【使いわけ】抑肝散と抑肝散加陳皮半夏と抑肝散加芍薬黄連の違いを徹底解説

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西山光です
質問

・抑肝散って3種類もあるの?
・どう使い分けるの?

みなさん、抑肝散は3種類あることをご存じでしょうか?このブログを読むことで3種類の抑肝散を使い分けられるようになります。

3種類の抑肝散と言うのは、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、抑肝散加芍薬黄連です。

抑肝散をベースに生薬が加味されたものがほかの2種類です。

・抑肝散加陳皮半夏はやや胃腸が弱い方向け
・抑肝散加芍薬黄連は、抑肝散よりも気の高ぶりが強い方向け
・抑肝散は上のどちらでもない方向け

抑肝散に生薬が加わることで、なぜ違いがでてくるのか解説します。

 この記事を読んでわかること
・3種類の抑肝散の違い
・生薬の違い
・それぞれの使い分け

目次

効能効果について

効能効果の違いから説明していきます。効能効果は「薬局製剤」の添付文書から引用しています。効能効果はメーカーによっても異なるので、服用する際はパッケージのご確認をお願いいたします。

抑肝散の効能効果

体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、血の道症

抑肝散の効能効果(薬局製剤)

加味されていない抑肝散をベースに比較していきます。

抑肝散加陳皮半夏の効能効果

体力中等度をめやすとして、やや消化器が弱く、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、更年期障害、血の道症、歯ぎしり

抑肝散加陳皮半夏の効能効果(薬局製剤)

抑肝散加陳皮半夏は、抑肝散と比べ、「やや消化器が弱く」という文字が追加されています。

抑肝散加陳皮半夏の方が胃腸の弱い方にも適していることがわかります。

抑肝散加芍薬黄連の効能効果

体力中等度以上をめやすとして、神経のたかぶりが強く、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、血の道症

抑肝散加芍薬黄連の効能効果(薬局製剤)

抑肝散加芍薬黄連は、抑肝散と比べ、神経の高ぶり「が強く」と文字が追加されています。

・抑肝散→神経がたかぶり
・抑肝散加芍薬黄連→神経のたかぶりが強く

効能効果の違い

抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、抑肝散加芍薬黄連とでは、諸症の「神経症」「不眠症」「夜泣き」「小児疳症」「歯ぎしり」「更年期障害」「血の道症」はすべて同じ記載がされており、ここに違いはありません。

体質の部分の「体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるもの」の部分に違いがあります。

抑肝散:「体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるもの」
抑肝散加陳皮半夏:「体力中等度をめやすとして、やや消化器が弱く、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるもの」
抑肝散芍薬黄連:「体力中等度以上をめやすとして、神経のたかぶりが強く、怒りやすい、イライラなどがあるもの」

比較すると、違いがわかってきます。

抑肝散加陳皮半夏は、抑肝散よりもやや消化器が弱い方に適しています。

抑肝散加芍薬黄連は、抑肝散より神経の高ぶりが強い方に適しています。

生薬について

まずは共通する生薬を解説し、その後異なる生薬にて説明します。

共通する生薬

抑肝散に入っている7種類の生薬は抑肝散加陳皮半夏、抑肝散加芍薬黄連に共通しています。

釣藤鈎、柴胡、当帰、川芎、茯苓、白朮、甘草が共通しています。

抑肝散に入っている生薬を働き別にまとめてみました。

・気を巡らせる働き:釣藤鈎・柴胡(・川芎・茯苓)
・血を養う働き:当帰・川芎
・気を補う働き:茯苓・白朮・甘草

抑肝散加陳皮半夏に特徴的な生薬

抑肝散加陳皮半夏は抑肝散に陳皮・半夏が加わった漢方薬です。

陳皮・半夏が加わることで胃腸の働きを助け、やや消化器が弱い方にも使えるようになっています。

抑肝散加陳皮半夏=抑肝散+陳皮・半夏

陳皮

陳皮(ちんぴ)。陳皮はミカンの皮です。胃腸の働きを整えます。

陳皮はミカンの皮のことです。陳皮は理気健脾の胃腸の働きを助けてくれます。

半夏

半夏(はんげ)。カラスビャクシの塊茎。六君子湯などにもつかわれる。

半夏は水湿をめぐらせ、胃腸の働きを助けます。

陳皮・半夏の組み合わせはよく使用され、二陳湯、六君子湯にも入っています。

陳皮・半夏のどちらも胃腸の働きを助けることで、やや胃腸が弱い方でも服用できるようになっています。

抑肝散加芍薬黄連に特徴的な生薬

抑肝散加芍薬黄連は抑肝散に芍薬・黄連が加わった漢方薬です。

芍薬・黄連が加わることで、神経のたかぶりが強い方にも適した構成になっています。

抑肝散加芍薬黄連=抑肝散+芍薬・黄連

芍薬

芍薬(しゃくやく)。シャクヤクの根。芍薬の花は見たことがあるかもしれません。

芍薬は平肝に働き、気のたかぶりを鎮める働きがあります。

黄連

黄連(おうれん)。黄連は強い苦味をもち、熱を冷まします。

黄連は強い苦味をもち、イライラの心の熱を冷まします。

芍薬と黄連が合わさることで、神経のたかぶりを鎮め働きが強化されています。

抑肝散の使い分け

抑肝散加陳皮半夏はやや消化器が弱い方に、抑肝散加芍薬黄連は気の高ぶりが強い方に、どちらでもない方は抑肝散が適しています。

体力中等度で神経がたかぶり、怒りやすい、イライラ方

やや消化器が弱ければ、抑肝散加陳皮半夏がおすすめです。

神経のたかぶりが強いのであれば、抑肝散加芍薬黄連がおすすめです。

胃腸も弱くなく、神経の高ぶりも強いと言うほどでなければ抑肝散になります。

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