灯心堂漢方薬局

PMDDの漢方薬とは?~生理前の精神的な不安を漢方の目線で考える~

まず、実際にあった相談事例を紹介したいと思います。

 

生理前の気分の落ち込みの症例1

41歳 女性。

20年前からもあったが、生理の10日前から気分の落ち込みがかなりつらい。

生理がはじまると楽になる。

10年前にお子さんが生まれてから、気分の落ち込みが強くなっている気がする。

肩が凝りやすく、寒がり。

先月から、さらにしんどくなってきたため、当薬局に相談に来られた。

気分の落ち込みが強く、しんどいとのこと。

 

出産は、大量に気血を消耗します。

 

出産を経験することで、より気血が不足し、気分の落ち込みが強くなることはよくみられます。

 

この方のときは、気血を養い、気持ちの土台をつくる漢方薬14日分をおすすめいたしました。

 

14日後に来られた時には、「今、生理前ですけど、気持ちが全然しんどくないです!」といっていただけました。

 

効果がでるまで、時間がかかると思っていましたが、この方の場合は比較的早めに効果の実感をしていただけました。

 

その後は、数か月に一度、2週間分のお薬をもらいに来られています。

 

 

生理前の気分の落ち込みの症例2

41歳 女性。

15年前から気分の落ち込みが強い。

とくに27~33歳のときがしんどかった。

生理前になると何でもネガティブになる。

けん怠感もひどい。朝仕事にいくのもだるい。

生理がくると一気に楽になる。

生理前でなくても、普段から心配性。

低血圧、冷え性。健康診断の数値は何も問題なかった。

不安感が強いが、生理がくると楽になる方。

 

生理前のしんどさも、もう15年になるとのこと。

 

この方には、気血を養う漢方薬をおすすめさせていただきました。

 

まず2週間服用していただき、「今日マシかもみたいな日が増えてきました。服用して6日目くらいによくなってきて、生理前でもそこまでしんどくない。肩こりも良くなった気がする」といっていただけました。

 

気血を養うのには時間がかかるため、漢方薬を継続していただいています。

 

 

 

PMDDとは?

PMDDとは、月経前不快気分障害(Premenstrual Dysphoric Disorder)のことです。広い意味でPMSの一種で、生理前に精神的な症状が強い場合にPMDDといわれます。

 

生理前に、気分の落ち込みがかなり強くでたり、夜になると泣いてしまったり、イライラが強くなったりしませんか?

 

PMDDの診断については、まずは婦人科や心療内科を受診してください!

 

漢方ではそのような生理前の精神的な症状のことを「血の道症」といいます。

 

「血の道症」とは「血の道症とは、月経など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のこと」です。

 

PMDDにみられる、生理前の精神不安、いらだちは、漢方で考えると血の道症にふくまれると考えられます。

 

PMDDでよくみられる症状から、それに対応した漢方薬について説明します。

 

漢方からPMS,PMDDの原因を考える

西洋医学的には、PMSの原因は排卵後のホルモンの乱れといわれます。

 

漢方でのPMS,PMDDの原因を考えたいと思います。

 

漢方において、女性の生理に関して重要になるのは、”肝”という臓腑です。

 

”肝”というと、”肝臓”と紛らわしいですね。

 

西洋医学的での肝臓は、たんぱく質を合成したり、解毒、胆汁をつくったりする臓器のことをいいます。

 

それに対し、漢方での”肝”は広い意味をもち、血を蓄えたり、気をめぐらせる働きがあります。

 

”肝”は血を蓄える働きがあるため、血を消耗する生理と関係があることがわかります。

 

また”肝”は気のめぐりにも関与しています。

 

イライラや不安が起こりやすいのは、気のめぐりが悪いからです。

 

とくに生理前は、血を消耗するため、肝の働きが不調を来しやすいです。同時に、肝は気のめぐりとも関係しているため、気のめぐりをコントロールできなくなります。

肝が血を蓄えている→生理で血を消耗する→肝がつかれる→気のめぐりをコントロールできなくなる

PMSやPMDDの生理前の不調は、漢方ではの不調と説明できます。

 

PMDDにつかう漢方薬は?

