緊張しやすい、あがり症、社会不安症を改善するための漢方薬の選び方とその使い方

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西山光です
目次

緊張、あがり症、社交不安症の原因は?

はっきりとした原因はわかっていませんが、交感神経が活発になるためといわれています。

交感神経と副交感神経の違いは簡単にいえば、身体を活発に働かせるか、身体を休める方向に働くかです。

交感神経は体を活発にするように働き、副交感神経は体が休まるように働きます。

交感神経が活発になる状態をよくライオンににらまれたシマウマやウサギに例えられます。

自分がライオンに食べられそうになった状態を想像してください。

食べられないように全力で逃げる必要があります!

逃げるために、交感神経が活発になると、気分は興奮し、全身に血を送るために血管は収縮、血圧は上昇、俊敏に動くために筋肉も緊張、酸素を取り入れるために呼吸も早く、消化にエネルギーを費やす余裕はなくなり、消化は抑制されます。

反対に副交感神経が優位になると、気分は落ち着き、血管は緩み、血圧も低下、筋肉も緩み、呼吸もゆっくり、消化が活発になります。リラックスしているときにお腹が鳴るのはリラックスしている証拠といえます。

プレゼンや人前に立つとき、試験の前などのストレスがかかる状況では交感神経が活発になります。

過度に活発になった交感神経によって、様々な症状を呈します。

・手足がふるえる
・声がふるえる
・冷やせをかく
・息をしづらくなる

緊張、あがり症、社交不安症(社会不安症)の薬は?

社会不安症の適応のある西洋薬には、フルボキサミン、パロキセチン、エスシタロプラムがあります。

『社交不安症の診療ガイドライン』でも上記の3つの薬が第一選択薬と記載されています。

緊張、あがり症、社交不安症の漢方薬とは?

緊張という症状から、肝鬱気滞、肝血虚、心火、胆虚の体質が考えられます。

体質にあわせて、四逆散、逍遙散、半夏厚朴湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、大柴胡湯、抑肝散、釣藤散、帰脾湯、黄連解毒湯などの漢方薬をつかいわけます。

緊張しやすい方におすすめの4つの漢方薬

漢方薬なので、症状によってつかいわける必要があります。

不安感が中心にみられる方には茯苓飲合半夏厚朴湯、普段からイライラし、怒りやすい方には抑肝散、不安感と不眠症がある方は帰脾湯、イライラしやすく、不眠もある方には柴胡加竜骨牡蛎湯が適しています。

・普段イライラしやすい方→抑肝散
・不安になりやすい方→茯苓飲合半夏厚朴湯
・不安感と不眠のある方→帰脾湯
・普段イライラしやすく、不眠のある方→柴胡加竜骨牡蛎湯

