灯心堂漢方薬局

化膿したとき、化膿しやすい体質につかう漢方薬3つの違い、使い分けについて説明

化膿性皮膚疾患

 

化膿性皮膚疾患とは、化膿症状をおこる病気の総称です。

 

化膿は炎症がおこることで生じます。

 

細菌の感染によるものが多いですが、ウイルス、花粉などの異物の侵入によっても炎症が起こり、そこから化膿することもあります。

 

化膿がみられるものは、皮膚疾患の多くが当てはまり、ニキビ、接触性皮膚炎、汗疱、アトピー性皮膚炎、バルトリン腺膿瘍などあります。

 

化膿性皮膚疾患は総称のため、化膿がみられれば化膿性皮膚疾患の範囲に入ります。

 

現代では、化膿は抗生物質というとてもいいお薬があり、原因となる菌をやっつけるのが重要です。

 

人によっては再発を繰り返すことがあり、そういった場合は次に漢方薬を考えてもいいかもしれません。

 

漢方での化膿の考え方

膿は、身体の表面の気血の流れが鬱滞し、鬱熱と腐敗が生じたものと考えられます。

 

身体の表面を流れている気を衛気(えき)といい、衛気が肌のキメ(湊理)を整えてくれています。

 

皮膚を軽くひっかくとすぐに血がにじみ出てくるように、皮膚のすぐ下には毛細血管が走っています。

 

皮膚の表面に衛気という気が流れていますが、そのすぐ下では血の領域になっています。

 

気と血をあわせて、営衛(えいえ)と漢方ではいいますが、気・血の流れが悪くなると、鬱熱が生じます。

 

流れが滞って、鬱滞しているので鬱熱といいます。

 

この場合での鬱熱は、現代の近い言葉に言い換えると、炎症という言葉に近い意味合いかもしれません。

 

鬱熱があり、それによって腐敗してくると、膿が生じると漢方では考えられます。

 

漢方では排膿の働きのある桔梗、枳実などの生薬をつかいます。

 

化膿の治りが悪いときは?化膿しやすい体質とは?

漢方で、化膿の治りが悪い時は気が不足していると考えられます。

 

カゼでも何でもそうですが、気力が弱っていると病気にかかりやすくなりませんか?

 

気が少ないと、病気と戦うだけの力がなく、原因となる邪を追い出すことができません。

 

それは身体全体だけでなく、皮膚でも同じことが言えます。

 

皮膚に気が十分に行き渡っていないと、肌の調子が悪くなります。

 

さきほど説明したように、衛気は身体の表面をめぐり、皮膚のキメにも関与しているからです。

 

化膿しやすい方場合、化膿がなかなか治らない方の場合、気が不足しているため、膿、毒を追い出すことができていないと考えられます。

 

普段から化膿しやすかったり、化膿するとなかなか治らなったりするときは、気が不足している可能性があります。

 

そのようなときは、漢方では気を補う漢方薬をつかいます。

 

とくに皮膚に気を補う生薬で代表的なものに黄耆があり、黄耆の入った漢方薬が適しています。

化膿しやすい体質、化膿が治りにくい体質は気が不足している!

 

化膿につかう漢方薬は?

化膿性皮膚疾患の効能効果のある漢方薬に、排膿散及湯、十味敗毒湯、千金内托散があります。

 

排膿散及湯

排膿散及湯の効能効果:「化膿性皮膚疾患の初期又は軽いもの、歯肉炎、扁桃炎(体力に関わらず、使用できます。)」

 

排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)は名前の通り、排膿の漢方薬です。

 

排膿の漢方薬としてみたことがある方も多いのでは?

 

排膿散及湯の成り立ちとしては、排膿”散”と排膿”湯”が合体し、排膿を目的とした漢方薬としてつくられました。

排膿散及湯=排膿+排膿

排膿散及湯のなかで重要な生薬は桔梗(ききょう)・枳実(きじつ)です。

 

桔梗・枳実が排膿に働き、桔梗・枳実が合わさることで相乗効果で膿を出します。

 

甘草・大棗・生姜・芍薬が気血を養い、営衛を充実し、排膿しやす土台をつくります。

 

排膿散及湯は効能効果にあるように、化膿性皮膚疾患に広くつかわれている漢方薬です。

 

排膿だけを目的にしているときや、排膿を重視したい状態のときに排膿散及湯が適しています。

排膿散及湯は桔梗・枳実で排膿し、排膿に特化した漢方薬。

化膿性皮膚疾患の初期の最初に膿出ししたいとき、排膿を重視したいときにつかわれる。

また排膿を促進するために十味敗毒湯と合わせてつかわれることもあります。

 

十味敗毒湯

十味敗毒湯の効能効果:「体力中等度なものの皮膚疾患で、発赤があり、ときに化膿するものの次の諸症:化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、じんましん、湿疹・皮膚炎、水虫」

 

