便秘を改善するための漢方薬の選び方とその使い方 

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西山光です
目次

便秘

便秘の有病率は男性では2.5%、女性では4.6%と、女性に多くみられます。

男女ともに、加齢とともに便秘になる方が増え、80歳以上では男女ともに10.8%の方便秘になっています。

便秘はいくつか分類され、器質性便秘、症候性便秘、薬剤性便秘、機能性便秘(さらに痙攣性、弛緩性、直腸性に分けられる)があります。

排便のメカニズムについてはこちらのサイトをご参考にしてください→

便秘と食事

排便回数、排便量が少ない便秘では、食物繊維不足が便秘の原因のこともあります。

食物繊維の摂取量を1日18g~20gを目標にしましょう。

生のキャベツ100gあたりの食物繊維の量は1.8gです。

18gをキャベツだけで摂取しようとすると、1000g摂取する必要があります。

キャベツは火を通せば、カサも減り、食べやすくなりますが、それでも1000gはかなりの量になります。

キャベツ以外に食物繊維が豊富な食べ物に、きくらげ、寒天、ひじきがあります。

そば、納豆、おから、さつまいも、かぼちゃ、ごぼうにも食物繊維が多く入っています。

納豆1つで約3gの食物繊維が含まれるため、食事に納豆を足すだけでも食物繊維を摂取することができます。

便秘の漢方薬は?

便秘の漢方薬に大黄甘草湯、麻子仁丸、潤腸湯、大柴胡湯、桃核承気湯などがあります。

大黄甘草湯

大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)は便秘の漢方薬の一番シンプルな構成で、しっかりお通じを改善する漢方薬です。

大黄甘草湯は大黄と甘草から成っています。

大黄が腸を刺激し、排便を促す働きがあります。

大黄にはセンノシドという成分が含まれ、センノシドが大腸粘膜を刺激します。

医療用ではセンノシドの錠剤を見たことがあるかもしれませんが、その成分が大黄にも含まれています。

甘草は薬を調和する働きがあるとともに、甘草の甘味が排便によって失われる水を補います。

ときどき便秘になるかたであれば大黄甘草湯が適してます。

麻子仁丸

麻子仁丸(ましにんがん)は腸を潤すとともに排便を促す漢方薬です。

麻子仁丸は大黄・麻子仁・枳実・厚朴・芍薬・杏仁から構成されています。

大黄が腸を刺激し、排便を促します。

麻子仁・杏仁は植物のタネです。植物のタネにはオイルが多く含まれ、腸を潤す働きがあります。

麻子仁・杏仁が滋潤するため、乾燥した便を潤し、出しやすくしてくれます。

厚朴・枳実・芍薬は気の流れを調整する生薬です。

便秘があるときは、気の鬱滞があり、大便の流れが悪くなっています。

厚朴・枳実・芍薬が入ることで気の流れ、腸の流れを調整し、排便を助けます。

麻子仁丸は普段から便秘がちで、便が乾燥し、固くなっている方に適しています。

潤腸湯

潤腸湯(じゅんちょうとう)は漢方薬の名前のように、腸を潤すことでお通じを改善する漢方薬です。

潤腸湯は大黄・甘草・麻子仁・杏仁・桃仁・当帰・地黄・枳実・厚朴・黄芩から構成されています。

大黄・甘草は大黄甘草湯の組み合わせで、腸を刺激して排便を促します。

麻子仁・杏仁・桃仁は植物のタネです。タネには油分が多く含まれ、腸を潤し、乾燥した便を潤します。

麻子仁丸には麻子仁・杏仁の2種類のタネしか入っていませんでしたが、潤腸湯では桃仁も入り、3種類の植物のタネが入り、強力に潤してくれます。

当帰・地黄は血を養う生薬です。血を養うことで肌の乾燥を防ぎ、血・陰が増えることで腸も潤い、お通じも改善します。

とくに地黄が多く入っており、陰を強く補うことで、お通じも良くします。

潤腸湯は麻子仁丸よりも潤す生薬が多く入り、乾燥状態が強い便秘の方に適しています。

潤腸湯の乾燥は、便が乾燥して便秘になっているだけでなく、肌まで乾燥してきます。

潤腸湯の効能効果にも「ときに皮膚乾燥などがあるものの次の症状:便秘」と書いてあります。

大柴胡湯

大柴胡湯(だいさいことう)は気のめぐりを改善し、便秘にもつかう漢方薬です。

大柴胡湯は大黄・柴胡・半夏・黄芩・芍薬・大棗・枳実・生姜から構成されています。

大柴胡湯の大黄が腸を刺激し、便通を促します。

柴胡・芍薬・枳実は四逆散の組み合わせで、気のめぐりを改善します。

気の鬱滞があると、肩こりやイライラなどの神経症がでやすくなります。

気の鬱滞は肩こり、イライラだけでなく、腸の動きも悪くし、便秘になります。

大柴胡湯は気のめぐりを改善し、便通も改善します。

大柴胡湯に入っている大黄の量は少なく、排便よりも気の鬱滞を改善する働きの方が強いです。

肩こり、イライラの神経症があり、便秘もある方には大柴胡湯が適しています。

桃核承気湯

桃核承気湯(とうかくじょうきとう)は血のめぐりを改善し、便通も促す漢方薬です。

桃核承気湯には大黄・甘草・硫酸マグネシウム・桃仁・桂皮から構成されています。

大黄・甘草・硫酸マグネシウムは排便を促す生薬です。大黄が腸を刺激し、マグネシウムが腸を潤します。

桃仁は血のめぐりを改善する生薬です。

桃仁があることで、血の鬱滞を動かすことができます。

そのため桃核承気湯は効能効果に「月経不順、月経困難症、月経痛、月経時や産後の精神不安」の生理に関する症状も記載されています。

血の鬱滞による生理不順、生理痛、生理時の精神不安と便秘がある方は桃核承気湯が適しています。

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