この記事を書いた人
・灯心堂漢方薬局 薬局長
・薬剤師歴10年以上
・店舗のLINE登録者数1000人以上
・漢方を通して、皆様が少しでも健康に過ごせる手助けをできればと思います。>>プロフィール記事はこちら
西山光です
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・痛みに使う漢方薬は?
・どう使い分けるの?
漢方薬の違いってわかりづらいですよね。
ここでは痛みにつかう漢方薬の違いと使い分けについて説明しています。
このブログを読むことで、ご自身にあったものを選んでいただけたらと思います。
この記事を読んでわかること
・痛みにつかう漢方薬
・漢方薬のつかいわけ
・おすすめの食事、生活習慣
漢方をうまく取り入れて、少しでも痛みに悩まない生活を送れるようになればと思います。
痛みがあることで、身体が私たちに異常を教えてくれています。
神経に刺激があることで痛みとなる侵害受容性疼痛、神経が障害されることで起こる神経障害性疼痛、ストレスから痛みとなる心因性疼痛などがあります。
痛みが伴う疾患は多く、外傷だけでなく、膠原病、感染症、痛風、変形性膝関節症、ヘルニアなど様々です。
漢方での痛みの原因がわかれば、原因に対応した漢方薬を選びやすくなります。
痛みの考え方は共通のことなので、腰痛でも頭痛でも生理痛でも同じ考えを応用することができます。
漢方で痛みを考えるにあたって、2つの言葉があります。
「不通則痛」「不栄則痛」です。
「不通則痛(ふつうそくつう)」とは、邪魔しているものがあることで痛みが生じるという考え方。
「不栄則痛(ふえいそきつう)」とは、組織、筋肉が栄えていないことで痛みが生じるという考え方。
それぞれの意味についてしっかり説明したいと思います。
「不通則痛」は「通じざれば則ち痛む」のことです。気血の流れに滞りがあることで、痛みが生じることを意味します。
気血のめぐりが悪さが痛みに直結します!
「不通則痛」の要因としては、気滞、瘀血、痰飲、風寒邪、風湿邪、風寒湿邪、熱邪などがあります。
邪魔しているものを取り除くことで、痛みは緩和されます。
気の巡りが悪い「気滞」があることで、不通則痛の痛みを引き起こします。
気滞の痛みの特徴
・張ったような痛み
・動くと、痛みが軽減する
・筋肉のこわばる
・筋肉がピクピクする
・緊張やストレスが痛みが悪化する
筋肉のこわばりは気滞と関係していることが多く、神経痛、ヘルニアなども気滞と大きく関係しています。
気滞は空”気”の性質があるため、痛みの部位が移動したり、動くと痛みが緩和されることがあります。
気滞からの痛みには四逆散、逍遙散、抑肝散、釣藤散などをつかいます。
瘀血(おけつ)とは、漢方では血のめぐりの悪さのことをいい、瘀血から不通則痛の痛みを引き起こします。
瘀血の痛みの特徴
・刺すような痛み
・痛む部位はいつも同じところ
・動いても痛みが軽くならない
・慢性的な痛み
気滞の痛みは張ったような痛みに対し、瘀血は刺すような痛みです。
関節痛、腰痛、生理痛などの痛む部位が同じ場合は、瘀血の痛みの可能性があります。
また瘀血の痛みは慢性的な状態になっていることが多く、痛みが数か月、数年間、変化がみられないときは瘀血の恐れがあります。
瘀血からの痛みには疎経活血湯をつかいます。
