男性更年期を改善するための漢方薬の選び方とその使い方

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西山光です
目次

男性更年期障害

最近では男性の更年期障害のこともいわれるようになりました。

男性更年期障害では、性に関することや、精神的な症状が多くみられます。

男性更年期障害のことをLOH症候群(late-onset hypogonadism)ともいわれることもありますが、正確にはLOH症候群は男性ホルモンが低下することによる諸症状という意味合いがあり、男性更年期障害の場合は必ずしも男性ホルモンが低下しているとは限りません。

ここでは男性更年期障害は男性ホルモンが低下した側面と、精神的な症状をあわせて考えたいと思います。

男性更年期障害の症状

男性更年期障害の症状としては、多種多様です。

・総合的に調子が思わしくない
・関節や筋肉の痛み(腰痛、関節痛、手足の痛み、背中の痛み)
・手足がこわばる
・手足がしびれたり、ピリピリする
・ほてり、のぼせ、多汗
・動悸、息切れ、息苦しいときがある
・めまい、吐き気がある
・不眠、眠りが浅い
・よく眠くなる
・いらいらする
・神経質になる
・不安感、さびしさを感じる
・つかれやすい
・頭痛、頭が重い、肩こりがある
・行動力の低下、興味が湧かない
・筋力の低下
・憂うつな気分、気分の落ち込み、涙もろい
・性的能力の衰え(勃起力が減退したと感じる、ED)
・朝立ちの回数の減少
・性欲の低下(セックスが楽しくない、欲求が起きない)

注意する点としては、気分の落ち込み、意欲の低下などの症状が男性更年期障害が原因なのか、うつ病が原因なのか、判断する必要があるということです。

男性更年期障害からくる気分の落ち込みなのか、うつ病からの気分の落ち込みなのか、ご自身では判断できないこともあるので、一度病院に受診することをおすすめします。

男性更年期障害の原因

男性更年期障害の原因は、年齢によっても異なってきます。

前期更年期の患者さんはストレス性心身症症状の割合が多く、後期更年期から熟年期では主として男性ホルモン(アンドロゲン)減退症状がみられることが多いです。

つまり男性更年期障害は、ストレスなどによる精神症状と、男性ホルモンの低下による2つの側面から考える必要があります。

男性更年期障害は必ずしも男性ホルモンの低下のみで起こるわけではありません。

男性更年期は何歳から?

男性更年期は一般的には40代、50代の方が多いといわれています。ただし、男性ホルモンである遊離型テストステロンは20代以降は下がっていく一方のため、30代からでも症状はみられる可能性はあります。

女性の更年期も50歳前後が一般的ですが、女性も30代後半から更年期のような症状がみられ、最近ではプレ更年期という言葉もあり、男性も女性も30代から更年期のような症状はみられます。

漢方薬は体質をもとに考えるので、年齢のことを気にせず、ご相談ください。

男性ホルモンの働き

男性ホルモンは多くの生理的に重要な役割があります。

・性欲を維持し、射精、勃起作用
・認知力の維持
・筋肉量の増加作用
・骨形成の促進
・赤血球産生刺激効果
・抗脂肪蓄積作用(テストステロンはエネルギー消費を高め、脂肪分解を促進)

男性ホルモンが弱くなるということは、これらの働きも弱くなります。

男性更年期障害になって、太ったり、太りやすくなるようになるのは、男性ホルモンの働きが低下し、筋肉量の低下、エネルギー消費が低下し、脂肪を蓄積しやすい身体になったためと考えられます。

男性更年期障害によって、冷え性になるのは、男性ホルモンが低下し、エネルギー消費が弱くなることで、冷え性になっていると考えられます。

なぜ男性ホルモンは低下するのか?

