十全大補湯の使い方と合わない人の特徴

質問

・十全大補湯はどういうときに服用したらいいの？
・合わない人っているの？

このようなお悩みに漢方薬局の薬剤師がお答えします。

 　この記事を読んでわかること
・十全大補湯の効能効果
・十全大補湯の構成生薬
・合う人、合わない人
・副作用、長期服用について

十全大補湯の効能効果

 　十全大補湯は「気虚」と「血虚」のどちらもある、疲労倦怠感、食欲不振、貧血によく使用されます。

体力虚弱なものの次の諸症：病後・術後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血

十全大補湯の効能効果(薬局製剤)

十全大補湯の効能効果はメーカーによっても異なるので、ご購入の際はしっかりパッケージを確認してください。

十全大補湯には気・血のどちらも養う働きがあります。

十全大補湯の効能効果を大きく分けると、気を補う働きと血を養う働きに分けられます。

・気を補う働き(病後・術後の体力低下、疲労倦怠感、食欲不振)
・血を養う働き(貧血、手足の冷え)

気を補う働き

十全大補湯の効能効果に、「体力虚弱なもの」「病後・術後の体力低下」「疲労倦怠感」「食欲不振」と記載があり、身体の元気がないときに使う漢方薬だとわかります。

体力虚弱、食欲不振、疲労倦怠感などの症状は「気虚」の状態といえます。

漢方でいう「気」は身体の機能のことをあらわします。

「気虚」とは身体の機能が低下した状態であり、疲労倦怠感などの症状がみられやすくなります。

また気は消化機能とも密接に関係し、気虚になると食欲不振などがみられます。

十全大補湯の人参・黄耆などの生薬が気を補い、身体の機能を高めてくれます。

十全大補湯は気を補うことで疲労倦怠感、病後・術後の体力低下、食欲不振に効能効果があります。

血を養う働き

効能効果に「貧血」とあるように十全大補湯は血を養ってくれます。

漢方では貧血のように血の不足した状態のことを「血虚」といいます。

漢方でいう「血」は血液だけでなく、栄養の意味合いがあります。

「血虚」になると、貧血だけでなく、冷え性、肌の乾燥、髪の荒れ、生理不順などになりやすくなります。

十全大補湯の当帰、芍薬、川芎、地黄などの生薬が血を養い、身体に栄養を補ってくれます。

十全大補湯は血を養うことで貧血や冷え性に効能効果があります。

ねあせに対する働き

十全大補湯の効能効果に「ねあせ」とあります。

気がしっかりあれば、汗の穴を閉じることができます。

反対に皮膚の気が不足すると、毛穴を閉じることができなくなり、汗が漏れ出やすくなります。

十全大補湯に入っている黄耆という生薬は皮膚の気を補う働きがあります。

ねあせの効能の記載ある漢方薬は十全大補湯のほかに、桂枝加黄耆湯や玉屏風散などもありますが、それらにも黄耆は入っています。

十全大補湯の黄耆が皮膚の気を補うことで、汗が漏れ出ないようにし、ねあせに効能効果があります。

十全大補湯に入っている生薬・成分

 　十全大補湯には気を補う生薬と血を養う生薬が多く入っています。

十全大補湯には10種類の生薬が入っています。

人参、黄耆、白朮、茯苓、当帰、芍薬、地黄、川芎、桂皮、甘草が入っています。

十全大補湯に入っている生薬を働き別にまとめてみました。

気を補う生薬

十全大補湯に入っている人参、黄耆、白朮、茯苓、甘草は気を補う生薬です。

人参は気を補う代表的な生薬で、知っている方も多いと思います。高麗人参、朝鮮人参という言葉も聞いたことがあるかもしれません。

↑人参。漢方の人参はウコギ科の植物。普段、食べる人参はセリ科で、別の植物です。

十全大補湯の人参、白朮、茯苓、甘草の４つの生薬は「四君子湯」という組み合わせで、気を補う構成です。

