アトピー性皮膚炎におすすめの漢方薬の選び方と注意点

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西山光です

アトピー性皮膚炎の相談も増えてきたので、アトピー性皮膚炎での漢方の考え方についてまとめました。

目次

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は肌のバリア機能が低下し、炎症を繰り返してしまう症状です。

子供のときにもみられますし、大人になってもみられることもあります。

アトピー性皮膚炎の西洋薬

標準的に使用されるものとしてはステロイドの外用剤がありますが、最近は新しい免疫を抑制するタイプの塗り薬もでています。

内服薬としては、アレルギー症状を抑えるお薬をつかいます。

アトピー性皮膚炎の漢方での考え方

漢方は状態や体質からお薬を選びます。

「アトピーだからこの漢方薬がいい!」というのはなく、人それぞれで肌の状態、体質から選びます。

人それぞれ肌の状態・体質からお薬を選べるので、その人にあった漢方薬をおすすめできます。

熱感、炎症、ほてりがとき

肌の炎症の症状が強いときは、しっかり炎症の熱を冷ましていく必要があります。

漢方薬にて炎症を抑えることで、熱感を冷ましていきます。

炎症の熱を冷ます漢方薬としては黄連解毒湯、三物黄芩湯などがあります。

乾燥が強いとき

肌の乾燥が強いときは、漢方では「血虚」の体質といえます。

漢方での「血」は血液だけでなく、栄養の意味合いがあります。

「血」が充実することで、肌は潤い、髪は艶やかに、爪は光沢がでてきます。

反対に「血」が不足すると、肌が乾燥し、髪はパサパサに、爪が割れてきます。

とくに慢性化している場合は、炎症の熱によって、肌の潤いを焼いていくため、血虚の症状が強くでてきます。

「血」を養い、炎症を抑える漢方薬として温清飲、「血」を養い、かゆみを緩和する漢方薬として当帰飲子があります。

ジクジクが強いとき

ジクジクが強いときは、漢方によって乾かしていく必要があります。

ジクジクが強いときには十味敗毒湯や、ジクジクとかゆみがあるときは消風散が適しています。

膿があるとき

膿があるときは漢方では排膿の対応をします。

排膿の生薬として、桔梗や枳実などの生薬が入った漢方薬をつかいます。

排膿として排膿散及湯、十味敗毒湯、慢性的に膿みやすいときや、膿んでもなかなか治らないときは千金内托散が適しています。

かゆみが強いとき

漢方ではかゆみを「風」を表現します。

かゆみは「風」のように急に生じ、急に引いていくからです。

かゆみ対応した漢方薬としては消風散や、乾燥とかゆみがあるときは当帰飲子が適しています。

虚弱体質

アトピー性皮膚炎の方は皮膚のバリア機能が弱っており、虚弱体質といえます。

虚弱体質というのは身体の内面のことです。元気に身体を活発に動かせていても、身体の内側では虚弱な方はたくさんいらっしゃいます。

またお子さんでアトピーの方をみていても、多くの方は痩せています。お子さんで痩せている方が多いのは、虚弱体質のため、食べ物から栄養を吸収できず、身体や皮膚の血肉に変えることができていないためです。

アトピー性皮膚炎の方は身体の内側から元気に虚弱体質を改善していく必要があります。

また漢方では「肺・皮膚・鼻」はつながなっていると考えます。肌と肺はつながっており、アトピー性皮膚炎もあり、喘息もあり、アレルギー性鼻炎あるという方がいらっしゃいませんか?