男性ホルモンが低下する理由に、加齢によってLeydig(ライディッヒ)細胞数が減少したり 、機能が低下したり、また加齢によって間脳ー下垂体系での機能異常が起こるともいわれています。

アンドロゲンとテストステロンの違い

男性ホルモンの話をしていると、アンドロゲンやテストステロンという言葉をよく目にします。言葉の違いについて説明したいと思います。

まずアンドロゲンというのは男性ホルモンの総称です。その男性ホルモン(アンドロゲン)の成分に、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、ジヒドロテストステロンなどがあります。

このなかでも最も多く分泌されるのが、テストステロンのため、テストステロンも男性ホルモンの意味としてもよく使用されます。

アンドロゲンが男性ホルモンの総称で、テストステロンが男性ホルモンの成分の名前となっています。

検査値

アメリカなどの海外では総テストステロン値を基準にしているが、日本では総テストステロンは加齢による減少が極めて少ないため、総テストステロンの値は推奨されていません。日本では遊離型のテストステロン値が加齢とともに有意に減少するため、遊離型のテストステロン値を基準にするのが推奨されています。

遊離型テストステロン値は20代と比較すると、30代以降、年齢を経るごとに徐々に下がっていきます。

ただ検査の値と、症状の重さは相関がないという報告が多いです。

つまり、数値が低いから更年期障害といえるわけではないですし、反対にテストステロンの数値が低くなくても更年期障害の症状が重たい方はいらっしゃいます。

男性更年期障害と女性更年期障害の違い

男性更年期障害も、女性更年期障害も50歳前後にみられることが多いですが、原因が異なります。

女性更年期障害の場合は、50歳前後にエストロゲン(女性ホルモンの1つ)の分泌が急激に低下します。女性ホルモンが急激に分泌されなくなることで、ホルモンバランスが乱れ、不調を来します。女性の場合はホルモンバランスの乱れも数年すれば落ち着き、50代後半に落ち着くことが多いです。

男性の場合は50歳前後で急激に男性ホルモンが少なくなるのではなく、30代から徐々に減少していきます。そのため人によっては不調がくる年齢が早いことがあります。また女性ホルモンの場合は、ほぼ分泌されなくなるため、数年かけて身体は慣れていきますが、男性ホルモンは年齢とともに減少していくため、区切りのつくタイミングがなく、男性更年期障害が終わる時期も個人差があり、70代まで症状に悩まれる方もいるようです。

男性更年期障害と女性更年期障害の違い

男性更年期障害と「命の母」

男性更年期障害でお悩みの方で「命の母」を服用されるか悩まれている方もいらっしゃると思います。「命の母」には「命の母A」、「命の母ホワイト」、「命の母メグリビa」の3種類がありますが、いずれの内容も血のめぐりに関する生薬が多く入っています。女性の場合は、生理があるため、常に血が不足しがちで、血のめぐりの不調も生じやすい体質です。「命の母」は女性向けによく構成された商品です。それに対し、男性は生理がないため、血が足りないということは少ないです。また筋肉量もあるため、女性よりも身体の気血のめぐりがよく、血の巡りに問題があることも少ないです。男性でも血の量の不足、血のめぐりに問題がある方が服用すれば効果があると思いますが、そうでない方は体質として合わないことが多いと考えられます。

漢方で考える男性の年齢での変化

女性は7の倍数の年齢で身体が変化し、男性は8の倍数の年齢で身体が変化すると、聞いたことはありませんか?

『黄帝内経(こうていだいけい)』という紀元前200年ころに記載された書物の「上古天真論篇」に記載があります。

簡単にまとめると、

8歳になると「腎気」が充実し、髪の毛も長く伸びて、永久歯が生えてきます。

16歳になると腎気が充実し、生殖能力が備わります。

24歳になると腎気が全身をくまなくめぐるようになり、筋骨が充実します。

32歳になると筋骨は隆盛となり、肌肉も充実して肉体的に最も盛んな時期になります。

40歳になると次第に腎気が衰えてきます。髪の毛が薄くなり、同時に歯も悪くなってきます。

48歳になると十分に頭部を栄養できず、シワができて、白髪が混じるようになってきます。

56歳になると筋の柔軟性が低下し、生殖能力も低下し、腎に蓄えている精も少なくなり、からだ全体が衰えてきます。

64歳になると歯も髪も抜け落ち、筋も骨も衰え、生殖能力も尽き、髪は白くなり、体は不自由となり、歩くのもままならなくなります。

漢方で考えると、32歳が一番身体が充実した時期であり、それ以降はどんどん衰えていきます。

年齢にあわせた過ごし方、漢方薬を考える必要があります。

男性更年期障害の漢方での原因

男性更年期障害を漢方で考えると、気滞、気虚、腎虚の体質が考えられます。気滞とは、気の巡りが悪い状態のことで、イライラ、抑うつ、不安の原因になります。気虚は気の不足で、疲れやすい、やる気がでない、太りやすいことに関係します。漢方では腎は生命エネルギーの源と考えられ、腎虚になると、性的能力の低下、ED、ほてり、冷え性、耳鳴りなどに関係します。

