この記事を書いた人
・灯心堂漢方薬局 薬局長
・薬剤師歴10年以上
・店舗のLINE登録者数1000人以上
・漢方を通して、皆様が少しでも健康に過ごせる手助けをできればと思います。>>プロフィール記事はこちら
西山光です


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「妊活を始めたいけど、AGA薬をやめたら髪が抜けてしまう」
「でも飲み続けて、精子や赤ちゃんに影響が出たらどうしよう」
AGA(男性型脱毛症)の治療薬であるフィナステリドやデュタステリドを服用中の男性が妊活に直面すると、多くの方がこの板挟みに悩まれます。
当薬局にも「AGA薬を飲んでいるが、妻と妊活を始めたい」というご相談が増えています。
この記事では、AGA薬が精子に与える影響について現在の医学的見解を整理した上で、漢方薬局だからこそ提案できる「第3の選択肢」——休薬中の体質改善について、くわしくお伝えします。



フィナステリド(商品名:プロペシアなど)とデュタステリド(商品名:ザガーロなど)は、AGAの原因となる男性ホルモン(DHT:ジヒドロテストステロン)の生成を抑える薬です。日本では多くの男性がAGA治療としてこれらの薬を服用しています。
しかしDHTは、胎児期の男の子の生殖器の発育にも関わるホルモンです。そのため、妊娠中の女性や妊娠の可能性がある女性は、これらの薬に触れることすら禁忌とされています。
ここが多くの男性が最も知りたいポイントです。
現在の医学的な見解を整理すると、以下のようになっています。
フィナステリドを服用中の男性の精液中に移行する成分量は、投与量のごくわずか(0.00076%以下)であったという報告があります。この量は胎児の発育に影響しないレベルとされており、「服用しながらの妊活も問題ない」とするAGAクリニックも少なくありません。
一方で、フィナステリドの服用を中止したところ、精子の濃度・運動率・正常形態率が改善したという報告も複数あります。休薬後3〜4ヶ月で改善が見られたケースが多く、これらの変化は可逆的(元に戻せる)であるとされています。
また、副作用として性欲の低下や勃起機能の低下が生じる場合もあり、これが妊活に間接的に影響するケースもあります。
つまり、「飲み続けても大きな問題はなさそう」という見解と、「念のため休薬したほうがより安心」という見解が併存しているのが現状です。
この判断は、必ず処方医(AGAクリニックや皮膚科の主治医)に相談してください。 当薬局は漢方薬局であり、AGA薬の継続・中止の判断を行う立場にはありません。
この記事でお伝えしたいのは、「やめる」か「続ける」かの二択ではなく、どちらを選んだ場合でも、漢方で体質の土台を整えるという第3の選択肢があるということです。
ここからが、漢方薬局だからこそお伝えできる話です。
西洋医学では、髪の問題と精子の問題は別々の領域として扱われます。AGAは皮膚科やAGAクリニック、男性不妊は泌尿器科や不妊治療クリニック——それぞれ別の医師が、別の薬で対処します。
しかし漢方では、髪と精子は同じ「根っこ」でつながっていると考えます。