十全大補湯にはさらに黄耆(おうぎ)という生薬も入っています。漢方の世界では黄耆も、人参と並ぶ気を補う代表的な生薬です。

人参と黄耆の組み合わせは気を補うときによくみられ、人”参”と黄”耆”が入った漢方薬を参耆剤(じんぎざい)という言葉もあるくらいです。

十全大補湯は人参、黄耆などの生薬が気を補うことで、身体の働きを高め、元気づけ、胃腸の働きを助けてくれます。

十全大補湯は人参、黄耆などの気を補う生薬から構成されています。

血を養う生薬

 　十全大補湯には当帰、芍薬などの血を養う生薬も入っていることが特徴的です。

当帰(とうき）。血を養う代表的な生薬。人参は薄黄色いのに対し、当帰は黒っぽい色です。

十全大補湯に入っている当帰、芍薬、川芎、地黄は血を養う生薬です。

当帰、芍薬、川芎、地黄の組み合わせは「四物湯」という構成で血を養う理想的な組み合わせです。

十全大補湯には当帰、芍薬などの血を養うことで貧血、冷え性に対応しています。

生薬のまとめ

 十全大補湯は「気」を補う生薬、「血」を養う生薬のどちらも入っており、「気血双補」の漢方薬

十全大補湯が合う人・合わない人

 　十全大補湯は気・血のどちらも補う漢方薬のため、疲労倦怠感、貧血のある方に

注意が必要なのは、疲労倦怠感というのは気の不足だけが原因でないことです。

例えば、しんどいときでも身体を動かすと楽になってきたな、と感じことはありませんか？

最初はけん怠感があっても、身体を動かすことで徐々に身体が楽になってくるのは気滞が原因と考えられます。

身体を動かすことで、疲労倦怠感が軽減するタイプは「気虚」ではなく、「気滞」の体質ため、十全大補湯は適していません。

また十全大補湯は血を養い、身体を温める働きがあるため、暑がりの方には向いていません。

「十全大補湯が効かない」という経験をされた方もいらっしゃると思います。十全大補湯が効かない理由としては、体質が気虚・血虚ではなく、気滞や他の体質の可能性があります。

十全大補湯は更年期障害、男性の更年期に効くのか？

「十全大補湯は更年期に効きますか？」と質問があった場合、回答はNOです。

添付文書に、更年期障害の記載がないためです。

しかし、漢方薬は病名でなく、体質でつかいます。

女性の更年期であろうと、男性の更年期であろうと、症状として、「体力虚弱な体質で疲労倦怠感や手足の冷え」でお悩みであれば、十全大補湯はおすすめできます。

更年期といっても、症状はイライラから抑うつ、ホットフラッシュなど様々です。

「更年期だから、この漢方薬がいい！」というものはありません。漢方薬は体質で選びます。漢方薬の効能効果と、ご自身の状態が合っていれば服用していただいて大丈夫です。

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十全大補湯の副作用、長期服用の注意点

副作用

十全大補湯の副作用としては、皮膚(発疹・発赤、かゆみ)、消化器(胃部不快感)、偽アルドステロン・ミオパチー(けん怠感、筋肉痛)、肝機能障害(発熱、かゆみ、けん怠感、黄疸)などがみられることがあります。

これらの症状があらわれた場合は、副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、医師又は薬剤師に相談をしてください。

長期服用について

漢方の長期服用にてよく問題になるのが、甘草です。

甘草を多くとっていると副作用が生じやすくなります。

メーカーにもよりますが、一般的に十全大補湯に含まれる甘草の量は1.5gです。

甘草の1.5gというのは多くはありませんが、ほかの漢方薬を併用したり、人によっては副作用がでたりすることがあります。

手足の脱力感、筋肉痛、しびれがみられるようになったときは甘草による副作用の可能性があります。

そのような症状がみられた場合は直ちに服用を中止してください。