気滞

気滞とは、気のめぐりが悪い状態のことです。

「気」は「気分」の「気」であり、イライラ、怒りやすい、怒鳴る、抑うつ、不安、不眠などの自律神経症状に関わってきます。

気滞がみられるときは漢方では気をめぐらせる漢方薬を使います。

イライラ、怒りやすいときは抑肝散、さらに便秘があれば柴胡加竜骨牡蛎湯。

抑うつ、不安であれば半夏厚朴湯、さらに不眠、胃腸が弱いときは帰脾湯がおすすめです。

気虚

漢方でいう「気」は身体の機能のことを意味します。

「気虚」は身体の働きが全体的に落ちている状態といえます。

「気虚」にて身体の働きが落ちると、疲れやすい、やる気が出ないなどの自律神経症状、太りやすいなどの活力低下の症状がみられやすくなります。

気には引き締める働きがあり、身体を引き締めることにもつながります。

年齢を重ねると、締まりのない身体に変化していくのは、「気虚」にて身体を引き締める働きが弱っているといえます。

一般的には疲れやすい、やる気がでないときは、補中益気湯などをつかいます。

ただし「気虚」が根深く、「腎虚」も兼ねているときは補腎も一緒にする必要があります。

腎虚

漢方でいう「腎」は精を蔵し、生命エネルギーの源と考えられています。

「腎」の生殖能力が衰えることで、ED、性欲の低下が生じます。

「腎」の潤し、冷やす働きが弱くなると、身体が熱に偏るため、ほてり、のぼせ、多汗になります。

「腎」の温める働きが弱くなると、冷え性になりやすくなります。

「腎」は水をつかさどる臓のため、腎が衰えると頻尿、夜間尿、尿の出が悪い症状につながります。

「腎」は耳と関連が深く、加齢とともに耳鳴りが起きるのは、腎の衰えということができます。

ほてり、のぼせ、多汗の症状がみられるときは知柏地黄丸にて冷やします。

冷え性の症状があるときは八味地黄丸にて温めることがおすすめです。

頻尿や夜間尿があるときも、八味地黄丸がよく使用されます。

耳鳴りが気になるときは、滋腎通耳湯にて耳の働きを助けます。

腎をしっかりと補う必要があるときは、鹿の角、亀の甲羅などが必要になることもあります。

男性更年期障害の漢方薬

男性更年期障害に使用する漢方薬は、症状・体質によって異なります。症状によって、抑肝散、柴胡加竜骨牡蛎湯、半夏厚朴湯、茯苓飲合半夏厚朴湯、帰脾湯、酸棗仁湯、知柏地黄丸、八味地黄丸、苓桂甘棗湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、釣藤散、独活寄生丸、疎経活血湯、滋腎通耳湯などをつかいわけます。

