この記事を書いた人
・灯心堂漢方薬局 薬局長
・薬剤師歴10年以上
・店舗のLINE登録者数1000人以上
・漢方を通して、皆様が少しでも健康に過ごせる手助けをできればと思います。>>プロフィール記事はこちら
西山光です


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「妊活中、男性は何を食べたらいいの?」
当薬局でも、奥様と一緒に来られた男性からよく聞かれる質問です。
インターネットで調べると「亜鉛を摂りましょう」「葉酸が大事」という情報はたくさん出てきます。もちろんそれも大切ですが、漢方・薬膳の視点で見ると、もう少し深い「食べ方の知恵」があります。
この記事では、西洋栄養学の知見と東洋医学の食養生を組み合わせて、男性の精子の質を高めるための食事について詳しくお伝えします。
精子が精巣でつくられ、成熟するまでには約74日間かかります。つまり、今日の食事が約2〜3ヶ月後の精子の質に影響するということです。
「検査の数値が悪かった」と落ち込む方もいらっしゃいますが、裏を返せば、これから食生活を整えれば、次の検査では変化が見られる可能性があるということでもあります。
精子は日々つくり直されています。だからこそ、毎日の食事を見直す意味があるのです。



漢方では、精子をつくる力は「腎(じん)」という臓腑のはたらきに支えられていると考えます。腎は生殖力・生命力の源であり、腎のエネルギー(腎精)が充実していれば、精子の数・運動率・質も安定しやすくなります。
(→腎の詳しい解説は「男性不妊と漢方薬|体質別に考える原因と改善のアプローチ」をご覧ください)



薬膳では、日々の食事で腎を養い、気血のめぐりを整えることを重視します。特別な薬膳料理をつくる必要はありません。普段のメニューに「腎を補う食材」を意識して取り入れるだけで十分です。



漢方で「腎を養う」とされる食材は、色が黒いもの、海のもの、種子類に多くみられます。
薬膳では「黒は腎に入る」と考えます。黒い食材には腎精を補う力があるとされ、日本の伝統的な食卓にも馴染みのあるものばかりです。ご飯に黒ごまをふりかける、味噌汁にひじきを入れるなど、少しの工夫で取り入れられます。
漢方では山芋を「山薬(さんやく)」と呼び、腎を補う代表的な薬膳食材として重宝されています。消化も助けるため、胃腸が弱い方にもおすすめです。とろろご飯や山かけそばなど、手軽に食べられるのも魅力です。
薬膳では腎陽(からだを温める力)を補うとされ、冷え体質の男性に特に適しています。おやつ代わりに5〜6粒をそのまま食べるだけでも十分です。
海の食材は腎を補うものが多く、なかでもえびは腎陽を温め、牡蠣は腎陰を潤すとされています。牡蠣は亜鉛の含有量も非常に豊富で、西洋栄養学の観点からも男性妊活の代表食材です。
腎と肝を養い、精力を補うとされる薬膳の定番食材です。そのまま食べてもよいですし、お茶やスープに数粒加えるだけでも取り入れやすい食材です。
精子の質には、精巣への血流も重要です。血のめぐりが悪い瘀血(おけつ)体質の方は、血行を促す食材も意識しましょう。
DHA・EPAなどのオメガ3脂肪酸を豊富に含み、血液をサラサラにする作用があります。精子の細胞膜にはDHAが多く含まれているため、精子の質の維持にも役立つとされています。週に2〜3回は魚をメインにする日をつくるのがおすすめです。
薬膳では「気のめぐり」をよくする食材とされています。にらは腎を温める作用もあるとされ、「起陽草(きようそう)」という別名があるほどです。
からだの芯から温めて、冷えによる血行不良を改善します。特に冷え体質(腎陽虚)の方は、料理や飲み物に積極的に取り入れてください。
漢方の食養生と合わせて、以下の栄養素も意識するとより効果的です。
亜鉛——精子の生成に不可欠なミネラルです。牡蠣、牛肉(赤身)、豚レバー、納豆、かぼちゃの種などに多く含まれます。成人男性の推奨摂取量は1日12mgです。
葉酸——精子のDNA合成に関わります。ほうれん草、ブロッコリー、枝豆、アスパラガスなどの緑黄色野菜に豊富です。
ビタミンE——抗酸化作用で精子を酸化ストレスから守ります。アーモンド、かぼちゃ、アボカド、うなぎなどに含まれます。
コエンザイムQ10——精子のエネルギー産生を助けます。いわし、牛肉、大豆、ごまなどに含まれます。



