乾癬治療に効果的な漢方薬の選び方

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西山光です
目次

乾癬とは

まずは一般的な西洋医学的な乾癬について説明します。

乾癬はどういった病気か

乾癬は皮膚の一部が赤く盛り上がった紅斑が全身にできる症状のことです。

一部の症状の方もいれば、全身に広がる方もいらっしゃいます。

原因はまだわかっておらず、遺伝的な要素と環境的な要素があるといわれています。

また乾癬は自己免疫性の疾患のため、決してうつることはありません。

使用する薬剤

外用薬としては、VD3の塗り薬をつかいます。

内服薬としては、レチノイド、シクロスポリン、メトトレキサート、アプレミラストなどがあります。

肌の状態と漢方薬

漢方薬は体質や肌の状態で使用する漢方薬が異なります。

「乾癬だから、この漢方薬がいい!」というものは言えず、症状によって漢方薬は異なります。

肌の状態とそれに合う漢方薬について説明します。

肌の炎症が強いとき

肌が赤く、炎症が強い状態のときは、炎症を抑える漢方薬をつかいます。

赤み、熱感が強い時は、「火」、「熱」の状態といえます。

「火」、「熱」を冷ますことで、炎症を抑えていきます。

赤みが強い、熱感が強いなどの炎症の症状が強くでているときは、黄連解毒湯、三物黄芩湯などが適しています。

肌の乾燥が強いとき

漢方では肌の栄養は「血」によって潤っています。

漢方では「血」は血液だけでなく、栄養・潤いの働きがあります。

「血」がしっかりあることで、肌が潤い、髪がツヤがあり、爪がしっかりします。

つまり肌の乾燥が強い乾癬の場合は、血虚の体質と言えます。

乾癬の方は冬の乾燥したときに悪化しやすいのは、血虚と関係があるように思えます。

漢方で血を養うことで、肌が潤い、乾癬の症状の和らぎます。

肌が乾燥しやすい体質の方は当帰飲子などが適しています。

ジクジクの症状が強いとき

膿疱のように膿のあるブツブツができるときは、湿気を出す必要があります。

膿疱のように中に膿がたまっているときは、ジクジクなどの湿気をため込んだ状態と言えます。

膿の湿気を追い出すような漢方薬をつかう必要があります。

湿気を出しつつ、肌の炎症を抑える漢方薬はあまりないため、うまく漢方薬を組み合わせて対応する必要があります。

かゆみが強いとき

漢方ではかゆみのことを「風」と表現します。

かゆみは「風」のように急に生じて、急に落ち着くことから、かゆみを「風」を表現します。

かゆみの症状が強いときは、「風」を発散する漢方薬である消風散が適しています。

肌が厚く、固くなっている

長く乾癬などの皮膚疾患を患っていると、色素沈着し、肌が厚く、固くなっていきます。

漢方では肌が固くなった状態のことを「瘀血」と表現します。

「瘀血」とは血の巡りが悪い状態のことです。

血の巡りが悪くなることで、肌が固くなっていきます。

まだ肌の潤いがなくなることでも、肌のツヤなくなっていきます。

肌が厚く、固くなっているときは、血を養い、血を巡らせていきます。

血を養い、血を巡らせる漢方薬は体質にあわせて、漢方薬を選ぶ必要があります。

病態別に漢方薬を考える

尋常性乾癬の進行期

尋常性乾癬の進行期では、赤みやかゆみの症状がみられます。

赤みが強いときには炎症を抑える漢方薬をつかい、かゆみの症状が強いときには風を発散し、かゆみを緩和する漢方薬をつかいます。

かゆみのある湿疹・皮膚炎には消風散、肌の炎症を抑えるには黄連解毒湯、三物黄芩湯などが適しています。

尋常性乾癬の安定期

尋常性乾癬の症状は落ち着いているが、肌が赤く、乾燥しているときは、肌に栄養を補うように血を養う漢方薬を中心につかいます。

肌に血を養いつつ、かゆみを緩和するときは、当帰飲子などの養血と消風を兼ねた漢方薬が適しています。

乾癬性紅皮症

赤みが強い病態を考えると、「熱」、「火」の勢いが強い状態といえます。

対応としては、まずはしっかり熱を冷ましていく必要があります。

膿疱性乾癬

