PMDD(月経前不快気分障害)を漢方で改善|生理前のつらい落ち込み・イライラに、抗うつ薬に頼る前にできること

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西山光です

「生理前になると、理由もなく涙が止まらなくなる」

「些細なことでイライラして、家族やパートナーに強くあたってしまう」

「自分なんていない方がいい、と思い詰めてしまう」

——それなのに、生理が始まると、うそのように元の自分に戻る。

毎月そのくり返しに、心も体も疲れきっていませんか。

生理前だけ、まるで別人のように人格が変わってしまう。それは、PMS(月経前症候群)の重い状態であるPMDD(月経前不快気分障害)かもしれません。

病院(婦人科や心療内科)では、抗うつ薬や精神安定剤をすすめられることが一般的です。ですが、「副作用が怖い」「薬に頼りたくない」「できれば体に負担の少ない方法から試したい」と迷われる方も、とても多いのではないでしょうか。

灯心堂漢方薬局にも、ご自身で調べて「PMDDかもしれない」と気づき、ご相談に来られる方が増えています。

この記事では、PMDDを漢方の視点からどう考え、どう体質を整えていくのかを、実際にご相談を受けた症例とあわせてお伝えします。今つらい思いをされている方の、一つの手がかりになればと思います。

目次

PMDDとは?PMS(月経前症候群)との違い

PMDDとは、月経前不快気分障害(Premenstrual Dysphoric Disorder)のことです。

広い意味ではPMS(月経前症候群)の一種ですが、PMSの中でも、とくに精神的な症状が強く、日常生活に支障が出るほどの状態をPMDDと呼びます。

生理のある女性の多くがPMSを経験するといわれますが、そのなかでPMDDにあたる方は全体の約3〜5%と報告されています。

PMS(月経前症候群)PMDD(月経前不快気分障害)
主な症状心と体の両方(むくみ・頭痛・イライラなど)精神症状が中心(強い抑うつ・怒り・不安)
重さ日常生活は送れることが多い仕事・家事・人間関係に支障が出る
気分の落ち込みあっても軽め「消えたい」と思うほど強いことも

「生理前になると、気分の落ち込みが激しい」「夜になると涙が止まらない」「怒りが抑えられない」——こうした精神的なつらさが強い場合は、PMDDの可能性があります。

⚠️ 強い落ち込みや「消えてしまいたい」という気持ちがつづくときは、我慢せず、まず婦人科・心療内科などの医療機関にご相談ください。 PMDDの診断は医療機関で行われます。漢方は、その上で「体質から穏やかにしていきたい」という方の選択肢の一つです。


【セルフチェック】あなたのつらさはPMDD?

以下は、PMDDの特徴をやさしく整理したセルフチェックです。生理の3〜10日ほど前に強くなり、生理が始まると軽くなる——この波があるかどうかを思い出しながら、当てはまるものにチェックしてみてください。

気持ちの症状(この中で1つでも強く出ますか?)

  • 理由もなく気分がひどく落ち込む/急に悲しくなり涙が出る
  • イライラや怒りが抑えられず、人にあたってしまう
  • 強い不安感・緊張感におそわれる
  • 「自分なんて」と自分を強く責めてしまう

あわせて、こんな症状はありませんか?

  • 好きだったことにも興味がわかない
  • 集中できない
  • 強い疲れ・だるさで、朝起きるのもつらい
  • 食欲が変わる(過食・甘い物が止まらないなど)
  • 眠れない、または眠りすぎてしまう
  • いっぱいいっぱいで、自分をコントロールできない感じがする
  • 頭痛・むくみ・体の重さなどの不調もある

当てはまるものが多く、しかも生理が始まると軽くなる——そんな方は、PMDDの可能性があります。

大切なのは、これはあなたの性格が弱いからでも、わがままだからでもないということです。生理周期に伴うホルモンと、体のバランスの変化によって起きているもの。決して、あなたのせいではありません。

セルフチェックはあくまで目安です。正式な診断は医療機関で行われます。「これって私かも」と思ったら、まずはその気づきを大切にしてください。


PMDDになりやすい人・その原因を漢方から考える

西洋医学では、PMS・PMDDの原因は「排卵後のホルモンの乱れ」や「セロトニンなどの脳内物質の変動」と考えられています。

では、漢方ではどう考えるのでしょうか。

漢方では、生理前の精神的な不調を「血の道症(ちのみちしょう)」と呼びます。これは、月経など女性ホルモンの変動にともなって現れる、精神不安やいらだちなどの心と体の症状のことです。PMDDに見られる生理前のつらさも、この「血の道症」に含まれると考えられます。

