この記事を書いた人
・灯心堂漢方薬局 薬局長
・薬剤師歴10年以上
・店舗のLINE登録者数1000人以上
・漢方を通して、皆様が少しでも健康に過ごせる手助けをできればと思います。>>プロフィール記事はこちら
西山光です

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・貨幣状湿疹につかう漢方薬は?
・どう使い分けるの?
貨幣状湿疹でお悩みの方がご相談に来ていただくことも増えてきました。
貨幣状湿疹の漢方での考え方を説明したいと思います。
このブログを読むことで、ご自身にあったものを選んでいただけたらと思います。
・炎症が強い湿疹
→温清飲
・かゆみが強く、ジクジクするとき
→消風散
・乾燥が強く、かゆみがあるとき
→当帰飲子
・膿がある皮膚炎
→十味敗毒湯
この記事を読んでわかること
・貨幣状湿疹とは
・漢方薬のつかいわけ
漢方をうまく取り入れて、いつも通りに生活を送れるようになればと思います。
貨幣状湿疹とは、貨幣のような円形の湿疹が複数生じる疾患のことです。
貨幣状湿疹は人にうつることはありません。
貨幣状湿疹のはっきりとした原因はわかっていませんが、虫刺され、アレルギー、乾燥などがきっかけで発症すると考えられてます。
中高年の方にみられることが多く、慢性的な経過を必要とする場合もあります。
貨幣状湿疹の治療にあたってはステロイドの外用剤や、抗アレルギー薬などが使用されます。
薬をやめると再発することもあり、治療に長く時間がかかることもあります。
漢方で貨幣状湿疹の原因は大きく2つにわけて考えることができます。肌の機能を邪魔している要素と、身体が弱っている要素が考えられます。
肌の機能を邪魔している要素として、風、熱、燥、痰湿、瘀血、気滞が考えられます。
身体が弱っている要素として、気虚・血虚が考えられます。
肌を邪魔しているもの:風、熱、痰湿、瘀血、気滞
身体が弱っている要素:気虚、血虚
風:かゆみ
熱:炎症、熱感
痰湿:ジクジク、水疱
瘀血:色素沈着、皮膚のゴワゴワ
気滞:ストレス性
↑の要素があわさり、湿疹・皮膚炎につながります。各要素が組み合わさり、湿熱、風湿などとも呼ばれることもあります。
同じ貨幣状湿疹だとしても、人によってジクジクの度合い、熱感の強さなど個人差があり、それが体質の違いといえます。
人によって症状は異なるため、それぞれの要素にあわせて漢方薬をつかいわける必要があります。
気虚:肌のバリア機能の低下、菌に感染しやすくなる
血虚:肌の乾燥、組織の修復が遅い
「気」が肌のバリア機能を担当しています。「気虚」になることで、バリア機能が低下し、ちょっとしたことで肌が荒れやすくなります。
また「気虚」になることで、免疫機能が低下し、菌に感染しやすくなります。
「血」があることで、肌の組織が潤い、修復されます。「血虚」になることで、肌が乾燥し、肌の修復が遅れます。
貨幣状湿疹が慢性的に続くときは気虚、血虚が関係しています
漢方では肌の症状、体質から薬を選びます。
選び方はシンプルで、炎症が強い時は炎症を抑え、乾燥があるときは潤し、ジクジクがあるときは乾燥させ、膿があるときは排膿し、かゆみがあるときは風を発散し、虚弱体質のときは気血を補っていきます。
貨幣状湿疹といっても、炎症・ジクジク・乾燥・かゆみの程度は人によって異なります。漢方薬は一人ひとりの湿疹の状態から漢方薬を選ぶ必要があります。もし10人貨幣状湿疹の方がいても、10人全員が同じ漢方薬をつかうことはありません。
貨幣状湿疹につかう漢方薬は状態・体質によっても異なりますが、温清飲、消風散、当帰飲子、十味敗毒湯などがあります。
・炎症が強い
・乾燥もある
温清飲には黄連・黄芩などの炎症を抑える生薬、当帰・芍薬などの血を養い、皮膚の修復を助ける生薬が合わさり、湿疹に効能効果があります。
炎症が強い湿疹には温清飲が適しています。
・かゆみが強い
・ジクジクする
消風散にはセンタイがかゆみを抑え、蒼朮などがジクジクをとり、苦参・石膏が炎症を抑えることで、湿疹に効能効果があります。
かゆみが強く、ジクジクするときは消風散が適しています。
・皮膚の乾燥が強い
・乾燥がかゆくなる
・炎症が強くないとき
当帰飲子には当帰・地黄などの肌を潤す生薬が中心に、防風・荊芥のかゆみを抑える生薬が入り、湿疹に効能効果があります。
乾燥が強く、かゆみも強いときは当帰飲子が適しています。
・膿がある
・化膿している
十味敗毒湯には桔梗、柴胡などの膿出しの生薬、独活・防風が炎症を抑え、湿疹に効能効果があります。
膿がある湿疹には十味敗毒湯が適しています。
50代女性。15年間貨幣状湿疹によるかゆみでお悩み。
アレルギーもあり、慢性鼻炎もある。肌の乾燥もあり。肌は乾燥よりもジクジクしている。
貨幣状湿疹は慢性的に続くことも多く、15年間お悩みとのことでした。波があり、調子が良くなったり、悪い日もあり、現在は痒みが強くなっているとのことです。
肌の症状としてはジクジク・かゆみに対応し、またアレルギー体質を改善するような漢方薬を服用していただきました。
1週間後、「漢方薬を飲んで1週間たちましたが湿疹の浸出液が落ち着き、痒みも減ってきました。とても嬉しく感謝申し上げます。」
2週間後、「少し痒みがありますがかなり改善してきました。」といっていただけました。