鼻づまり・嗅覚障害を改善するための漢方薬の選び方とその使い方

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西山光です
目次

鼻づまり

鼻づまりは花粉症やアレルギー性鼻炎だけでなく、カゼやインフルエンザなどの感染症にかかったあとに鼻づまりが残った経験がありませんか?

鼻がつまると呼吸がしづらく、寝苦しくなったり、臭いがわかりづらくなり、味も感じにくくなります。

臭い、匂いを感じる仕組みは、ニオイの成分が鼻の中に入り、鼻奥の嗅細胞が反応し、脳に刺激を送ることで臭いを感じることができます。

鼻づまりがあると、嗅細胞へ空気を送ることができず、臭いを感じにくくなります。

鼻づまりは味にも影響を与えます。

試しに鼻をつまんでご飯を食べてみてください。

鼻に空気が通らないと、香りだけでなく味もわかりづらくなります。

苦手なものを食べるときに鼻をつまむと、味を感じにくく、なんとか食べられることがあります。

反対においしいものを食べるときは、鼻が通っていないと味わうことができません。

かき氷のシロップにイチゴ味、ブルーハワイ味など様々ありますが、実はシロップはすべて同じ味といわれています。

イチゴ味、ブルーハワイ味の違いは何かというと、香料によるものです。

香料という香りづけの違いだけで、味わいが全く異なったものになります。

臭いが感じにくくなったり、味を感じにくくなったりする原因のすべてが鼻づまりではありませんが、鼻づまりがある場合は臭い、味を感じにくくなります。

鼻づまりを解消するためのセルフケアについてはこちらのサイトを参考にしてください→

漢方での鼻づまりの原因は?

鼻づまりの原因の1つは潤いがないことです。

鼻に潤いがあれば、サラサラの鼻水となって、出てきます。

しかしカゼや慢性的な状態がつづくと、鬱熱が生じてきます。

鬱熱があることで、水が煮詰まっていき、粘性のある水へと変化していきます。

粘性のある水が鼻の通りを悪くすることで鼻づまりとなります。

煮詰まった水を潤しつつ、鼻の通りをよくする漢方薬を使う必要があります。

冷えも鼻閉の原因と考えられます。

冷えによって、肺の気のめぐりが悪くなり、鼻づまりへとなります。

冷えによって生じている場合は、温め、肺気をめぐらせる必要があります。

鼻づまりの漢方薬は?

鼻づまりにつかう漢方薬に、麗沢通気湯加辛夷、葛根湯加川芎辛夷、辛夷清肺湯があります。

・鼻づまり、嗅覚障害もある方→麗沢通気湯加辛夷

・鼻づまり、やや冷えもある→葛根湯加川芎辛夷

・鼻づまり、熱感、副鼻腔炎→辛夷清肺湯

嗅覚異常、嗅覚障害のある鼻づまりには?

嗅覚異常、嗅覚障害や鼻づまりにつかう漢方薬に麗沢通気湯加辛夷があります。

麗沢通気湯加辛夷で重要な生薬は辛夷(しんい)です。

辛夷とは、鼻づまりの要薬で、鼻を通す働きがあります。

麗沢通気湯は『蘭室秘蔵』や『万病回春』に「鼻、香臭を聞かざるを治す」と記されており、嗅覚障害 をはじめとする鼻の専門薬です。

辛夷が詰まっている鼻を通してくれます。

麗沢通気湯加辛夷には入っている生薬は多く、14種類の生薬から構成されています。

入っている生薬の多くは白芷、羌活、防風などの解表薬といわれる生薬です。

冷えによって肺の気のめぐりが悪くなり、鼻づまりが生じます。

冷えの鬱滞から、鼻の調子が悪くなっているため、表を解する、つまり解表することで鼻づまりの原因を追い出します。

黄耆・白朮・防風の組み合わせは玉屏風散(ぎょくへいふうさん)で知られ、気を補う働きがあります。

麗沢通気湯加辛夷の性質としては、温める漢方薬になるため、熱感が強く、鼻づまりでも鼻粘膜が乾いている場合は向いていないといえます。

鼻が乾いているのに、鼻づまりがあるときは熱を冷まし、潤す性質の漢方薬が適しています。

これらの働きから麗沢通気湯加辛夷には「体力中等度のものの次の諸症:嗅覚障害、嗅覚異常、鼻づまり、アレルギー性鼻炎、慢性鼻炎、蓄膿症(副鼻腔炎)」の効能効果があります。

葛根湯加川芎辛夷

葛根湯加川芎辛夷 効能効果:「比較的体力があるものの次の諸症:鼻づまり、蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎」

