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【防已黄耆湯】わかりやすい解説(ぼういおうぎとう)~多汗症、水太りに

防已黄耆湯

 

防已黄耆湯の働きを添付文書の効能効果から掘り下げて、考えたいと思います。

 

薬局製剤 防已黄耆湯の効能効果には、

 

「体力中等度以下で、疲れやすく、汗のかきやすい傾向のあるものの次の諸症:肥満に伴う関節の腫れや痛み、むくみ、多汗症、肥満症(筋肉にしまりのない、いわゆる水ぶとり)」

 

と記載されています。

 

医療用ツムラの効能効果には、

 

「色白で筋肉軟らかく水ぶとりの体質で疲れやすく、汗が多く、小便不利で下肢に浮腫をきたし、膝関節の腫痛するものの次の諸症 腎炎、ネフローゼ、妊娠腎、陰嚢水腫、肥満症、関節炎、癰、せつ、筋炎、浮腫、皮膚病、多汗症、月経不順」

 

と記載されれています。

 

同じ漢方薬でも、商品によって効能効果が違いますね。

 

医療用ツムラの方が効能効果の範囲が広いことがわかります。

 

肥満症から月経不順まで幅広いです。

 

添付文書の意味が分かりやすいように解説したいと思います。

 

ただし、商品によって効能効果は異なるので、ご購入の際は商品説明をきちんとお読みください。

 

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構成

 

防已黄耆湯は、防已・黄耆・白朮・生姜・大棗・甘草から構成されています。

 

防已

防已(ぼうい)は防已黄耆湯の主薬です。

 

防已は水のめぐりを改善し、たまっている水を追い出す生薬です。

 

あとで説明する白朮と異なるのは、防已は「肺」に入り、水の流れを改善します。

 

肺に入るといってもわかりにくいため、次に漢方における肺の働きを説明したいと思います。

 

漢方での肺とは、水を通調する働きがあり、水道の上源ともいわれます。

 

庭に水を撒くことをイメージしてみてください。

 

水を撒くとき、蛇口をひねり、水をホーズで霧状に飛ばすことで土を濡らします。

 

ホースで水を庭全体に行き渡らせる働きが、漢方での肺の働きです。

 

そのため蛇口の締めが悪かったり、ホースが破れたりすると、水を全身にめぐらせることができなくなります。

 

防已は肺に入ることで、ホースの流れの悪い部分のめぐりを改善し、鬱滞している水を追い出します。

 

黄耆

防已黄耆湯は黄耆(おうぎ)もとても重要な働きをしています。

 

黄耆は気を身体の内側から、身体の表面へ気を行き渡らせる働きがあります。

 

内側から表面へ気の通りを良くします。

 

そのため黄耆は補中益気湯のような元気がないときにもつかうことができ、当帰飲子のように皮膚の乾燥・かゆみがあるときにも使うことができます。

 

また黄耆は気を補うことで、水の流れを助ける働きがあります。

 

気は水が流れを助ける働きがあります。

 

気の働きがなければ、水も血の流れません。

 

気があることでスムーズに気血が流れることができます。

 

白朮

白朮(びゃくじゅつ)は気を補う働きと、水を追いだす働きがあります。

 

気が不足していると、身体から余分なものを追い出す力が弱くなり、水をため込みやすくなります。

 

白朮は気を補うことで、水を追い出す身体の土台をつくる働きと直接的に水を追い出す働きの2つの作用があります。

 

気が不足し、水がたまっている状態には適した生薬です。

 

生姜・大棗・甘草

生姜・大棗・甘草は胃腸の働きを助け、気を補う生薬です。

 

この3つの組み合わせは頻用されており、多くの漢方薬にも入っている生薬です。

 

構成のまとめ

防已黄耆湯は、防已が水道の上源といわれる肺から全身の水のめぐりを改善します。黄耆が身体の表面へ気を補い、気虚による水の流れの悪さを改善します。白朮が気を補いながら、たまっている水を追い出します。生姜・大棗・甘草が胃腸の働きを助け、気を補います。汗がかきやすい、水がたまりやすい方に向いて漢方薬です。

 

 

効能効果なぜ?

