血虚につかう漢方薬~肌の乾燥、生理不順、目のかすみが気になりませんか?
血虚とは?
血虚とは血が不足した栄養が不足している状態です。
「血」は「けつ」と読み、漢方の世界では血(ち)としての働きだけでなく、栄養のある物質、身体に潤いを与える物質と幅広い働きがあります。
漢方では西洋での血液に栄養・滋潤の働きが加わったものを血と考えています。
血虚になると、栄養不足、乾燥に関する様々な症状を呈します。
・顔色につやがない
・爪がもろい
・頭のふらつき
・目のかすみ
・筋肉のけいれん
・手足のしびれ
・動悸
・不眠
・驚きやすい、いらいら
・生理の遅延
・生理量が少ない
・生理不順
血の栄養が不足することで顔色につやがなくなり、爪に栄養が行き渡らないため爪がもろくなります。
頭に栄養が十分に届いていないため、頭のふらつき、目のかすみになります。
筋肉を滋養できなくなるため、筋肉が渇き、けいれんし、手足のしびれとなります。
血は心と関連が強く、血虚によって動悸となります。
血の不足によって、気の戻る場所がなくなり、夜は不眠になります。
血虚によって、精神的な衝撃を緩衝することができなくなり、驚き、イライラなどが生じやすくなります(血虚生風)。
血に関することのため、女性では生理関連の症状も多くみられます。
血が少ないため、生理開始まで血が貯まりにくく、生理周期が遅れがちになります。
血が少ないため、生理量も少なくなります。
総じて、血虚は生理不順になりやすくなります。
血虚体質にあった食事
日常で簡単に変更できることはゴマを黒ゴマに変更することです。
実は消風散という漢方薬にはゴマが入っています。
漢方でつかうゴマは白ゴマではなく、黒ゴマです。
黒ゴマは色が濃く、血を養います。
ほかにもヨモギ、きくらげ、黒豆、ほうれん草、肉類、魚類、貝類もおすすめです。
血虚体質にあった生活
血虚とは栄養が不足している状態です。
そのため、身体にしっかり栄養を与えてあげる必要があります。
しっかり食事をとりましょう。ダイエットのし過ぎは厳禁です。
血虚と身体が虚に傾いている状態のため、無理な運動はせず、適度な運動を心がけましょう。
血虚につかう漢方薬は?
血虚の症状から選び、四物湯、当帰芍薬散、加味逍遙散加川芎地黄、十全大補湯、当帰飲子、芎帰調血飲第一加減、温清飲、荊芥連翹湯、七物降下湯、連珠飲、抑肝散などがあります。
血虚の基本となる漢方薬
血虚につかう代表的な漢方薬があります。
それは四物湯(しもつとう)という漢方薬です。
四物湯は漢方を学ぶ上でも重要な漢方薬ですが、なかなか見る機会が少ないです。
理由として、sが基本構成となり、多くの漢方薬にすでに入っているためです。
十全大補湯、当帰飲子、芎帰調血飲、荊芥連翹湯、七物降下湯、連珠飲の構成に四物湯が取り入れられています。
四物湯自身を見ることは少ないですが、十全大補湯などの四物湯がすでに入っている処方はよくみます。
四物湯は当帰(とうき)・芍薬(しゃくやく)・川芎(せんきゅう)・地黄(じおう)の4つの生薬から構成されています。
全て血を養う生薬であり、血の不足している状態に血を補います。
四物湯の効能効果は「体力虚弱で、冷え症で皮膚が乾燥、色つやの悪い体質で胃腸障害のないものの次の諸症:月経不順、月経異常、更年期障害、冷え症、しもやけ、しみ、貧血、産後あるいは流産後の疲労回復、血の道症」まさに血虚の症状を表しているといえます。
むくみと生理不順
むくみと血虚による生理不順があるときは当帰芍薬散が向いています。
当帰芍薬散は婦人科で頻用の漢方薬の1つです。
当帰芍薬散には当帰・芍薬・川芎が入り、四物湯に入っている生薬のうち3つも使われ、血を補う働きがあります。
当帰芍薬散には白朮・茯苓・沢瀉の水のめぐりを改善する生薬も多く入り、浮腫み、めまいの原因となる水を追い出します。
生理不順、更年期などの血の不足と、浮腫みの水の鬱滞があるときは当帰芍薬散が適しています。
イライラ、不安と血虚
いらだち、精神不安、肩こりなどがあるときの頻用の漢方薬に加味逍遙散があります。
加味逍遙散も当帰芍薬散と並び、婦人科の代表的な漢方薬の1つです。
加味逍遙散には柴胡・薄荷の気のめぐりを改善する生薬と、当帰・芍薬の血を補う生薬から構成されています。
加味逍遙散は気のめぐりに特化しているのですが、血を養う生薬は当帰・芍薬の2つしか入っていないため、血虚に対して使うには少し物足りません。
医療用や市販薬には存在しないのですが、薬局製剤の煎じ薬には加味逍遙散に川芎・地黄を足した加味逍遙散加川芎地黄という漢方薬があります。
加味逍遙散にもともと入っている当帰・芍薬に川芎・地黄が加わることで、四物湯ができあがります。
