【小柴胡湯加桔梗石膏】(のどの痛み)わかりやすい解説(しょうさいことうかききょうせっこう)
小柴胡湯加桔梗石膏
小柴胡湯加桔梗石膏の働きを添付文書の効能効果から掘り下げて、考えたいと思います。
薬局製剤 小柴胡湯加桔梗石膏の効能効果には
「比較的体力があり、ときに脇腹(腹)からみぞおちにあたりにかけて苦しく、食欲不振や口の苦みがあり、舌に白苔がつき、のどがはれて痛むものの次の諸症:のどの痛み、扁桃炎、扁桃周囲炎」
と記載されています。
効能効果はのどの痛み、扁桃炎などののど周辺の症状ばかりが記載されています。
体質について、詳細に記載されており、どうしてこの体質なのか気になりませんか?
添付文書の効能効果に記載されている理由を考えたいと思います。
構成
小柴胡湯加桔梗石膏は名前のとおり、「小柴胡湯」と「桔梗石膏」という2つの漢方薬があわさったものです。
小柴胡湯の効能効果は、「体力中等度で、ときに脇腹(腹)からみぞおちあたりにかけて苦しく、食欲不振や口の苦みがあり、舌に白苔がつくものの次の諸症:食欲不振、はきけ、胃炎、胃痛、胃腸虚弱、疲労感、かぜの後期の諸症状」と記載されています。
小柴胡湯の効能効果の前半の内容は、小柴胡湯加桔梗石膏と同じであることがわかります。
桔梗石膏の効能効果は、「咳嗽あるいは化膿するもの。」と記載されています。
桔梗石膏がのどの症状に効果を発揮することがわかります。
小柴胡湯と桔梗石膏が合わさった小柴胡湯加桔梗石膏は「比較的体力があり、ときに脇腹(腹)からみぞおちにあたりにかけて苦しく、食欲不振や口の苦みがあり、舌に白苔がつき、のどがはれて痛むものの次の諸症:のどの痛み、扁桃炎、扁桃周囲炎」に効果を発揮します。
小柴胡湯加桔梗石膏は、柴胡・半夏・黄芩・大棗・人参・生姜・甘草・桔梗・石膏から構成されています。
それぞれの生薬の働きについて説明します。
柴胡
小柴胡湯加桔梗石膏では柴胡の量も多く、漢方の名前にもつかわれていることからも柴胡が主薬の漢方薬です。
外感病などの感染症がやや進行し、徐々に身体の内側に達してきたときに、柴胡が病気の原因となる邪を追い出す働きが強いです。
柴胡は外感病などの原因となる病邪を外へ追い払う生薬です。
身体の表面に病邪がいるときは、葛根湯や麻黄湯で追い出すことができるのですが、身体の少し内側にまで進行してきたときは葛根湯で追い出すことができません。
病邪が身体の少し内側にまで入ったきたときは柴胡が病邪を追い出します。
そのためわき腹からみぞおちが苦しくなったり、食欲不振、口の苦味なども生じ、往来寒熱という熱がでたり、寒気がでたりを繰り返す症状がみられることもあります。
柴胡をつかうときは、病邪がやや進行してきているときです。
黄芩
黄芩(おうごん)は身体にこもっている熱を冷ます生薬です。
黄芩と柴胡は相性が良く、柴胡と黄芩があわさり、相乗効果で熱を冷まします。
熱は身体に体温としてあらわれるだけでなく、口の苦味としても生じます。
そういった身体の内側にこもっている熱を黄芩が清熱します。
半夏
半夏(はんげ)は吐き気を抑える生薬です。
病邪が身体のやや内側に入ってくることで、胃腸の調子も悪くなり、胃に水が溜まりやすくなり、吐き気となります。
半夏は吐き気を抑える働きがあります。
また胃に水がたまることで、舌の苔が白くなります。
舌の苔の白は水の鬱滞の症状です。
半夏は胃の水を追い出す働きもあり、白い苔があるときにも相性がいい生薬です。
人参・生姜・大棗・甘草
人参・生姜・大棗・甘草はすべて気を補う生薬です。
とくに人参は気を補う働きが強い生薬です。
病邪が身体の表面で戦っているときは、葛根湯、麻黄湯で温めて病邪を追い出すだけでいいのですが、病邪がやや内側に入って来ているときはどうしたらよいでしょうか?
病邪がやや内側に入ってきたときは、病邪を追い払うことと、身体の内側を強くすることを並行して行う必要があります。
身体が弱っていると、病邪が進行し、さらに内側に入ってくる恐れがあります。
内側への進行を防ぐためにも、人参で強く気を補う必要があります。
人参が気を補い、内側を固め、それ以上病邪が進行できないようにします。
石膏
石膏(せっこう)は冷やす働きが強い生薬です。
石膏が強く冷やすことで熱を冷まし、のどの痛みを緩和します。
小柴胡湯加桔梗石膏には石膏が多く入っており、石膏の冷やす働き、のどの痛みを緩和する働きは強いと考えられます。
石膏も重要な生薬になるため、効能効果にのどの痛みなどの症状が記載されています。
桔梗
桔梗(ききょう)はのどの痛みを抑える漢方薬です。
桔梗と甘草の組み合わせは桔梗湯で知られ、のどの痛みを抑える漢方薬です。
小柴胡湯加桔梗石膏には桔梗・甘草の組み合わせが入っており、のどの痛みを抑える働きがあります。
そのため、のどの痛み、扁桃周囲炎などには桔梗と石膏があわさり、相乗効果で炎症を抑えます。
構成まとめ
小柴胡湯加桔梗石膏は、柴胡がやや内側に入ってきた病邪を強く追い出し、黄芩が身体にこもっている熱を冷まします。半夏は胃腸に溜まっている水を追い出し、吐き気を抑えます。人参などは強く気を補い、病邪がこれ以上進行しないように内側を固めます。石膏と桔梗が強く熱を冷ましつつ、のどの痛みを抑えます。
効能効果なぜ?
