この記事を書いた人
・灯心堂漢方薬局 薬局長
・薬剤師歴10年以上
・店舗のLINE登録者数1000人以上
・漢方を通して、皆様が少しでも健康に過ごせる手助けをできればと思います。>>プロフィール記事はこちら
西山光です
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・灯心堂漢方薬局 薬局長
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・人参養栄湯はどういうときに服用したらいいの?
・合わない人っているの?
このようなお悩みに漢方薬局の薬剤師がお答えします。
医薬品の適正使用のために参考になればと思います。
この記事を読んでわかること
・人参養栄湯の効能効果
・人参養栄湯の構成生薬
・合う人、合わない人
・副作用、長期服用について
人参養栄湯は「気虚」と「血虚」のどちらの体質もある方の疲労倦怠感、食欲不振、貧血によく使用されます。
体力虚弱なものの次の諸症:病後・術後などの体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血
人参養栄湯の効能効果(薬局製剤)
人参養栄湯の効能効果はメーカーによっても異なるので、ご購入の際はしっかりパッケージを確認してください。
人参養栄湯は気・血の両方の補う気血双補の働きと、さらに収斂する働きがあります。
人参養栄湯の効能効果を大きく分けると、気を補う働き・血を養う働き・収斂する働きに分けられます。
・気を補う働き(病後・術後の体力低下、疲労倦怠感、食欲不振)
・血を養う働き(貧血、手足の冷え)
・収斂し、引き締める働き→生薬で説明
人参養栄湯の効能効果に、「体力虚弱なもの」「病後・術後の体力低下」「疲労倦怠感」「食欲不振」と記載があり、身体の能力が低下した状態につかいます。
食欲不振、疲労倦怠感などの症状は「気虚」の体質といえます。
漢方でいう「気」は身体の機能のことをあらわします。
「気虚」は身体の働きが低下した状態であり、疲労倦怠感などの症状がみられやすくなります。
また気は消化機能にも関係し、気虚になると消化器系の不調がみられます。
人参養栄湯の人参・黄耆などの生薬が気を補い、身体の機能を高めてくれます。
人参養栄湯は補気薬であり、身体に気を補うことで、疲労倦怠感、食欲不振に効能効果があります。
効能効果に「貧血」とあるように人参養栄湯は血を養ってくれます。
漢方では貧血のように血の不足した状態のことを「血虚」といいます。
「血」という言葉は西洋医学での「血液」と異なります。漢方での「血」は血液と栄養の意味合いがあります。
「血虚」は血液不足と栄養の不足の状態。乾燥肌、髪のパサツキ、生理不順などが生じやすくなります。
人参養栄湯の当帰、芍薬、地黄などの生薬が血を養い、身体に栄養を補ってくれます。
人参養栄湯は養血薬であり、血を養うことで貧血や冷え性に効能効果があります。
人参養栄湯には気を補う生薬と血を養う生薬が多く入り、また収斂する生薬、気持ちを落ち着ける生薬も入っています。
人参養栄湯には12種類の生薬が入っています。
人参養栄湯には人参、当帰、芍薬、地黄、白朮、茯苓、桂皮、黄耆、陳皮、遠志、五味子、甘草が入っています。
人参養栄湯に入っている生薬を働き別にまとめてみました。
人参養栄湯に入っている人参、黄耆、白朮、茯苓、甘草は気を補う生薬です。
人参は気を補う代表的な生薬で、知っている方も多いと思います。高麗人参、朝鮮人参という言葉も聞いたことがあるかもしれません。
↑人参。漢方の人参はウコギ科の植物。普段、食べる人参はセリ科で、別の植物です。
人参養栄湯の人参、白朮、茯苓、甘草の4つの生薬は「四君子湯」という組み合わせで、気を補う構成です。
人参養栄湯にはさらに黄耆(おうぎ)という生薬も入っています。漢方の世界では黄耆も、人参と並ぶ気を補う代表的な生薬です。
人参と黄耆の組み合わせは気を補うときによくみられ、人”参”と黄”耆”が入った漢方薬を参耆剤(じんぎざい)という言葉もあるくらいです。
人参養栄湯は人参、黄耆などの生薬が気を補うことで、身体の働きを高め、元気づけ、胃腸の働きを助けてくれます。
人参養栄湯は人参、黄耆などの気を補う生薬から構成されています。
人参養栄湯には当帰、芍薬などの血を養う生薬も入っていることが特徴的です。
当帰(とうき)。血を養う代表的な生薬。人参は薄黄色いのに対し、当帰は黒っぽい色です。
人参養栄湯に入っている当帰、芍薬、地黄は血を養う生薬です。
人参養栄湯には十全大補湯に入っていた川芎が入っていません。川芎は血を養うとともに、気を発散する性質があります。川芎の気を発散する性質は補う働きと相性が悪いです。人参養栄湯の方が十全大補湯よりも補う意識が高いため、気を発散してしまう川芎が入っていないと考えられます。