イライラ、怒りやすい方

緊張の症状と、普段からイライラしやすかったり、怒りやすい方は、気が高ぶりやすいと考えられます。

日常では気の高ぶりがイライラに出て、ストレスがかかる場面では緊張・あがり症に気が高ぶりやすくなっています。

イライラも、上がり症も、どちらも気の高ぶりから来ている場合は、気の高ぶりを鎮める漢方薬をつかいます。

抑肝散には釣藤鈎の気の高ぶりを鎮める生薬が入り、緊張の原因の気を鎮めてくれます。

普段からイライラしやすい方は、抑肝散がしっかり気の高ぶりを鎮めてくれます。

さらに詳しいことをいえば、抑肝散には3つの種類があります。

抑肝散を飲みたいけど、胃腸が弱いのが気になる方は抑肝散加陳皮半夏の方が適しています。陳皮・半夏が加わることで、胃腸の働きを助けてくれます。

抑肝散よりも、神経の高ぶりが強く、怒りやすい方は抑肝散加芍薬黄連が適しています。芍薬・黄連が加わることで、より気の高ぶりを鎮めるのを助けてくれます。

・イライラ、怒りやすい→抑肝散
・胃腸が弱い+イライラ、怒りやすい→抑肝散加陳皮半夏
・高ぶりが強い+イライラ、怒りやすい→抑肝散加芍薬黄連

不安感の強い方

強い不安感から、緊張・あがり症につながっている状況です。

気のめぐりが悪く、ふさぎ込む方に影響がでると不安感がでます。

不安感から、過度な緊張につながります。

気のめぐりの悪さが不安感となり、あがり症の原因となっています。

気の鬱滞を解き、気をめぐらせることで不安感は解消されます。

不安神経症に効能効果のある漢方薬に茯苓飲合半夏厚朴湯があります。

茯苓飲合半夏厚朴湯は厚朴・紫蘇などの気の鬱滞を解く生薬、枳実の気を強くめぐらせる生薬などから構成されています。

茯苓飲合半夏厚朴湯が不安の原因となる気の鬱滞を解いてくれます。

不安感でお悩みの方には茯苓飲合半夏厚朴湯が適しています。

茯苓飲合半夏厚朴湯は枳実という気をめぐらせる生薬が入っているため、不安感が強い方に適しています。

そこまで不安感が強くない場合は枳実の入っていない半夏厚朴湯の方が適しています。

・不安神経症→茯苓飲合半夏厚朴湯
・不安感がそこまで強くない→半夏厚朴湯

不安と不眠のある方

疲れ、考えすぎが続くと、漢方では心の血を消耗すると考えられています。

心の血が不足することで、不安になりやすく、不眠につながります。

過度な緊張、あがり症の原因が心血の不足かもしれません。

心の血の不足は不眠だけでなく、精神不安にもなりやすくなります。

心血の不足から、不安・不眠症のどちらもあるときには帰脾湯が適しています。

帰脾湯の酸棗仁・竜眼肉が心の血を養い、不安・不眠を緩和してくれます。

不安感と不眠症でお悩みの方は帰脾湯が適しています。

イライラと不眠のある方

緊張しやすい方で、不眠症、イライラ感がある場合は、柴胡加竜骨牡蛎湯が適しています。

緊張、イライラは気のめぐりが悪いと考えれます。

また不眠もあることは気を鎮めることができていない状況です。

緊張、イライラの気をめぐらせ、不眠のために気を鎮める漢方薬が柴胡加竜骨牡蛎湯です。

柴胡加竜骨牡蛎湯の柴胡が気をめぐらせ、竜骨・牡蛎が気を鎮めてくれます。

イライラ感、不眠は、気をしっかりと鎮めてあげる必要があり、柴胡加竜骨牡蛎湯が気を鎮め、不眠症に効能効果があります。

緊張の体質別の漢方薬

肝鬱気滞

ストレス、悩みごと、プレッシャーのかかる状況になると、漢方では肝の気のめぐりが悪くなります。

漢方において、肝というのは気のめぐりを調節している臓腑です。

肝によって、気の流れがコントロールされています。

肝はストレスに弱い臓腑で、ストレスがかかると肝の調子が悪くなり、気のめぐりが悪くなります。

・責任感が強い
・気をつかう
・一生懸命
・几帳面
・一人で背負い込む

とくに上記のような性格の方も肝の不調をきたしやすいです。

気のめぐりが悪くなると、気が鬱滞し、さらに緊張や不安などが生じやすくなります。

また肝は筋肉の細かい動きもコントールしており、肝の不調によってふるえも生じてきます。

ストレスがかかる→肝の気のめぐりが悪くなる→不安、イライラ、ふるえ

肝鬱気滞のタイプには気のめぐりをよくする漢方薬をつかう必要があります。

気の鬱滞の程度によっても漢方薬を使い分けます。

四逆散、逍遙散、半夏厚朴湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、大柴胡湯などがあります。

四逆散