水飲は漢方では水の停滞のことで、水がたまることで不通則痛の痛みを引き起こします。
水飲からの痛みの特徴
・おもだるい痛み
・締め付けられる痛み
・関節の腫れ
・雨の日に悪化
水飲からの痛みは、水の性質をもっているため、おもだるい痛み、絞めつけられる痛みになります。
また水がたまることで、関節の腫れにもつながります。
雨の日に痛みが悪化するのも、水飲からの痛みのことが多いです。
水飲、痰湿からの痛みには防已黄耆湯、五苓散、二朮湯などをつかいます。
風と湿の性質があわさったものを風湿、それが悪さするときは風湿邪といい、不通則痛の痛みを引き起こします。
風湿邪は関節などの痛みの原因の痛みになりやすいです。
風湿邪による痛みの特徴
・おもだるい痛み
・関節の腫れ
・締め付ける痛み
・関節痛、腰痛などの痛みの原因になりやすい
中国語では、関節リウマチのことを「風湿病」といいます(実際にはリウマチの原因が風湿だけとは限りません)。
風湿邪の痛みの特徴としては、おもだるい痛みと関節の腫れにつながります。
風湿による痛みには麻杏薏甘湯、薏苡仁湯をつかいます。
風と寒の性質をもった不調を風寒邪といい、不通則痛の痛みを引き起こします。
風寒邪の痛みの特徴として、冷えると痛みが悪化するというのがあります。反対に温めると痛みが緩和されます。
風寒邪による痛みの特徴↓
・冷えると痛み
・温めると痛みが緩和される
お風呂に入ると、痛みがマシになる経験がありませんか?
冷たいシップよりも、温かいシップの方が痛みが緩和される経験はありませんか?
そういった場合は風寒邪による痛みの可能性があります。
風寒邪の痛みには桂枝加朮附湯をつかいます。
不通則痛は何かが気血の流れを邪魔することで痛みになることを意味します。
気血の流れを邪魔するものを取り除くことで、痛みは緩和されます。
張ったような痛み→気滞からの痛み
刺すような痛み→瘀血からの痛み
おもだるい痛み→水飲、痰湿
外からのおもだるい痛み→風湿邪
冷えによる痛み→風寒邪
「不栄則痛」は「栄えざればすなわち痛む」ことです。気血が不足し、筋肉や組織が栄えていないことで、痛みが生じることを意味します。
年齢をかさねてくると、筋肉が痩せてくるのは想像できませんか?
漢方では、血虚、腎虚が痛みに直結します。
「不栄則痛」の痛みにはしっかり気血を補うことが対処法になります。
血というと、漢方では血液としての意味合いだけでなく、栄養としての意味合いがあります。
血虚になることで不栄則痛の痛みを引き起こします。
血虚の痛みの特徴
・筋肉が弱ってきている
・痛みの期間が長い
・年々痛みが増してきている
血虚の症状には、疲労、皮膚の乾燥、爪の色が薄い、髪が細い、足がつりやすい、筋肉の衰えなどがあります。
年齢を重ねていくと筋肉が衰え、皮膚が乾燥していくのは血虚といえます。
血虚からの痛みには疎経活血湯などが適しています。
腎虚があることで血虚になりやすく、不栄則痛の痛みを引き起こします。
腎というのは、漢方では精を蔵し、生命エネルギーの源と考えられ、加齢とともに衰えていきます。
腎虚による痛みの特徴
・腰がおもだるい
・膝がだるい
・動くとしんどくなる
・加齢によって痛みが悪化している
腎が衰えると、活力・知力の衰え、耳鳴り、頻尿、夜間尿、冷え、骨がもろくなるなど様々な症状がでてきます。
加齢による腰痛や関節痛、骨がもろくなって痛みが生じるときには腎の衰えが関与しています。