人参養栄湯は当帰、芍薬、地黄が血を養うことで貧血、冷え性に対応しています。
人参養栄湯には五味子が酸味にて収斂し、引き締める働きがあります。
五味子(ごみし)。5つの味があるため、五味子という名前がついたが、実際には酸味がとても強いです。
漢方では酸味は収斂し、引き締める働きがあります。収斂することで、気血が漏れ出ていかないように引き締めてくれます。
五味子が直接気を補うわけではありませんが、酸味で引き締めることで、効率よく気血を補うのを助けてくれます。
人参養栄湯の五味子は酸味にて人参や当帰の気血を補う働きをサポートします。
人参養栄湯の遠志が気持ちを落ち着ける働きがあります。
遠志(おんじ)。生薬が筒状になっているのが特徴的です。気持ちを落ち着けます。
遠志には、気持ちを落ち着ける働き、鎮静作用があります。
人参養栄湯は「気」を補う生薬、「血」を養う生薬のどちらも入っており、「気血双補」の漢方薬
五味子が入ることで、酸味で収斂し、気血を留めようと引き締めてくれます。
人参養栄湯は気・血のどちらも補う漢方薬のため、疲労倦怠感、貧血のある方に
注意が必要なのは、疲労倦怠感というのは気の不足だけが原因でないことです。
例えば、しんどいときでも身体を動かすと楽になってきたな、と感じことはありませんか?
最初はけん怠感があっても、身体を動かすことで徐々に身体が楽になってくるのは気滞が原因と考えられます。
身体を動かすことで、疲労倦怠感が軽減するタイプは「気虚」ではなく、「気滞」の体質ため、人参養栄湯は適していません。
また人参養栄湯は血を養い、身体を温める働きがあるため、暑がりの方には向いていません。
「人参養栄湯が効かない」という経験をされた方もいらっしゃると思います。人参養栄湯が効かない理由としては、体質が気虚・血虚ではなく、気滞や他の体質の可能性があります。
合う人 | 合わない人 |
---|---|
・動くと余計にしんどい方 ・胃腸の働きが弱い方 ・冷え性 | ・動いた方が身体が楽になる方 ・胃腸の働きが衰えていない方 ・暑がり |
「人参養栄湯は更年期に効きますか?」と質問があった場合、回答はNOです。
添付文書に、更年期障害の記載がないためです。
しかし、漢方薬は病名でなく、体質でつかいます。
女性の更年期であろうと、男性の更年期であろうと、症状として、「体力虚弱な体質で疲労倦怠感や手足の冷え」でお悩みであれば、人参養栄湯はおすすめできます。
更年期といっても、症状はイライラから抑うつ、ホットフラッシュなど様々です。
「更年期だから、この漢方薬がいい!」というものはありません。漢方薬は体質で選びます。漢方薬の効能効果と、ご自身の状態が合っていれば服用していただいて大丈夫です。
「人参養栄湯は自律神経に効きますか?」と質問があった場合、回答はNOです。
添付文書に自律神経失調症の記載がないためです。
しかし、漢方薬は病名でなく、体質で選びます。
自律神経失調症の症状として、「体力虚弱な体質で疲労倦怠感や手足の冷え」でお悩みであれば、人参養栄湯はおすすめできます。
自律神経失調症の症状はイライラ、抑うつ、けん怠感など人それぞれ異なります。
「自律神経失調症だから、この漢方薬がいい!」というものはありません。漢方薬は体質で選びます。漢方薬の効能効果と、ご自身の状態が合っていれば服用していただいて大丈夫です。
人参養栄湯の副作用としては、皮膚(発疹・発赤、かゆみ)、消化器(胃部不快感)、偽アルドステロン・ミオパチー(けん怠感、筋肉痛)、肝機能障害(発熱、かゆみ、けん怠感、黄疸)などがみられることがあります。
これらの症状があらわれた場合は、副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、医師又は薬剤師に相談をしてください。
漢方の長期服用にてよく問題になるのが、甘草です。
甘草を多くとっていると副作用が生じやすくなります。
メーカーにもよりますが、一般的に人参養栄湯に含まれる甘草の量は1.0gです。
甘草の1.0gというのは多くはありませんが、ほかの漢方薬を併用したり、人によっては副作用がでたりすることがあります。
手足の脱力感、筋肉痛、しびれがみられるようになったときは甘草による副作用の可能性があります。
そのような症状がみられた場合は直ちに服用を中止してください。
・人参養栄湯は体力虚弱な方の疲労倦怠感、貧血、冷え性などに効能効果があります。
・人参養栄湯は気と血の両方を補い、酸味で収斂し、気血を効率よく補います。
・人参養栄湯は気虚・血虚のある方に適した漢方薬です。