この記事を書いた人
・灯心堂漢方薬局 薬局長
・薬剤師歴10年以上
・店舗のLINE登録者数1000人以上
・漢方を通して、皆様が少しでも健康に過ごせる手助けをできればと思います。>>プロフィール記事はこちら
西山光です


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「妊活を始めたけど、お酒はやめなきゃダメですか?」
当薬局で男性から最も多く寄せられる質問のひとつです。
結論から言えば、完全にやめる必要はありません。ただし、「飲み方」と「量」は見直す価値があります。
この記事では、アルコールが精子に与える影響を西洋医学と漢方の両面から解説し、サウナ・喫煙・ストレス・睡眠など男性妊活に関わる生活習慣についても、漢方薬剤師の視点でまとめました。



アルコールと精子の関係については、さまざまな研究が行われています。
複数の研究を統合した分析では、飲酒習慣のある男性は飲まない男性に比べて、精液量や正常形態率がやや低い傾向が報告されています。ただし、「たまに飲む程度」と「全く飲まない」では統計的に大きな差は見られなかったという報告もあります。
つまり、時々の飲酒はそれほど心配する必要はないが、毎日飲む習慣がある場合は注意が必要ということです。
もうひとつ知っておきたいのは、男性の精巣にはアルコールを分解する酵素があるということです。飲酒後、アルコールが分解される過程で生じる「アセトアルデヒド」という有害物質が精巣内に蓄積し、精子をつくる力を低下させる可能性があります。



漢方では、お酒の飲みすぎは体内に「湿熱(しつねつ)」を生むと考えます。
「湿」とは、体内にたまる余分な水分や老廃物のこと。「熱」とは、炎症や充血のような状態を指します。湿と熱が合わさった「湿熱」は、下半身にたまりやすい性質があり、精巣の環境を悪化させる原因になりえます。
冷たいビールを大量に飲むと、この「湿」がさらにたまりやすくなります。漢方の観点では、冷たいアルコールは二重の負担——湿熱の発生と、冷えによる消化機能(脾)の低下——を招くため、特に注意が必要です。
また、お酒は漢方でいう「肝」にも負担をかけます。肝は気のめぐりを調節する臓腑であり、肝に負担がかかると気の流れが滞り(気滞)、ストレスを感じやすくなったり、ホルモンバランスに影響が出ることがあります。
医学的に「安全な量」を断定することは難しいのですが、厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、純アルコール量で1日20g未満が適量の目安とされています。
具体的には、ビール中瓶1本(500mL)、日本酒1合(180mL)、ワイングラス2杯(200mL)程度です。
漢方薬剤師としておすすめしたいのは、以下の3つのルールです。
毎日飲む習慣が精子への影響が大きいとされているため、「飲む日」と「飲まない日」のメリハリをつけることが最も効果的です。
漢方では冷えは腎の大敵です。どうしても飲みたいときは、常温のワインや熱燗、お湯割りなど、からだを冷やしにくいお酒を選びましょう。
飲むときの食事を工夫するのも薬膳の知恵です。枝豆(腎を補う大豆)、焼き牡蠣(亜鉛+腎陰を養う)、くるみ(腎陽を温める)など、妊活にプラスになるおつまみを選ぶだけでも違います。
(→食材について詳しくは「【男性妊活の食べ物】精子の質を高める食事と漢方の食養生」をご覧ください)






「サウナ好きなんですが、妊活中はやめたほうがいいですか?」
これも当薬局でよくいただく質問です。
精巣は体温より2〜3℃低い温度で最もよく機能するようにできています。そのため、精巣を長時間温めすぎると、精子をつくる力が一時的に低下することがわかっています。
サウナや長時間の熱い湯船、膝の上にノートパソコンを長時間置く習慣、きつめの下着なども、精巣の温度を上げる原因になります。
漢方の視点でも、過度な熱は腎陰(潤す力)を消耗させると考えます。腎陰が不足すると、精液量の減少やほてり・寝汗といった症状が出やすくなります。
完全にやめる必要はありませんが、妊活中はサウナの頻度を減らす(週1〜2回程度まで)、お風呂はぬるめ(38〜40℃)にして長時間つからないといった工夫をおすすめします。



