この記事を書いた人
・灯心堂漢方薬局 薬局長
・薬剤師歴10年以上
・店舗のLINE登録者数1000人以上
・漢方を通して、皆様が少しでも健康に過ごせる手助けをできればと思います。>>プロフィール記事はこちら
西山光です
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・灯心堂漢方薬局 薬局長
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後鼻漏とは粘性のある鼻水がのどを流れ、痰のような違和感に感じる状態のことをいいます。
後鼻漏は病名というよりは症状のことをあらわしているため、後鼻漏症候群の方が表現として近いと思います。
のどの奥に痰が流れる、のどに痰がつまっている、朝起きたときに痰が溜まっているなどの症状があります。
後鼻漏の原因となる疾患としては、副鼻腔炎、慢性鼻炎、上咽頭炎、アレルギー性鼻炎をもっている方が多いですが、とくに原因がないかたもいらっしゃいます。
実は「鼻水がのどの方に流れる」のは正常なことで、日常的にも1L以上の水が鼻腔、副鼻腔からのどへ流れ込んでいます。
通常は水がサラサラしているため後鼻漏の自覚はないのですが、分泌液が粘性をもつようになると、痰のような違和感につながります。
後鼻漏を漢方で考えていくうえで、鼻水・痰の色は重要です。ご相談いただくときは、鼻水・痰の色をおうかがいいたします。
漢方では黄色い鼻水、黄色い痰は熱がこもっていると考えます。
熱によって水が煮詰まっていき、黄色味を帯びてきます。
黄色い鼻水のときは決まって粘っこい鼻水をしていませんか?
透明な鼻水のときはサラサラしていることが多いですが、黄色味を帯びているときは熱によって水が煮詰まっているため、粘性をもった鼻水になると考えられます。
黄色い痰・鼻水がみられるときは、漢方では熱を冷ます漢方薬をつかっていきます。
熱を冷ます漢方薬としては、辛夷清肺湯、荊芥連翹湯、清肺湯があります。
漢方では透明な鼻水・痰がでるときは、冷えていると考えられます。
熱があるときは色がつき、反対に冷えているときは透明になります。
透明な鼻水・痰のときは、比較的サラサラしていると思います。
透明な鼻水・痰のときは、漢方では温めて、乾かす漢方薬をつかっていきます。
温めて、水を乾かす漢方薬には小青竜湯、苓甘姜味辛夏仁湯があります。
このように痰・鼻水の色でも状態を見極める重要な情報になります。
漢方の目線で考えると後鼻漏の原因は、痰湿体質、陰虚体質、脾虚体質が考えられます。痰湿とは水をため込みやすい体質のことで、鼻で水がたまることで後鼻漏になりやすくなります。陰虚体質は身体の潤いが不足している体質のことで、潤いがないことで水が粘りやすくなります。脾虚とは、胃腸が弱っている状態です。胃腸が弱ると、余分な水をため込みやすくなり、後鼻漏になりやすくなります。
痰湿とは、漢方でいう水をため込みやすい体質のことをいいます。
水をため込みやすいため、水の量が多く、鼻の粘膜が浮腫み、後鼻漏になりやすくなります。
痰湿をため込みやすい場合は、痰湿を追い出す漢方薬をつかっていきます。
粘っこい痰湿であれば温胆湯、サラサラ水であれば五苓散などがあります。
陰虚とは潤いが不足している体質のことです。
本来はサラサラとしているはずの鼻水が、陰虚体質にて潤い不足のためにネバネバし、後鼻漏の症状になります。
反対にしっかり身体が潤っていれば、鼻水はサラサラになります。
潤す漢方薬として、滋陰降火湯、清肺湯、竹葉石膏湯などがあります。
脾虚は漢方では消化吸収が落ちている状態のことをいいます。