「何を食べるか」と同じくらい大切なのが「何を控えるか」です。
漢方では、冷えは腎の大敵です。冷たいビール、アイス、冷えた飲み物を日常的に摂っていると、腎陽(からだを温める力)が消耗し、精子の運動率にも影響すると考えます。飲み物は常温か温かいものを選ぶ習慣をつけましょう。
トランス脂肪酸や食品添加物が多く含まれ、精子の質に悪影響を及ぼす可能性が報告されています。忙しいときに頼りがちですが、頻度を減らす意識が大切です。
漢方では、お酒の飲みすぎは体内に「湿熱(しつねつ)」を生むと考えます。湿熱は下半身にたまりやすく、精巣の環境を悪化させる原因になりえます。完全にやめる必要はありませんが、量と頻度を見直すことをおすすめします。
(→お酒と妊活の関係について詳しくは「[妊活中の男性はお酒をやめるべき?アルコールと精子の関係を漢方的に解説]」をご覧ください)



コーヒーは1日2〜3杯程度なら問題ないとされていますが、エナジードリンクなどで大量に摂取するのは控えましょう。
漢方では、こうした食事は体内に「痰湿(たんしつ)」を生みやすいとされます。痰湿は血のめぐりを妨げ、瘀血体質を悪化させる要因になります。
特別な料理をつくる必要はありません。普段の食事に少し加えるだけで、薬膳の力を取り入れることができます。
いつものトーストにすりごまとくるみを散らすだけ。バターやはちみつと合わせると食べやすくなります。飲み物は冷たいジュースではなく、温かいほうじ茶やクコの実入りの白湯にするとさらに良いでしょう。
外食でも選びやすいメニューです。山芋は腎を補う代表食材。温かいそばやうどんと組み合わせれば、からだを冷やしすぎずに食べられます。
鮭(オメガ3脂肪酸)+黒きくらげ(補腎)を具にした味噌汁に、にら(温腎)の卵焼きを添えれば、立派な薬膳メニューに。にらは卵との相性が良く、手軽につくれます。
ナッツ類とクコの実を小袋に入れておけば、仕事中の間食にもなります。コンビニのスナック菓子をこれに置き換えるだけでも、腎を養う力になります。



食事の改善で大切なのは、100点を目指すことではなく、続けられることです。
「毎食すべて薬膳にしなければ」と気負うとストレスになり、かえって逆効果です。漢方では、ストレスも腎を消耗させる要因のひとつと考えます。
まずは「黒い食材を1品足す」「冷たい飲み物を減らす」「週に2回は魚を食べる」——このくらいの小さな一歩から始めてみてください。
精子は約74日で入れ替わります。今日からの食生活が、2〜3ヶ月後のあなたの精子をつくっています。
食養生はあくまで日々の土台づくりです。精液検査で数値が大きく基準を下回っている場合や、体質的な偏りが強い場合は、食事だけでは十分に改善しにくいこともあります。
そうしたときに力を発揮するのが、体質に合わせた漢方薬です。漢方薬は食養生と同じ理論の延長線上にあり、腎を補い、気血のめぐりを整えることで、精子をつくる力をより本格的にサポートします。
(→体質別の漢方アプローチについては「男性不妊と漢方薬|体質別に考える原因と改善のアプローチ」で詳しく解説しています)



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