【十全大補湯】わかりやすい解説(じゅうぜんだいほとう)気血を補います
十全大補湯
十全大補湯の働きを添付文書の効能効果から掘り下げて、考えたいと思います。
薬局製剤 十全大補湯の効能効果には
「体力虚弱なものの次の諸症:病後・術後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血」
と記載されています。
体力低下からねあせまで幅広く効能効果が記載されています。
ここでは効能効果と、十全大補湯の働きを照らし合わせ、添付文書の意味がわかるように解説したいと思います。
ただし、商品によって効能効果は異なるので、ご購入の際は商品説明をきちんとお読みください。
構成
十全大補湯は、人参・黄耆・白朮・茯苓・当帰・芍薬・地黄・川芎・桂皮・甘草から構成されています。
補気
十全大補湯には気を補う生薬が多く入っています。
人参・白朮・茯苓・甘草・黄耆は気を補う生薬です。
人参・白朮・茯苓・甘草は四君子湯の組み合わせで知られ、気を補う代表的な生薬ばかりです。
人参は有名な生薬の1つです。普段の食事で食べるニンジンはセリ科ですが、漢方でつかうニンジンがウコギ科で別物です。
白朮・茯苓は気を補いながら、気の不足によって溜まりやすい水を追い出します。
甘草は気を補い、甘味にて生薬の調和をします。
黄耆(おうぎ)も漢方では人参と並び、強く気を補う生薬の1つです。
人参と黄耆の組み合わせは参耆剤(じんぎざい)ともいいます。
黄耆はからだの内側から表面へ気を行き渡らせる働きがあります。
十全大補湯には気を補う生薬が多く入っています。
養血
十全大補湯には血を補う生薬が多く入っています。
当帰・芍薬・川芎・地黄は血を補う生薬です。
当帰・芍薬・川芎・地黄の組み合わせは四物湯の組み合わせで、気を補う代表的な方剤です。
これらの4薬にて血を強く養います。
陽気
十全大補湯の桂皮は陽気を補う生薬です。
陽気とは温める気のことです。
桂皮にて陽気を補うことで、気がめぐりやすくなり、身体も温まります。
構成のまとめ
十全大補湯は気を補う生薬が多く入り、血を養う生薬がたくさん使われ、温める働きがあります。
十全大補湯を方剤の組み合わせでみると、四君子湯・四物湯をベースにつくられた漢方薬です。
効能効果なぜ?
薬局製剤 十全大補湯の効能効果には
「体力虚弱なものの次の諸症:病後・術後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血」
と記載されています。
なぜこのような効能効果なのか考えたいと思います。
体力虚弱
→十全大補湯は気血を補う生薬が多く入っているため、体力虚弱な方向けの漢方薬です。
病後・術後などの体力低下
→病気のあとは、気血を消耗した状態になります。とくに慢性的なものになると、気血の消耗もきづかないうちに進んでいます。術後、例えば手術のあとは出血などで血を消耗し、気も消耗している状態になります。そういった気血ともに不足し、体力が落ちている状態のときは十全大補湯が気血をしっかり補ってくれます。
疲労倦怠
→体力が弱ることで、疲労倦怠感が生じやすくなります。病気のあと、術後など関係なく、体力虚弱で疲労倦怠があるときは十全大補湯を服用することができます。もともと体力が弱かったり、加齢によって体力が虚弱になったり、疲労倦怠があるときは十全大補湯が気血を補います。
食欲不振
→体力が虚弱になると、胃腸の働きも弱くなり、食欲不振となります。十全大補湯には人参が入り、胃腸の気を強く補ってくれるため、食欲不振にも効果を発揮します。
ねあせ
→身体の弱さは、身体の表面の気の不足につながります。漢方では気が不足すると、汗をかきやすくなります。気が不足することで、気が行き渡らず、汗の穴を閉じる力が足りなくなります。気が充足していることで、汗の穴にまで気が行きわたり、汗の穴を閉じることができるようになります。十全大補湯には黄耆が入り、黄耆には気を体表まで行き渡らせる働きがあり、汗の穴を閉じることができるようになります。
手足の冷え
→手足の冷えは陽気の不足が原因です。陽気は身体を温める働きがあり、陽気が不足すると体が冷えます。十全大補湯には桂皮が入っています。桂皮の陽気を補う働きで、手足の冷えを緩和します。
貧血
→貧血というのは、血が不足している状態です。十全大補湯には当帰・芍薬・地黄・川芎の血を補う生薬が多く入り、血を補うことで貧血にも効果を発揮します。
十全大補湯と人参養栄湯の違いは?
十全大補湯から川芎を抜き、遠志・五味子・陳皮を加えたものが人参養栄湯です。薬局製剤の十全大補湯と人参養栄湯は効能効果は同じです。生薬から違いを考えると、人参養栄湯には五味子が入り、酸味の引き締める性質から気血が漏れ出ないように働き、十全大補湯よりも虚した方に向いています。
十全大補湯と補中益気湯の違いは?
十全大補湯と補中益気湯の大きな違いは、血に働く生薬が多いか少ないかです。補中益気湯には血を補う生薬が当帰の1つのみで、十全大補湯には当帰・芍薬・川芎・地黄の4つも入っています。貧血や栄養状態、肌肉の衰えから血の不足を判断し、補中益気湯か十全大補湯・人参養栄湯をつかうは判断する必要があります。
十全大補湯が効かない理由は?
漢方薬は体質が合っていないと効果を発揮しません。十全大補湯は気血を強く補う漢方薬です。疲労倦怠感でも、気血の不足がなければ効果を発揮しません。体力の虚弱さ、疲労倦怠は気血の不足だけでなく、腎の考えも重要になります。漢方では腎が生命エネルギーをつかさどり、加齢によって衰えていく臓腑とされています。身体が弱ってきているのは気血の不足でなく、頻尿などを伴う腎が原因のときは補腎薬といわれれる八味地黄丸、六味地黄丸などを考慮する場合もあります。
まとめ
十全大補湯の働きについて、添付文書から解説しました。
十全大補湯は気血を強く補うことで「体力虚弱なものの次の諸症:病後・術後などの体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血」の効能効果があります。