男性不妊と漢方薬|体質別に考える原因と改善のアプローチ

男性不妊ー漢方

 この記事を書いた人

・灯心堂漢方薬局 薬局長
・薬剤師歴10年以上

店舗のLINE登録者数2000人以上
・漢方を通して、皆様が少しでも健康に過ごせる手助けをできればと思います。>>プロフィール記事はこちら

西山光です

不妊の原因の約50%は、男性側にあるといわれています。

「まさか自分が原因だったとは」「検査の結果を見てショックを受けた」——当薬局でも、そうおっしゃる方は少なくありません。

男性不妊の多くは原因不明とされ、西洋医学では決定的な治療法がないケースもあります。そんなとき、漢方では「精子をつくる力そのものを底上げする」という発想で、体質を根本から見直していきます。

この記事では、男性不妊の基礎知識から、漢方での考え方、体質別の改善アプローチまで、漢方薬剤師の視点でわかりやすく解説します。

目次

男性不妊とは?原因の9割は「精子をつくる力」の問題

男性不妊とは、男性側の要因によって妊娠が成立しにくい状態のことです。

原因は大きく3つに分けられます。

造精機能障害(全体の約80〜90%)

精子をつくる機能に問題がある状態で、男性不妊の原因の大半を占めます。精子の数が少ない「乏精子症」、精子の動きが悪い「精子無力症」、精液中に精子が見つからない「無精子症」、正常な形の精子が少ない「奇形精子症」などが含まれます。

精索静脈瘤のように原因が特定できる場合もありますが、半数以上は原因不明(特発性)とされています。

精路通過障害

精子はつくられているものの、通り道が塞がって外に出られない状態です。閉塞性無精子症や精巣上体炎、逆行性射精などが該当します。

性機能障害

勃起障害(ED)や射精障害など、性行為自体に困難がある場合です。ストレスや疲労が背景にあるケースも多くみられます。

精液検査の基準値(WHO 2021年版)

男性不妊の最初のステップは精液検査です。WHOが定めた基準値は以下の通りです。

項目基準値基準値未満の場合
精液量1.4mL以上
総精子数3900万以上乏精子症
精子濃度1600万/mL以上乏精子症
運動率42%以上精子無力症
前進運動率30%以上精子無力症
正常形態率4%以上奇形精子症

この基準値はあくまで最低ラインです。実際のクリニックではもう少し厳しい基準を設けているところが多い印象です。

「基準値を満たしているのになかなか授からない」という場合は、数値には表れにくい精子の質(DNA損傷や酸化ストレス)が関わっている可能性もあり、漢方での体質改善が力を発揮する領域でもあります。

漢方から見た男性不妊——「腎」と「瘀血」がカギ

漢方 腎

漢方では、男性不妊を単なる精子の数値の問題としてではなく、「からだ全体のバランスの乱れ」として捉えます。

特に深く関わるのが「腎(じん)」と「瘀血(おけつ)」の2つの概念です。

腎——生殖力の源

漢方でいう「腎」は、西洋医学の腎臓とは異なります。生命エネルギーの貯蔵庫であり、人の成長・老化・生殖をつかさどる臓腑です。

腎に蓄えられたエネルギーを「腎精(じんせい)」といい、精子をつくる力の根本と考えます。加齢や過労、生活の乱れによって腎精が消耗すると、精子の数・運動率・質が低下しやすくなります。

腎はさらに「腎陽」と「腎陰」の2つの側面に分かれます。

腎陽——温める力、動かす力です。精子を元気に活動させるエネルギーの源。腎陽が不足すると、精子の運動率が下がったり、冷えやすい体質になります。

腎陰——潤す力、栄養を与える力です。精液の量や精子の形態に関わります。腎陰が不足すると、精液量が減ったり、ほてりやのぼせを感じやすくなります。

瘀血——血のめぐりの滞り

「瘀血」とは、血液の流れが悪くなっている状態です。

精巣への血流が悪くなれば、酸素や栄養が十分に届かず、精子をつくる機能が低下します。精索静脈瘤はまさに瘀血の典型といえます。

ストレスの多い方、デスクワークで長時間座りっぱなしの方にも、瘀血体質は多くみられます。

あなたはどのタイプ?体質別セルフチェック

漢方では一人ひとりの体質(「証」)に合わせて漢方薬を選びます。男性不妊に関わる主な体質を4つご紹介します。ご自身に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。