イライラ、怒りやすい

イライラ、怒りやすいのは気の巡りが悪いと考えられます。

イライラ、怒りやすいときは抑肝散がおすすめです。

抑肝散が気の高ぶりを鎮めてくれます。

イライラと便秘もあれば、柴胡加竜骨牡蛎湯がおすすめです。

柴胡加竜骨牡蛎湯は柴胡が気をめぐらせ、竜骨・牡蛎が気を鎮め、大黄がお通じを改善してくれます。

不安、抑うつ

不安神経症に効能効果のある漢方薬に半夏厚朴湯があります。

半夏厚朴湯の半夏・厚朴・蘇葉が気を解いてくれます。

胸やけなどもあるときは、半夏厚朴湯と茯苓飲という胃薬があわさった茯苓飲合半夏厚朴湯が適してます。

不安、抑うつと不眠、胃腸が弱い症状がみられるときは、帰脾湯がおすすめです。

帰脾湯は心の血を養う生薬が入り、心を落ち着ける働きと、人参が気を補う働きがあり、不安と胃腸の弱さ、不眠があれば帰脾湯が適しています。

不眠症、眠りが浅い

気が立って眠れない時は、気を鎮める抑肝散が適しています。

気の高ぶりと、便秘もあるときは柴胡加竜骨牡蛎湯も不眠症によく使用されます。

疲れているのに眠れない時は、肝の血が不足していると考えられるため、酸棗仁湯がおすすめです。

不安感と不眠症があるときは、帰脾湯にてこ心の血を養います。

熟睡感が不足しているときは、肝の血の量が不足しているため、酸棗仁湯がおすすめです。

疲れやすい、やる気がでない

疲れやすい、やる気がでないのは、気の不足のことが多いですが、気滞の場合もみられます。

気の不足の疲労倦怠感は補中益気湯がおすすめです。

加齢により「腎」の衰えもある場合は、鹿の角、亀の甲羅、スッポンなどの動物性生薬も必要になることもあります。

また疲れやすさは、気滞から生じることも多く、気をめぐらせることで元気にある方も多いです。

ほてり、のぼせ、多汗症、ホットフラッシュ

ほてり、のぼせ、熱感からくる多汗には知柏地黄丸がおすすめです。

年齢を重ねることで、身体の潤いも減り、身体の熱を冷ますことできないため、ほてり、のぼせとなります。

知柏地黄丸は知母・黄柏が熱を冷まし、地黄など生薬が潤してくれます。

のぼせ、ほてりには知柏地黄丸がおすすめです。

冷え性

四肢が冷えやすい方は八味地黄丸がおすすめです。

冷えやすい方は身体を温める働きが弱っていると考えられます。

八味地黄丸には桂皮・附子という生薬が温める働きがあります。

頻尿、夜間尿

頻尿、夜間尿があるときは八味地黄丸がおすすめです。

頻尿、夜間尿は「腎」の働きが衰えていると考えられます。

八味地黄丸は腎を補い、温める働きによって、身体全体の水の循環を改善します。

動悸

動悸が気になるときは苓桂甘棗湯がおすすめです。

苓桂甘棗湯には桂皮が気を鎮め、茯苓が不安を抑え、動悸を抑えます。

甘草・大棗の甘味の生薬にて緊張を緩めてくれます。

動悸があるときは苓桂甘棗湯がおすすめです。

息苦しい

息苦しい時は、神経が敏感になっている状態のため、桂枝加竜骨牡蛎湯にて気を鎮めます。

桂枝加竜骨牡蛎湯の竜骨・牡蛎が肺の気も下に鎮めてくれます。

頭痛

頭痛がみられるときは釣藤散がおすすめです。

頭痛は気の高ぶりが生じることが原因です。

釣藤散が気の高ぶりを鎮めることで頭痛に効能効果があります。

釣藤散でも頭痛に効果が見られない場合は、さらに気を発散する働きのある清上蠲痛湯がおすすめです。

涙が止まらない

夜、涙が止まらなくなる時は苓桂甘棗湯がおすすめです。

苓桂甘棗湯には甘草・大棗という甘味の生薬が入り、精神不安を和らげてくれます。

腰痛、関節痛

腰痛、関節痛には独活寄生丸、疎経活血湯がおすすめです。

腰は「腎の府」といわれており、年齢によって腎が衰えると同時に腰も衰えてきます。

加齢による腰痛には独活寄生丸がおすすめです。

慢性的な腰痛、関節痛は血流の悪さから生じることも多いです。

血のめぐりを改善し、腰痛、関節痛につかう漢方薬に疎経活血湯があります。

耳鳴り、聴力低下

耳鳴り、聴力低下には滋腎通耳湯がおすすめです。

滋腎通耳湯は腎を補い、耳周辺の気の巡りを改善し、耳鳴り、聴力低下に効能効果があります。

精力低下、ED

精力低下、EDのことを漢方では陰痿(いんい)といいます。

メーカーによって効能効果の記載が異なるのですが、桂枝加竜骨牡蛎湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、八味地黄丸に「陰痿」の適応をもったものがあります。

食べ物としては、動物性の鹿の角、亀の甲羅、スッポンなどがおすすめです。

食べ物

気をめぐらせる食べ物としては、ジャスミンティー、レモン、紫蘇などの香りがの良いものがおすすめです。

腎を補う食べ物としては、ヤマイモ、さんしゅゆ、鹿の角、ヤモリ、プラセンタ、冬虫夏草、タツノオトシゴ、仙茅、肉従蓉、補骨脂、クルミ、続断、ニラ、桑螵蛸、旱蓮草、女貞子、黒胡麻、亀板(亀のお腹の甲羅)、別甲(スッポンのお腹の甲羅)などがあります。

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