アトピー性皮膚炎におすすめの漢方薬の選び方と注意点

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西山光です
質問

・アトピー性皮膚炎につかう漢方薬は?
・どう使い分けるの?

なかなか治らないアトピー性皮膚炎にお悩みではないですか?

漢方の目線でのアトピー性皮膚炎の考え方について解説しています。

このブログを読むことで、ご自身にあったものを選んでいただけたらと思います。

結論

・炎症が強い皮膚炎
→温清飲

・かゆみが強く、ジクジクするとき
→消風散

・乾燥が強く、かゆみがあるとき
→当帰飲子

・膿がある皮膚炎
→十味敗毒湯

・色素沈着、シミ
→桂枝茯苓丸加薏苡仁

・虚弱体質の改善
→補中益気湯

 この記事を読んでわかること
・アトピー性皮膚炎とは
・漢方薬のつかいわけ

漢方をうまく取り入れて、いつも通りに生活を送れるようになればと思います。

アトピー性皮膚炎の相談も増えてきたので、アトピー性皮膚炎での漢方の考え方についてまとめました。

目次

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎はかゆみを伴い、湿疹を慢性的に繰り返す症状のことです。

アトピー性皮膚炎の原因は

アトピー性皮膚炎の原因としてアトピー素因(アレルギーを起こしやすい体質)や、肌のバリア機能の低下、アレルゲン、乾燥、寝不足などがあります。

アトピー性皮膚炎の治療法

標準的に使用されるものとしてはステロイドの外用剤がありますが、最近は新しい免疫を抑制するタイプの塗り薬もでています。

内服薬としては、アレルギー症状を抑えるお薬をつかいます。

アトピー性皮膚炎の漢方での原因

漢方でアトピー性皮膚炎の原因は大きく2つにわけて考えることができます。肌の機能を邪魔している要素と、身体が弱っている要素が考えられます。

肌の機能を邪魔している要素として、風、熱、燥、痰湿、瘀血、気滞が考えられます。

身体が弱っている要素として、気虚・血虚が考えられます。

肌を邪魔しているもの:風、熱、痰湿、瘀血、気滞
身体が弱っている要素:気虚、血虚

邪魔しているもの

風:かゆみ
熱:炎症、熱感
痰湿:ジクジク、水疱
瘀血:色素沈着、皮膚のゴワゴワ
気滞:ストレス性

↑の要素があわさり、湿疹・皮膚炎につながります。各要素が組み合わさり、湿熱、風湿などとも呼ばれることもあります。

アトピー性皮膚炎だとしても、人によってジクジクの度合い、熱感の強さなど個人差があり、それが体質の違いといえます。

人によって症状は異なるため、それぞれの要素にあわせて漢方薬をつかいわける必要があります。

弱っている要素

気虚:肌のバリア機能の低下、菌に感染しやすくなる
血虚:肌の乾燥、組織の修復が遅い

「気」が肌のバリア機能を担当しています。「気虚」になることで、バリア機能が低下し、ちょっとしたことで肌が荒れやすくなります。

また「気虚」になることで、免疫機能が低下し、菌に感染しやすくなります。

「血」があることで、肌の組織が潤い、修復されます。「血虚」になることで、肌が乾燥し、肌の修復が遅れます。

アトピー性皮膚炎などの慢性皮膚炎のように、皮膚炎が治らないときは気虚、血虚が関係しています

まとめ

漢方では肌の症状、体質から薬を選びます。
選び方はシンプルで、炎症が強い時は炎症を抑え、乾燥があるときは潤し、ジクジクがあるときは乾燥させ、膿があるときは排膿し、かゆみがあるときは風を発散し、虚弱体質のときは気血を補っていきます。

