機能性ディスペプシアで六君子湯・アコファイドなどが効かない|漢方薬剤師が考える「次の一手」

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西山光です

「機能性ディスペプシアと診断されて、六君子湯やアコファイドなど色々飲んできたけど、あまり効いている気がしない」——このお悩みで当薬局にご相談に来られる方は、とても多くいらっしゃいます。

先にお伝えしたいのは、アコファイドなどのお薬が効かないのではなく、漢方薬局の性質上、お薬が効かない方が他にできることはないかと漢方相談に来られる方が多いということです。お薬が効いた方はそもそも相談に来られません。

重要なのは、六君子湯やアコファイドなどが効かないからといって、打つ手がなくなったわけではないということです。漢方の考え方では、「効かない」ことにも理由があります。多くの場合、それは体質の見立てと、選んだものが噛み合っていないだけです。

この記事では、六君子湯・アコファイドが効きにくいことがある理由を整理したうえで、「効かない」と感じたとき体質から見直すための3つの視点を、漢方薬剤師の立場から解説します。


目次

なぜ六君子湯が効かないことがあるのか

六君子湯(りっくんしとう)は、胃腸の働きが弱っている状態——漢方でいう「気虚(脾虚)」タイプに向く漢方薬です。

食欲がない、食後に胃がもたれる、少し食べただけでいっぱいになる、疲れやすい……こうした「胃腸のパワー不足」が中心の方には、六君子湯がよく合います。

裏を返すと、症状の中心が“パワー不足”ではない場合、六君子湯だけでは物足りないことがあります。たとえば、

  • ストレスや緊張と胃の調子が連動している(気の巡りの問題=気滞・肝鬱)
  • みぞおちがつかえて、げっぷや胃の熱っぽさがある(熱がこもるタイプ)
  • 胸やけ・のどのつかえ・不安が強い(気が上に上がるタイプ)

こうしたタイプは、胃腸を補う六君子湯とは見立ての方向が違うため、効果を実感しにくいことがあります。

「六君子湯が効かない」のではなく、「この体質には六君子湯以外の切り口が要る」と考えるのが漢方の発想です。

なぜアコファイドが効かないと感じるのか

アコファイド(アコチアミド)は、胃の動きを助けて、食後のもたれや早期飽満感をやわらげるタイプの薬です。そのため、食後のもたれ・すぐ満腹になるといった「食後愁訴型」の症状には向いています。

一方で、みぞおちの痛みが中心の方や、ストレス・自律神経の乱れが症状の主な背景になっている方では、胃の動きを助けるだけでは実感が出にくいことがあります。

「胃そのもの」よりも「胃を動かしている自律神経・気の巡り」の側に原因があると、そこに働きかけないかぎり症状が残りやすいためです。

これも「アコファイドがダメ」という話ではなく、症状のタイプと薬の得意分野がずれているというだけのことが多いのです。

六君子湯とアコファイドは併用してよい?

「六君子湯とアコファイドを一緒に飲んでもいいの?」というご質問もよくいただきます。

実際に、機能性ディスペプシアの治療では、胃の動きを助ける薬と漢方薬が併用されることはあります。両方の組み合わせに関心が持たれ、研究でも検討されています。

ただし、併用の可否や量は、体質・体調・ほかに飲んでいる薬によって変わります。自己判断で組み合わせたり中断したりせず、必ず処方元の医師、または薬剤師にご相談ください。

そのうえで、「今の組み合わせでも効いていない」と感じる場合は、次の章の“見立てを変える”という視点が役立ちます。

「効かない」ときに漢方で見直す3つの視点

六君子湯・アコファイドで実感がなかったとき、漢方では別の見立てから処方を選び直します。代表的な3つの視点です。

視点1:気の巡り(肝鬱気滞)を疑う

ストレスや緊張と胃の調子が連動している方は、胃腸のパワー不足よりも「気の巡りの滞り(肝鬱気滞)」が主役のことが多いです。

イライラ・不安・お腹の張り・ため息が多い、といったサインがあれば、このタイプが疑われます。

このタイプには、気の巡りを整える柴胡(さいこ)を含む処方や、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)の系統が候補になります。

半夏厚朴湯は、のどや胸のつかえ感・不安を伴う胃の不調に用いられ、「緊張すると胃にくる」方と相性がよい処方です。

視点2:胃の熱・つかえを疑う

みぞおちがつかえて重苦しい、げっぷが多い、胃に熱がこもったような感じ——というタイプには、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)が候補になります。

冷えて胃が動かないタイプではなく、熱がこもって胃が重いタイプに向くと考えられており、下痢や軟便、飲みすぎ・食べすぎ後の胃の不調を伴う方にも用いられます。

視点3:六君子湯が“惜しい”人の一手

見立ての方向は合っていて、あと一歩実感が足りない——という場合は、六君子湯に香りがよく気を巡らせる生薬を足した香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)が選択肢になります。

六君子湯の「胃腸を補う」働きに「気を巡らせる」働きが加わるため、もたれと同時にお腹の張り・ストレスもある方に向くことがあります。

「六君子湯で少し楽になった気もするが物足りない」方は、試す価値があります。

六君子湯・半夏厚朴湯・茯苓飲の違い

どれも胃の不調に使われますが、得意なタイプが違います。ざっくりした使い分けの目安です。

漢方薬向くタイプキーワード
六君子湯胃腸が弱い・食後もたれ・食欲不振(気虚・脾虚)補う
半夏厚朴湯のど・胸のつかえ・不安・緊張で胃にくる(気滞)巡らせる・下ろす
茯苓飲(合半夏厚朴湯)胸やけ・呑酸に加えて不安も強い水はけ+気を下ろす
半夏瀉心湯みぞおちのつかえ・げっぷ・胃の熱感熱とつかえを取る

「六君子湯で補ってもダメ」なら、方向を変えて巡らせる・下ろす・熱を取るを検討します。

どれが合うかは体質の総合判断になるため、迷う場合はご相談ください。

実際のご相談例

当薬局には、アコファイドなどを処方されていたが効かなかったという方が実際に多くご相談に来られています。たとえば、長年の吐き気ともたれで病院の薬が合わず、不安や気持ちの落ち込みも強かった方には、胃を補う方向ではなく気を巡らせる漢方薬をお選びし、経過を見ていったケースがあります。

くわしい相談例は、こちらの記事の症例をご覧ください↓。

「効かない」と感じたら、体質から見直しを

六君子湯・アコファイドが効かないのは、あなたの胃が特別だからでも、治しようがないからでもありません。

多くは、症状のタイプと、選んだものの得意分野がずれているだけです。

気の巡り・胃の熱・パワー不足——どこが主役かを見立て直すことで、合う一手が見つかることがあります。

灯心堂漢方薬局では、これまでの薬の経過や体質を丁寧にうかがったうえで、あなたに合った漢方をご提案しています。

「病院の薬では変わらなかった」という方こそ、一度ご相談ください。

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