が止まらない
・頻尿
・口渇

知柏地黄丸の知母・黄柏が火照りを冷まし、地黄・山茱萸・山薬などが腎を補い、アンチエイジングの働きをします。

火照りの症状が強いときは熱を冷まし、潤す働きの知柏地黄丸が適しています。

冷えて、頻尿のときは八味地黄丸

冷え性でトイレが近いとくは、腎陽虚と考えられます。

・冷え性
・頻尿
・尿漏れ
・夜間尿
・腰痛

八味地黄丸の桂皮・附子が身体を温め、地黄・山薬・山茱萸が腎を補い、アンチエイジングに働きます。

冷え性で、トイレが近いときは八味地黄丸が適しています。

冷えのぼせには桂枝茯苓丸

冷えて、のぼせるときが身体全体のめぐりが悪い状態です。

・冷えてのぼせる
・末端は冷える
・肩こり

桂枝茯苓丸の桂皮が気をめぐらせ、冷えとのぼせを巡らせます。桃仁・芍薬・牡丹皮が血を巡らせます。

冷えとのぼせが気になるときは桂枝茯苓丸が適しています。

更年期の動悸、めまいには連珠飲

めまい、ふらつきの原因は水の停滞が原因です。

・動悸
・めまい
・ふらつき
・立ちくらみ
・貧血

連珠飲の桂皮・白朮・茯苓が水を巡らせ、動悸・めまいに効果があります。当帰・芍薬などが血を補い、ホルモンバランスを整えます。

更年期の動悸、めまいには連珠飲がおすすめです。

更年期のむくみには当帰芍薬散

むくみは水をしっかり巡らせる必要があります。

・むくみ
・足腰の冷え性

当帰芍薬散には白朮・茯苓・沢瀉が水を巡らせ、むくみをとります。当帰・芍薬・川芎が血を養い、ホルモンバランスを整えます。

更年期のむくみには当帰芍薬散が適しています。

更年期のけん怠感には十全大補湯

疲労倦怠感がみられるときは、気虚が強い状態です。気を補い、元気をつける必要があります。

・疲労倦怠感
・食欲不振
・手足の冷え
・貧血

十全大補湯には人参・白朮・茯苓の気を補う生薬が多く入り、元気をつけてくれます。当帰・芍薬・地黄が血を養い、ホルモンバランを整えます。

更年期の疲労倦怠感には十全大補湯が適しています。

気分の落ち込みが強いときは帰脾湯

気分の落ち込みが強いときは心の血が不足していると考えられます。

・気分の落ち込み
・不安感
・貧血

帰脾湯の酸棗仁・竜眼肉が心の血を養うことで、不安感、気分の落ち込みを改善してくれます。

気分の落ち込みが強いとき、不安感には帰脾湯が適しています。

更年期におすすめのツボ

更年期におすすめのツボとして後渓

後渓

後渓(こうけい)は太陽小腸経の経穴です。経絡の通りを良くし、痛みを抑え、体内の熱を冷ます働きがあります。精神不安にもいいです。

中渚

中渚(ちゅうしょ)は少陽三焦経の経穴で、体内の熱を冷まし、耳の聞こえをよくしたり、視力を回復し、頭痛、めまい、肩・背中の痛みにも良いです。

神門

神門(しんもん)は少陰心経の経穴で、心の気を補い、精神を安定させることで、不眠、動悸におすすめです。

更年期の症状を体質別にまとめてみました。ただ実際は、気滞もあれば、血虚もあり、腎虚もあるなど、多くの方は複合的に問題があります。そのなかでお体にあったものを選ぶ必要があります。お悩みであれば気軽にLINEからご相談ください。更年期を元気に過ごせるお手伝いをさせていただけたらと思います。

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