喫煙が精子に悪影響を与えることは、多くの研究で明らかになっています。喫煙者は非喫煙者に比べて精子の数が10〜17%減少し、運動率の低下や形態異常の増加も報告されています。
漢方の視点でも、タバコの煙は「熱毒(ねつどく)」として体内に悪影響を及ぼすと考えます。肺を傷つけるだけでなく、血の流れを悪くして瘀血(おけつ)を悪化させます。瘀血は精巣への血流を妨げ、精子の質を低下させる大きな要因です。
妊活を本気で考えるなら、喫煙は最優先でやめるべき習慣です。禁煙が難しい場合は、まず本数を減らすことから始めましょう。受動喫煙もパートナーへの影響がありますので、配慮が必要です。



「仕事が忙しくて、ストレスがたまっている」——妊活中の男性に非常に多い状態です。
ストレスが続くと、自律神経やホルモンバランスが乱れ、精子の数や運動率が低下することがわかっています。
漢方では、この状態を「気滞(きたい)」あるいは「肝鬱(かんうつ)」と呼びます。気の流れが滞ると、イライラ、不眠、肩こり、食欲の変動など、さまざまな不調が連鎖的に起こります。そして気滞が長引くと、血の流れも滞って「瘀血」に発展し、精巣機能にも影響してきます。
ストレス対策として、漢方では以下を心がけることをすすめています。
適度な運動は気のめぐりを促します。激しい運動よりも、ウォーキングやストレッチなど、心地よいと感じる程度で十分です。
漢方では「芳香は気をめぐらせる」と考えます。柑橘系の香りやミント、ジャスミンティーなどは気持ちのリフレッシュに役立ちます。
妊活一色の生活は、かえってストレスの原因になります。夫婦でリラックスできる時間を意識的につくることも、立派な妊活です。



漢方では、腎精(生命エネルギー)は夜の睡眠中に回復すると考えます。睡眠不足が続くと腎精が消耗し、精子の質にも影響が出やすくなります。
実際に、睡眠時間が6時間未満の男性は、7〜8時間の男性に比べて精子の質が低い傾向にあるという報告もあります。
特に避けたいのは、深夜のスマートフォンやパソコンの使用です。ブルーライトは睡眠の質を下げるだけでなく、漢方的には「目を使いすぎると肝血を消耗する」と考えます。肝血の不足は腎にも影響し、精子の状態に跳ね返ってきます。
理想は23時までに就寝し、7〜8時間の睡眠を確保すること。難しい場合でも、寝る前の1時間はスマホを見ない習慣をつけるだけでも、睡眠の質は変わります。
ここまでアルコール、サウナ、喫煙、ストレス、睡眠と、さまざまな生活習慣について解説してきました。
「全部やらなきゃ」と思うと、それ自体がストレスになってしまいます。漢方では、こうした無理から生じる気の乱れも体質に悪影響を与えると考えます。
大切なのは、すべてを一度に変えることではなく、自分にとって取り組みやすいものからひとつずつ始めることです。
たとえば今日からできること——
こうした小さな変化の積み重ねが、2〜3ヶ月後の精子に反映されます。精子は約74日で入れ替わります。今日始めれば、それだけ早く結果につながります。



生活習慣の見直しだけでは改善が難しい場合、体質に合った漢方薬を併用することで、より効果的に精子の質を高めることができます。
たとえば、お酒をよく飲んでいた方には「湿熱」を取り除く処方を、ストレスが強い方には「気滞」をほぐす処方を、冷えが強い方には「腎陽」を補う処方を——漢方では、一人ひとりの体質と生活背景に合わせたオーダーメイドの対応が可能です。
(→体質別の漢方アプローチについては「男性不妊と漢方薬|体質別に考える原因と改善のアプローチ」で詳しく解説しています)



「禁酒すべきか迷っている」「自分の生活習慣のどこを改善すればいいかわからない」——そんな方は、まずはお気軽にご相談ください。
灯心堂漢方薬局では、生活習慣のアドバイスから体質に合わせた漢方薬のご提案まで、トータルでサポートしています。LINE相談も受付中です。