タイプ1:腎陽虚(じんようきょ)——冷えて元気が出ない

腎の「温める力」が弱っているタイプです。

  • 精子の運動率が低いと指摘された
  • 手足や腰が冷えやすい
  • 疲れやすく、朝起きるのがつらい
  • 軟便や下痢になりやすい
  • 性欲が低下している

このタイプには、腎陽を補い、からだを温める漢方薬を用います。

タイプ2:腎陰虚(じんいんきょ)——潤いが足りない

腎の「潤す力」が不足しているタイプです。

  • 精液の量が少ない、奇形が多い
  • 手のひらや足の裏がほてる
  • 寝汗をかきやすい
  • 口や喉が渇きやすい
  • 舌が赤っぽい

このタイプには、腎陰を補い、潤いを与える漢方薬を用います。

タイプ3:腎陰陽両虚(じんいんようりょうきょ)——両方が不足

腎陽と腎陰のどちらも弱っているタイプです。加齢とともにこのタイプは増えてきます。

  • 精子の数も運動率もよくない
  • 冷えとほてりの両方がある
  • 疲れやすいのに寝つきが悪い
  • 性機能の低下を感じる

この場合は、腎の陰と陽の両方をバランスよく補っていきます。

タイプ4:瘀血(おけつ)——血のめぐりが悪い

血液循環が停滞しているタイプです。

  • 精索静脈瘤がある、または指摘された
  • 下腹部に張りや痛みを感じることがある
  • 肩こり・頭痛が慢性的にある
  • 舌の色が暗い、紫っぽい
  • ストレスが多い生活をしている

このタイプには、血のめぐりをよくする漢方薬を用います。

※実際の処方は、ひとつの体質だけでなく複数が重なっている場合も多いため、専門家による判断が大切です。

漢方で精子の質は改善できるのか

漢方薬による男性不妊へのアプローチは、即効性のある西洋薬とは異なり、からだの土台を整えることで精子をつくる力そのものを底上げする考え方です。

精子が完成するまでには約74日間かかるといわれています。そのため、漢方薬の効果を実感するには最低でも3ヶ月程度の継続が目安になります。

当薬局では、精液検査の数値だけでなく、冷えや疲労感、ストレスの度合い、食生活など生活全体を伺いながら、130種類以上の生薬の中からお一人おひとりに合った漢方薬をご提案しています。

病院での不妊治療と漢方は対立するものではありません。病院で体外受精や顕微授精を受けながら、漢方で体質を整えていく併用アプローチも可能です。

まずはできることから——日常の養生も大切です

漢方薬だけでなく、日々の生活習慣を見直すことも男性妊活では重要です。

からだを冷やさない食事を心がけること、適度な運動で血のめぐりをよくすること、十分な睡眠をとること、過度な飲酒を控えること——こうした養生のひとつひとつが、精子の質に影響します。

もっと詳しく知りたい方へ

[【男性妊活の食べ物】精子の質を高める食事と漢方の食養生]

[妊活中の男性はお酒をやめるべき?アルコールと精子の関係を漢方的に解説]

[男性妊活に必要な栄養素 ― 亜鉛・葉酸を漢方生薬との違いから解説]

[【妊活で男性がやるべきこと】漢方薬剤師が教える7つの習慣]

男性不妊でお悩みの方へ

「精液検査の結果が気になる」「何から始めていいかわからない」「妻に申し訳ない気持ちがある」——そんなお気持ちを抱えている方は、ぜひ一度ご相談ください。

灯心堂漢方薬局では、男性妊活のご相談をLINEでも承っています。お気軽にお問い合わせください。料金の目安は2万~になります。

目次