 

医療用ツムラの効能効果には、

 

「色白で筋肉軟らかく水ぶとりの体質で疲れやすく、汗が多く、小便不利で下肢に浮腫をきたし、膝関節の腫痛するものの次の諸症 腎炎、ネフローゼ、妊娠腎、陰嚢水腫、肥満症、関節炎、癰、せつ、筋炎、浮腫、皮膚病、多汗症、月経不順」

 

と記載されれています。

 

なぜこのような効能効果なのか考えたいと思います。

 

色白

→色が白いというのは、気虚ということです。熱がこもっていれば赤くなりますし、血虚であれば色が浅黒くなったり、冷えていれば青白くなったります。

 

筋肉軟らかく

→筋肉が軟らかいのは、気が足りていないため、引き締まりがないことをあらわしています。気が充足すると身体が引き締まります。年齢とともに、身体に引き締まりがなくなっていくのは、一般的には筋肉の衰えといいますが、漢方では気の不足から来ていると考えられます。

 

水ぶとりの体質

→気が不足していると、身体に余分なものがたまっても追い出すことができなくなります。結果として身体に水がたまり、水太りになります。気を補うことで、余分な水を追い出すことができるようになり、身体の水はけがよくなります。年齢を重ねるごとに太るには2つの理由があり、単純に食べ物を食べすぎて太る場合と、気が不足して余分な水を追い出すことができない場合とがあります。食べ物を食べすぎて太った場合は皮下脂肪がつきますが、気の不足から水がたまっている状態は水太りという表現になります。

 

疲れやすく

→防已黄耆湯は気虚からの水太りになるため、気の不足から疲れやすくなります。

 

汗が多く、多汗症

→防已黄耆湯は気が不足することで、水がたまりやすくなると説明してきました。気の不足の影響は体表にも影響を与えます。漢方では気が充足することで、汗の穴を閉じることができると感がられています。反対に皮膚で気が不足しているときは、汗の穴を閉じることができず、汗が漏れ出やすくなります。水太りでなくても、汗をかきやすいのは体表の気の不足をあらわしています。防已黄耆湯の黄耆が体内から体表へ気をめぐらせることで、皮膚に気が行きわたります。防已黄耆湯はそういった体表の気が不足している方にもつかうことができます。

 

小便不利で

→防已黄耆湯では気の不足から水がたまりやすくなります。つまり水を出す力が弱っている状態のため、小便の量は減っていきます。

 

下肢に浮腫をきたし、膝関節の腫痛するもの

→溜まっている水がお腹周りだけにあれば水太りになりますが、水は重力によって下にたまる性質があります。日常生活でも足がむくむことはあっても、手がむくむことはなかなかありません。水の鬱滞は足にたまりやすくなります。気血がきちんと流れているところに、水の鬱滞があることで気血の流れを邪魔し、痛みが生じるようになります。水がたまることで膝の関節が腫れ、気血の流れを邪魔することで痛むようになります。防已黄耆湯は関節に痛みがある方にもつかうことができます。

 

腎炎、ネフローゼ、妊娠腎

→防已黄耆湯がむくみなども水がたまっている状態につかう漢方薬のために記載があると考えられます。腎臓の働きが悪くなると、水を追い出すことができす、水がたまりやすくなります。実は防已黄耆湯に含まれる黄耆には腎機能に関するいくつかの報告はあるのですが、添付文書がつくられた後に研究をされたものと考えられ、添付文書に記載がある理由としては、腎機能が悪くなる→むくむ→防已黄耆湯はむくみにつかう漢方薬、ということで記載されていると考えられます。

 

陰嚢水腫

→陰嚢水腫とは精巣(睾丸)を包む膜の中に液体が溜まり、陰嚢が膨らんだ状態です。防已黄耆湯は水のめぐりを改善する働きがあるため、記載があると考えられます。

 

肥満症

→肥満症のタイプにもいくつかあり、防已黄耆湯の効く肥満症は水太り体質です。気が不足すると、身体の水はけが悪くなり、水が溜まりやすくなります。気の不足からの水太りの肥満症には、防已黄耆湯が気を補い、水を追い出すことで効果を発揮します。

 

関節炎

→防已黄耆湯が得意とする関節炎は水が鬱滞することで関節炎になっている状態です。筋肉がやせ細った関節炎、長期に慢性化した関節炎には防已黄耆湯は不向きで、関節に水の停滞があることで関節炎になっている場合には防已黄耆湯が適しています。

 