腎虚からの痛みには独活寄生丸が適しています。
不栄則痛とは、筋肉や組織が栄えていないと、痛みになるということ。
血虚からの痛みの場合は筋肉、組織の痩せの状態、腎虚からの場合は加齢によって、腰・ひざが弱ってくる状態です。
血虚も腎虚もどちらも加齢によって生じやすいため、同時に生じることも多いです。
衰え、身体が弱って生じる痛みは不栄則痛であり、対処法として気血を補い、補腎していることとなります。
漢方で痛みの食べ物を考えると、巡らせるものと、補うものに分けて考えます。
張ったような痛みの気滞があるときはジャスミンティーなどの香りのいい食べ物がおすすめです。
刺すような痛みの瘀血があるときはたまねぎなどの適度な辛味のある食べ物が適しています。
関節が腫れているときは水を出すためにハトムギが適しています。
筋肉が弱ってくる血虚であればたんぱく質が重要になります。
加齢による腎虚があれば、山芋、長芋、里芋の粘り気のある食べ物がおすすめです。
腰痛、関節痛、神経痛、頭痛など痛みは様々ありますが、症状にあった漢方薬を説明していきます。
・腰痛、しびれ、血のめぐりが悪い腰痛に疎経活血湯
・冷えて腰痛のあるときは五積散
・加齢による腰痛、慢性的な腰痛には独活寄生丸
\腰痛に使う漢方薬3つ解説しています/
・しびれ、血のめぐりが悪い関節痛
→疎経活血湯
・冷えて、こわばる関節痛
→桂枝加朮附湯
・むくみ、関節の腫れの関節痛
→防已黄耆湯
・関節の腫れ、曲げづらいとき
→薏苡仁湯
・体は冷えているが、局所では熱感があるとき
→桂枝芍薬知母湯
・加齢による痛み、慢性的な関節痛
→独活寄生丸
\関節痛に使う漢方薬6つ解説しています/
・四十肩・五十肩
→二朮湯
・関節を曲げづらいとき
→薏苡仁湯
・血行不良でしびれ、関節痛
→疎経活血湯
・冷えて痛むとき
→桂枝加朮附湯
・冷え性で、患部では熱があるとき
→桂枝芍薬知母湯
・高齢者の痛み、慢性化した痛み
→独活寄生丸
\五十肩に使う漢方薬6つ解説しています/
・しびれ、血のめぐりが悪い神経痛
→疎経活血湯
・冷えて痛む神経痛
→桂枝加朮附湯
・体は冷えているが、局所では熱感があるとき
→桂枝芍薬知母湯
・加齢によるしびれ、慢性に経過したしびれ
→独活寄生丸
・顔面痛、頭痛
→清上蠲痛湯
\神経痛に使う漢方薬5つ解説しています/
65歳、女性。坐骨神経痛、右足の冷えが気になる。肩こり、首凝りから、頭痛も生じる。またお腹にガスがたまり、外にでかけるときにガスが貯まりやすくなるとのこと。ここ10年疲れやすい。またこの2年間、夜中にトイレに起きるようになった。耳鳴りも20年くらいあり、右はセミのような鳴き声で、左はボーとする音が聞こえている。既往歴としては、20年前に子宮筋腫にて、子宮を全摘している。葛根湯や抑肝散を服用しているが、肩こり、坐骨神経痛に変化はないため、当店にご相談になった。
主訴の一番お悩みのところは、坐骨神経痛・肩こりとのこと。
お話をうかがっていると、65歳という年齢からも血の栄養が不足し、同時に血のめぐりが悪くなっていると考えられました。
血を補い、血をめぐらせる漢方薬を10日分お渡しし、様子をみていただきました。
坐骨神経痛などの神経痛に対応した漢方薬を10日服用していただき、痛みは軽減、肩こりも楽になったといっていただけました!
