不安障害、不安神経症、社交不安症を改善するための漢方薬、おすすめの食べ物・生活習慣

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・灯心堂漢方薬局 薬局長
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・漢方を通して、皆様が少しでも健康に過ごせる手助けをできればと思います。>>プロフィール記事はこちら

西山光です
質問

・不安症に合う漢方薬は?
・どう使い分けるの?

現代の生活ではストレスが全くない状況は難しいと思います。

不安になりやすかったり、怖がりやすかったりすることはないですか?

常に不安が続いていたり、急に不安な気持ちがこみあがってきたり、電車にのっていると気持ちがふさがって電車に長く乗れないなどありませんか?

西洋医学的には病名はなくても、漢方的にみると原因があるかもしれません。

漢方で少しでも不安が和らげられればと思います。

・不安で気持ちが落ち着かない、不眠→帰脾湯
・不安で胸がつかえる、苦しい→半夏厚朴湯
・不安神経症、胸やけがある→茯苓飲合半夏厚朴湯
・緊張しやすい、オドオドする→桂枝加竜骨牡蛎湯
・急に泣いてしまう、急に胸がドキドキする→苓桂甘棗湯

 この記事を読んでわかること
・不安障害とは、原因、薬について
・漢方薬のつかいわけ
・おすすめの食事、生活習慣

目次

不安障害とは?

不安や心配が敏感になってしまい、日常生活に支障をきたしている状態のことです。

不安障害、不安神経症、神経不安症などともいいます。

急に不安に襲われて、ドキドキ動悸がすれば、パニック発作。人の注目をあびるときに強い不安を感じるときは社交不安症、社会不安症ともいいます。

適度な不安は生きていくうえで必要な感情ですが、生活するうえで苦痛になってしまいます。

不安障害の主な症状について、こころ診療所チャンネル様の動画がとてもわかりやすいので載せておきます。

不安障害、不安神経症、社交不安症の原因は?

不安障害のはっきりとした原因はわかっていません。

精神的な性格、環境、遺伝的な要因などともいわれています。

社交不安症(社会不安症)の薬は?

社会不安症の適応のある西洋薬には、フルボキサミン、パロキセチン、エスシタロプラムがあります。

『社交不安症の診療ガイドライン』でも上記の3つの薬が第一選択薬と記載されています。

不安症の体質は血虚と気滞

漢方の考えを簡単に説明すると、悪いものを追い出し、足りていないものは補う、ことが鉄則です。

同じ病気でも人によって悪いものの溜まり具合と、不足の程度が異なり、それが体質の違いです。

不安症の場合、追い出すべき悪いものは気滞で、足りていないものは血の血虚の体質の方に多いです。

気滞

「気」があることで身体の身体的機能、精神的機能を円滑に行えます。

「気」の巡りが悪くなると、身体的にも精神的にも停滞した症状がみられます。

不安、いらいらの精神的な症状は「気滞」が原因です。

しかし「気滞」だけでは、過剰な不安にはつながりません。次に説明する「血虚」があわさることで過度な不安になります。

血虚

漢方では「血」は血液だけでなく、潤いや栄養を与える意味合いがあります。「血」の栄養が不足した状態を「血虚」といいます。

血虚でも、とくに心の血が不足することで精神的に不安定になります。

意識を担当する「心」の血が足りないことで、過剰な不安になり、動悸が生じやすくなります。

急に不安に襲われるのはなぜか?

漢方で考えると、急に不安に襲われたり、起こっていないことに不安になるのは血虚が原因といえます。

日常生活でのストレスによって「気滞」が生じます。心の血が充実していれば、ちょっとした「気滞」で心が動じることはありません。

心の血が不足していると、ちょっとした「気滞」でも心が動揺してしまい、過度な緊張、動悸になります。

不安症におすすめの5つの漢方薬

漢方薬なので、症状によってつかいわける必要があり帰脾湯、半夏厚朴湯、茯苓飲合半夏厚朴湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、苓桂甘棗湯がおすすめです。

