この記事を書いた人
・灯心堂漢方薬局 薬局長
・薬剤師歴10年以上
・店舗のLINE登録者数1000人以上
・漢方を通して、皆様が少しでも健康に過ごせる手助けをできればと思います。>>プロフィール記事はこちら
西山光です
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生理血が薄くなってきたと感じたことはありませんか?
生理血が薄くなる原因は一般的には、子宮頸管粘液(子宮頸管中にある粘液)が混入し、色が薄くなったり、エストロゲンレベルが低下したり、ヘモグロビン不足ともいわれたりします。
生理血が薄くなる原因について漢方の目線で考えたいと思います。
ご自身の生理血の色と見比べるとどうでしょうか?
このブログは生理血が薄いことでお悩みの方向けのブログのため、左の薄い色の経血だと思われます。
経血の色が薄くなる要因として、漢方では気虚や血虚の状態が考えられます。
生理血が薄くなる漢方での原因としては、血虚、気虚、脾腎両虚、痰湿の体質が考えられます。
血虚とは血が不足している状態です。
血が不足しているため、経血の色が薄くなってしまいます。
血虚体質の方は、貧血、爪・髪が細くなったり、肌が乾燥しやすくなります。
・淡紅色の生理血
・生理周期の延長
・経血量が少ない
・爪がもろい
・髪が細い
・肌が乾燥しやすい
これらの症状がみられるときは血虚と考えられます。
血虚の状態のときは血を養う漢方薬をつかいます。
血虚からの生理不順であれば四物湯、貧血があるときは十全大補湯がおすすめです。
食べ物としては、色の濃い野菜、たんぱく質がおすすめです。
四物湯 効能効果:「体力虚弱で、冷え症で皮膚が乾燥、色つやの悪い体質で胃腸障害のないものの次の諸症:月経不順、月経異常、更年期障害、血の道症、冷え症、しもやけ、しみ、貧血、産後あるいは流産後の疲労回復」
四物湯(しもつとう)は血を養う代表的な漢方薬です。
当帰・芍薬・川芎・地黄の4つに生薬から構成され、すべて血を養う生薬です。
四物湯が血を養うことで、血虚による生理血の薄い、生理不順、月経異常に効能効果があります。
十全大補湯 効能効果:「体力虚弱なものの次の諸症:病後・術後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血」
十全大補湯は四物湯に、人参などの気を補う漢方薬を足したものです。
十全大補湯は血を養う働きと、気を補う働きが強いです。
血虚による貧血の方に十全大補湯は適しています。
気虚とは、気が不足した状態のことです。
気が不足すると、食事から摂取したものを栄養に変換することができず、血の不足にもつながります。
血虚の症状と、気虚の症状の一番の違いは生理量の違いです。
気虚の場合、気が足りていないため、出血を止める力が弱く、だらだらと出血が続き、経血量も多くなります。
それに対し、血虚の場合は血が不足しているため、経血量が少なくなります。
気虚体質ではしっかり出血を止められず、生理もだらだらと長引く生理になります。
・薄い生理血
・生理量が多い
・生理血がだらだら続く
・疲れやすい
これらにあてはまるときは気虚の恐れがあります。
薄い生理血は気虚でも、血虚でもみられる症状です。
気虚の場合は気の力が弱っている状態のため、血を留める力が弱くなります。
気虚で血を留めることができないため、生理周期が早くなります。
気虚で血を止める力が弱いため、だらだら出血し、生理量が多く、生理で出血する期間が長くなります。
気虚はほかにも疲れやすくなったり、汗をかきやすくなります。
気虚の場合は、漢方では人参などで気をしっかり補う必要があります。
気虚体質の方は、あっさりした甘味の食べ物が気を補う働きがあり、おすすめです。
補中益気湯 効能効果:「体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒」
補中益気湯は気を補う代表的な漢方薬です。
補中益気湯には、人参・黄耆・白朮・茯苓などの気を補う生薬がたくさん入っています。
虚弱体質、疲労倦怠感のある方には補中益気湯が適しています。
脾(消化吸収をつかさどる臓)と腎(生命エネルギー、精をやどす臓)が冷えることで生理血が薄くなりやすくなります。
陽虚というのは、陽気の不足のことです。
陽気とは体を温める気のことです。
つまり陽虚になると、身体が冷えるようになります。
消化吸収が弱いため軟便になりやすく、陽気が不足し、冷えやすいため、冷えの症状が多くみられます。
陽虚という陽気不足の状態であるため、生理血も色が暗く、薄い色になります。
・暗淡でうすい生理血
・生理血に血の塊がある
・生理周期の延長
・手足の冷え
・腰、膝がだるい
・軟便
これらにあてはまるときは脾腎陽虚の恐れがあります。
陽虚という冷えの強い状態のため、生理血は暗い色になります。
陽虚で冷えが強いと、血のめぐりも悪くなり、血の塊が生じます。
陽虚で陽気の不足から手足が冷え、腰・膝がだるくなり、消化吸収も弱くなり、軟便傾向になります。
消化吸収を高める生薬と、脾腎を温める漢方薬をつかいます。
脾と腎を補う生理不順につかう漢方薬に温経湯があります。
脾腎陽虚の体質の場合は、乾姜、仙茅、続断などがおすすめです。
温経湯 効能効果:「体力中等度以下で,手足がほてり,唇がかわくものの次の諸症:月経不順,月経困難,こしけ(おりもの),更年期障害,不眠,神経症,湿疹・皮膚炎,足腰の冷え,しもやけ,手あれ(手の湿疹・皮膚炎)」
温経湯の”経”という字は月経の”経”と同じ字ですね。
温経湯(うんけいとう)は経を温める漢方薬です。
温経湯には人参の気を補う生薬、当帰・芍薬・川芎の血を養う生薬、桂枝・呉茱萸の温める生薬、阿膠の腎を補う生薬が入っています。
気・血・腎を補うことで生理不順に効果を発揮するのが温経湯です。
痰湿(たんしつ)というのは、ヌメリのことです。
漢方において痰湿というのは、水が停滞し、粘性をもったものを表現します。
よく痰湿をヌメリといっています。ヌメリも水が停滞し、粘性をもったものです。
痰というと、喉に絡むものの印象がありますが、漢方では痰が全身に溜まるという考え方です。
漢方では、痰は喉だけでなく、身体のどこにでも溜まるという考え
胃に痰が溜まると下痢に、頭に痰が溜まるとめまい・ふらつきに、関節に溜まると関節痛になります。
原因としては、食事の不摂生や仕事の疲れなどで脾(消化吸収)が損傷すると、体に痰湿をため込みやすくなります。
痰湿というヌメリがなぜ悪いのかというと、ヌメリが気血の流れを邪魔するからです。
ヌメリがあることで、気血が本来流れるべきところへ行けず、様々な不調を来します。
ヌメリの影響を受け、生理血も薄く、ねばねばしたものになります。
・薄く、粘稠な生理血
・生理周期の延長
・粘稠な帯下
・つば、よだれが多い
・身体がおもだるい
これらにあてはまるときは痰湿がたまっている恐れがあります。
痰湿というヌメリがあるため、生理血は粘稠で粘り気のあるものになります。
痰湿をさばき、身体から追い出す漢方薬をつかいます。
食べ物としては、冬瓜、ハトムギ、海藻類がおすすめです。