治らないいぼ痔(外痔核・内痔核)の原因とおすすめの漢方薬、食事改善のポイントを解説

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西山光です

このブログを読むことで、漢方目線でいぼ痔になりにくいの食事、生活習慣について知ることができます。座ったときに痛みで悩まないようになればと思います。

いぼ痔の原因を調べると、慢性的な便秘・下痢、長時間の座りっぱなしといわれます。では、デスクワークの人、全員がいぼ痔になるでしょうか?

デスクワークの人が全員、いぼ痔にならないですよね。

いぼ痔になる人、いぼ痔にならない人がいます。

いぼ痔になる人と、いぼ痔にならない人の違いは何でしょうか?それは「瘀血(おけつ)」の体質です!

「瘀血」とは血の巡りが悪い状態のことです。漢方でみると、いぼ痔の原因の多くは「瘀血」といえます。

便秘になると痔静脈にうっ血を生じ、「瘀血」をつくります。デスクワークもずっと座っているため、お尻の血の巡りが悪くなり、「瘀血」となります。

このブログではいぼ痔に、いぼ痔になりやすい体質や、いぼ痔になりにくい食事、生活習慣についても解説しています。最後には、実際の相談事例について記載しています。

目次

痔とは

痔とは、肛門周辺に生じる疾患をまとめて痔といいます。

痔といっても、いぼ痔(内痔核・外痔核)、切れ痔(裂肛)、あな痔(痔ろう・痔瘻)があります。

痔とひとくくりに言っても、いぼ痔、切れ痔、あな痔で病態も異なり、つかう漢方薬も異なります。

このブログではいぼ痔について解説しています。

いぼ痔はうっ血した状態

毛細血管の集まりを静脈叢(じょうみゃくそう)といい、いぼ痔は静脈叢がうっ血し、いぼ状の腫れとなったものです。

簡単にいえば、いぼ痔は小さな血管の集まりが腫れている状態です。

血管の集まりがいぼ状になっているため、切れると大量出血につながります。

直腸の周りの毛細血管の集まりを内痔静脈叢といいます。歯状線の内側、肛門の奥の方にできた痔核を内痔核といいます。歯状線から外側の肛門の周りにできた痔核を外痔核といいます。

内痔核

いぼ痔のイラスト

内痔核は、内側にできた痔核です。具体的にいえば、歯状線という、腸と皮膚の境目があり、歯状線の内側にできたものが内痔核です。

痔のなかで内痔核が一番多いです。

内痔核のできる歯状線の内側は、自律神経支配のため痛みを感じません。

内痔核の症状としては、はじめは痛みは感じることはなく、排便時に出血がみられ、気がつきます。

内痔核を放置していたら、脱肛し、外へでてくるようになります。ぷにぷにしたものが出てきて、触っても痛くないのは内痔核の恐れがあります。

また急に炎症を起こすこともあり、その場合は激痛になることもあります。

内痔核が肛門からでてきても、押し込んで、また様子をみている方も多いです。

内痔核は痛みがないので、病院にいく決心がつきづらいですが、悪化する前にぜひ病院を受診してください。

内痔核の特徴
・歯状線の内側にできたいぼ痔
・痛みを感じにくい
・脱肛し、外にでてくることもある

外痔核

外痔核は外側にできたいぼ痔です。皮膚に静脈のうっ血ができた状態なので、外痔核は痛みを伴います。

血の塊の血栓ができると、血豆ができた状態のため、激しい痛みになります。

外痔核は触ることができ、自覚がしやすく、痛みも伴うため、ぜひまずは病院に受診してください。

外痔核の特徴
・歯状線の外側にできたいぼ痔
・痛みを感じる
・血栓ができると強い痛み

いぼ痔が破裂したら大量の出血

いぼ痔は毛細血管の集まりなので、いぼ痔が破裂すると大量の出血の恐れがあります。

またいぼ痔を自分で切る方もいらっしゃいますが、大量出血の危険性がありますので、切る前に必ず病院を受診してください。

西洋医学でのいぼ痔(痔核)の治療法

いぼ痔の治療法としては、座薬軟膏で直接炎症・腫れを抑えたり、内服薬にて便を軟らかくしたり、炎症を抑えていきます。手術では注射療法切除術結紮術などがあります。

いぼ痔(痔核)の漢方での考え方

いぼ痔を漢方の目線で考えてみましょう。

いぼ痔の原因は「瘀血」!