不安で気持ちが落ち着かない、不眠症のときは帰脾湯

日常的に不安で気持ちが落ち着かない方、ちょっとしたことで急に不安になってくる方は心の血が不足しているといえます。

・精神不安
・心身がつかれている
・不眠
・貧血

帰脾湯の酸棗仁・竜眼肉が心血・肝血を養い、ちょっとしたこで動揺しないような体質にします。

心血不足、肝血不足は不眠症の原因にもなります。

不安で気持ちが落ち着かない、急に不安になりやすいときは心血を養う帰脾湯がおすすめです。

不安、気分がふさぐのが気になるときに半夏厚朴湯

気の鬱滞から気の詰まりが生じることで、のどのつかえ感、不安感へとつながっていきます。

・不安感
・気分がふさぐ
・のどのつかえ感

・吐き気

半夏厚朴湯の厚朴・蘇葉が気を巡らせ、半夏がのどの違和感をとってくれます。

不安の症状、のどがつかえるような症状があるときは半夏厚朴湯が適しています。

不安神経症で胸やけもあるときは茯苓飲合半夏厚朴湯

気滞の症状が強いと不安神経症になり、気滞が消化管の動きを悪くすることで胃酸が逆流し、胸やけもみられます。

・不安神経症
・胸がつかえる
・胸やけ
・気分がふさぐ

茯苓飲合半夏厚朴湯は茯苓飲と半夏厚朴湯があわさった漢方薬で、相乗効果で気の巡りを改善し、不安と胸やけにも効果を発揮します。

不安感、胸のつまり、胃酸の逆流もあるときは茯苓飲合半夏厚朴湯が適しています。

驚きやすい、オドオドするときは桂枝加竜骨牡蛎湯

普段からオドオドしやすいときは不安が込みあがっている状態といえます。

・オドオドしている
・驚きやすい
・不安感
・不眠症

桂枝加竜骨牡蛎湯の竜骨・牡蛎が不安な気持ちを鎮め、気持ちを落ち着けてくれます。

驚きやすい、オドオドし、不安があるときは桂枝加竜骨牡蛎湯が適しています。

急に泣いてしまう、急に胸がドキドキするときは苓桂甘棗湯

電車の乗るとき、夜中に不安で泣いてしまうときは、甘味で不安を和らげます。

・急に動悸がしてくる
・予期不安
・電車に乗る前に
・夜中に泣いてしまう

急激に込みあがってくる不安は苓桂甘棗湯の甘草・大棗の甘味で不安を和らげます。

苓桂甘棗湯は頓服で服用してもいいですし、日常的にも服用できます。

急に動悸がしてきた、動悸が来そうなときは苓桂甘棗湯が適しています。

不安症におすすめの食べ物

不安症は気滞と血虚が原因と考えられます。気滞をめぐらせるためには紫蘇・薄荷などの香りの良いたべもの、血虚を改善するためには黒胡麻や色の濃い野菜がおすすめです。

気滞におすすめの食べ物

良い香りは気を巡らせてくれます。

紫蘇、薄荷、セロリ、三つ葉などの香味野菜、お茶であればジャスミンティーがおすすめです。

血虚におすすめの食べ物

色の濃い野菜は血を養ってくれます。

人参、きくらげ、ほうれん草、卵、肉類、魚類、ゼラチン、なつめ、クコの実、りゅうがんにくがおすすめです。

不安症におすすめに生活習慣

不安症の原因となる気滞はめぐらせ、血は補っていくことが重要です。

気滞をめぐらせるためには運動が適しています。運動して、肺をつかうことで気が巡っていきます。激しい運動は気血を消耗してしまうため、ウォーキング程度の強度がおすすめです。

血虚体質を改善するためには、たんぱく質が豊富な食事をとることです。ダイエットは禁忌です。

目の使い過ぎも血を消耗してしまうため、スマホの使いすぎには注意です。

不安症におすすめのツボ

不安症におすすめのツボ(経穴)は内関、少衝

内関

内関(ないかん)は心包経のツボでパニック、動悸がみられるときにおすすめです。

少衝

少衝(しょうしょう)は少陰心経のツボで動悸、息苦しいときにおすすめです。

緊張しやすい、あがり症の相談事例1

40代女性。極度のあがり症、赤面症。緊張すると、ふるえ、顔のこわばり、動悸、発汗がでるようになる。便秘気味。イライラもあるが、不安も強い。

お話をお伺いしていると、緊張が強く、便秘気味でもあったことから、気の高ぶりを鎮める漢方薬をご提案しました。

1か月後、「あまり変わらない」とのこと。

自分としては効果があると思っておすすめしたのですが、効果がなかったとのこと。

次に、心の血を養う漢方薬をおすすめいたしました。心の血を補うことで、気持ちが動揺しづらいなると考えました。

1か月後、「こっちの漢方の方が効いている気がする」とのこと。その後はこちらの漢方薬を継続していただき、緊張もしづらくなってきているとのことです。

緊張がかなり強く、ふるえ、顔のこわばりもみられたたため、気の高ぶりからくる過度な緊張だと考えていたのですが、実際には効果がありませんでした。この方の場合は、血を養うことで効果がみられました。症状の考察が重要だと感じされられました事例です。

緊張しやすい、あがり症の相談事例2

40代女性。過度な緊張と多汗症。「最近パートをはじめて、半年くらい経つが緊張する。人前に立つと、汗がたくさんでる」「20代のときに社会不安症といわれた。」眠りも浅く、便秘きみ。命の母を服用して、少しマシになったが、まだまだ緊張と多汗が強いことでお悩み。

不安感からの緊張が強いため、心の血を養う漢方薬をおすすめいたしました。

また多汗症もあり、身体の虚と、気持ちの同様の程度が強いため、気を鎮める漢方薬を併用していただきました。

1か月後、「だらだら汗でるのは少し落ち着いてきた。緊張も少し落ち着いてきた。」

さらに1か月後「緊張はマシになってきた。8月だからか、汗の方が気になる」

心の血を養う漢方にて緊張の方はしっかり緩んできており、効果も実感がみられました。ただ多汗の症状の方はまだ改善できていないため、現在では過度な緊張よりも多汗症の症状の漢方薬を中心に服用していただいております。

不安症、不安障害といっても体質は人それぞれです。実際には気滞と血虚だけでなく、気虚や瘀血なども関係してきます。不安症でお悩みの方はぜひ気軽にLINEからでもご相談ください。

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