PMDDの症状から考え、帰脾湯、抑肝散、逍遙散をつかいます。不安が強いときは帰脾湯、イライラが強いときは抑肝散、精神不安もいらだちもあるときには逍遙散をつかいます。

PMDDにつかう漢方薬3選。精神不安、気分の落ち込みが強い場合は帰脾湯。イライラ、怒りやすいときは抑肝散。イライラも不安のどちらもあるときは逍遙散がおすすめです。ただし症状や体質によって変わってくることもあるので、ご相談ください。

 

不安、気分の落ち込みが強い

不安の症状が強いとき、漢方では心の血が不足していると考えられます。

 

ものごとを考え込みすぎたり、心労がたたることで、心血を消耗していきます。

 

心血が不足すると、心が満たされないため、強い不安感となります。

 

心血不足からくる不安感には、帰脾湯が適しています。

 

帰脾湯

帰脾湯の効能効果は「体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪いものの次の諸症:貧血、不眠症、神経症、精神不安」です。

 

帰脾湯には気血を養う生薬が多く入っています。

 

気を補う生薬には人参、黄耆、白朮、茯苓が入っています。

 

また血を養う生薬には当帰、竜眼肉、酸棗仁が入っています。

 

とくに竜眼肉(りゅうがんにく)・酸棗仁(さんそうにん)は肝血・心血を養う働きがあります。

 

帰脾湯の竜眼肉・酸棗仁が心の血を養うことで、精神不安に効能効果を発揮します。

 

イライラが強いとき

イライラが強いときは、漢方では気が高ぶりやすい状態にあると考えられます。

 

体質として、怒りやすかったり、イライラしやすいのは体質の恐れがあります。

 

イライラ、怒りやすいときには抑肝散が適しています。

 

抑肝散

抑肝散の効能効果は「体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、血の道症」です。

 

抑肝散は釣藤鈎(ちょうとうこう)という生薬が主薬です。

 

釣藤鈎は気の高ぶりを鎮める働きがあり、イライラの原因を鎮めます。

 

抑肝散には柴胡の気をめぐらせる生薬や、当帰という血を養う生薬も入っています。

 

イライラ、怒りやすさが強い時は抑肝散が適してます。

 

イライラも不安もどちらも

気分の落ち込みが強くでる方もいれば、イライラが強くでる方もいらっしゃします。

 

実際には、不安もイライラも同時にみられることも多いです。

 

不安とイライラは反対の症状に思えるかもしれません。

 

漢方では不安・イライラはどちらも気のめぐりの悪さが原因といえます。

 

気のめぐりが悪く、気が行き渡らず、ふさぎ込むと、気分も落ち込みやすくなります。

 

気のめぐりが悪く、気の高ぶりになると、イライラが生じます。

不安もイライラも、気のめぐりが悪いことが原因です。

鬱滞している気をめぐらせる漢方薬に逍遙散があります。

 

逍遙散が気をめぐらせ、血を養う働きがあります。

 

逍遙散

逍遙散の効能効果は「体力中等度以下で、肩がこり、疲れやすく精神不安などの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、不眠症、神経症、血の道症」です。

 

逍遙散には柴胡という生薬が入っています。

 

柴胡は気をめぐらせる代表的な生薬で、理気薬ともいわれます。

 

また逍遙散には、生理などで不足しがちな、血を養う当帰・芍薬が入っています。

 

逍遙散は気をめぐらせ、血を養い、女性の生理前のイライラ・不安に合った漢方薬です。

 

 

 

 

漢方薬は体質や症状によってつかいわけます。

 

あなたにあったものを服用していただきたいため、いつでも気軽にご相談くださいませ。

 

 

 

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