この記事を書いた人
・灯心堂漢方薬局 薬局長
・薬剤師歴10年以上
・店舗のLINE登録者数1000人以上
・漢方を通して、皆様が少しでも健康に過ごせる手助けをできればと思います。>>プロフィール記事はこちら
西山光です
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漢方では五臓という考えがあり、肝・心・脾・肺・腎があります。
西洋医学での臓器と、漢方での五臓は共通している部分もありますが、漢方独自の働きもあります。
ここでは「肺」の漢方での働きについて解説します。
西洋医学では肺”臓”というのに対し、漢方では”肺”といいます。
西洋医学→「肺臓」 漢方→「肺」
西洋医学での肺臓と漢方での肺はやや異なります。
ほかの臓器でもそうですが、西洋医学よりも漢方での臓の方が機能性をもった幅広い意味合いとなっています。
西洋医学では肺は、空気中の酸素をからだに取り入れ、いらなくなった二酸化炭素を外に出す働きをしています。
漢方での「肺」は気の流れ、水の流れを調整しています。
漢方での「肺」の働きは「気」のめぐり、「水」のめぐりに関わっています。
西洋医学でも漢方でも同じように肺は呼吸をつかさどっています。
肺の不調によって、呼吸がしにくくなったり、息苦しくなります。
宣散とは気を全身に散布する働きのことです。
粛降とは全身に分散した気を腎へ下行させる働きのことです。
肺が全身に気をめぐらせていることを表現しています。
水は腎がつかさどっていますが、水”道”という水の流れは肺が担当しています。
宣散にて気とともに水を体表にて汗としてだしたり、粛降にて水を腎へもっていきます。
「肺は水の上源たり」と表現します。
水のめぐりが悪いとき、まず腎の不調を考えますが、肺の不調によっても水のめぐりが悪くなります。
百脈を朝するというのは肺は百脈を集めているという意味です。
百脈を集めるのは心臓のようにも思えますが、実際に西洋医学的にみても肺は百脈を集めているといえます。
というのは、血液の流れを考えるとわかります。
心臓→大動脈→全身→大静脈→心臓→肺→心臓→大動脈→、、、
心臓の血液は全身に酸素・栄養を送るために全身をめぐります。
全身をめぐった血液は再び心臓に戻ってきます。
戻ってきた血液はその後、二酸化炭素と酸素を交換するために肺に行きます。
実は、心臓に戻ってきた血液は肺に集められているのです。
まさに肺に百脈が集まり、肺は百脈を朝するといえます。
肺と皮毛(皮膚)は密接な関係があります。
かぜひくときなど邪が外からはいってきたときは、皮膚から侵入してきます。
皮膚と肺はつながっているので、かぜひいたときは咳や呼吸困難、鼻水などの肺に関する症状があらわれれます。
肺気をめぐらせる漢方をつかうことで、皮膚症状の改善にもつながります。
肺の不調には肺気虚、肺陰虚などがあります。
肺の気が虚した状態です。
・慢性的な咳
・動くと悪化
・声に力がない
・元気がない
・つかれやすい
これらの症状があるときは肺の気が不足しているかもしれません。
肺気が虚しているため、力がなく、つかれやすく、咳もでやすくなります。
そのようなときは肺の気を補い、めぐらせる漢方薬をつかいます。
陰虚というのは、簡単にいえば水が不足し、肺が乾燥に偏っている状態のことです。
・空咳
・無痰か少量で粘稠な痰
・咽乾
・嗄声
・痩せ
陰という水が不足しているため、痰はさらっとしたものではなく、どろっとした痰となります。
空咳、声のかすれの肺、のどの症状と、陰虚という体を冷やす水不足からの熱の症状があらわれます。
そのような肺陰虚のときは肺を潤す漢方薬をつかいます。
肺を潤す漢方薬の代表的なものに麦門冬湯、乾きが強いときは滋陰降火湯があります。
「肺」の働きを邪魔するものとしては、風寒、寒飲、痰濁、風熱、痰熱、温燥、涼燥などがあります。
とくに「肺」はカゼなどの感染症の発症の経路となり、「肺」の機能が邪魔されると咳、鼻水、痰などの症状がでやすくなります。
風寒の邪が肺に侵入してきたときです。
冷えによって、肺の機能が失調します。
・うすい痰
・鼻づまり
・悪寒
・発熱
これらの症状があらわれます。
風寒によって肺の調子が悪い状態というのは簡単に言えばかぜひいたときの症状です。
そのようなときは風寒の邪を追い出す、葛根湯のような温める漢方薬をつかいます。
風寒よりも冷えが強く、水の停滞もある状態です。
冷えに関する症状が強くあわれます。
・咳
・多めの鼻水
・うすい痰
・冷え
寒と水飲があわさっているので痰・咳などの症状が出ます。
温めると同時に水を追い出す小青竜湯をつかいます。
さらっとした水ではなく、どろっとした粘性の痰が絡んでくる状態です。
・粘稠白色の痰
・胸苦しい
・舌質が淡
痰飲・痰濁によって肺が失調しているときです。
このときは痰濁をさばくような漢方をつかいます。
かぜは冷えだけが原因ではありません。
漢方においては熱によってもかぜになります。
かぜをひいたときに冷え・寒気がなく、どちらかというと火照るような症状を経験したことはありませんか。
そのときは冷えが原因のかぜではなく、熱が原因のかぜかもしれません。
・黄色の痰
・鼻づまり
・のどの痛み
・発熱
・舌先の赤み
熱が原因であるため熱を追い出す銀翹散をつかいます。
同じかぜでも、寒と熱とでは対応が反対になるため注意が必要です。
痰に熱をもった状態です。
痰濁のときは白い痰でしたが、熱をもつと黄色い痰になります。
・黄色粘稠の痰
・高熱
・口渇
・イライラ
・紅舌
熱がこもった痰濁のため痰は色のついた黄色になり、高熱、熱によるイライラの症状もあらわれます。
痰熱のときは熱を冷やしながら、痰をさばく清肺湯をつかいます。
熱と乾燥による肺の失調です。
前述の水飲・痰濁がたまっている状態と逆になり、乾燥の症状が多くなります。
・空咳
・痰は少ないが、粘稠で出しにくい
・発熱
・鼻腔、口唇の乾燥
・のどの痛み
温燥のときは、温の熱を発散しつつ、肺を潤す漢方薬をつかいます。
冷えと乾燥による肺の不調です。
・うすい痰
・悪寒
・頭痛
・無汗
・鼻閉
・口、鼻腔の乾燥
冷えと乾燥があわさっているため、悪寒と乾燥の症状があらわれます。
涼燥のときは肺を温め、潤す漢方薬をつかいます。
以上のように肺の失調でも原因が、風寒・寒飲・痰濁・風熱・痰熱・温燥・涼燥に細かくわけられています。
葛根湯は温める漢方薬で風寒に対応した漢方であり、それ以外には効果を発揮しづらいといえます。
葛根湯がかぜに効かない理由は、原因と漢方薬が不一致のためといえます。
かぜをしっかり分析することは難しいですが、分析し、原因と漢方薬が一致することで効果を発揮します。