むくみを改善するための漢方薬の選び方とその使い方

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西山光です

浮腫みで靴が入りにくくなった経験があるかもしれません。

浮腫みはとは、水分が一部に溜まっている状態です。

人間の身体の60%は水分のため、滞りが生じると浮腫みがどうしても生じてしまいます。

一般的には浮腫みの原因には、塩分の取りすぎ、アルコール、生理関連、運動不足などさまざま要因があります。

浮腫みを生じる病気もあり、腎臓、心臓、肝臓が悪いと浮腫みが生じるようになり、浮腫みがひどい場合は病院の受診をおすすめします。

この記事では漢方でのむくみの考え方について説明します。

目次

浮腫みの漢方での原因は?

浮腫みを起こしやすい体質に水飲、気虚があり、五臓で考えた場合は肺・脾・腎が浮腫みに関与しています。

水飲

水飲とは動きの悪い水のことを指します。

浮腫みが水飲と関係があるのはわかりやすいですね。

水飲が生じやすい原因には、単純に水を摂取し過ぎたり、次に説明する気虚によって水飲が生じやすくなります。

気虚

気虚とは気が不足していることです。

気虚になることで、水飲が生じやすくなります。

なぜ気が不足すると水が溜まりやすくなるのでしょうか?

気には推動という働きがあります。

推動とは、気が水・血を体中に運ぶ働きのことです。

気によって水・血が身体をめぐることができています。

気が不足すると、気・血が循環せず、停滞し、浮腫みとなります。

肺の失調

漢方においては、肺は水道を通調する働きがあります。

水道は水の流れのこと。

肺から身体に水を散布し、身体全体に水が行きわたるように働いています。

肺は「水の上源」とも表現します。

カゼ引いたときに鼻水がでやすくなるのは、肺の水を通調する働きが機能失調しているためといえます。

肺の調子が悪くなると浮腫みが生じやすくなります。

腎の失調

漢方において、腎は水をつかさどるといいます。

腎が水の流れをコントロールしています。

肺が水の上源を制御し、腎が水のめぐりと排出を制御しています。

腎が水をコントロールしているのは、西洋医学での腎臓と同じ考えのため、イメージしやすいと思います。

腎の働きが悪くなると浮腫みが生じやすくなります。

脾の失調

脾は漢方では消化吸収をつかどる臓腑です。

消化吸収とは、必要なものを吸い上げ、余分なものは追い出す必要があります。

脾の働きが機能していなければ、余分な水を追いだすことができず、浮腫みが生じます。

反対に余分な水があると脾の働きが悪くなりやすくなります。

脾の調子が悪い→水が溜まりやすくなる
水が溜まる→脾の調子が悪くなりやすい

水と脾の関係はとても重要で、どちらかのバランスが崩れると悪循環に陥ります。

補気の生薬で頻用されるものに白朮・茯苓があります。

白朮・茯苓は気を補う働きと水を追い出す働きがあり、気と水のどちらにも作用するため、使いやすく頻用されます。

浮腫みの漢方薬は?

浮腫みに効能効果のある漢方薬に、分消湯、当帰芍薬散、当帰芍薬散加人参、防已黄耆湯、五苓散、補気建中湯、六味丸(六味地黄丸)、八味地黄丸などがあります。

分消湯

分消湯は体力がある方の浮腫みに適した漢方薬です。(体が弱っている方の浮腫みにはあとで説明する補気建中湯が適しています)

分消湯には水のめぐりを改善する生薬がとても多く入っています。

蒼朮・白朮・茯苓・猪苓・沢瀉・大腹皮・灯心草が余分な水を追いだす生薬で、利水の働きがあります。

気に働く生薬も多く、厚朴・陳皮・枳実・木香・香附子が入っています。

分消湯は水に働く生薬、気に働く生薬が多く、ほかの漢方薬でも浮腫みが改善しない場合は分消湯を試してみてもいいかもしれません。

効能効果にも「体力中等度以上で、尿量が少なくて、ときにみぞおちがつかえて便秘の傾向のあるものの次の諸症:むくみ、排尿困難、腹部膨満感」とあり、体力が弱っている方には向いていません。