脾虚があると気が不足し、余分な水を追い出す力が弱くなり、水がたまっていきます。
しっかり脾・気が充実していれば、余分な水を身体から出すことができ、水が溜まりにくくなります。
気を補う漢方薬をつかうことで直接的に後鼻漏に働くわけではありませんが、水はけのいい体質をつくっていくためには気を補うことも重要になります。
漢方では鼻などの呼吸器は肺に属します。
また肺の経絡は胃を出発点にスタートし、胃から肺へ流れていくので、胃の不調は肺の不調にも影響します。
気を補い、痰湿を追いだす働きのある漢方薬に六君子湯があります。
後鼻漏の症状のある方は、もともと副鼻腔炎、慢性鼻炎、アレルギー性鼻炎などをもっている方が多いです。
原因の疾患がわかっている場合は原因疾患を治していくことも重要です。
慢性副鼻腔炎に使用する漢方薬には、辛夷清肺湯、荊芥連翹湯があります。
辛夷清肺湯は辛夷が鼻づまりに特化しています。
鼻づまりもあって、副鼻腔炎であれば辛夷清肺湯がおすすめです。
荊芥連翹湯は炎症を抑えつつ、血のめぐりも改善してくれます。
炎症を抑え、血のめぐりを改善し、体質改善に使用するときは荊芥連翹湯がおすすめです。
慢性鼻炎と慢性副鼻腔炎は西洋医学では異なる病理ですが、漢方では慢性副鼻腔炎と同じく、辛夷清肺湯、荊芥連翹湯をつかいます。
慢性副鼻腔炎も慢性鼻炎も漢方ではどちらも鼻の範囲になります。
後鼻漏につかう漢方薬は症状から考えると、辛夷清肺湯、荊芥連翹湯、清肺湯、滋陰降火湯、小青竜湯などがあります。鼻づまりのあるタイプは辛夷清肺湯、慢性鼻炎・慢性副鼻腔炎のあるタイプは荊芥連翹湯、痰が絡み咳がでる方は清肺湯、痰がねばねばし、流れない方は滋陰降火湯、サラサラした鼻水・痰の方は小青竜湯が適しています。
辛夷清肺湯は後鼻漏を調べているとよく検索にもでてくる漢方薬です。
辛夷清肺湯は鼻通りを改善し、潤す漢方薬が入っています。
辛夷清肺湯は鼻づまりのある方で後鼻漏に悩まれている方におすすめです。
荊芥連翹湯は慢性鼻炎・慢性副鼻腔炎に使用する漢方薬です。
荊芥連翹湯には炎症を抑える生薬と、血のめぐりを改善する生薬から構成されています。
原因となる炎症がこもっている場合は荊芥連翹湯が炎症を抑えてくれます。
また血のめぐりを改善する働きがあるため、鼻の粘膜の働きが低下しているときにも相性がいい漢方薬です。
後鼻漏で慢性鼻炎・慢性副鼻腔炎のある方は荊芥連翹湯がおすすめです。
清肺湯はたんの多くでる咳に使用する漢方薬です。
清肺湯には痰をとり、咳を抑える生薬から構成されています。
後鼻漏の痰を取り去り、一緒に咳も抑えてくれます。
たんがあり、咳もでるときには清肺湯が適しています。
滋陰降火湯は潤いがなく、たんが切れにくい時につかう漢方薬です。
滋陰降火湯には潤す生薬が多く入り、滋陰してくれます。
潤いがなく、ネバネバすることで喉の違和感となります。
滋陰降火湯は潤すことでネバネバからサラサラにし、痰の流れを改善してくれます。
ネバネバして、痰の動きが悪い時には滋陰降火湯が適しています。
小青竜湯は温めて、乾かす漢方薬です。
鼻水や痰でもサラサラした水っぽい場合は、それは冷えています。
小青竜湯は冷えたものを温めて、乾かしてくれます。
サラサラした鼻水・痰のときは小青竜湯が適しています。
後鼻漏で薬を飲んでも効かない、カルボシステインが効かない、などお聞きします。西洋医学は症状から使用する薬を選びますが、漢方薬は症状の原因・体質を考え、そこにアプローチすることができます。後鼻漏の薬が効かなくても、漢方でなら対応できるかもしれません。お気軽にご相談くださいませ。