漢方では、髪の成長は「腎(じん)」という臓腑のはたらきに支えられていると考えます。「髪は腎の華(はな)」という言葉があり、腎が元気であれば髪にはツヤとコシがあり、腎が弱ると髪は細くなり、抜けやすくなるとされています。
そして精子をつくる力もまた、腎のはたらきに支えられています。腎に蓄えられた生命エネルギー(腎精)が充実していれば、精子の数・運動率・質も安定しやすくなります。
つまり、腎を養うことは、髪の土台と精子の土台を同時に整えることにつながるのです。
もうひとつ、漢方には「髪は血の余り(血餘)」という考え方があります。全身に必要な血が満ちて、そこからさらに余った分が髪の栄養になるという意味です。
血が不足する「血虚(けっきょ)」の状態になると、髪はパサつき、細く弱くなります。同時に、精巣にも十分な栄養が届かなくなり、精子の質にも影響が出やすくなります。
髪と精子、一見まったく別の問題に見えて、漢方では「腎」と「血」という同じ土台の上にあるのです。
AGA薬を休薬する場合、多くの方が「髪が抜けるのをただ我慢して待つしかない」と思っています。
しかし漢方の視点で見れば、休薬中はむしろ体質改善の絶好のタイミングです。
AGA薬は「DHTの生成を抑える」という対症療法です。薬をやめればDHTはまた増え、脱毛が再開します。一方、漢方は腎や血を整えることで、髪が育つ土台そのものを底上げしようとするアプローチです。
もちろん、漢方薬だけでAGAの進行を止めることは難しいと考えるのが正直なところです。AGAは遺伝的要因が大きく関わる脱毛症であり、西洋薬による治療が効果的なケースも多くあります。
しかし、休薬中に腎と血を整えておけば、髪の「抜けにくさ」の土台を少しでも補強しつつ、精子の質を高めるための体質改善も同時に進められます。「ただ待つ」のではなく、「整えながら待つ」——これが、漢方薬局だからご提案できる第3の選択肢です。
漢方では、体質に合わせた処方を選ぶことで、より効果的に体質を整えていきます。AGA薬の休薬中に多い体質を3つご紹介します。
腎のエネルギーが不足しているタイプです。髪と精子の両方に影響が出やすい状態であり、腎を補う漢方薬を用いて生命力の土台を立て直していきます。
血が不足しているタイプです。「髪は血の余り」の考え方でいえば、まず血を充実させることが先決です。血を養い、めぐりをよくする漢方薬を用います。
体内に余分な湿気と熱がたまっているタイプです。湿熱は頭皮環境を悪化させるだけでなく、精巣の環境にも悪影響を及ぼすと考えます。湿熱を除く漢方薬で、頭皮と精巣の両方の環境を整えていきます。
※実際にはこれらの体質が複合している方も多く、また他の体質パターンもあります。正確な体質判断は、漢方の専門家による相談をおすすめします。
(→体質別の漢方アプローチについてさらに詳しくは「男性不妊と漢方薬|体質別に考える原因と改善のアプローチ」をご覧ください)






漢方では「薬食同源」といい、日々の食事も体質改善の一部と考えます。腎を補い、血を養う食材は、髪にも精子にもプラスに働きます。
黒い食材——黒ごま、黒豆、黒きくらげ、海苔。漢方では「黒は腎に入る」とされ、腎精を補う力があると考えます。
くるみ——腎陽(温める力)を補い、脳と髪の栄養にもよいとされる薬膳食材。おやつ代わりに毎日数粒。
牡蠣——亜鉛を豊富に含み、腎陰を養うとされます。精子の生成と髪の成長、どちらにも関わるミネラルです。
クコの実——腎と肝を養い、血を補うとされる薬膳の定番食材。白湯やお茶に数粒加えるだけで手軽に取り入れられます。
なつめ(大棗)——気と血を補う代表的な薬膳食材。漢方薬にも多用される生薬でもあります。
(→男性妊活の食事について詳しくは「【男性妊活の食べ物】精子の質を高める食事と漢方の食養生」をご覧ください)



「妊活が終わってAGA薬を再開したら、漢方は続けても大丈夫?」
この質問もよくいただきます。
基本的に、AGA治療薬と漢方薬の併用は可能なケースが多いです。漢方薬はからだ全体のバランスを整えるものであり、AGA薬のように特定のホルモンに直接作用するものとは作用の仕組みが異なります。
ただし、体質や服用中の薬の種類によっては注意が必要な場合もあります。併用を検討される際は、AGA治療の主治医と漢方薬剤師の双方にご相談いただくのが安心です。
当薬局では、他の薬との飲み合わせも考慮した上で漢方薬をご提案していますので、現在服用中の薬がある方も遠慮なくお伝えください。
AGA薬を飲んでいる男性が妊活を始めるとき、多くの方が「髪をとるか、赤ちゃんをとるか」の二者択一だと感じてしまいます。
でも、漢方の視点で見れば、この二つは対立するものではありません。
腎を養えば、精子をつくる力が高まり、同時に髪の土台も整う。血を充実させれば、精巣にも頭皮にも栄養が行き届く。からだの土台を整えることは、髪にとっても精子にとっても、同じ方向を向いた取り組みなのです。
精子が成熟するまでには約74日。今日から体質改善を始めれば、2〜3ヶ月後には変化が見えてくる可能性があります。
「AGA薬を休薬すべきか迷っている」「休薬中に何かできることはないか」「髪も精子も心配で、どこに相談すればいいかわからない」
そんな方は、ぜひ一度ご相談ください。
灯心堂漢方薬局では、男性妊活のご相談に力を入れており、AGA治療中の方の漢方相談にも対応しています。現在服用中の薬を伺った上で、体質に合った漢方薬と養生法をご提案します。
LINE相談も受付中です。まずはお気軽にメッセージをお送りください。