五苓散

五苓散(ごれいさん)は浮腫みの漢方薬の代表的なものです。

五苓散は桂皮・白朮・茯苓・沢瀉・猪苓の5つの生薬から構成されています。

五苓散の5つの生薬のうち、白朮・茯苓・沢瀉・猪苓の4つの生薬は利水薬といわれ、水のめぐりを改善する生薬です。

4つも利水の生薬が入っていことからも水を追い出す働きが強いことがわかります。

残りの生薬の桂皮は気を補う生薬です。

桂皮は気を表へ向かわせ、邪を追い出す働きがあります。

桂皮の気を動かす働きによって、水の動きを助け、相乗効果で浮腫みに効果を発揮します。

桂皮には邪を追い出す働きがあるため、急性胃腸炎による下痢・吐き気にも五苓散はつかうことができます。

当帰芍薬散

当帰芍薬散は女性の浮腫みによく使用される漢方薬です。

当帰芍薬散は当帰・芍薬・川芎・白朮・茯苓・沢瀉という生薬から構成されています。

当帰・芍薬・川芎は血を養う生薬です。女性に不足しがちな血を補ってくれます。

白朮・茯苓は気を補いつつ、水のめぐりを改善する生薬で、沢瀉も水を追いだす生薬です。

当帰芍薬散は血を養い、気を補い、水のめぐりを意識した漢方薬です。

当帰芍薬散の効能効果にも「体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすい」体質の生理痛、生理不順、更年期、浮腫みに効果があると記載されています。

浮腫みと生理不順があるときは当帰芍薬散が適しています。

防已黄耆湯

防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)は気虚による浮腫みの漢方薬です。

防已黄耆湯は防已・黄耆・白朮・生姜・大棗・甘草から構成されています。

黄耆が気を補う生薬であり、補気にて水がめぐりやすい環境を整えます。

白朮は気を補いつつ、水のめぐりを改善し、たまっている水を追い出します。

防已は肺に働き、全身の水のめぐりを改善し、たまっている水を追い出します。

生姜・大棗・甘草は胃薬の構成にて、胃腸の働きを整えます。

防已黄耆湯は水のめぐりを改善する漢方薬のため、多汗症、水太りにもつかうことができます。

六味丸

六味丸は腎に働くことで水のめぐりを改善する漢方薬です。

六味丸は地黄・山茱萸・山薬・茯苓・沢瀉・牡丹皮の補腎薬の基本的な構成となっています。

補腎薬の組み合わせが腎を補い、水の流れを整えます。

腎から水を調整するため、六味丸は浮腫みだけでなく、頻尿、残尿感にもつかうことができます。

ほてり、浮腫み、頻尿などの症状があれば六味丸が適しています。

八味地黄丸

八味地黄丸六味丸に桂皮・附子を加えた漢方薬です。

八味地黄丸=六味丸+桂皮・附子

八味地黄丸には六味丸の構成が入っているため、補腎薬として腎の働きを整えます。

桂皮・附子は温める生薬であり、冷えて動きの悪い水を動かすのを助けます。

温める働きがあるため、八味地黄丸は冷えがある方に向いています。

冷え、浮腫み、頻尿があれば八味地黄丸が適しています。

補気建中湯

補気建中湯(ほきけんちゅうとう)は胃腸の気を補うことで浮腫みに使う漢方薬です。

補気建中湯は人参・白朮・茯苓・沢瀉・麦門冬・陳皮・厚朴・黄芩から構成されています。

補気建中湯で主薬となるのが人参です。

人参は気を補う生薬で浮腫みと関係ないように思えますが、気を補うことで脾の働きが強化され、余分な水を追い出すことができるようになります。

白朮・茯苓も気を補いつつ、水のめぐりを改善し、沢瀉は水を追い出します。

陳皮は胃腸の調子が悪いことで溜まりやすい水を追い出します。

補気建中湯は気を補いながら、浮腫みを解消する漢方薬です。

身体がかなり弱っている方の浮腫みに補気建中湯が適しています。

補気建中湯の効能効果も「体力虚弱で、胃腸が弱いものの次の諸症:腹部膨満感、むくみ」となっています。

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