逆流性食道炎を改善するための漢方薬の選び方とその使い方

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西山光です

すっぱいものが込みあがってくる、胸やけ、呑酸が気になったことはありませんか?

急に込みあがってきて、胸に違和感があったり、口まで上がると口の中がすっぱくなります。

最近では胃食道逆流症、逆流性食道炎という言葉を聞くことも多いですよね。

胃食道逆流症は胃酸が逆流している状態を広くあらわし、胃酸の逆流によって炎症が起こると逆流性食道炎という表現になります。

ここでは逆流性食道炎と漢方について、解説しています。後半では実際の症例も記載しているので、参考にしてください。

目次

胃酸が逆流する理由は?

理由はいくつかありますが、理由の1つに食道と胃の境目の筋肉が弱まることがあげられます。

胃酸が食道へ逆流しないように、下部食道括約筋が門番として守ってくれているのですが、その筋肉が弱まると胃酸が逆流しやすくなります。

逆流性食道炎、胃食道逆流症

ほかにも食道裂孔ヘルニア、腹圧の上昇でも胃酸は逆流しやすくなります。

肥満、妊娠、喫煙、腹水、ぜんそく、便秘などでも腹圧が上昇しやすくなります。

以前、テレビ番組『みんなの家庭の医学』では便秘によって腹圧が上がり、胃酸の逆流が起こりやすくなることを指摘していました。

反対にいえば、肥満から痩せることで腹圧が下がり、胃酸の逆流の予防ができます。

逆流性食道炎の食事でダメなものは?

口から摂取するものと胃酸の逆流には関連があります。

タバコ、アルコール、チョコレート、脂肪食、炭酸飲料は避けることをおすすめいたします。

チョコレート、炭酸飲料、タバコは下部食道括約筋を緩め、胃酸を逆流しやすくなります。

タバコ、アルコール、チョコレート、脂肪食は酸暴露時間を延長させます。

胃酸の逆流が気になる方はタバコ、アルコール、チョコレート、脂肪食、炭酸飲料だけでも避けていただいた方がいいでしょう。

胃酸の逆流を防ぐには?

胃酸の逆流の症状を改善する方法でエビデンスがあるものは体重減少です。

胃酸の逆流の理由の1つは腹圧の上昇で、その腹圧を上昇させる要因の1つは肥満です。

肥満であることは日常的に腹圧が上昇しやすくなり、胃酸が逆流しやすくなります。

肥満で胃酸の逆流でお悩みの方は体重を減らすことをおすすめします。

逆流性食道炎の薬は?

西洋医学で胃食道逆流症の第一選択薬になっているのはPPIです。

PPIというのは簡単に言えば、胃酸の出すぎを抑える薬です。

胃酸の出すぎを抑えることで胃酸が逆流する症状を緩和します。

最近ではPPIの長期服用でガストリンが高値になることが指摘されています。

プロトンポンプ阻害薬とガストリン高値の関係は?【ガストリン値は酸分泌抑制の強度に依存して上昇するため,PPIにより亢進する】|Web医事新報|日本医事新報社 (jmedj.co.jp)

漢方での逆流性食道炎の原因は?

漢方において、逆流性食道炎の原因は「気滞」が考えられます。

気が順調に下にめぐっていることで、消化管もスムーズに動き、胃酸も流れていきます。

しかし、「気滞」が強いとどうなるでしょうか?

「気滞」があると、気が下向きに降りることができません。

下に降りることができなくなった気は逃げ道を求め、胃酸が逆流します。

逆流性食道炎は「気滞」が原因と考えらえます。

「気滞」と逆流性食道炎の関係はまだまだあります。

1つは便秘です。

逆流性食道炎と便秘は関係があるといわれています。

便秘があることで、腹圧が高まり、胃が圧迫され、胃酸が逆流します。

漢方で考えると、便秘は「気滞」の症状であり、それに伴って胃酸の逆流が生じるのも当然だと考えられます。

また逆流性食道炎はストレスと関係があるといわれています。

ストレスがかかると、胃酸の分泌が促進され、逆流しやすい状況になります。

漢方ではストレスがかかると、気の巡りが悪くなり、「気滞」になります。

ストレスも逆流性食道炎はどちらも「気滞」が原因と一言でいうことができます。

逆流性食道炎で薬が効かない理由は?治らない理由は?

漢方の目線で考えると、逆流性食道炎の一番の原因は気が逆流しているためと考えられます。漢方から考えると、お薬で胃酸を抑えても、気の巡りが改善されるわけではないため、薬が効かない場合があると考察されます。漢方の場合は気を下向きに巡らせるような漢方薬をつかいます。

逆流性食道炎を漢方で考えると、気滞が原因のため、治すには気をめぐらせる必要があります。

逆流性食道炎のおすすめの市販薬の漢方薬は?