いぼ痔は慢性的な便秘、長時間座ることで、静脈の毛細血管の集まりがうっ血し、腫れた状態のことです。

うっ血した状態とは、漢方でいうと血の巡りが悪い「瘀血(おけつ)」といえます。

慢性的な便秘や長時間座ることで、瘀血になり、静脈がうっ血し、いぼ痔になります。

いぼ痔の原因となる「瘀血」をめぐらせることで、うっ血した静脈の巡りも改善されます。

いぼ痔になりやすい方は「瘀血」を解消することで、いぼ痔になりにくくなります。

いぼ痔を繰り返すのは体質が改善していないから

いぼ痔は「瘀血」という血の巡りが悪い体質が原因と説明しました。

つまりいぼ痔を繰り返すのは「瘀血」の体質が改善していないためです。

体質が改善していなければ、いぼ痔が再発してしまいます。

いぼ痔が自然治癒し、いぼ痔になりにくくなった方は食事や習慣、年齢、環境の変化によって、体質が変化していったためと考えられます。

痔が女性に多い理由

女性に痔(いぼ痔・切れ痔)が多い理由

男性に比べ、女性は痔になりやすいといいます。

女性の体質を考える上で最も重要なことは生理があることです。

女性は生理があることで、常に「血」が不足しやすい、「血虚」の体質になりやすいです。

さらに生理で「血」を消耗するため、相対的に「気」の量が多くなります。生理前に胸が張ったり、イライラ・不安になるのは、「気」が原因です。

「気」は「血」を全身にめぐらせる働きがあります。つまり「気滞」になると、血のめぐりが悪くなり、「瘀血」になりやすくなります。

「気滞」が「瘀血」をつくり、血の巡りが悪くなり、いぼ痔になっていきます。

また「気滞」は筋肉をスムーズに動かす働きもあり、「気滞」によって肛門括約筋が過度に緊張すると切れ痔にもなります。

産後のいぼ痔

産後はいぼ痔や切れ痔になりやすいです。漢方の目線で産後の痔について考えたいと思います。

産後を漢方で考えると、「気血」を消耗した状態といえます。とくに「血」は潤す働きがあり、髪・爪・肌・筋肉・腸を潤します。

つまり産後は「血虚」になりやすく、腸が乾燥し、便秘になりやすい状態になります。

また産後は育児への不安やプレッシャー、環境の変化もあり、ストレスがたまり、「気滞」が生じやすいです。

「気滞」が生じることで切れ痔になりやすくなります。「気滞」が血の巡りにも影響を与えると、「瘀血」となり、いぼ痔になります。

産後は「気血」の不足を起こし、「気滞」を生じやすい環境のため、切れ痔・いぼ痔になりやすいといえます。

産後の痔
・産後は気血を消耗した状態。とくに血の不足は便秘の原因になる
・環境の変化、不安から気滞を生じやすい。気滞から切れ痔になる
・気滞から血の巡り悪くなり、瘀血になる。瘀血からいぼ痔になる。

冷えといぼ痔の関係

いぼ痔のことを調べると、「冷えは天敵!」「予防のためにお風呂に入ることが良い」とよく見ます。

漢方の見方でも、「冷え」と「いぼ痔」は関係があります!

「冷え」を漢方では「寒邪(かんじゃ)」といいます。「寒邪」は身体を緊張させ、めぐりを悪くする働きがあります。

冬に寒さで手足がかじかんで、動かなくなった経験はありませんか?

冷えのめぐりを悪くする働きは「血」にも影響を及ぼします。冷えは、血の巡りを悪くし、「瘀血」をつくりだします。

冷えは瘀血をつくりだすので、いぼ痔の天敵です。

とくに生理中の女性は血を消耗し、体力が落ちているので注意してください。生理中に冷たいものを取り過ぎたり、寒い所に長時間いたりすると、瘀血体質になる可能性があります。

男性といぼ痔

いぼ痔は男性にも多い疾患です。男性に多い痔はいぼ痔、痔ろう、切れ痔の順番です。

男性の場合、ストレスから「気滞」を生じ、「気滞」から血の巡りが悪い「瘀血」の状態になることが多いです。

また長時間座ることで「瘀血」をつくりだし、いぼ痔になります。

男性は生理がなく、「気」「血」のバランスが過度に崩れることがないため、切れ痔になりにくいと考えられます。

ストレスは「気滞」を生み出し、いぼ痔の原因になる!