膿疱を形成することを考えると、ジクジクしたものを追い出す漢方薬をつかう必要があります。

乾癬の漢方薬

乾癬に使用する漢方薬としては、病態から考えると消風散、当帰飲子、黄連解毒湯、三物黄芩湯、温清飲、当帰飲子などが考えられます。

黄連解毒湯

〇熱感 〇赤み ×乾燥肌

黄連解毒湯は黄連・黄芩・黄柏・山梔子の4つの生薬から構成され、すべて苦味の生薬です。

漢方では苦味の生薬が熱を冷ますことが多く、味はとても苦いのですが、その分しっかり炎症を抑えてくれるといえます。

黄連解毒湯は熱を冷ますことで、湿疹・皮膚炎に効能効果があります。

注意点として、黄連解毒湯は乾かす性質があります。皮膚の熱感と同時に肌の乾燥があるときは黄連解毒湯は適していません。

熱感と乾燥があるときは、温清飲もしくは三物黄芩湯の方が適しています。

三物黄芩湯

〇熱感 〇赤み 

三物黄芩湯は黄芩・苦参・地黄の3つの生薬から構成され、少し潤しつつ、炎症を抑えます。

黄連解毒湯よりは潤す働きと炎症を抑える働きがあるので、熱感と乾燥のどちらもある方の湿疹・皮膚炎にも使用することができます。

三物黄芩湯も味はとても苦いです。

温清飲

〇熱感 〇赤み 〇乾燥肌

温清飲(うんせいいん)は炎症を抑える黄連解毒湯と、血を養う四物湯があわさった漢方薬です。

温清飲で炎症を抑える働きと、肌を潤す働きのどちらもあります。

赤みが強く、乾燥も強い方に温清飲は適しています。

消風散

〇熱感 〇赤み 〇かゆみ 

消風散(しょうふうさん)は字の通り、「風」を消す漢方薬です。

消風散にはセンタイ・防風・荊芥などの「風」を発散する生薬が多く入っています。

消風散は「風」を発散することで、かゆみの強い湿疹・皮膚炎に適しています。

当帰飲子

〇かゆみ 〇乾燥

当帰飲子(とうきいんし)は当帰・芍薬・川芎・地黄・何首烏などの血を養う生薬が多く入っています。これらの生薬が血を養うことで、肌の乾燥を防ぎ、潤いを与えます。

当帰飲子には刺蒺藜・防風・荊芥のかゆみを緩和する生薬も入っています。

乾燥とかゆみのある湿疹・皮膚炎には当帰飲子が適しています。

尋常性乾癬の相談事例1

40代 女性。「乾癬で悩んでおります。 頭皮、全身にかゆみを伴う発疹ができており、皮膚科で処方された塗り薬を使用していますが症状が改善されたと思うと違う場所に新たな発疹が出ての繰り返しです。」

尋常性乾癬でお悩みの方。熱感や炎症はあるが、症状は強くなく、かゆみと乾燥の症状の方が強いとのこと。

かゆみと乾燥に対応する漢方薬と、赤みもあったので炎症を抑える漢方薬を服用していただきました。

3か月服用していただき、「とても調子がよくてビックリしております!肌の保水力が格段に良くなり、毎日肌を触るのが楽しみになりました〜。発疹の状態も全体的に良くなってきています!」といっていただけました。

肌の乾燥が強い方は「血虚」の体質です。漢方薬でしっかり血を養うことで肌も潤い、発疹の赤みも減ってきたと考えらえます。

現在もつづけていただき、肌の状態を引き続き改善していきたいと思います。

乾癬の漢方の考え方のまとめ

漢方薬なので、皮膚の状態や体質から漢方薬を選ぶ必要があります。

熱が強いときは熱を冷まし、乾燥が強いときは潤し、かゆみが強い時は風を発散し、湿があれば湿気を追い出し、固いときはめぐらせるなど、それぞれの症状にあわせて対応する必要があります。

乾癬も漢方で症状が和らぐことがありますので、ぜひご相談ください。

乾癬はうつりますか?

乾癬は自己免疫性の疾患のため、うつることはありません。

乾癬はダニと関係がありますか?

乾癬は自己免疫性の疾患のため、ダニが原因ではありません。

ダニが関係しているのは疥癬(かいせん)です。

乾癬(かんせん)は自己免疫性の疾患で、疥癬(かいせん)はダニの原因の疾患で全く別の病気です。

・かせん(乾癬)→自己免疫性疾患
・かせん(疥癬)→ダニが原因 

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