【辛夷清肺湯】わかりやすい解説(しんいせいはいとう)~蓄膿症、副鼻腔炎に
辛夷清肺湯
辛夷清肺湯の働きを添付文書の効能効果から掘り下げて、考えたいと思います。
薬局製剤 辛夷清肺湯の効能効果には
「体力中等度以上で、濃い鼻汁が出て、ときに熱感を伴うものの次の諸症:鼻づまり、慢性鼻炎、蓄膿症(副鼻腔炎)」
と記載されています。
鼻に関する症状が多く記載されています。
辛夷清肺湯は蓄膿症につかう漢方薬として有名です。
市販では小林製薬の「チクナイン」という商品を聞いたことがあるかもしれません。
「チクナイン」のサイトに辛夷清肺湯の働きがまとめてあるので、そちらを参考にしてもいいかもしれません。
ここでは効能効果と、辛夷清肺湯の働きを照らし合わせ、添付文書の意味がわかるように解説したいと思います。
ただし、商品によって効能効果は異なるので、ご購入の際は商品説明をきちんとお読みください。
構成
辛夷清肺湯は、知母・黄芩・山梔子・麦門冬・石膏・升麻・辛夷・百合・枇杷葉から構成されています。
鼻を通す
辛夷(しんい)は鼻の通りをよくする生薬の代表的なものです。
鼻づまりといえば辛夷というくらい重要な生薬です。
中国では辛夷の粉末を鼻に吹き込んで、鼻通りを良くする使い方もあるそうです。
鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎のような鼻の通りが悪い時は、辛夷の働きが重要になります。
熱を冷ます
辛夷清肺湯の知母・黄芩・山梔子・石膏・升麻・枇杷葉は熱を冷ます生薬です。
蓄膿症などにみられる色のついた鼻水は熱がこもっている状態と漢方では考えます。
熱がこもっているため、色がつき、煮詰められ粘性をもちます。
反対に寒気があるカゼひいているときはさらっとした鼻水になりますよね。
熱を冷ます生薬は多く入っていますが、それぞれの生薬で冷やす性質が異なります。
黄芩は鼻とつながっている肺を冷やし、知母は潤しながら冷やし、山梔子は三焦を冷やし、石膏は肌肉を冷やし、升麻は解毒しながら冷やし、枇杷葉は肺の熱を冷まし、とどまっている痰を降ろします。
辛夷清肺湯の冷やす生薬の相乗効果で効果を発揮します。
潤す
辛夷清肺湯の知母・百合・麦門冬は潤す生薬です。
膿が溜まっているのに、潤してしまうのは反対のイメージはありませんか?
蓄膿症の膿の動きが悪い要因として、煮詰まっていることが考えられます。
さらっとした鼻水は煮詰まっていくことでドロドロとした粘性をもち、動きが悪くなり、停滞します。
煮詰まって水分が少なくなったものを出そうとしても、なかなか出てきません。
出す働きに、潤す働きをプラスすることで相乗効果で出やすくなります。
辛夷清肺湯の知母・百合・麦門冬は潤す生薬で、潤すことで返って膿が出やすくなります。
構成のまとめ
辛夷清肺湯の辛夷が鼻通りを改善し、知母・黄芩・山梔子・石膏・升麻・枇杷葉が鼻・膿・炎症の熱を冷まし、知母・百合・麦門冬が潤すことで膿がでやすくするのを助けます。
効能効果なぜ?
薬局製剤 辛夷清肺湯の効能効果には
「体力中等度以上で、濃い鼻汁が出て、ときに熱感を伴うものの次の諸症:鼻づまり、慢性鼻炎、蓄膿症(副鼻腔炎)」
と記載されています。
なぜこのような効能効果なのか考えたいと思います。
体力中等度以上
→辛夷清肺湯は熱を冷ます生薬が多く入っています。そのため体力が虚弱な方には向いていません。虚弱な方以外の、中等度以上であれば服用できるため、幅広く多くの方が服用できる漢方薬です。
濃い鼻汁が出て
→鼻汁とは鼻水のことです。漢方では、濃い鼻汁は熱がこもっている状態と考えられます。熱で煮詰まることで、鼻汁が粘性を持ち、濃い鼻汁となります。反対にサラッとした鼻汁は冷えている状態です。カゼひいて、寒気があるときは水様のサラッとした鼻水がでます。
ときに熱感
→熱がこもっている状態のため、熱感が生じます。辛夷清肺湯は冷やす漢方薬です。
鼻づまり
→辛夷清肺湯の辛夷は鼻を通す働きがあります。ほかにも葛根湯加川芎辛夷という漢方薬にも辛夷が入っており、その漢方薬にも鼻づまりの効能効果が記載されています。
慢性鼻炎、蓄膿症(副鼻腔炎)
→辛夷清肺湯は慢性鼻炎や蓄膿症に特化した漢方薬です。鼻を通す生薬、熱を冷ます生薬から構成され、鼻炎・副鼻腔炎の原因となる炎症を冷やしていきます。
清肺湯と辛夷清肺湯の違いは?
清肺湯と辛夷清肺湯の違いは、清肺湯が去痰・鎮咳に特化した漢方薬で、辛夷清肺湯が炎症を抑え、鼻通りを良くすることに特化した漢方です。
清肺湯と辛夷清肺湯は名前が良く似ている漢方薬です。
名前だけみると、清肺湯に辛夷(しんい)を足すと辛夷清肺湯になりそうですが、構成が異なります。
清肺湯は、黄芩、桔梗、桑白皮、杏仁、山梔子、天門冬、貝母、陳皮、大棗、竹茹、茯苓、当帰、麦門冬、五味子、生姜、甘草から構成されています。
辛夷清肺湯は知母・黄芩・山梔子・麦門冬・石膏・升麻・辛夷・百合・枇杷葉から構成されています。
黄芩・山梔子・麦門冬は清肺湯も辛夷清肺湯も共通していますが、それ以外は異なる生薬です。
蓄膿症などの鼻の症状を得意としているものが辛夷清肺湯で、咳・痰を得意としているものが清肺湯です。
辛夷清肺湯が効かない理由は?
漢方薬は体質が合っていないと効果を発揮しません。辛夷清肺湯は熱を冷ますことで副鼻腔炎に効果を発揮する漢方薬です。冷えている体質の方の副鼻腔炎は温める必要があります。温めるタイプの副鼻腔炎につかう漢方薬に葛根湯加川芎辛夷があります。辛夷清肺湯でも副鼻腔炎の改善がみられないときは、体質から変える必要があります。慢性的な副鼻腔炎の方の体質改善につかわれる漢方薬に荊芥連翹湯があります。
まとめ
辛夷清肺湯の働きについて、添付文書から解説しました。
辛夷清肺湯は鼻を通すこと、熱を冷ますこと、潤し膿を出しやすくする生薬が多く入ることで「体力中等度以上で、濃い鼻汁が出て、ときに熱感を伴うものの次の諸症:鼻づまり、慢性鼻炎、蓄膿症(副鼻腔炎)」の効能効果があります。