胃苓湯の使い方と合わない人の特徴

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・灯心堂漢方薬局 薬局長
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西山光です
質問

・胃苓湯はどういうときに服用したらいいの?
・合わない人っているの?

このようなお悩みに漢方薬局の薬剤師がお答えします。

 この記事を読んでわかること
・胃苓湯の効能効果
・胃苓湯の構成生薬

・合う人、合わない人
・副作用、長期服用について

目次

胃苓湯の効能効果

 胃苓湯は水のめぐりを改善する漢方薬です。

体力中等度で、水様性の下痢、嘔吐があり、口渇、尿量減少を伴うものの次の諸症:食あたり、暑気あたり、冷え腹、急性胃腸炎、腹痛

胃苓湯の効能効果(薬局製剤)

胃苓湯の効能効果はメーカーによっても異なるので、ご購入の際はしっかりパッケージを確認してください。

胃苓湯は平胃散と五苓散が合わさった漢方薬です。

胃苓湯=平胃散+五苓散+芍薬

胃苓湯は、平胃散の「胃」と、五苓散の「苓」があわさった名前です。

・胃苓湯は胃腸の働きを助ける平胃散と、水をめぐらせる五苓散が合体した漢方薬

水をめぐらせる働き

胃苓湯の効能効果に、「水様性の下痢」「急性胃腸炎」と記載があり、水をめぐらせる働きがあります。

水様性の下痢は、急性胃腸炎などが原因で腸に過剰に水がたまっている状態といえます。

胃苓湯は、過剰にたまった水をめぐらせることで、急性胃腸炎に効能効果があります。

胃苓湯の興味深いところとして、効能効果のところには「口渇」「尿量減少」とあります。

腸には過剰に水がある一方で、反対に口、膀胱では水が不足し、口渇、尿量減少になっています。

・腸→過剰に水が偏り、下痢になる
・口、膀胱→水が不足し、口渇、尿量減少

一方では水が多い、一方では水不足の状態を改善してくれるのが胃苓湯の働きです。

胃苓湯は水の偏在をなくすことで、水様性の下痢、急性胃腸炎に効能効果があります。

胃苓湯に入っている生薬・成分

 胃苓湯には水をめぐらせる生薬が多く入っています。

胃苓湯には12種類の生薬が入っています。

胃苓湯には蒼朮、陳皮、沢瀉、白朮、厚朴、猪苓、芍薬、茯苓、桂皮、大棗、甘草、生姜が入っています。

胃苓湯に入っている生薬を働き別にまとめてみました。

水をめぐらせる生薬

 胃苓湯に入っている蒼朮、沢瀉、白朮、猪苓、茯苓は水をめぐらせる生薬です。

↑白朮。白朮は気を補い、水をめぐらせる生薬で、多くの漢方薬にも入っています。

胃苓湯には5つの水をめぐらせる生薬が入っています。

胃苓湯は水をめぐらせることで、水様性の下痢、急性胃腸炎に効能効果があります。

気をめぐらせる生薬

 胃苓湯の陳皮、厚朴、桂皮は気をめぐらせる働きがあります。

桂皮(けいひ)。桂皮は温めて、気をめぐらせる働きがあります。

漢方では気の働きの1つに、血・水をめぐらせる働きがあります。

気を巡らせることは、水のめぐりを助けることにつながります。

胃苓湯は気をめぐらせることで、水の循環を助ける生薬も入っています。

生薬のまとめ

 胃苓湯は「水」をめぐらせる生薬と、「気」をめぐらせる生薬から構成されています。

胃苓湯が合う人・合わない人

  • 水様性の下痢のある方
  • 嘔吐がある
  • 食あたり
  • 急性胃腸炎

 胃苓湯は水をめぐらせることで、水様性の下痢、食あたり、急性胃腸炎に効能効果があります。

胃苓湯の効能効果にあるように、食あたりや感染性胃腸炎につかいます。

慢性的に普段から下痢をしやすいのであれば、「気虚」の体質が考えられます。

慢性的に下痢しやすい方は参苓白朮散などの人参、山薬の入っている漢方薬の方がおすすめです。

またお腹が冷えて、下痢するのであれば、「陽虚」の体質が考えられ、人参湯や真武湯の方がおすすめです。

「胃苓湯が効かない」という経験をされた方もいらっしゃると思います。胃苓湯が効かない理由としては、下痢の原因が水の停滞、水の偏在でない可能性があります。

合う人合わない人
・水様性の下痢
・感染性胃腸炎
・食あたりの下痢
・気虚からの下痢
・冷えからの下痢
胃苓湯が合う人・合わない人

胃苓湯はノロウイルスに効くのか?

 胃苓湯はノロウイルスは感染性胃腸炎なので、使用できます。

ノロウイルスによる嘔吐・下痢は感染性胃腸炎といえます。

胃苓湯は水をめぐらせることで、ノロウイルスによる嘔吐・下痢の症状を緩和してくれます。

西洋薬での下痢止めは、腸管の動きを止めて、下痢を抑えます。ノロウイルスなどの感染性胃腸炎の場合に下痢止めを使用すると、腸にウイルスを留めてしまいます。

ノロウイルスのときは、下痢の症状がひどくても市販の下痢止めを購入するのではなく、病院を受診してください。

西洋薬に対し、胃苓湯は水のめぐりを改善することで感染性胃腸炎に効能効果があります。胃苓湯は腸の動きを止めるわけでないため、感染性胃腸炎の場合でも服用できます。

胃苓湯と五苓散の違いは?

胃苓湯は五苓散と平胃散があわさった漢方薬です。つまり胃苓湯には五苓散の生薬がまるごと入り、さらに平胃散の分の生薬が入っています。

胃苓湯と五苓散を比べると、胃苓湯の方が生薬の数が多いです。

感染性胃腸炎、食あたりで水様性の下痢の症状がひどければ、胃苓湯の方が適しています胃苓湯がしっかり水を巡らせてくれます。

水様性の下痢はなく、むくみ、頭痛、二日酔いの症状であれば、過度に水をめぐらせる必要はないため、五苓散の方が適しています。

・感染性胃腸炎、食あたりで水様性の下痢であれば、胃苓湯の方が適してます。

・むくみ、頭痛、二日酔いであれば、五苓散の方が適しています。

生薬の数が多ければ多いほど、良い漢方薬というわけではありません。ご自身の状態とあったものを選ぶことが重要です。

胃苓湯が手元になくても、五苓散でも水様性の下痢、急性胃腸炎に効能効果があります。

胃苓湯の副作用、長期服用の注意点

副作用

胃苓湯の副作用としては、皮膚(発疹・発赤、かゆみ)、偽アルドステロン・ミオパチー(けん怠感、筋肉痛)、などがみられることがあります。

これらの症状があらわれた場合は、副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、医師又は薬剤師に相談をしてください。

長期服用について

漢方の長期服用にてよく問題になるのが、甘草です。

甘草を多くとっていると副作用が生じやすくなります。

メーカーにもよりますが、一般的に胃苓湯に含まれる甘草の量は1.0gです。

甘草の1.0gというのは多くはありませんが、ほかの漢方薬を併用したり、人によっては副作用がでたりすることがあります。

手足の脱力感、筋肉痛、しびれがみられるようになったときは甘草による副作用の可能性があります。

そのような症状がみられた場合は直ちに服用を中止してください。

胃苓湯のまとめ

・胃苓湯は水様性の下痢の食あたり、感染性胃腸炎に効能効果があります。

・胃苓湯は水をめぐらせる生薬が多く入り、気をめぐらせる生薬は水のめぐりを助けます。

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