十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)は10個の生薬から構成される、まさに毒をやぶる漢方薬です。

 

十味敗毒湯も、膿出しの漢方薬として頻用されます。

 

十味敗毒湯の主薬は桔梗です。桔梗は排膿の代表的な生薬です。

 

十味敗毒湯の川芎・独活・防風・荊芥は風を発散し、じんましん、湿疹・皮膚炎にも効果を発揮します。

化膿と、炎症などがみられるときは十味敗毒湯が適しています。

化膿性皮膚疾患と炎症があるときは、十味敗毒湯です。

 

 

排膿散及湯と異なる点は、十味敗毒湯には炎症の原因となる風熱を発散する生薬が多く入っていることです。

 

排膿散及湯は排膿に特化しているのに対し、十味敗毒湯は排膿・炎症にも効果を発揮します。

 

つまり十味敗毒湯の方が効果の範囲が広く使いやすいといえます。

 

排膿散及湯と十味敗毒湯で、どちらをつかうか悩まれるときは十味敗毒湯の方をおすすめします。

 

化膿の状態によっては排膿散及湯と十味敗毒湯は併用される場合もあります。

 

千金内托散

千金内托散の効能効果:「体力虚弱で,患部が化膿するものの次の諸症:化膿性皮膚疾患の初期,痔,軽いとこずれ」

 

千金内托散(せんきんないたくさん)は医療用にないため、なかなか目にすることはない漢方薬ですが、とてもいい漢方薬なので紹介します。

虚弱体質あるいは体力が衰えているために、化膿した部分からいつまでも膿が排出できない方向けの漢方薬です。

自分で自覚していなくても、慢性的に膿みやすい方は体力虚弱な体質の可能性があります。

 

処方名にある「内托」は「膿を外へ追い出す力もないような方の体力をつけて、体の内側の回復力(免疫力)を高めて、膿を排出させ、肉芽の形成を促進させる」という意味です。

 

千金内托散で重要になるのは人参黄耆です。

 

人参と黄耆は強く気を補う生薬で、身体の内側から膿を出しやすい体質をつくります。

 

とくに黄耆は皮膚に気を補い、気をめぐらせる働きがあります。

 

桔梗・白芷が排膿し、膿を出してくれます。

 

川芎・当帰は血を養う生薬です。漢方でいう血とは、肌の栄養状態に関係しています。血を養うことで肌に栄養を補い、肌の状態を改善します。

 

桂皮・防風は風を発散し、金銀花が皮膚の熱を冷まします。

 

千金内托散は気を補い、血を養うことで化膿を追い出しやすい土台をつくる働きがあります。

千金内托散は気を補う働きと排膿の働きが組み合わせることで、虚弱体質で膿やすい方に向いた漢方薬となっています。

状態によっては、千金内托散と排膿散及湯をあわせてつかうこともあります。

 

千金内托散の詳しい説明はこちら→

 

化膿以外にも症状がある場合

ここでは化膿以外の症状につかう漢方薬をまとめています。

 

化膿と、別の症状がある場合にはあわせてつかうこともあります。

 

炎症

炎症が強い場合は皮膚に熱がこもっていると考えられます。

 

熱の鬱滞が強い場合には熱を冷ます漢方薬をつかいます。

 

皮膚の炎症を抑える漢方薬に黄連解毒湯、白虎加人参湯があります。

 

黄連解毒湯

黄連解毒湯の効能効果:体力中等度以上で、のぼせぎみで顔色が赤く、いらいらして落ち着かない傾向のあるものの次の諸症:鼻出血、不眠症、神経症、胃炎、二日酔、血の道症、めまい、動悸、更年期障害、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ、口内炎

 

黄連解毒湯は黄連・黄芩・黄柏・山梔子という清熱の生薬から構成されています。

 

強く熱を冷ますことから、「のぼせぎみて顔色が赤く」と効能効果にも記載されています。

 

肌の赤みが強く、熱感、湿疹・皮膚炎があるときは黄連解毒湯が適しています。

 

白虎加人参湯

白虎加人参湯の効能効果:体力中等度以上で、熱感と口渇が強いものの次の諸症:のどの渇き、ほてり、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ

 

白虎加人参湯には石膏が入っています。

 

石膏には強く冷やす働きがあり、皮膚の熱も冷ましてくれます。

 

黄連解毒湯も、白虎加人参湯もどちらも冷やす漢方薬ですが、冷やす深さが異なります。

石膏

↑石膏の写真です。

 

写真でもわかるように、石膏は色が白く、あっさりしているような印象がありませんか?

