この記事を書いた人
・灯心堂漢方薬局 薬局長
・薬剤師歴10年以上
・店舗のLINE登録者数1000人以上
・漢方を通して、皆様が少しでも健康に過ごせる手助けをできればと思います。>>プロフィール記事はこちら
西山光です
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・抑肝散はどういうときに服用したらいいの?
・合わない人っているの?
このようなお悩みに漢方薬局の薬剤師がお答えします。
この記事を読んでわかること
・抑肝散の効能効果
・抑肝散の構成生薬
・合う人、合わない人
・副作用、長期服用について
抑肝散はイライラ、不眠症、歯ぎしり、更年期障害によく使用されます。
体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、血の道症
抑肝散の効能効果(薬局製剤)
(血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期などの女性ホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことです。)
抑肝散の効能効果はメーカーによっても異なるので、ご購入の際はしっかりパッケージを確認してください。
抑肝散の効能効果を大きく分けると、神経症・不眠症などの精神的な働き、更年期・血の道症の女性への働き、歯ぎしりの筋肉への働きがあります。
・イライラ、神経症の精神を落ち着かせる作用
・更年期、血の道症の女性への作用
・歯ぎしりの筋肉の動きへの作用
抑肝散の効能効果に「怒りやすい」「いらいら」「神経症」「不眠症」と記載があり、イライラを鎮める漢方薬だとわかります。
イライラは漢方では「気滞」という状態です。
抑肝散には釣藤鈎・柴胡という気の高ぶりを鎮める生薬が入っています。
抑肝散が気の高ぶりを鎮めることで神経症、不眠症、夜泣き、神経過敏に効能効果があります。
抑肝散の効能効果に「更年期障害」「血の道症」とあります。
抑肝散には女性によく使用される漢方薬だとわかります。もちろん抑肝散は男性にも使用できます。
「血の道症」とは、今でいうホルモンバランスの乱れのことです。生理前後、産前・産後、更年期にみられる不調のことをいいます。
抑肝散には当帰・川芎という血を養う生薬が入っています。女性は生理があることで、身体的・精神的にも不調を起こしやすいです。
抑肝散に入っている当帰・川芎が生薬が血を養い、女性に適した漢方薬といえます。
抑肝散の効能効果に「歯ぎしり」とあります。
気滞という気のめぐりの悪い体質は、筋肉へも影響を与えます。
気滞は無意識に身体を緊張させ、歯ぎしりやまぶたのけいれんにもつながります。
抑肝散の釣藤鈎・柴胡が気滞を解消してくれます。
抑肝散の釣藤鈎・柴胡が気の巡りを整え、筋肉の緊張を緩め、歯ぎしりにも効能効果があります。
抑肝散には気を巡らせる生薬と血を養う生薬が入っています。
抑肝散には7種類の生薬が入っています。
釣藤鈎、柴胡、当帰、川芎、茯苓、白朮、甘草が入っています。
抑肝散に入っている生薬を働き別にまとめてみました。
・気を巡らせる働き:釣藤鈎・柴胡(・川芎・茯苓)
・血を養う働き:当帰・川芎
・気を補う働き:茯苓・白朮・甘草
抑肝散に入っている釣藤鈎・柴胡・川芎・茯苓は気を巡らせる生薬です。
釣藤鈎(ちょうとうこう)は抑肝散で重要な生薬で気の高ぶりを鎮めます。急に怒ったり、いらいらする症状に適しています。
釣藤鈎。アカネ科カギカズラ。急に込みあがるイライラを発散します。
柴胡は加味逍遙散にも入っている生薬で気滞をめぐらせます。
川芎は血を養いつつ、気を巡らせます。茯苓は気を補いながら、安神に働きます。
抑肝散は釣藤鈎・柴胡の気を巡らせる生薬を中心に構成されています。
抑肝散に入っている当帰・川芎は血を養います。
↑当帰(とうき)。当帰は血を養うため、婦人向けの漢方薬に配合されています。
抑肝散に入っている当帰・川芎は血を養い、血を不足しがちな女性に適した生薬です。
抑肝散にはイライラに働くだけでなく、血を養う働きもあるため、ホルモンバランスの乱れ、更年期にも効能効果があります。
抑肝散の当帰・川芎が血を養い、ホルモンバランスの乱れ、更年期のイライラにも適しています。
抑肝散の白朮・茯苓・甘草は気を補う働きがあります。
抑肝散には気を補う働きもあり、体力中等度の幅広い方に使用することができます。
抑肝散の釣藤鈎・柴胡が気を巡らせることで、いらいら、神経症、不眠症に効果を発揮します。
抑肝散の当帰・川芎が血を養い、ホルモンバランスの乱れ、更年期のイライラにも適しています。
・体力中等度の方
・イライラしやすい方
・怒りやすい方
・神経症
・不眠症
・歯ぎしり
