湿疹・皮膚炎を改善するための漢方薬の選び方とその使い方 

 この記事を書いた人

・灯心堂漢方薬局 薬局長
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西山光です
質問

・湿疹・皮膚炎につかう漢方薬は?
・どう使い分けるの?

なかなか治らない湿疹・皮膚炎にお悩みではないですか?

漢方の目線での湿疹・皮膚炎の考え方について解説しています。

このブログを読むことで、ご自身にあったものを選んでいただけたらと思います。

結論

・ジクジクして、かゆみが強い湿疹・皮膚炎
→消風散

・乾燥が強く、かゆみのある湿疹・皮膚炎
→当帰飲子

・炎症が強い湿疹・皮膚炎
→温清飲

・膿がある湿疹・皮膚炎
→十味敗毒湯

・色素沈着したシミ、手足の皮膚炎
→桂枝茯苓丸加薏苡仁

・ストレス湿疹・皮膚炎
→加味逍遙散加川芎地黄

・虚弱体質の改善、皮膚の体質改善
→帰耆建中湯

 この記事を読んでわかること
・湿疹、皮膚炎とは
・漢方薬のつかいわけ

漢方をうまく取り入れて、いつも通りに生活を送れるようになればと思います。

目次

湿疹・皮膚炎とは

湿疹とは、皮膚の表層におこる炎症の総称のことです。湿疹は皮膚炎ともいい、湿疹と皮膚炎は同じ意味です。

湿疹の症状としては、かゆみ、赤み、ブツブツ、水膨れ、膿などがみられます。

慢性化すると肌の状態まで変化し、ガサガサ、ゴワゴワ、色素沈着、肌の乾燥などの症状もみられるようになります。

youtubeのメディバリー大学病院さまの動画が大変わかりやすいので、紹介させていただきます。

湿疹・皮膚炎の原因は?

正常な皮膚と、アトピーの皮膚の違い

湿疹・皮膚炎は外的要因と内的要因が関係しています。

湿疹・皮膚炎を引き起こす外的要因としては、日光・物質・アレルゲン・虫・締め付けなどが考えられます。

湿疹・皮膚炎を引き起こす内的要因としては、アレルギー体質、アトピー体質、皮膚の状態、皮脂・汗などが関係しています。

湿疹・皮膚炎に関わる疾患

湿疹・皮膚炎のみられる疾患に、湿疹、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、脂漏性湿疹、皮脂欠乏性湿疹、手湿疹、乾燥性湿疹、接触性皮膚炎、うっ滞性皮膚炎、乾燥性皮膚炎、自家感作性皮膚炎、貨幣状湿疹、慢性皮膚炎、乾癬、ストレス湿疹、カンジダ皮膚炎などがあります。

漢方薬は病名ではなく、体質・状態でつかいます。病名に関係なく、体質・症状があっていれば、漢方薬を服用することができます。

湿疹・皮膚炎の漢方での原因は?

漢方で皮膚疾患の原因は大きく2つにわけて考えることができます。肌の機能を邪魔している要素と、身体が弱っている要素が考えられます。

肌の機能を邪魔している要素として、風、熱、燥、痰湿、瘀血、気滞が考えられます。

身体が弱っている要素として、気虚・血虚が考えられます。

肌を邪魔しているもの:風、熱、痰湿、瘀血、気滞
身体が弱っている要素:気虚、血虚

邪魔しているもの

風:かゆみ
熱:炎症、熱感
痰湿:ジクジク、水疱
瘀血:色素沈着、皮膚のゴワゴワ
気滞:ストレス性

↑の要素があわさり、湿疹・皮膚炎につながります。各要素が組み合わさり、湿熱、風湿などとも呼ばれることもあります。

同じ病名だとしても、人によってジクジクの度合い、熱感の強さなど個人差があり、それが体質の違いといえます。

人によって症状は異なるため、それぞれの要素にあわせて漢方薬をつかいわける必要があります。

弱っている要素

気虚:肌のバリア機能の低下、菌に感染しやすくなる
血虚:肌の乾燥、組織の修復が遅い

「気」が肌のバリア機能を担当しています。「気虚」になることで、バリア機能が低下し、ちょっとしたことで肌が荒れやすくなります。

また「気虚」になることで、免疫機能が低下し、菌に感染しやすくなり、カンジダ皮膚炎、カビ皮膚炎、真菌性皮膚炎にかかりやすくなります。

「血」があることで、肌の組織が潤い、修復されます。「血虚」になることで、肌が乾燥し、肌の修復が遅れます。

アトピー性皮膚炎などの慢性皮膚炎のように、皮膚炎が治らないときは気虚、血虚が関係しています

湿疹・皮膚炎の漢方薬は?

