多汗症を改善するための漢方薬の選び方とその使い方

 この記事を書いた人

・灯心堂漢方薬局 薬局長
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西山光です

多汗症でお悩みではないですか?

頭部多汗症、顔面多汗症など、人によって部位も異なります。

漢方の目線での多汗症の考え方について解説しています。

実際の相談事例も最後に記載しています。

結論

漢方で多汗症の体質は腎虚気滞、気虚、気滞、陰虚の体質が考えられる。

腎虚気滞:更年期で汗がでて困る方

気虚:身体の機能が弱まり、汗を止められない方

気滞:緊張やストレスから汗をかく方

陰虚:火照りが強い方

これらの体質にあわせて、漢方薬をつかいわけていきます。

 この記事を読んでわかること
・多汗症とは
・漢方の考え方
・実際の相談事例

漢方をうまく取り入れて、いつも通りに生活を送れるようになればと思います。

目次

多汗症

多汗症とは

運動することで汗をかくのは自然のことです。

しかし、ちょっと動いただけで汗をかきやすいのは何か原因があるかもしれません。

全身多汗症→全身から汗がでる

頭部多汗症→頭からの汗が多い

顔面多汗症→顔からの汗が多い


・手掌多汗症→手のひらの汗が多い

・足蹠多汗症→足の裏の汗が多い

・腋窩多汗症→脇の下の汗が多い

多汗症については、youtubeのクリニックフォア 医療・健康情報チャンネル様の動画が大変わかりやすいです。こちらの動画を参考にして、病院の受診をおすすめします。

多汗症の症状

多汗症は汗が増加する疾患です。全身性多汗症と、局所多汗症があります。

どちらも原因不明の多汗症(原発性)と、別の疾患など原因がわかっている多汗症にわかれます。

原因のわからない局所多汗症を原発性局所多汗症といいます。

・全身→全身性多汗症

・身体の一部→局所多汗症

原因不明のもの、多汗症の原因がわかっているものにわかれます。

多汗症の原因

多汗症の原因は様々です。

当店で相談が一番多いのは更年期の方の多汗症です。更年期になり、顔・頭の汗で困っている方の相談が多いです。

多汗症の原因はほかにも、甲状腺の問題、神経障害によるもの、緊張などの精神的なものなどがあります。

ただ実際には原因がわかることは少なく、原因不明(原発性)の多汗症が多いとされています。

多汗症の治し方

多汗症の治療法としては、塩化アルミニウム液の塗布、プロパンテリンの内服、ボツリヌス注射、イオントフォレーシス(弱い電流を流す)などがあります。

多汗症の漢方での考え方

多汗症の漢方での原因は腎虚気滞(更年期)、気滞、気虚、陰虚が考えられます。

更年期(腎虚気滞)の多汗症

漢方でいう「腎」は水の巡りを担当する臓腑であり、年齢とともに弱ってくる臓腑でもあります。

更年期は「腎」の働きが弱りやすいタイミングであり、また更年期の症状としてイライラ・不安があるように「気滞」も生じやすい時期といえます。

・更年期(50歳前後)の多汗症
・プレ更年期(35歳以降)の多汗症
・顔は火照るが、足は冷える

「腎虚」で水の巡りが悪くなり、気滞でめぐりが悪くなることでほてり・滝汗・汗が止まらない症状につながります。

腎虚気滞の場合は火照りはあるが、足先は冷えるなど、体全体での冷え・熱の循環がうまくいっていません。

この場合は、補腎しつつ、気の巡りを改善することで、汗の量は適切になり、また体の活力も増え、元気がでるようになります。

更年期で多汗の方の実際の相談事例は最後に記載しています。

気虚体質の多汗症

漢方での「気」は身体の機能のことをいいます。

「気虚」は身体の機能が低下し、汗を止めるだけの元気がない状態のことです。

・少し動いただけで汗をかく
・疲れやすい
・むくみやすい

気を補うことで、汗をきちんと止められる体質になります。

気虚体質の多汗症には防已黄蓍湯をつかいます。

防已黄耆湯の黄耆が肌膚の気を補い、防已・白朮が水の巡りを整えることで多汗症に効能効果を発揮します。

気滞体質

「気」の巡りが悪いことで、身体の機能が正常に働かず、汗をかきやすくなります。

・緊張から汗をかく
・精神的なストレスから汗をかく
・不安になりやすい

緊張から汗をかくときは、緊張しないような体質にしていくことが優先されます。

気滞からの緊張であれば四逆散、逍遙散、不安が強いときは心の血が不足しているので帰脾湯などをつかいます。

陰虚体質

「陰虚」とは「陰」という体の潤いを不足した状態です。

「陰虚」になることで、身体が熱に傾き、汗をかきやすくなります。

・暑がり
・舌に苔がない
・寝汗をかく

陰虚からの多汗症のときは、火照りやすい陰虚の体質を改善することを優先します。

知柏地黄丸などにて潤し、熱を冷まし、火照りやすい体質を改善していきます。

実際の相談事例1

60代後半女性。頭から大量の汗がでる。体が火照りやすい。5年前に病院で漢方をもらったことがあるが、効かなかった。顔は火照りやすいが、足は冷える。

この方の場合、すぐに汗をかいてしまい、それでお困りとのことでした。

そこで補腎の漢方薬と気血をめぐらせる漢方薬を併用していただきました。

すると3か月後には、「汗が全く気にならなくなりました。火照りもなくなり、冷えもなくなりました。なんだか体も元気がでてきた気がします」といっていただけました。

服用していると、身体が元気がでるようなので、今も服用をつづけていただいています。

実際の相談事例2

36歳女性。頭部顔面多汗症。顔から汗が大量にでる。今までにプロパンテリン、加味逍遙散など服用してきたが、効かなかった。季節関係なく、汗をかく。とくに夏場は汗でメイクが崩れ、髪も濡れる。火照りやすい。緊張しやすい。生理痛がひどい。

滝汗をかき、それで日常生活も困っているとのことでした。

火照りを冷ます漢方薬と、気血のめぐりを改善する漢方薬を服用していただきました。

3か月後には、「今まで冬も寒く感じることはなかったけど、今は1月だけど、普通の人と同じように寒く感じるようになりました。家族に長袖を着ているのをびっくりされました。汗もかくが、滝汗のようにかかなくなった。生理痛ももだいぶ楽になってきました。」といって、いただけました。

その後も服用していただいていましたが、滝汗は落ち着いてきたので、半年で廃薬になりました。

実際の相談事例3

39歳女性。体もですが特に頭やおでこ、顔から汗が吹き出てとても困っています。汗は少しでも暑かったり湿度が高い季節になると汗がふきでてきます。髪が濡れるほどで本当に困っています。頻尿もひどいときは30分も経たないうちに尿意がきます。暑がりですが体は冷えているように思います ほてりやすいです。

この方の場合は、補腎の漢方薬と、気血の巡りを改善する漢方薬を服用していただきました。

3か月ほど服用していただき、「飲み始めてからとっても体調が良く、なんだか手足のむくみが取れてきて水と血がめぐっている感じがすごくします✨お肌の調子も唇の色も良くなりました😳頻尿は日中はまだ近いのと舌の歯型もまだあります。むくむこともあったり、汗もまだでますが調子は良いです😊」といっていただけました。

汗や頻尿の症状が完全に改善したわけではありませんが、かなり良くなってきている自覚があるようです。

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