加味逍遙散のいらだち、不安、肩こり、生理不順、更年期の症状に、肌の乾燥などの血虚もあるときは加味逍遙散加川芎地黄が適しています。
怒りやすい、イライラ
血虚の症状があると、風という急な怒り・いらいらが起こりやすくなります。
血虚からくる怒り・いらいらのことを血虚生風といいます。
怒り・いらいらを発散する生薬と、その原因になっている血虚を防ぐ必要があります。
血虚からくるいらいらには抑肝散が適してます。
抑肝散には柴胡・釣藤鈎の気をめぐらせ、怒りを鎮める生薬が入っています。
また当帰・川芎という血を補う生薬も入っているため、イライラの原因となる血虚にも対応しています。
神経が高ぶり、怒りやすい、イライラのある神経症、不眠症、更年期、ホルモンバランスの乱れには抑肝散が適しています。
めまい、ふらつき、動悸
血虚の症状と、めまい・ふらつきがあるときは連珠飲(れんじゅいん)が向いています。
連珠飲は医療用になく、市販ではルビーナに入っている漢方薬です。
連珠飲は当帰・芍薬・川芎・地黄の四物湯の血を補う働きと、茯苓・桂皮・白朮・甘草(苓桂朮甘湯の組み合わせ)のめまい・ふらつき・動悸につかう漢方薬があわさった漢方薬です。
血虚による貧血、更年期の症状と、めまい、ふらつき、動悸の症状があるときは連珠飲が適してます。
気虚と血虚
疲労倦怠感などの気虚の症状と、貧血などの血虚の症状のどちらもあるときは十全大補湯が向いています。
十全大補湯は人参などの気を補う生薬と、四物湯の血を養う漢方薬があわさった漢方薬です。
そのため気の不足と、血の不足のどちらにも対応しています。
体力が弱かったり、貧血があったりするときは十全大補湯が気血双補します。
肌の乾燥とかゆみ
血虚による肌の乾燥と、皮膚のかゆみがあるときは当帰飲子が向いています。
当帰飲子には当帰・芍薬・川芎・地黄の血を補う生薬と、防風・刺蒺藜などのかゆみの原因となる風を発散する生薬から構成されています。
肌の乾燥とかゆみがあるときは当帰飲子があります。
血虚と瘀血(けつ)と気滞
身体全体で見ると血虚に寄っているが、ある一部分では瘀血(血のめぐりが悪い)になっていることがあります。
血虚は血の不足で、瘀血は血の鬱滞で、血虚と瘀血は反対の印象ですが、漢方では両者が併存することもよくみられます。
肌の乾燥、生理血の薄さもあって、生理痛は刺すように痛い場合は血虚と瘀血がどちらもあると考えられます。
桂枝茯苓丸は瘀血に対応していますが、血虚には対応していません。
当帰芍薬散は血虚に対応していますが、瘀血には弱いといえます。
血虚・瘀血そして気滞にも対応している漢方薬が芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)です。
芎帰調血飲第一加減には当帰・芍薬・川芎・地黄の補血薬の四物湯の組み合わせが入り、血虚に対応しています。
牡丹皮・桃仁・紅花・延胡索の活血といわれる、血をめぐらせる生薬も多く入っています。
さらに烏薬・枳実の気をめぐらせる生薬も入っています。
肌の乾燥、生理血の薄さもあって、生理痛は刺すように痛い場合の生理不順には芎帰調血飲第一加減が適しています。
血虚と高血圧
血虚という血の不足と、気の高ぶりによる高血圧には七物降下湯が向いています。
七物降下湯は当帰・芍薬・川芎・地黄の四物湯の組み合わせに黄耆・釣藤鈎・黄柏をくわえたものです。
黄耆(おうぎ)・釣藤鈎(ちょうとうこう)が高ぶっている気を鎮め、黄柏が熱を下へ引っ張っていくことで、高血圧によるのぼせ・肩こり・のぼせ・頭重を緩和します。
肌のかさかさ、色つやの悪さ、湿疹・皮膚炎
血虚によって肌が乾燥と、身体に熱がこもっているときには温清飲が向いています。
温清飲は湿疹・皮膚炎の適応のある漢方薬で、アトピー性「皮膚炎」にもつかわれます。
慢性的な皮膚炎の場合、肌が傷つき、乾燥し、血虚の状態になっています。
血が不足すると、身体を冷やすことができず、炎症や熱感の原因にもなります。
熱感があることで、かゆみになり、さらにかきむしり、血虚へと悪循環となります。
温清飲には四物湯という血を補う生薬と、黄連解毒湯という熱を冷ます生薬が入っています。
四物湯が栄養を補い、肌に栄養を与え、肌の乾燥を防ぎます。
黄連解毒湯が炎症・かゆみの原因となる熱を冷まします。
温清飲は、皮膚はかさかさして色つやが悪く、のぼせるものの湿疹・皮膚炎に適しています。
さらに温清飲から派生した漢方薬の荊芥連翹湯、柴胡清肝湯などもあります。

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