薬局製剤 小柴胡湯加桔梗石膏の効能効果には
「比較的体力があり、ときに脇腹(腹)からみぞおちにあたりにかけて苦しく、食欲不振や口の苦みがあり、舌に白苔がつき、のどがはれて痛むものの次の諸症:のどの痛み、扁桃炎、扁桃周囲炎」
と記載されています。
なぜこのような効能効果なのか考えたいと思います。
比較的体力があり
→小柴胡湯加桔梗石膏は病邪が体表からやや内側に進行してきたときにつかいます。言い方を変えれば、まだ完全に身体の内側には入っていません。もともと虚弱体質な方の場合、すぐに病邪が内側に入ってしまいますが、まだその段階まで進んでいないため、比較的体力のありという表現になっています。きちんとした対応をすれば、病邪を追い返すことができるという意味合いにもなります。
ときに脇腹(腹)からみぞおちにあたりにかけて苦しく
→病邪がやや内側に入って来ているため、お腹周りの経絡のめぐりが悪くなり、脇腹・みぞおちが苦しくなります。経絡の話をすると難しくなるため、病気が進行してきているためお腹にも影響がでて、脇腹・みぞおちが苦しくなると思ってください。さらに進行すると、病邪がお腹に進行し、下痢になっていきます。柴胡は脇腹・みぞおちの気の流れを良くする代表的な生薬です。
食欲不振
→病邪がやや内側に入って来ている状態のため、気の鬱滞から胃腸の調子が悪くなり、食欲不振となります。胃腸の働きを立て直すためにも人参が必要になり、病邪を追い出すために柴胡が重要です。
口の苦味
→病邪がやや内側に進行してきているため、気の流れの悪さから、鬱熱が生じます。鬱熱から口に影響を与え、口では苦味となります。苦味は熱がこもっている証拠です。小柴胡湯加桔梗石膏の黄芩がその熱を冷まします。
舌に白苔がつき
→胃腸の調子も悪くなっていると、胃に水が溜まりやすくなります。水の鬱滞は下の苔と連動し、白苔がみられるようになります。反対に苔が全くないときは、胃が渇きすぎているといえます。水の鬱滞を、小柴胡湯加桔梗石膏の半夏が追い出してくれます。
のどがはれて痛むものの次の諸症:のどの痛み、扁桃炎、扁桃周囲炎
→小柴胡湯の効能効果には記載されていない文章であり、小柴胡湯加桔梗石膏の桔梗・石膏の効果によるものといえます。小柴胡湯加桔梗石膏の桔梗がのどの炎症を抑え、石膏がのどを冷やすことで効果を発揮します。これらの症状があるかないかで、小柴胡湯加桔梗石膏が服用できるのか、できないかが決まります。
小柴胡湯加桔梗石膏はコロナに効く?
小柴胡湯加桔梗石膏の効能効果にコロナについての記載はありません。しかし、漢方薬は体質と症状があっていれば服用できます。コロナであっても、ただのカゼであっても、「比較的体力があり、ときに脇腹(腹)からみぞおちにあたりにかけて苦しく、食欲不振や口の苦みがあり、舌に白苔がつき、のどがはれて痛むものの次の諸症:のどの痛み、扁桃炎、扁桃周囲炎」に当てはまっていれば、小柴胡湯加桔梗石膏は服用していただけます。
小柴胡湯加桔梗石膏が効かない理由は?
漢方薬は体質が合っていないと効果を発揮しません。小柴胡湯加桔梗石膏は病邪がやや身体の内側に入った状態で、のどの痛みがあるときに効果を発揮します。そのため、まだ病邪が身体の表面にいて、寒気があるときは葛根湯・麻黄湯、病邪が身体の表面にいて、寒気が全くない時は銀翹散、便秘が強く病邪がお腹にたまっているときは承気湯類などをつかう必要があり、状態によってつかいわける必要があります。
まとめ
小柴胡湯加桔梗石膏の働きについて、添付文書から解説しました。
小柴胡湯加桔梗石膏は病邪がやや進行し、内側に入ってきたときに柴胡が追い出し、人参が内側を固め、桔梗・石膏がのどの痛みを抑えることで「比較的体力があり、ときに脇腹(腹)からみぞおちにあたりにかけて苦しく、食欲不振や口の苦みがあり、舌に白苔がつき、のどがはれて痛むものの次の諸症:のどの痛み、扁桃炎、扁桃周囲炎」の効能効果があります。