癰、せつ、皮膚病

→せつは1つの毛孔(もうこう)の化膿で、癰(よう)はいくつかの毛孔の周囲に化膿性病変ができたものです。防已黄耆湯の黄耆は体表へ気をめぐらせることが特徴的な生薬です。体表の細胞で気を送り届けるため、化膿している部分を黄耆が助けてくれます。千金内托散、托裏透膿散という膿出しにつかう漢方薬には黄耆が必ず入っており、肌の膿や皮膚疾患に黄耆はとても重要な役割を果たしています。防已黄耆湯は、膿の出が悪かったり、浸出液が多かったりするような場合に向いていると考えられます。

 

筋炎

→筋炎には多発性筋炎、皮膚筋炎などが知れていますが、ここでの筋炎は広い意味合いで筋肉の炎症をあらわしていると思われます。防已黄蓍湯には冷やす生薬や風熱を発散する生薬は入っていないため、筋炎でも水の鬱滞による筋炎の場合には有効だと考えられます。

 

むくみ

→気が不足すると、余分な水を追い出す力が弱くなります。防已黄耆湯は気を補い、水のめぐりを改善し、むくみにつかうことができます。

 

月経不順

→気が弱っている状態は元気がない状態であり、そこに水が溜まってくることで本来あるべきところに気血が流れなくなり、生理不順になると考えられます。月経不順の記載がありますが、防已黄耆湯には血に働く生薬は入っておらず、水が鬱滞がとくに強いときには使うことができるかもしれません。

 

防已黄耆湯と当帰芍薬散の違いは?どっちがいい?

防已黄耆湯と当帰芍薬散の違いは、血を補う働きがあるのかどうかと、浮腫みの位置の違いです。

 

当帰芍薬散には当帰・芍薬・川芎という血を養う生薬が入っており、女性に不足しがちな血を補う働きがあり、生理不順にも効果があります。

 

浮腫みの位置については、防已黄耆湯は水太り、関節などの比較的身体の表面に近い位置の浮腫みに効果を発揮します。

 

当帰芍薬散は白朮・茯苓・沢瀉の3つもの水のめぐりを改善する生薬が入り、浮腫みの位置は足から頭まで広い範囲に効果があります。

 

足に浮腫みがあることで足腰の冷え性、頭に水飲があることでめまい、ふらつき、頭重感となり、当帰芍薬散にはそれらにも効果があります。

 

浮腫みだけが気になるなら防已黄耆湯が適しており、生理不順と浮腫みがあるなら当帰芍薬散がおすすめです。

 

防已黄耆湯と防風通聖散の違いは?

防已黄耆湯と防風通聖散の違いは、気が充実しているかどうかです。

 

防已黄耆湯の一番の原因は気の不足です。

 

気の不足から、水を追い出す力が弱くなり、浮腫みとなります。

 

防已黄耆湯の太り方は、締まりのない水太り体質になります。

 

反対に防風通聖散の場合は気が充実し、食べ過ぎたものがそのまま体に溜まる太り方です。

 

水太りではなく、皮下脂肪が多く、たまっているため便秘になりやすい方が防風通聖散が向いています。

 

防已黄耆湯が効かない理由は?

防已黄耆湯は気が不足し、身体から余分な水を追い出せず、水がたまった人に向いています。気の不足が一番の原因です。そのため気が充足した体質の浮腫んでいる方には効果がでにくいです。

 

防已黄耆湯の水を追いだす生薬は防已・白朮のみで、水を追い出す働きの生薬数は少ないです。浮腫みが強い方には、防已黄耆湯では水を動かす力が弱いです。

 

防已黄耆湯は気を補うのは黄耆のみで、人参などは入っていません。気を強く虚している方には、人参などが入った漢方薬の方が適しています。

 

漢方薬は体質が合うことで効果を発揮します。漢方薬が効かなかったのではなく、体質と合っていないから効かなかったかもしれません。

 

浮腫みにつかう漢方薬は次にまとめていますので、リンクを参考にしてください。

 

まとめ

防已黄耆湯の効能効果は幅広く、どうしてこれにも効能効果があるのか、疑問に思っていた方もいると思います。

 

防已黄耆湯は身体の表面の気を補い、水の流れを改善することから「体力中等度以下で、疲れやすく、汗のかきやすい傾向のあるものの次の諸症:肥満に伴う関節の腫れや痛み、むくみ、多汗症、肥満症(筋肉にしまりのない、いわゆる水ぶとり)」の効能効果があります。

 

ただし、商品によって効能効果は異なるので、ご購入の際は商品説明をきちんとお読みください。

 

 

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