・ホルモンバランスの乱れ
抑肝散は気を巡らせる漢方薬のため、いらいら、怒りやすい方に適しています。
抑肝散は急に怒ったり、イライラする方に適しています。急に、ガーっと急にイライラする方です。
抑肝散には便通改善の働きはないため、イライラの気の鬱滞が強く、便秘もある方は柴胡加竜骨牡蛎湯の方が適しています。
虚の傾向が強いときは抑肝散では補う働きが弱いため、イライラと不安・貧血もあるときは、気血を養う帰脾湯が適しています。
「抑肝散が効かない」という経験をされた方もいらっしゃると思います。抑肝散が効かない理由としては、気滞が強く、便秘がみられたり、反対に気血の虚が強かったりすることが考えられます。
合う人 | 合わない人 |
---|---|
・イライラ、急に怒りだす ・胃腸の働きは普通 | ・気滞が強く、便秘がみられるとき ・体力がかなり弱いとき |
抑肝散の気を巡らせる働きは即効性があり、数分で実感する方もいます。
抑肝散のいい点として即効性だけでなく、長期的に服用することで体質改善の働きもあることです。
抑肝散の当帰・川芎は血を養う働きがあります。
漢方では血が不足した「血虚」体質になるとイライラの風を起こしやすいと考えられています。
抑肝散は血を養う働きがあることで「血虚」の体質も改善してくれます。
抑肝散はリバウンドのような離脱症状はないとされています。
西洋医学の抗うつ薬は急にやめると離脱症状がみられ、症状が悪化する恐れがあります。
それに対し、抑肝散は急にやめても離脱症状はみられません。
症状が改善したときは急にやめてもいいですが、徐々に服用量を減らしていくのがおすすめです。
抑肝散に半夏・陳皮の胃薬が加わったものが抑肝散加陳皮半夏です。
抑肝散に心の熱を冷ます黄連、平肝の芍薬が加わったものが抑肝散加芍薬黄連です。
・抑肝散加陳皮半夏→胃腸が弱い方
・抑肝散加芍薬黄連→症状が強い方
・抑肝散→上のどちらでもない方
抑肝散は更年期の症状でイライラが強いときに適しています。
更年期でも火照りの症状が強いときは知柏地黄丸、イライラと不安もあるときは逍遙散、便秘とイララがあるときは柴胡加竜骨牡蛎湯が適しています。
更年期といっても症状は多様なので、人それぞれにあった漢方薬をつかいわけます。
抑肝散は気の高ぶりを鎮める漢方薬です。
抑肝散は認知症の方にみられる不眠、すぐに怒るなどの症状の緩和によく使用されます。
注意が必要なのは、抑肝散は認知症を治したり、進行を抑制したりしません。
あくまでも抑肝散は認知症の周辺症状のイライラ、不眠に用いられます。
抑肝散は気の高ぶりを鎮めた結果として、不眠症に効能効果があります。
西洋のお薬のように1つの成分で、強い鎮静作用をもっているわけではありません。
昼間に服用したり、気の高ぶりがない方が抑肝散を服用しても、眠くなる可能性は低いです。
甘麦大棗湯はヒステリックのような神経過敏なときに使用し、抑肝散も急に怒りだすような神経の高ぶりが強い方に使用します。
どちらも急な感情の変化がみられるときに使用する漢方薬です。
不安からヒステリックのような神経過敏になるときは甘麦大棗湯が適しています。
不安が一切なく、イライラ・怒りっぽさがあるときは抑肝散が適しています。
抑肝散は気を巡らせ、イライラに特化しているのに対し、柴胡加竜骨牡蛎湯はイライラも不安もどちらもある方に適しています。
抑肝散の副作用としては、皮膚(発疹・発赤、かゆみ)、間質性肺炎(空せき、息苦しさ)、偽アルドステロン・ミオパチー(けん怠感、筋肉痛)、肝機能障害(発熱、かゆみ、けん怠感、黄疸)などがみらるこことがあります。
これらの症状があらわれた場合は、副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、医師又は薬剤師に相談をしてください。
漢方の長期服用にてよく問題になるのが、甘草です。
甘草を多くとっていると副作用が生じやすくなります。
メーカーにもよりますが、一般的に抑肝散に含まれる甘草の量は1.5gです。
甘草の1.5gというのは多くないため、長期服用しやすい漢方薬です。しかし、ほかの漢方薬を併用したり、ご年配の方では副作用がでたりすることがあります。
手足の脱力感、筋肉痛、しびれがみられるようになったときは甘草による副作用の可能性があります。
そのような症状がみられた場合は直ちに服用を中止してください。
・抑肝散は体力中等度で、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラがみられる方に使います。
・抑肝散は気の高ぶりを鎮める生薬を中心に構成され、イライラの神経症、不眠症に効能効果があります。
・抑肝散は血を養う働きもあり、更年期・ホルモンバランスの乱れによるイライラにも適した漢方薬です。