漢方では、ストレスは「気」のめぐりを悪くし、「気滞」を引き起こします。「気滞」が「血」のめぐりを悪くし、「瘀血」をつくりだします。

「気滞」から生じた「瘀血」が静脈をうっ血させ、いぼ痔になります。

いぼ痔(痔核)につかう漢方薬

いぼ痔につかう漢方薬の代表的なものは乙字湯です。

乙字湯

乙字湯の効能効果:「体力中等度以上で、大便がかたく、便秘傾向のあるものの次の諸症:痔核(いぼ痔)、きれ痔、便秘、軽度の脱肛

乙字湯は当帰・柴胡・黄芩・大黄・升麻・甘草から構成されています。

柴胡:気を巡らせ、肛門括約筋の動きをスムーズにする
当帰:血の巡りを良くする
黄芩:炎症を抑える
升麻:脱肛の場合、上へ引っ張り上げる
大黄:便通を良くする

乙字湯は気を巡らせつつ、炎症を抑え、便通を改善することで、切れ痔、いぼ痔にも効能効果があります。

乙字湯は大黄が入っているため、妊娠中・授乳中は禁忌です。

乙字湯がいぼ痔に効かないとき

乙字湯がいぼ痔に効かない理由は、乙字湯だけでは対応できる生薬が少ないためです。場合によっては漢方薬をあわせることも必要です。

当薬局に相談に来られる方は乙字湯を服用しても、効果の実感が少ない方ばかりです。

いぼ痔の原因は「瘀血」といっていますが、乙字湯で「瘀血」に対応した生薬は当帰の1つです。

「瘀血」といっても、人によって程度は異なり、漢方薬をつかいわける必要があります。

またいぼ痔といっても、痛みが強いとき、出血があるとき、脱肛しているとき、と状況は人それぞれです。

・痛みが強いとき→腫れと炎症を抑える漢方薬をあわせる
・出血があるとき→止血に働く漢方薬をあわせる
・脱肛しているとき→内臓を上へ引き上げる漢方薬をあわせる

繰り返すいぼ痔に悩まないためにもぜひご相談ください。

最後には実際の相談事例もあります。

食事・生活習慣について

いぼ痔になりにくい食事、食べ物

漢方の目線で考えると、いぼ痔の原因となる「瘀血」をめぐらせるためには適度な「辛味」のある食べ物です。

瘀血タイプにおすすめの食べ物は、たまねぎ、なす、らっきょう、にんにく、みょうが、魚類(とくに青魚)、よもぎ、あずき、べにばな、調味料としては黒酢などがあります。

自然の辛味が温めて、血の巡りを良くしてくれます。強い辛味は発汗し、血を煮詰め、血をドロドロにするためNGです。

便秘解消にいい食べ物はナッツ類です。ナッツ類は油分を多く含み、便を潤します。便秘でお悩みの方はヘンプシードがとくにおすすめです。

適度な辛味で「瘀血」をめぐらせ、ナッツ類で便秘を解消しましょう。

いぼ痔になりにくい生活習慣

いぼ痔の原因の「瘀血」をめぐらせるためにも適度な運動、お風呂につかる、身体を冷やさないことが重要です。

・身体を動かす
・お風呂につかる
・体を冷やさない

また「気滞」があることで血のめぐりも悪くなるため、「気滞」の解消もする必要があります。

「気滞」をめぐらせるには香りのいいものが重要です。香りが「気」をめぐらせます。

お風呂のときに入浴剤や柚子(ゆず)を入れることで、身体を温めながら、気を巡らせることができます。

いぼ痔を予防するには

漢方で考えると、血を巡らせるために適度な辛味のたまねぎ、なす、よもぎや魚類を摂取すること、適度な運動をし、身体を冷やさないこと、「気」をめぐらせるためにストレッチ、深呼吸をすることが重要です。

いぼ痔の相談事例

40代女性。転職し、デスクワークをすることが増え、いぼ痔になるようになった。座っているだけでも痛い。ヘモナーゼ、酸化マグネシウム、ビオスリーを服用しているが、いぼ痔は改善せず、相談に来られた。内痔核、外痔核、血の塊があるといわれた。いぼ痔は寒いときに、痛みが強くなる。いぼ痔だけでなく、ニキビもできやすくなった。生理血は粘稠。

デスクワークをするようになっていぼ痔になったとおっしゃっているが、生理血が粘稠のことからも元々血の巡りが悪い、瘀血体質だったと考えられます。

瘀血体質だったのが、デスクワークをすることになり、いぼ痔になりやすくなったと考えられます。

便秘も血のめぐりを悪くする要因になるため、便通を改善する必要があります。

また瘀血に対しても、しっかり血の巡りを改善していきます。

・便通を改善する漢方薬
・血の巡りを改善し、瘀血をとる漢方薬

漢方薬を3か月ほど服用していただき、痔の痛みがなくなったと報告がありました。その後は痔のご相談はなく、別の症状で時々相談に来られています。

いぼ痔で悩まない生活を送るためにもぜひご相談くださいませ。

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