【使いわけ】抑肝散と甘麦大棗湯の違いを徹底解説(どっちを飲んだらいい?)

 この記事を書いた人

・灯心堂漢方薬局 薬局長
・薬剤師歴10年以上

店舗のLINE登録者数1000人以上
・漢方を通して、皆様が少しでも健康に過ごせる手助けをできればと思います。>>プロフィール記事はこちら

西山光です
質問

・甘麦大棗湯と抑肝散の違いは?
・どう使い分けるの?

漢方薬の違いってわかりづらいですよね。

ここでは抑肝散と甘麦大棗湯の違いについて解説しています。

このブログを読むことで、ご自身にあったものを選んでいただけたらと思います。

甘麦大棗湯は不安や悲しみによって、神経が過敏になっている状態に適しています。
・抑肝散は不安はなく、イライラによって神経がたかぶった状態に適しています。

なぜこのような違いがあるのか、解説していきます。

 この記事を読んでわかること
・抑肝散と甘麦大棗湯の違い
・生薬の違い
・それぞれの使い分け

目次

効能効果の違い

効能効果の違いから説明していきます。効能効果はメーカーによっても異なるので、服用する際はパッケージのご確認をお願いいたします。

抑肝散の効能効果

体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、血の道症

抑肝散の効能効果(薬局製剤)

抑肝散の効能効果をみて、カッと怒りやすい方に適した漢方薬だとわかります。

甘麦大棗湯の効能効果

体力中等度以下で、神経が過敏で、驚きやすく、ときにあくびが出るものの次の諸症:不眠症、小児の夜泣き、ひきつけ

甘麦大棗湯の効能効果(薬局製剤)

小児および婦人の神経症、不眠症。

甘麦大棗湯の効能効果(医療用コタロー)

甘麦大棗湯の効能効果では「神経が過敏」「小児および婦人の神経症」の部分が重要です。

甘麦大棗湯はヒステリックのような神経が過敏な状態に使用する漢方薬です。

効能効果の違い

抑肝散も甘麦大棗湯も効能効果に「神経症」と記載されているため、効能効果を読んだだけでは違いはわかりづらいと思います。

抑肝散はイライラ・怒りが中心で、不安の要素はありません。

甘麦大棗湯はヒステリックのような神経過敏で、神経が高ぶっていますが、根本的な感情の起こりは不安です。不安の気持ちから神経が敏感になっています。

抑肝散はカッとなった神経のたかぶりに適しています。甘麦大棗湯はキーッとした神経過敏、グッと込みあがってくる不安に適しています。

生薬について

まずは共通する生薬を解説し、それぞれの漢方薬について説明します。

共通する生薬

抑肝散と甘麦大棗湯とで共通している生薬は甘草だけです。

共通している生薬が少ないことからも、抑肝散と甘麦大棗湯は全く異なる漢方薬です。

抑肝散に入っている生薬

抑肝散は釣藤鈎、柴胡、当帰、川芎、茯苓、白朮、甘草の7種類の生薬から構成されています。

・気を巡らせる働き:釣藤鈎・柴胡(・川芎・茯苓)
・血を養う働き:当帰・川芎
・気を補う働き:茯苓・白朮・甘草

釣藤鈎(ちょうとうこう)は抑肝散で重要な生薬で気の高ぶりを鎮めます。急に怒ったり、いらいらする症状に適しています。

釣藤鈎。アカネ科カギカズラ。急に込みあがるイライラを発散します。

抑肝散は気に対する生薬が多く入っていることで、イライラ、怒りの気を巡らせて効果を発揮します。

甘麦大棗湯に入っている生薬

甘麦大棗湯は甘草・小麦・大棗の3つの生薬から構成されています。

・神経の緊張を緩める:甘草・小麦・大棗

甘草。リコリスともいう。甘味料として使用されるくらい甘味が強い。

甘麦大棗湯に入っている生薬はすべて甘い生薬です。甘草は甘味料、小麦はこむぎ、大棗はなつめで食品にあるくらいです。

漢方で甘味は緩める働きがあります。不安からの神経の高ぶりを緩めてくれます。

・抑肝散はイライラの気をめぐらせる
・甘麦大棗湯は不安を緩ませる

抑肝散と甘麦大棗湯の使い分け

イライラし、神経が高ぶっているが、不安の要素はありません。甘麦大棗湯は不安な気持ちから神経がたかぶっているときにつかいます。

甘麦大棗湯は様々な使い方がありますが、抑肝散は単純にカッと怒る方に適しています。

甘麦大棗湯は不安な気持ちが出発点になります。

甘麦大棗湯が向いているとき
・心配、不安な気持ちから神経がたかぶっていき、怒りとなるとき
・電車に乗るとき、急にドキドキして不安になるとき
・夜になると急に不安になって、泣いてしまうとき

突発的に強い不安になるときが甘麦大棗湯が適してるときです。ヒステリックのような神経過敏も急になります。パニックの症状も急に起こります。

急に生じる不安な気持ちを甘麦大棗湯は緩めてくれます。

ただし慢性的にずっと不安であれば甘麦大棗湯よりも帰脾湯が適しています。

友だち追加
目次