お腹が緩い、軟便を改善するための漢方薬の選び方とその使い方

 この記事を書いた人

・灯心堂漢方薬局 薬局長
・薬剤師歴10年以上

店舗のLINE登録者数1000人以上
・漢方を通して、皆様が少しでも健康に過ごせる手助けをできればと思います。>>プロフィール記事はこちら

西山光です

慢性的にお腹が緩かったり、すぐに下痢になりやすくはないですか?

軟便がちなのは、漢方では体質が関係しているといえます。

軟便で、便秘でないかた楽だ、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、軟便はあまりよろしくありません。軟便になると、痔ろうなどの原因になる可能性があります。

漢方にて軟便の体質について知っていただけたらと思います。

目次

下痢の漢方での原因は?

下痢になる漢方での原因として、水滞(水様性下痢)、湿熱(灼熱感)、寒湿(温めると軽減)、食滞(粘稠性の便)、肝脾不和、脾虚(胃腸が弱い)、腎虚(朝方の下痢、夜間尿)が考えられます。

軟便・下痢の漢方薬は?

軟便・下痢につかう漢方薬に、五苓散、胃苓湯、葛根黄連黄芩湯、藿香生気散、人参湯、桂枝加芍薬湯、半夏瀉心湯、啓脾湯、参苓白朮散、附子理中湯などがあります。

それぞれの漢方薬と、その体質について説明します。

脾虚(胃腸が弱い)

「脾虚」というのは、簡単に言えば胃腸が弱い体質のことです。

軟便になりやすい方の多くは、この胃腸の弱い「脾虚」の体質の方が多いです。

脾胃(消化吸収をつかさどる臓腑)が元から弱っていると、食べ物から水分を吸い上げることができなくなり、軟便になりやすくなります。

栄養を吸い上げ、全身に気をめぐらせることができなければ軟便・下痢となります。

・軟便、水様便
・不消化の軟便
・腹部の鈍痛
・温めたり、抑えると軽減
・食欲不振
・食後の腹満
・身体がだるい

これらにあてはまるときは脾虚が軟便、下痢の原因の可能性があります。

弱っている脾胃を補うような山薬、蓮肉の入った参苓白朮散をつかいます。

参苓白朮散

参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)には山薬と蓮肉が特徴的です。

参苓白朮散は気を補いながら、下痢を緩和することで、慢性的にお腹が緩くなりやすい脾虚の体質を改善していきます。

水滞

水滞というのは水の滞りのことです。

水分調整のバランスが崩れることで、水が過剰になり、下痢となります。

水の過剰によって、むくみ、頭痛、水様性の下痢となります。

五苓散

水分のバランスを整えるために五苓散をつかいます。

五苓散には茯苓、白朮、沢瀉、猪苓の利水の生薬がメインで入り、過剰な水を追い出します。

五苓散には桂皮も入り、陽気を表へ向かわせ、水のめぐりをサポートしてくれます。

胃苓湯

五苓散にさらに水を追い出す平胃散を加えたものが胃苓湯になり、より水をめぐらせる生薬が増えています。

湿熱

湿熱の邪が胃腸を傷つけることで、下痢となります。

湿熱というのは、漢方では湿気の性質と熱の性質をもった邪のことをいいます。

簡単にいえば、熱を持った湿気が身体にとどまり、悪さをし、胃腸の働きが悪くなります。

胃腸の機能失調によって、きれいなものと、汚れたものを分けることができなくなり、軟便・下痢となります。

・黄褐色の水様便で臭いがある
・肛門の灼熱感
・お腹が鳴って、痛む
・お腹が痛くなるとすぐに排便する
・排便後もすっきりしない
・口渇があるが、あまり飲みたくない
・黄膩苔

これらにあてはまるときは軟便、下痢の要因が湿熱の可能性があります。

湿熱を追い出す黄芩湯、葛根黄連黄芩湯などの漢方薬をつかう必要があります。

黄芩湯

黄芩湯(おうごんとう)は黄芩が熱を冷まし、芍薬にて平肝し、黄芩・芍薬にて熱を平じ、下痢を緩和します。

葛根黄連黄芩湯

葛根黄連黄芩湯は黄芩が熱を冷まし、さらに黄連が入ることで熱を冷やす力が強くなっています。葛根も入り、水を上に引き上げ、肩こり、不眠にも効果があります。

寒湿

寒湿の邪によって胃腸が傷つき、食べ物を消化できずに下痢となります。

冷たい湿気がおなかに入ることで軟便、下痢となります。

冷えが要因であるため、お腹を温めると少し緩和されます。

・水様便で臭いはない
・腹痛があり、温めると軽減する
・腹満
・食欲不振
・けん怠感
・悪寒
・尿が薄い
・白膩苔

これらにあてはまるときは軟便、下痢の原因が寒湿の可能性があります。

寒>湿の寒湿には温める人参湯、湿>寒の寒湿には湿気を追い払う藿香生気散をつかいます。

人参湯

人参湯には、お腹を強く温める乾姜(かんきょう)が入り、乾姜が冷えを追い出してくれます。

藿香生気散

藿香生気散には藿香(かっこう)が入ることで、湿気を追い出してくれます。

食滞

脂っこい食事、生もの、冷たいものを食べることで胃腸の調子が悪くなり、食滞があることでお腹の不調となります。

日常生活でも食事によってお腹が緩くなることは実感しますよね。

食滞が身体のなかにとどまることで、下痢が続くこうになるため、食滞を追い出す必要があります。

・腹痛後に排便
・排便後、腹痛は改善
・しばらくすると繰り返す
・便は粘稠性か水様
・臭いが強い
・胸やお腹が張ってつかえる
・腐臭のあるげっぷ
・呑酸
・腹満

これらにあてはまるときは食滞が不調の原因の可能性があります。

食滞に対応した消導薬をつかう必要があります。

肝脾不和

ストレスや緊張があると、漢方では肝の気のめぐりが悪くなります。

気のめぐりの悪さが肝だけでとどまっていればいいのですが、脾(漢方では脾は消化吸収する臓腑すべてを含んでいます)にも影響を与えます。

肝気の鬱滞は脾(消化吸収する臓)に影響を与え、軟便・下痢しやすくなります。

ストレス、緊張で食欲がなくなったり、お腹の調子が悪くなったりするのは肝脾不和の考え方です。

・少腹部に張った痛み
・不消化の水様便
・排便後も腹痛はあまり変わらない
・精神的刺激、緊張で下痢、軟便になる
・両脇の張った感じ
・食欲不振
・呑酸
・げっぷ

これらにあてはまるときは軟便、下痢の原因が肝脾不和の可能性があります。

肝と脾のバランスを整える桂枝加芍薬湯、半夏瀉心湯をつかいます。

桂枝加芍薬湯

桂枝加芍薬湯には芍薬という肝を平じる生薬が多く入っています。芍薬が高ぶった肝を平じて、胃腸を整えます。

腎虚

腎虚になると水のめぐりが悪くなります。

水のめぐりが悪くなると軟便・下痢となります。

腎は加齢とともに弱っていくため、ご年配の方で軟便・下痢になる方はこの体質が多いです。

・早朝にへそ周囲が痛んで下痢
・腰腹部の冷え
・手足の冷え
・尿量が薄く多い
・夜間多尿

これらにあてはまるときは腎虚が軟便、下痢の原因の可能性があります。

不足している腎陽を補う附子理中湯などをつかいます。

附子理中湯の附子が腎陽を強く温め、冷えを追い出してくれます。

友だち追加
目次