湿疹・皮膚炎の漢方薬に、消風散、当帰飲子、十味敗毒湯、温清飲、帰耆建中湯、桂枝茯苓丸加ヨクイニン、加味逍遙散加川芎地黄などがあります。

湿疹、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹などの病名に関係なく、湿疹・皮膚炎のある方につかうことができます。

ジクジクして、かゆみが強い湿疹・皮膚炎に消風散

・かゆみが強い
・ジクジクしている
・脂漏性湿疹など

消風散には防風・牛房子・蝉退・荊芥の風を発散する生薬が多く入り、かゆみの原因となる風を取り除きます。

消風散の蒼朮・木通は水のめぐりを改善する生薬で、余分な水がたまることで肌がジクジク、分泌物がでるため、水を追い出します。

消風散1つで、祛風、祛湿、清熱、養血の働きがあり、バランスのいい漢方薬です。

ジクジクして、かゆみが強い湿疹・皮膚炎には消風散が適しています。

乾燥が強く、かゆみのある湿疹・皮膚炎に当帰飲子

・乾燥が強い
・かゆみが強い
・乾燥湿疹、乾燥性湿疹、乾燥性皮膚炎などに

当帰飲子の当帰・芍薬・川芎・地黄・何首烏が肌を潤し、防風・荊芥・刺蒺藜がかゆみを緩和します。

肌の乾燥が強く、かゆみがある方には当帰飲子が向いています。

炎症が強い湿疹・皮膚炎に温清飲

・炎症が強い
・乾燥もある
・アトピー性皮膚炎などのような乾燥も炎症もあるとき

温清飲の当帰・芍薬などが肌を潤し、黄連・黄芩などが炎症を抑え、湿疹・皮膚炎に効果を発揮します。

炎症が強く、肌の乾燥もあるときは温清飲が適しています。

膿がある湿疹・皮膚炎に十味敗毒湯

・膿、化膿がある
・湿疹、皮膚炎もある

十味敗毒湯の桔梗、柴胡などが排膿し、防風・荊芥などが炎症を抑え、排膿と抗炎症に働きます。

膿があり、湿疹・皮膚炎もあるときは十味敗毒湯が適しています。

色素沈着したシミ、手足の皮膚炎に桂枝茯苓丸加薏苡仁

・色素沈着
・シミ

・瘀血

桂枝茯苓丸加薏苡仁の桃仁・牡丹皮が血を巡らせ、薏苡仁がヌメリをとってくれます。

色素沈着のある皮膚炎に桂枝茯苓丸加薏苡仁が適しています。

ストレス湿疹・皮膚炎に加味逍遙散加川芎地黄

・ストレス性
・気滞
・自律神経

加味逍遙散加川芎地黄の柴胡・薄荷が気を巡らせ、当帰・芍薬が肌を潤し、山梔子・牡丹皮が炎症を抑えます。

ストレス湿疹には加味逍遙散加川芎地黄が適しています。

虚弱体質の改善、皮膚の体質改善に帰耆建中湯

・虚弱体質
・すぐに肌の調子が悪くなる

・現在、炎症は落ち着いている

帰耆建中湯は黄耆が皮膚の気を補い、当帰が血を養い、虚弱体質を改善し、肌の不調を起こしにくくなります。

注意点として、帰耆建中湯には炎症を抑える生薬は入っていないので、炎症があるときは服用できません。炎症が落ち着いて、体質改善に取り組みときに帰耆建中湯を服用してください。

炎症を起こしやすい体質改善には帰耆建中湯が適しています。

陰嚢湿疹、排尿痛があるときは竜胆瀉肝湯(一貫堂)

・陰嚢湿疹
・排尿痛
・残尿感

竜胆瀉肝湯には黄連、黄芩などの炎症を抑える生薬と、当帰・芍薬などの血を養う生薬が入り、炎症を起こしやすい体質を改善します。

陰嚢湿疹、排尿痛があるときは竜胆瀉肝湯が適しています。

皮膚炎が治らない原因は体質が改善していないため

皮膚炎が治らず、悩んでいる方も多いと思います。

漢方の目線で考えると、皮膚炎が治らない原因は体質が改善していないためです。

湿疹・皮膚炎の原因は外的な要因も多いですが、内的な要因も大きく関与しています。

湿疹・皮膚炎の多くは身体の内側の問題なのです。

体質を改善していくことで、湿疹・皮膚炎を起こしにくくなっていきます。

自家感作性皮膚炎の漢方相談

40代女性。最初は足のふくらはぎの虫刺され。絆創膏を貼っていたら、膿んで、ほかのところにもブツブツがでてきた。病院に受診し、自家感作性皮膚炎といわれ、抗アレルギー薬、ステロイドを使用中。ステロイドを塗ると、炎症は落ち着くが、数日するとまたかゆくなってくる。最近になり、湿疹の範囲、かゆみが増えてきており、当薬局に相談に来店。

皮膚の炎症は最近は膿んでおらず、湿疹とかゆみが症状の中心とのこと。

かゆみに対する漢方薬と、炎症を抑える漢方薬をおすすめさせていただいた。

まずは2週間、服用していただく。2週間後、効いている感じがするため、再度来店。同じものを1か月分お渡しした。その後再び来店し、調子もいいので最後にまた1か月分お渡し、廃薬になりました。

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