鍵をにぎるのは、漢方でいう「肝(かん)」

女性の生理に深く関わるのが、漢方でいう「肝」という臓腑です。

「肝」というと肝臓を思い浮かべますが、漢方の「肝」はもっと広い意味を持ち、大きく2つの役割があります。

  1. 血(けつ)を蓄える … だから、血を消耗する生理と深く関係します
  2. 気(き)をめぐらせる … 心の安定や、感情のコントロールに関わります

生理前は、この流れが崩れやすくなります。

肝が血を蓄えている → 生理で血を消耗する → 肝が疲れる → 気のめぐりをコントロールできなくなる → イライラ・不安・落ち込みが起きる

つまり漢方では、PMDDの生理前の不調を「肝の疲れ」と「気のめぐりの乱れ」として説明できるのです。

こんな方は、生理前の不調が強く出やすい

  • もともと考え込みやすい・心配性
  • ストレスや心労が多く、休めていない
  • 出産を経験している(出産は気血を大きく消耗します)
  • 冷え性・低血圧・肩こりがある
  • 疲れやすく、貧血ぎみ

思い当たる項目があっても、悲観しないでください。体質は、漢方で少しずつ整えていけるものです。


何科に行けばいい?婦人科・心療内科、そして「漢方相談」という選択肢

「PMDDかもしれないけど、婦人科?それとも精神科・心療内科?どっちに行けばいいの?」

これは、とても多くの方が迷うところです。目安はこうです。

婦人科 … 生理そのものの不調や、ピルでの治療を相談したいとき。まずここから、という方が多い科です。

心療内科・精神科 … 気分の落ち込みや不安がとても強く、日常生活に大きく支障が出ているとき。抗うつ薬などでの治療が中心になります。

⚠️ 「消えてしまいたい」という気持ちが強いとき、眠れない・食べられない日がつづくときは、迷わず医療機関を受診してください。 つらさが限界に近いときは、医療の力を借りることが何より大切です。

そして、病院で診断がつかないとき、もう一つの選択肢として「漢方相談」です。

「病院で診断がつくほどではないけれど、毎月つらい」——そんな方が、漢方薬局に相談されるケースがとても増えています。

漢方は、症状を一時的に抑えるのではなく、その症状が出やすい体質そのものを整えていくアプローチです。医療機関での治療と並行して取り入れることもできます(詳しくは後述のQ&Aへ)。

灯心堂漢方薬局では、お一人おひとりのお話をじっくり伺い、体質と症状に合わせて漢方薬をお選びします。


抗うつ薬・ピル・命の母と、体質に合わせた漢方の違い

PMDDの対処法にはいくつかあります。それぞれの特徴を、正直に整理します。

抗うつ薬(SSRIなど) … セロトニンに働きかけ、つらい精神症状をやわらげます。効果を実感する方も多い一方で、「副作用が心配」「依存したくない」「やめるときが不安」と感じる方もいます。

低用量ピル(LEP) … 排卵を止めてホルモンの変動を抑えます。第一選択とされることが多いですが、体質的に合わない方や、「ピルは飲みたくない」という方もいらっしゃいます。

命の母などの市販薬 … 手軽に試せるのが魅力です。ただし、あなたの体質(不安が強いのか、イライラが強いのか、冷えや疲れがあるのか)に、必ずしもぴったり合うとは限りません。「試したけれど、いまひとつ効かなかった」という声を、ご相談でよくお聞きします。

漢方相談(体質に合わせて選ぶ漢方) … ここが市販薬との一番の違いです。同じ「生理前のつらさ」でも、不安が強い方と、イライラが強い方とでは、選ぶ漢方薬が変わります。 あなたの体質・症状に合わせて選ぶからこそ、根本から穏やかにしていくことを目指せます。

大切なのは、「どれが正しい」ではなく、あなたに合った方法を選ぶこと。そのために、次の章では実際にどんな漢方薬を使い分けるのかをお伝えします。


PMDDに使う漢方薬は?(帰脾湯・抑肝散・逍遙散)

PMDDの症状から考え、灯心堂では主に帰脾湯(きひとう)・抑肝散(よくかんさん)・逍遙散(しょうようさん)などを使い分けます。

  • 不安・気分の落ち込みが強い → 帰脾湯
  • イライラ・怒りが強い → 抑肝散
  • 不安もイライラも、どちらもある → 逍遙散

不安・気分の落ち込みが強いとき → 帰脾湯

不安が強いとき、漢方では「心・肝の血が不足している」と考えます。考え込みすぎたり、心労が重なったりすることで、心の血を消耗し、心が満たされず強い不安につながります。

そんな心血不足からくる不安感に、帰脾湯が適しています。

帰脾湯の効能効果:体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪いものの次の諸症:貧血、不眠症、神経症、精神不安

帰脾湯には、気を補う生薬(人参・黄耆・白朮・茯苓)と、血を養う生薬(当帰・竜眼肉・酸棗仁)がバランスよく入っています。とくに竜眼肉・酸棗仁は肝血・心血を養う働きがあり、これが精神不安をやわらげてくれます。

イライラ・怒りが強いとき → 抑肝散

イライラが強いときは、漢方では「気が高ぶりやすい状態」と考えます。

そんなときに適しているのが抑肝散です。

抑肝散の効能効果:体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、血の道症

抑肝散の主薬は釣藤鈎(ちょうとうこう)。気の高ぶりを鎮め、イライラの原因をしずめてくれます。さらに気をめぐらせる柴胡、血を養う当帰も入っており、生理前の怒りっぽさに合った処方です。