葛根湯加川芎辛夷は鼻づまり、慢性鼻炎、副鼻腔炎につかわれる漢方薬です。

葛根湯加川芎辛夷は葛根湯に川芎・辛夷を足した漢方薬です。

葛根湯加川芎辛夷=葛根湯+川芎・辛夷

葛根湯が構成の基本になっていることからも温める漢方薬です。

葛根湯加川芎辛夷もよくつかわれる漢方薬です。

寒気があり、鼻づまりがある方に適し、「比較的体力があるものの次の諸症:鼻づまり、蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎」の効能効果があります。

辛夷清肺湯

辛夷清肺湯 効能効果:「体力中等度以上で、濃い鼻汁が出て、ときに熱感を伴うものの次の諸症:鼻づまり、慢性鼻炎、蓄膿症(副鼻腔炎)」

辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)は麗沢通気湯加辛夷、葛根湯加川芎辛夷と異なり、冷やし、潤す漢方薬です。

辛夷清肺湯にも辛夷が入り、鼻の通りをよくしてくれます。

辛夷清肺湯の特徴は冷やす漢方薬であること。

知母、黄芩、山梔子、石膏の冷やす生薬が多く入っています。

鼻づまりで熱感の強いものは冷やして炎症を抑える必要があります。

また熱感があることで、水がどんどん煮詰まっていきます。

水が熱によって煮詰まった結果、粘性をもった水へと変化します。

粘性をもった水が鼻に滞ることで鼻づまりになります。

鼻にこもっている熱感を冷やし、鼻を通す働きがあるのが辛夷清肺湯です。

鼻づまりでも熱感がある場合は辛夷清肺湯が適しています。

慢性鼻炎

鼻づまりと若干異なりますが、慢性鼻炎につかう漢方薬についてもまとめたいと思います。

慢性鼻炎とは、くしゃみ、鼻水、鼻づまりがずっと続いている状態のことです。

花粉症の場合は3月、4月だけに発症しますが、それが季節関係なく、慢性的に続いている状態です。

慢性的で、日常的なことなので気にされていない方も多いかもしれません。

慢性鼻炎につかうことができる漢方薬があります。

さきほど説明した、麗沢通気湯加辛夷、葛根湯加川芎辛夷、辛夷清肺湯、荊芥連翹湯はすべて慢性鼻炎にも効能効果があります。

荊芥連翹湯は下の項目で解説いたします。

蓄膿症

鼻づまりを来す疾患にほかに蓄膿症があります。

蓄膿症につかう漢方薬に麗沢通気湯加辛夷、葛根湯加川芎辛夷、辛夷清肺湯、荊芥連翹湯があります。

麗沢通気湯加辛夷、葛根湯加川芎辛夷、辛夷清肺湯は前述で説明しました。

蓄膿症には、ほかにも荊芥連翹湯という漢方薬があります。

荊芥連翹湯

荊芥連翹湯 効能効果:「体力中等度以上で、皮膚の色が浅黒く、ときに手足の裏に脂汗をかきやすく腹壁が緊張しているものの次の諸症:蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきび」

荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)は蓄膿症、慢性鼻炎だけでなく、にきびにも使うことができる漢方薬です。

荊芥連翹湯は体質改善の漢方薬といわれます。

慢性的な不調があると、鬱熱が生じてきます。

気でも血でも水でも、邪でも長く鬱滞していると、鬱熱となってきます。

簡単に言えば、熱がこもっている状態です。

こもっている熱は冷やす必要があります。

鬱熱が停滞していると、煮詰められ、血を消耗していきます。

漢方でいう血とは、血液という意味だけでなく、潤いや栄養を補う働きがあります。

例えば皮膚に慢性的な炎症があれば、皮膚の潤いがなくなっていきます。漢方ではそれは血を消耗した結果、肌の潤いが失われていると考えます。

荊芥連翹湯には、慢性的な不調で生じる、鬱熱を冷やす生薬と、不足した血を養う生薬が入っています。

ほかにも風熱を発散する生薬、排膿の生薬などが入り、蓄膿症、慢性鼻炎、にきびにも効能効果があります。

慢性的に続く、蓄膿症には荊芥連翹湯が適しています。

まとめ

鼻づまりは冷えと熱によって生じます。

麗沢通気湯加辛夷は辛夷が鼻を通し、鼻づまりを改善し、嗅覚障害の方にもつかえる効能効果があります。

葛根湯加川芎辛夷は葛根湯に加味したものなので、温める働きが強いです。

辛夷清肺湯は冷やしながら鼻づまりを改善するため、熱感のある鼻づまりに有効です。実際に熱感を感じなくても、粘性のあるものが詰まっているときは、水が煮詰まっている状態ですので、使うことができます。

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