四逆散は理気薬の代表的な漢方薬です。柴胡・枳実が気をめぐらせ、芍薬にて平肝する漢方薬です。

逍遙散

逍遙散は気血水のめぐりをバランスよく整えます。とくに女性で気のめぐりが悪い方によく使われる漢方薬です。

半夏厚朴湯

半夏厚朴湯は不安な気持ちに使う漢方薬です。のど、胸のあたりが詰まったような感じがあるときにつかう漢方薬です。

柴胡加竜骨牡蛎湯

柴胡加竜骨牡蛎湯はイライラ・不安の気持ちを鎮める漢方薬です。柴胡が鬱滞している気をめぐらせ、竜骨・牡蛎で不安な気持ちを鎮めてくれます。

大柴胡湯

大柴胡湯は気をめぐらせ、便通も改善してくれる漢方薬です。柴胡が気をめぐらせ、大黄が気の鬱滞で生じた便秘を通してくれます。

肝陽上亢

肝鬱気滞の状態に血虚という血の不足が合わせることで、強いイライラが生じるようになります。

イライラが生じるのは気の鬱滞だけでなく、血虚も合わさっている可能性があります。

血虚によって陽気を鎮めることができず、イライラ、不眠症へとつながります。

肝陽上亢につかう漢方薬に抑肝散、釣藤散があります。

抑肝散

抑肝散釣藤鈎・柴胡が入り、イライラの気を発散してくれます。

釣藤散

釣藤散は釣藤鈎・菊花が入り、イライラの気を発散し、慢性の頭痛にもつかいます。

心脾両虚

心脾両虚というのは心と脾の機能が落ちた状態のことです。

漢方では、脾は消化吸収機能のことをあらわし、消化吸収が悪いことで気血を養うことができなくなります。

心血が不足することで、不安になりやすくなります。

脾の働きを整え、心血を補う帰脾湯をつかいます。

帰脾湯

帰脾湯は人参の気を補う生薬と、酸棗仁・竜眼肉の血を補う生薬などから構成され、気持ちを落ち着きやすい状態にしてくれます。

帰脾湯はほかにも不眠症にもつかうことができます。

心火

心というのは漢方においては”心は神をやどす”とし、精神症状にも関与しています。

その心が熱をもち、過剰になることで焦燥感とともに、緊張感へとつながります。

熱が原因であるため、のぼせ気味で、顔色が赤いなどの特徴があります。

心火の体質の方には心火を冷ます漢方薬をつかう必要があります。

黄連解毒湯

心の熱を冷ます漢方薬に黄連解毒湯があります。黄連解毒湯に入っている生薬全て苦味の生薬であり、イライラ、焦燥感の熱を冷ましてくれます。

緊張しやすい、あがり症の相談事例1

40代女性。極度のあがり症、赤面症。緊張すると、ふるえ、顔のこわばり、動悸、発汗がでるようになる。便秘気味。イライラもあるが、不安も強い。

お話をお伺いしていると、緊張が強く、便秘気味でもあったことから、気の高ぶりを鎮める漢方薬をご提案しました。

1か月後、「あまり変わらない」とのこと。

自分としては効果があると思っておすすめしたのですが、効果がなかったとのこと。

次に、心の血を養う漢方薬をおすすめいたしました。心の血を補うことで、気持ちが動揺しづらいなると考えました。

1か月後、「こっちの漢方の方が効いている気がする」とのこと。その後はこちらの漢方薬を継続していただき、緊張もしづらくなってきているとのことです。

緊張がかなり強く、ふるえ、顔のこわばりもみられたたため、気の高ぶりからくる過度な緊張だと考えていたのですが、実際には効果がありませんでした。この方の場合は、血を養うことで効果がみられました。症状の考察が重要だと感じされられました事例です。

緊張しやすい、あがり症の相談事例2

40代女性。過度な緊張と多汗症。「最近パートをはじめて、半年くらい経つが緊張する。人前に立つと、汗がたくさんでる」「20代のときに社会不安症といわれた。」眠りも浅く、便秘きみ。命の母を服用して、少しマシになったが、まだまだ緊張と多汗が強いことでお悩み。

不安感からの緊張が強いため、心の血を養う漢方薬をおすすめいたしました。

また多汗症もあり、身体の虚と、気持ちの同様の程度が強いため、気を鎮める漢方薬を併用していただきました。

1か月後、「だらだら汗でるのは少し落ち着いてきた。緊張も少し落ち着いてきた。」

さらに1か月後「緊張はマシになってきた。8月だからか、汗の方が気になる」

心の血を養う漢方にて緊張の方はしっかり緩んできており、効果も実感がみられました。ただ多汗の症状の方はまだ改善できていないため、現在では過度な緊張よりも多汗症の症状の漢方薬を中心に服用していただいております。

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