 

石膏の冷やす深さは浅く、皮膚の表面に特化しています。

 

白虎加人参湯の効能効果に「ほてり」とあるように、皮膚表面の熱感には白虎加人参湯が適しています。

黄連

↑黄連の写真

 

黄連の写真をみると、色の濃い黄色い生薬だとわかります。

 

見るからに、石膏と異なり、色味が重たい感じが伝わると思います。

 

石膏は皮膚の表面しか冷やしませんが、黄連は血を冷やす働きがあります。

 

黄連解毒湯の効能効果に「鼻出血」とあるように、血を熱を冷ますことでそういった働きがあります。

 

皮膚で考えると、皮膚でも少し深い血の部分を冷やします。

 

”ほてり”ではなく、肌の赤みが強く、皮膚炎となっている場合は黄連解毒湯の方が適しています。

 

肌の乾燥

皮膚が乾燥しているとき、漢方では血が不足していると考えられます。

 

漢方でいう血とは、血液だけではなく、栄養や潤いの働きも意味します。

 

血虚になると、皮膚の栄養が足りず、潤いがなくなり、乾燥肌になります。

 

血を補う漢方薬に、四物湯、温清飲があります。

 

四物湯

四物湯 効能効果:体力虚弱で、冷え症で皮膚が乾燥、色つやの悪い体質で胃腸障害のないものの次の諸症:月経不順、月経異常、更年期障害、血の道症、冷え症、しもやけ、しみ、貧血、産後あるいは流産後の疲労回復

 

四物湯は当帰・芍薬・川芎・地黄の4つの生薬から構成され、すべて血を補う生薬から構成されています。

 

効能効果にも、皮膚が乾燥し、色つやの悪い体質と記載されています。

 

皮膚の乾燥が顕著のときには、四物湯をつかい、血を養い、肌を潤します。

 

温清飲

温清飲 効能効果:体力中等度で、皮膚はかさかさして色つやが悪く、のぼせるものの次の諸症:月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症、湿疹・皮膚炎

 

温清飲は血を養う四物湯と、清熱の黄連解毒湯をあわせた漢方薬です。

 

温清飲=四物湯(養血)+黄連解毒湯(清熱)
実際に肌の乾燥と、肌の熱感は併発しやすい症状です。
 
理由としては、血が肌を潤すことで、皮膚を冷やしているからです。
 
反対に、血が不足すると、肌が乾燥し、皮膚に熱感が生じます。
 
乾燥すると熱感が生じやすいのはイメージしやすいと思います。
 
そういった肌の乾燥と肌の炎症・熱感があるときは温清飲が適しています。
 

かゆみ

肌の調子が悪いときに、かゆみも多くみられる症状の1つです。

 

かゆみにつかう代表的な漢方薬に消風散、当帰飲子があります。

 

消風散

消風散 効能効果:体力中等度以上の人の皮膚疾患で、かゆみが強くて分泌物が多く、ときに局所の熱感があるものの次の諸症:湿疹・皮膚炎、じんましん、水虫、あせも

 

消風散はかゆみの原因となる風を追い出す漢方薬です。

 

効能効果にも「かゆみが強くて」と記載されています。

 

かゆみが強い場合は消風散です。

 

当帰飲子

当帰飲子 効能効果:体力中等度以下で、冷え症で、皮膚が乾燥するものの次の諸症:湿疹・皮膚炎(分泌物の少ないもの)、かゆみ

 

当帰飲子もかゆみによくつかわれる漢方薬です。

 

効能効果をみると、「皮膚の乾燥するもののの湿疹・皮膚炎、かゆみ」となっています。

 

肌の乾燥とかゆみがあるときは、消風散よりも当帰飲子が適しています。

 

まとめ

化膿は肌の気血のめぐりが悪く、鬱熱が生じ、腐敗することで生じます。

 

膿があるときは桔梗、枳実などの排膿の生薬をつかい、膿出しをします。

 

しかし、膿みやすい体質、よく膿むことがある方は肌の気血が不足した虚弱体質の恐れがあります。

 

肌に気が行き渡らないことで、肌が弱くなり、化膿が生じやすくなっています。

 

そういった場合は気を補う働きも必要になっています。

 

・排膿散及湯

排膿散及湯は桔梗・枳実が入り、排膿に特化した漢方薬です。排膿を目的として頻用される漢方薬です。

 

・十味敗毒湯

十味敗毒湯は桔梗の排膿の生薬と、風熱を発散する生薬が多く入っています。排膿と、炎症を抑える働きがあり、化膿と皮膚炎にもつかうことができます。膿んだ状態には炎症も合わせていることも多く、つかいやすい漢方薬です。

 

・千金内托散

千金内托散は人参と黄耆という気を補う生薬が入っていることが重要です。排膿散及湯、十味敗毒湯と異なり、気を補う働きがあります。気を補うことで、皮膚に気を充実させ、排膿しやすい土台をつくります。気が不足していることで化膿しやすくなるため、慢性的に化膿しやすい方に向いた漢方薬です。

 

・化膿性皮膚疾患の初期→排膿散及湯

 

・化膿性皮膚疾患と炎症→十味敗毒湯

 

・虚弱体質の化膿性皮膚疾患、よく膿みやすい体質→千金内托散

 

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