それは漢方で考えると、肌と肺と鼻がつながっているためと、一言で説明することができます。

まとめ

漢方では肌の症状、体質から薬を選びます。
選び方はシンプルで、炎症が強い時は炎症を抑え、乾燥があるときは潤し、ジクジクがあるときは乾燥させ、膿があるときは排膿し、かゆみがあるときは風を発散し、虚弱体質のときは気を補っていきます。

漢方薬は肌の状態や体質から選びます。そのため肌の乾燥が強いのに、乾燥させる性質の黄連解毒湯をつかってしまうとどうなるでしょうか?ジクジクしているのに、潤す漢方薬をつかってしまうとどうなるでしょうか?
漢方薬にはそれぞれ性質を持っています。ご自身にあったものを選ばないと、逆効果になってしまう可能性があります。

アトピー性皮膚炎に使用する漢方薬

アトピー性皮膚炎の場合、肌の状態、体質から漢方薬を選びます。使用する漢方薬としては、黄連解毒湯、三物黄芩湯、温清飲、当帰飲子、消風散、排膿散及湯、十味敗毒湯などがあります。

黄連解毒湯

〇熱感、炎症のある方 ×乾燥肌の方

黄連解毒湯は炎症を抑える苦い生薬から構成され、赤みに対応した代表的な漢方薬です。

黄連解毒湯は熱感、赤みのある湿疹・皮膚炎に適しています。

ただ黄連解毒湯は乾燥させる性質があるため、乾燥肌の方には適していません。

乾燥もあって、肌の炎症も強いかたは温清飲が適しています。

三物黄芩湯

〇熱感、炎症のある方

三物黄芩湯は苦参・黄芩・地黄から構成され、肌の熱感を抑え、湿疹・皮膚炎に適しています。

黄連解毒湯と異なる点は、地黄という潤す生薬が入っているため、乾燥肌の方も使用することができます。

温清飲

〇熱感、炎症のある方 〇乾燥肌

温清飲は炎症を抑える黄連解毒湯と、血を養う四物湯が合わさった漢方薬です。

炎症を抑える黄連解毒湯の副作用として、乾燥させる働きがあるのですが、四物湯があわさることで、むしろ肌を潤す働きが加味されています。

温清飲は抗炎症と保湿の働きがあり、炎症もあり、乾燥もある方に適しています。

当帰飲子

〇乾燥肌 〇かゆみが強い

当帰飲子は当帰、芍薬、地黄などの肌を潤す生薬に、刺蒺藜などのかゆみの「風」を発散する生薬から構成されています。

炎症は落ち着いているが、乾燥肌・かゆみでお悩みのときは当帰飲子が適しています。

消風散

〇かゆみが強い 〇ジクジク

消風散は、「風」を消すとあるように、かゆみのある湿疹・皮膚炎に適した漢方薬です。

乾燥が強い時は当帰飲子、少しジクジクがあるときは消風散が適しています。

排膿散及湯

〇膿があるとき

排膿散及湯は桔梗・枳実といった生薬は排膿に働き、膿を出すときに使用する漢方薬です。

別の見方をすると、排膿の働き以外はないため、膿出しの目的のときだけ使用します。

十味敗毒湯

〇膿があるとき 〇湿疹・皮膚炎もある

十味敗毒湯は桔梗が入り、排膿の働きがあります。

桔梗以外にも、独活・防風・荊芥の風を発散する生薬も入り、十味敗毒湯は化膿と湿疹・皮膚炎があるときに適しています。

アトピー性皮膚炎の相談1

20代後半 女性。アトピーで繰り返し、膿ができる。
アトピーは生まれてからずっとアトピーにて悩んでいる。西洋薬にて治療をしていた。その後、25歳から西洋薬を使用しない病院にて変更。膿が細菌性のもののときは抗生剤を使用し、そうでないときは自己治癒力にて治療をしているとのこと。それでも化膿やアトピーの症状がみられるため、当薬局に相談に来られた。表は熱感があるが、身体の内側は冷えている。

アトピー性皮膚炎と化膿しやすい体質のため、相談に来られました。

肌の赤みも強いため、まずはしっかり炎症を抑える必要がありました。また化膿しやすいのは虚弱体質が原因と考えられ、元気をつけ、膿を追い出しやすい漢方薬を服用していただきました。

1月の服用でも多少の効果の実感があったようで、3か月ほど服用していただいて、かさぶたの範囲もかなり狭くなってきました。

かさぶたのところがきれいになっていることがわかると思います。

まだまだ肌の調子も改善できていないところがあるので、引き続き服用していただいています。

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