アトピー性皮膚炎の大人の体質改善は胃腸が重要

大人のアトピーの体質改善は身体の内側から改善していく必要があります。

子供のときにアトピー性皮膚炎があっても、成長するにしたがって症状は減ってきます。

漢方では子供ときにアトピーの方が多いのは胃腸が弱いため(気虚)です。実際にアトピーのお子さんはやせ型の人が多いといわれています。

成長とともに胃腸が強くなっていくので、アトピー性皮膚炎は自然に治っていきます。

大人のアトピー性皮膚炎も同じことがいえます。胃腸の弱さ(気虚)がアトピー性皮膚炎に関係しています。

・子供→気虚があることで、やせ型になる
・大人→気虚があることで、肥満になりやすくなる

子供アトピーと違う点は大人のアトピーは肥満体型の方に多いといわれています。

気虚があることでやせ型になり、肥満も気虚が関係しています。気虚になることで、身体の不必要なものを排出できなくなり、肥満になっていきます。

大人のアトピー性皮膚炎も胃腸の強さ、気虚が重要になってきます。胃腸に負担のかかる辛い物、味の濃いもの、脂っこいもの、玄米、小麦、乳製品は避けるようにしてください。

アトピー性皮膚炎に使用する漢方薬

アトピー性皮膚炎の場合、肌の状態、体質から漢方薬を選びます。使用する漢方薬としては温清飲、消風散、当帰飲子、十味敗毒湯、桂枝茯苓丸加薏苡仁、虚弱体質の改善には補中益気湯などがあります。

炎症が強い皮膚炎には温清飲

・炎症が強い
・乾燥もある

温清飲には黄連・黄芩などの炎症を抑える生薬、当帰・芍薬などの血を養い、皮膚の修復を助ける生薬が合わさり、皮膚炎に効能効果があります。

炎症が強い皮膚炎には温清飲が適しています。

かゆみが強く、ジクジクするときは消風散

・かゆみが強い
・ジクジクする

消風散にはセンタイがかゆみを抑え、蒼朮などがジクジクをとり、苦参・石膏が炎症を抑えることで、皮膚炎に効能効果があります。

かゆみが強く、ジクジクするときは消風散が適しています。

乾燥が強く、かゆみがあるときは当帰飲子

・皮膚の乾燥が強い
・乾燥がかゆくなる

・炎症が強くないとき

当帰飲子には当帰・地黄などの肌を潤す生薬が中心に、防風・荊芥のかゆみを抑える生薬が入り、皮膚炎に効能効果があります。

乾燥が強く、かゆみも強いときは当帰飲子が適しています。

膿がある皮膚炎には十味敗毒湯

・膿がある
・化膿している

十味敗毒湯には桔梗、柴胡などの膿出しの生薬、独活・防風が炎症を抑え、皮膚炎に効能効果があります。

膿がある皮膚炎には十味敗毒湯が適しています。

色素沈着、シミに桂枝茯苓丸加薏苡仁

・色素沈着
・シミ

・肌が固くなっている
・炎症は強くないとき

桂枝茯苓丸加薏苡仁の桃仁・牡丹皮が血を巡らせ、薏苡仁が湿を追い出し、シミに効能効果があります。

色素沈着、シミがあるときは桂枝茯苓丸加薏苡仁が適しています。

虚弱体質の改善に補中益気湯

補中益気湯は皮膚炎を治す漢方薬ではなく、虚弱体質に効能効果のある漢方薬です。

・虚弱体質
・慢性的に肌の不調になりやすい
・肌の治りが遅い

補中益気湯には人参・黄耆・白朮などの気を補う生薬が中心に働き、虚弱体質に効能効果があります。

虚弱体質の改善には補中益気湯が適しています。

アトピー性皮膚炎の相談1

20代後半 女性。アトピーで繰り返し、膿ができる。
アトピーは生まれてからずっとアトピーにて悩んでいる。西洋薬にて治療をしていた。その後、25歳から西洋薬を使用しない病院にて変更。膿が細菌性のもののときは抗生剤を使用し、そうでないときは自己治癒力にて治療をしているとのこと。それでも化膿やアトピーの症状がみられるため、当薬局に相談に来られた。表は熱感があるが、身体の内側は冷えている。

アトピー性皮膚炎と化膿しやすい体質のため、相談に来られました。

肌の赤みも強いため、まずはしっかり炎症を抑える必要がありました。また化膿しやすいのは虚弱体質が原因と考えられ、元気をつけ、膿を追い出しやすい漢方薬を服用していただきました。

1月の服用でも多少の効果の実感があったようで、3か月ほど服用していただいて、かさぶたの範囲もかなり狭くなってきました。

かさぶたのところがきれいになっていることがわかると思います。

まだまだ肌の調子も改善できていないところがあるので、引き続き服用していただいています。

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