胸やけの漢方薬に安中散、半夏瀉心湯、茯苓飲合半夏厚朴湯、症状から考えると、吐き気に対して半夏厚朴湯、食欲不振・消化不良のときは香砂六君子湯、みぞおちのつかえが強いときは延年半夏湯もおすすめです。

□胃痛 □吐き気→安中散
□お腹がゴロゴロ鳴る □軟便→半夏瀉心湯
□胸やけ □不安感→茯苓飲合半夏厚朴湯(←迷ったときはこれ)
□吐き気 □不安感→半夏厚朴湯
□食欲不振 □消化不良→香砂六君子湯
□みぞおちのつかえ □慢性胃炎→延年半夏湯

安中散

胃痛、吐き気があるときは安中散がおすすめです。

安中散には牡蛎(ぼれい)という生薬が入っています。

牡蛎はカキの貝殻で、胃酸を中和します。

また延胡索という生薬は止痛の働きがあり、胃痛を抑えます。

胸やけと胃痛があるときは安中散が適しています。

半夏瀉心湯

お腹がゴロゴロなって、軟便気味のときは半夏瀉心湯がおすすめです。

半夏瀉心湯には寒性と温性の生薬が入っています。

半夏瀉心湯は胃のつかえをとり、寒暖差によって生じる下痢を緩和します。

お腹がゴロゴロなって、軟便気味のときは半夏瀉心湯がおすすめです。

半夏厚朴湯

吐き気が気になるときは半夏厚朴湯がおすすめです。

半夏厚朴湯には厚朴がお腹周りの気を緩める働きがあります。

半夏が吐き気を抑え、蘇葉が気を発散してくれます。

吐き気があるときは、胸・お腹周りの気を緩める半夏厚朴湯がおすすめです。

茯苓飲合半夏厚朴湯(←迷ったときはこれ)

胸やけ、不安感があるときは茯苓飲合半夏厚朴湯をおすすめいたします。

茯苓飲合半夏厚朴湯には枳実(きじつ)という生薬が気を下向きに降ろす働きが強いです。

枳実が逆流する胃酸を下ベクトルへ向かわせます。

さらに厚朴・半夏・蘇葉も気をめぐらせる働きがあり、お腹まわりの気を緩め、胃酸が下へ向かいやすくなるように助けます。

人参も入り、気を補う働きがあります。

胸やけでお悩みの方はまずは茯苓飲合半夏厚朴湯が適していることが多いです。

香砂六君子湯

食欲不振、消化不良があるときは香砂六君子湯がおすすめです。

香砂六君子湯は六君子湯に藿香・香附子・縮砂が加わったものです。

藿香・香附子・縮砂の香りの良い生薬で、気をめぐらせる働きがあり、胃腸の働きを助けます。

またベースとなっている六君子湯は人参・白朮・茯苓などの気を補う生薬が多く入り、胃腸の働きを助けます。

食欲不振、消化不良が気になる方は香砂六君子湯をおすすめいたします。

延年半夏湯

みぞおちがつかえ、胃が開かないような感じがあるときは延年半夏湯がおすすめです。

延年半夏湯には呉茱萸(ごしゅゆ)という生薬が入り、呉茱萸が辛味にて胃を開き、胃酸を下へ降ろします。

呉茱萸がみぞおちがつかえを開く働きが強いため、胃のところでつかえて、違和感があるときに適しています。

また枳実という気をめぐらせる生薬も入り、胃酸を下へ向かわせます。

柴胡も入り、気のめぐりを助け、人参が気を補います。

みぞおちがつかえ、胃が開かない感じがあるときは延年半夏湯がおすすめです。

逆流性食道炎の相談事例1

30代女性。胃の調子が悪い。逆流性食道炎が落ち着いても再発する。最近また胃液の分泌を抑える感じの薬を医者にもらった。お酒を飲むと、胃がひっくり返っているのかというくらいに胃酸が逆流する。ここ2年ほどはストレスが継続して酷く、次から次へと身体がおかしくなっている。2年の間、とても怒りっぽくなってしまった。

胃酸の逆流に悩まれている方です。

一度は胃酸の分泌を抑えるお薬で症状が治ったが、お薬をやめると再発したとのこと。

逆流性食道炎の場合、薬をやめるとすぐに再発するという方とよくお会いします。

またストレスも重なり、イライラしやすくなっている状態です。

まさに気が逆流し、イライラにつながり、胃酸も逆流しやすい状態になっているといえます。

そこで気を下向きにめぐらせ、胃酸もイライラも改善できるような漢方薬をおすすめいたしました。

10日服用していただいただけでも、「頭に血がのぼっているのと逆流性胃腸炎に効いてくれました。ストレスで抑うつ感が結構強く出ていたのですが、かなり良くなりました。」といっていただけました。

逆流性食道炎の相談事例2

40代男性。バイクの転倒で肋骨を骨折してから、食道裂孔ヘルニアになり、胃酸が逆流しやすくなった。現在は強い胃酸を抑える薬を飲んでいるが、それでも胃酸があがってくることがある。一度、薬をやめようとしたけど、胃酸の逆流が強すぎて、やめることはできなかった。

食道裂孔ヘルニアとは、通常、横隔膜が胃酸の逆流を防いでいるのですが、横隔膜の位置がずれることで、胃酸が逆流しやすい状態になっていることです。

強い胃酸の分泌を抑制する薬を服用していても、胃酸の逆流があり、またやめると1日に何十回も胃酸が逆流してくるとのことです。

そこでお腹周りの緊張を緩め、気を下向きにめぐらせる漢方薬を2週間服用していただきました。

すると、胃酸の逆流が全くなくなったとのこと。

その後、数か月間は茯苓飲合半夏厚朴湯にて胃酸が逆流しないことを確認し、その後病院のドクターときちんと相談の上、胃酸の分泌抑制薬をやめられました。

その後も漢方薬のみでも胃酸の逆流はみられないとのことです。

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