「肝」の不調を改善するための漢方薬の選び方

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西山光です

漢方では五臓という考えがあり、肝・心・脾・肺・腎があります。

西洋医学での臓器と、漢方での五臓は共通している部分もありますが、漢方独自の働きもあります。

ここでは「肝」の漢方での働きについて解説します。

西洋医学では肝”臓”というのに対し、漢方では”肝”といいます。

西洋医学→「肝臓」  漢方→「肝」

目次

西洋医学での肝臓の働き

・タンパク質の合成、栄養の貯蔵
・有害物質の解毒・分解
・胆汁の合成・分泌
・血液の貯蔵

いわゆる解毒やタンパク合成の働きがよく知られています。

漢方での肝の働き

漢方での「肝」の働きは「気」と「血」に大きくかかわっています。

とくに気のめぐりに関しては「肝」が非常に重要です。

また「血」に関しても、肝は「血」をたくわえる働きがあります。

ここでは次の4つの働きについて、説明しています。

・疏泄条達をつかさどる
・血を蔵す
・筋をつかさどる
・目に開竅する

疏泄・条達をつかさどる

”疎”は疎通を、”泄”は宣泄(発散する)を意味し、気を疎通し、発散する働きを疎泄と表現しています。

”条”はすじみち、”達”は送達を意味し、細かいところに気を送り届けることを表現しています。

簡単にいえば、「気」を体の隅々までのびやかに送り届けているのが肝の役割です。

足をつったり、肩が凝ったりするのは、肝の疏泄条達が失調しているといえます。

肝によって気をスムーズに送ることができなくなると、気が鬱滞し、イライラへとつながります。

「肝」の気のめぐりが悪くなると精神的な不調がでやすくなるため、自律神経の問題などは「肝」のことを重視します。

血を蔵す

「肝」の血を蓄える働きがあり、この働きは西洋医学と漢方も同じですね。

肝の蔵血が失調すると、「血」が足りなくなります。いわゆる「血虚」のことです。

漢方での「血」は栄養の働きがあり、各臓腑、目、肌、筋肉、爪、髪を艶やかにしてくれます。

「肝」の蔵血の働きが機能しなくなると、目のつかれ、目のかすみ、ひきつり、しびれ、生理量低下、無月経へとつながります。

筋をつかさどる

肝は血を蔵し、筋肉を血によって潤しています。肝の血が不足するとこむら返り、けいれんなどが起こりやすくなります。

また肝の疏泄条達の働きからみても、細かい気の流れを調整することができなくなり、筋肉がひきつるとも考えられます。

目に開竅する

肝は血を蔵し、目の働きと関係があります。

肝が不足すると、目に栄養がいきわたらず、目のつかれ、目のかすみへととながります。

肝の不調

「肝」の働きが弱くなると、どういった症状がみられるのか説明しています。

「肝」の不調として、肝血虚、肝陰虚、肝気鬱結、肝火上炎、肝陽上亢についてあげています。

肝血虚

肝血という肝の血が不足している状態です。

・めまい
・筋肉のひきつり
・しびれ
・爪がもろい
・目のつかれ
・生理量が少ない
・生理が遅れやすい

「肝」の「血」の不足は栄養の不足になります。

「血」が不足すると、栄養が足りなくなり、肌は乾き、筋肉はひきつり、爪がもろく、髪はぱさつき、目は疲れやすくなります。

「血」は女性では生理に関わる重要な要素です。「血」が不足すると、生理の血が不足し、生理血が薄くなったり、生理が遅れやすくなります。

食事としては、色の濃い野菜、肉、魚類を食べることをおすすめします。

「血」が不足し、生理不順、貧血の症状があれば四物湯が血を養ってくれます。

肝陰虚

陰虚というのは血虚からさらに水分も減ってきている状態です。

・めまい
・耳鳴り
・視力減退
・筋肉のひきつり
・しびれ
・目の乾燥
・ほてり

陰虚という、水分までも不足しているので、ほてり、熱感の症状もあらわれてきます。

肝陰虚の状態のときは肝血虚のときよりさらに熱を冷まし、陰を補う漢方薬をつかう必要があります。

食事としては、甘味と酸味のある食事が潤いを与えてくれます。

漢方としては、六味地黄丸が陰を養ってくれます。

肝気鬱結、肝鬱気滞

「肝」の気をめぐらせる働きが悪くなると、気が鬱滞し、張ったような不調、精神的な不調が出やすくなります。

・憂うつ
・いらいら
・胸脇部が張って痛む
・ため息
・生理不順

気が鬱滞しているため精神症状が多くあわられます。

漢方で面白い考えとして、憂うつもイライラもどちらも気の鬱滞が原因であることです。

気分が落ち込む憂うつとイライラは反対の症状に思えますが、原因はどちらも気のめぐりの悪さです。

肝気の鬱滞は生理にも影響を与え、生理不順の原因にもなります。

気の鬱滞があるときは、ストレッチや運動にて身体の気をめぐらせることがおすすめです。

漢方としては、気の鬱滞と生理不順があれば加味逍遙散、気の鬱滞から胸脇部の張りがあれば大柴胡湯などがおすすめです。

肝火上炎

「気」のめぐりが悪く、気の鬱滞が強いと熱を持ってきます。気の鬱滞が化熱し、熱の症状がでてきた状態を肝火上炎といます。

・いらいら
・怒りっぽい
・ふらつき
・頭痛
・耳鳴り

あらわれてくる症状も、憂うつなどはみられず、イライラ、怒りっぽいなど激しいものばかりです。

気の鬱滞から熱に変化しているため、肝の熱を冷やす漢方薬をつかいます。

いらいら、ほてり感があれば黄連解毒湯がおすすめです。

肝陽上亢

陰虚と上炎の症状が同時にあると肝陽上亢の状態になります。

陰虚があることで、熱を冷ますことができず、熱感が助長されます。

陽気が過剰になっているという点では肝火上炎と似ていますが、肝陽上亢では陰虚が原因としてあることが重要です。

陰虚があるため筋肉を潤すことができず、筋肉に関する症状もでてきます。

・のぼせ
・いらいら
・怒りっぽい
・めまい
・耳鳴り
・頭痛
・腰膝のだるさ
・ふるえ

イライラ、怒りっぽの精神的な症状に追加で、ふるえ、ひきつり、けいれんの症状もあるときは肝陽上亢と考えられます。

肝陽上亢のときは、潤すことと、気のめぐりを改善することを同時にしていく必要があります。

頭痛の症状があれば釣藤散、歯ぎしり、いらいらがあれば抑肝散などがおすすめです。

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