坐骨神経痛に対する漢方薬を服用していただいたが、夜間尿の回数も減り、耳鳴りも少し改善されたとのことです。
痛み、肩こりを改善し、夜間尿、耳鳴りのほかの症状も一緒に改善されたのは漢方薬の面白いところだと感じた症例です。
45歳 女性。寒さによる抹消の冷えでお悩みの方。寒さで手足が強く冷えて、お風呂に入ると脚や肩首にじゅわ〜っと血流が復活しだしたのを感じるような冷え。寝る時は腰〜お尻を温めると調子がいい。寒くなると首・肩が重く怠くなり腕に力が入らなくなります。首と肩がこわばる。こわばりはぎゅっーっと力を入れたまま戻らなくなってしまったようなこわばりです。 脚の浮腫みが、がんの手術してからみられるようになった。浮腫みはウォーキングや鍼灸治療でかなり改善してきているが、12月は仕事が忙しくて室温10度程の環境で立ち仕事が増える為悪化する。既往歴としては、乳がんの部分切除手術を受けているとのこと。
主訴は、寒い時期(ご相談も12月だった)に、手足が強く冷えて、寒さによって首・肩がこわばってしまうため、この方には身体の奥から温める漢方薬をおすすめいたしました。
服用にて、「寒波を乗り越えられるようになった」といっていただけました。
寒さの強いときだけ服用されているとのことです。
60歳 男性。運動不足で足が冷えていて、膝やふくらはぎが痛んだりします。メタボ気味、低体温、やや高血圧、糖尿病予備軍とのこと。
舌の写真などもみせていただき、血のめぐりの悪さが原因と考えられ、血をめぐらせる漢方薬をおすすめさせていただきました。
「のみ始めて3日くらい、膝の痛みがなくなってきたようです、ありがとうございます。」
「先日処方いただいたのを、10日間飲み終わり、膝の痛みがとれました、ありがとうございました。」
といっていただけました。
漢方薬は効果がでるまで時間がかかるイメージですが、お体にあっているときは比較的速やかに効果の実感をいただけることが多いです。
30歳女性。首肩の筋肉が固まって、こわばる。頭も震えてくる。筋肉の緊張、こわばりをなんとかしたい。左足は坐骨神経痛からのしびれがある。既往歴としては、20歳頃から月経困難症 月経開始2日間程や腹痛と貧血症状があった。21歳の時に心身クリニックで自律神経失調症と診断され、1年間メイラックスやセパゾン等処方される。その後、2年間程オーダーメイドの漢方を飲んだり、現在は接骨院にて自律神経の治療を行っている。その後、当薬局にご相談に。
筋肉が過度にこわばってしまう方の相談です。
気の緊張から、筋肉のこわばりに関与していると考えられたため、気の緊張を緩める漢方薬をおすすめしました。
まずは2週間ほど服用していただきました。
「夜のトイレの回数が減った。 筋肉のこわばりが7割程減って肩の力が軽くなった。」といっていただけました。
こちらの方も比較的、速やかに効果がみられた例です。
漢方薬は、不足しているものを補っていくときには時間がかかりますが、積もっているものをめぐらせるときは比較的に効果の実感をいただけることが多いです。
63歳 男性。腕や肩周りの筋肉のこわばり。とくに左の力こぶが張る感じがある。寝付きが悪く、夜中に目が覚めて、朝はだるい。とくに午前中はしんどい。歯をくいしばるくせがあり。頭痛では無いが頭が重い時がある 。締め付けられる感じ月2回ほど。高血圧は健康診断でひっかかるけど、家で測定すると血圧は正常。
筋肉がこわばる方のご相談です。
こちらの方も筋肉のこわばりは、気の緊張が原因だと考えられました。
また水の停滞も強く、水が気血の流れを絞めつけることで、こわばりが悪化している恐れがありました。
気の緊張をほぐし、水のめぐりを改善する漢方薬をおすすめいたしました。
この方は最初の2週間でややこわばりが改善する程度でしたが、2か月ほどし、こわばりが改善し、痛みも減ってきたとのことでした。
きちんと続けていただいたことで、徐々に効果が出てきた例です。
関節痛、神経痛、腰痛、筋肉のこわばりの漢方での原因を説明いたしました。
邪魔しているものがあれば、それを追い出し、不足しているときは補うことが対処法になります。
邪魔しているの種類もたくさんあり、ご自身で判断が難しいことも多いと思うので、気になることがあればいつでもお気軽にご相談くださいませ。