不安もイライラも、どちらもあるとき → 逍遙散

「落ち込みが強い日もあれば、イライラが爆発する日もある」——実際には、不安とイライラが同時にみられる方がとても多いです。

一見反対に思える不安とイライラですが、漢方ではどちらも「気のめぐりの悪さ」が原因と考えます。気がめぐらずふさぎ込めば落ち込みに、気が高ぶればイライラになる。根っこは同じなのです。

この滞った気をめぐらせるのが逍遙散です。

逍遙散の効能効果:体力中等度以下で、肩がこり、疲れやすく精神不安などの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、不眠症、神経症、血の道症

逍遙散には、気をめぐらせる代表的な生薬柴胡と、生理で不足しがちな血を養う当帰・芍薬が入っています。気をめぐらせ、血を養い、生理前のイライラ・不安の両方に寄り添う漢方薬です。


漢方薬は、体質や症状によって使い分けます。同じPMDDでも、あなたに本当に合う一剤は人それぞれです。「自分にはどれが合うんだろう?」と思われたら、ぜひ一度ご相談ください。 あなたのお話を伺いながら、一緒に選ばせていただきます。


漢方で穏やかになった方の症例

実際に灯心堂にご相談くださった方の例をご紹介します。

症例1:出産後から強くなった、生理前の落ち込み

【ご相談時】 41歳・女性。20年ほど前からもともと生理前の落ち込みがあったが、10年前にお子さんが生まれてから、そのつらさが強くなった気がするとのこと。生理の10日前から気分の落ち込みがかなりつらく、生理が始まると楽になる。肩が凝りやすく、寒がり。「先月からさらにしんどくなってきた」とご来店されました。

【漢方の見立て】 出産は気血を大きく消耗します。この方は、出産をきっかけに気血が不足し、気持ちの土台がゆらいでいると考えました。そこで、気血を養い、心の土台をつくる漢方薬を14日分おすすめしました。

【経過】 14日後に来店されたとき、「今ちょうど生理前なんですけど、気持ちが全然しんどくないんです!」とうれしいお声をいただきました。効果が出るまで時間がかかると思っていましたが、この方は比較的早く実感していただけました。

【その後】 今は数か月に一度、2週間分のお薬を取りに来てくださっています。

症例2:15年つづいた、生理前のネガティブと倦怠感

【ご相談時】 41歳・女性。15年前から生理前の落ち込みが強く、とくに27〜33歳の頃がつらかった。生理前になると何でもネガティブに考えてしまい、倦怠感もひどく、朝仕事に行くのもだるい。生理がくると一気に楽になる。ふだんから心配性で、低血圧・冷え性。健康診断では数値に問題なし。

【漢方の見立て】 生理前に強く出る不安と倦怠感、そして冷えや低血圧から、気血の不足があると考え、気血を養う漢方薬をおすすめしました。

【経過】 まず2週間服用していただいたところ、「“今日はマシかも”という日が増えてきました。飲んで6日目くらいから調子がよくなって、生理前でもそこまでしんどくない。肩こりもよくなった気がします」とのお声。

【その後】 気血を養うには時間がかかるため、じっくり体質を整えるべく、漢方薬を継続していただいています。


こうした「毎月のつらさ」は、我慢しつづける必要のないものです。あなたの生理前も、体質に合った漢方で、少しずつ穏やかにしていける可能性があります。


よくあるご質問(Q&A)

Q. 効果が出るまで、どのくらいかかりますか?

A. 症状や体質によります。比較的早く実感される方もいれば、気血をしっかり養うのに数か月かかる方もいます。目安として、まずは2週間〜1か月ほど試していただき、生理周期に合わせて調整していくことが多いです。

Q. 今、心療内科の薬(抗うつ薬など)を飲んでいますが、漢方も併用できますか?

A. ほとんどの場合、併用は可能です。お薬手帳をお持ちいただければ、飲み合わせを確認いたします。 自己判断で今の薬を減らしたりやめたりせず、まずはご相談ください。

Q. 市販の命の母ではダメなのでしょうか?

A. 市販薬が合う方もいらっしゃいます。ただ、市販薬は「誰が飲んでも同じ処方」のため、あなたの体質(不安型・イライラ型・冷えや疲れの有無)に合っているとは限りません。「試したけれど効かなかった」という場合こそ、体質に合わせた漢方相談が力になれます。


一人で抱え込まないでください

生理前になると別人のようにつらくなる。それは、あなたが弱いからでも、努力が足りないからでもありません。体質とホルモンのバランスによって起きていることです。

そして、そのつらさは、体質を整えることで、少しずつ穏やかにしていけるものです。

「毎月のことだから」と我慢しつづけてこられた方こそ、どうか一人で抱え込まないでください。あなたの体質とお話をていねいに伺いながら、あなたに合った一剤を一緒に見つけていきます。

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