【五苓散】添付文書から考えるわかりやすい解説(ごれいさん)
目次
五苓散
五苓散の働きを添付文書の効能効果から掘り下げて、考えたいと思います。
薬局製剤 五苓散の効能効果には
「体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔」
と記載されています。
五苓散といえばむくみにつかう漢方薬で有名ですが、効能効果には下痢、胃腸炎から頭痛と記載されています。
幅広い効能効果であることがわかります。
添付文書の効能効果に記載されている理由を考えたいと思います。
構成
五苓散は白朮・茯苓・沢瀉・猪苓・桂皮の5つの生薬から構成されています。
利水の働き
五苓散に入っている白朮・茯苓・沢瀉・猪苓はすべて利水の生薬です。
利水とは身体の水毒による水の不均等を治すことです。
五苓散には利水の生薬が4つも入っているため、むくみにつかう代表的な方剤となっています。
利水薬として水毒を治す生薬の白朮・茯苓・沢瀉・猪苓もそれぞれ細かい違いがあります。
白朮(びゃくじゅつ)は気を補いながら、身体に溜まっている水を追い出します。
茯苓(ぶくりょう)は白朮よりも水のめぐりを改善する働きが強いです。
沢瀉(たくしゃ)は沢を瀉すという名前からも、過剰になっている全身の水の流れを追い出します。
猪苓(ちょれい)は生薬の色が黒く、腎から強力に利水します。
これら4つの生薬の相乗効果で利水し、水のめぐりを改善します。
白朮・茯苓・沢瀉・猪苓は共通点があり、これらは甘味の生薬であることです。
漢方では甘味は潤す働きがあり、陰を傷つけにくい性質があります。
甘味の生薬なので、脱水のしすぎに偏りにくい構成になっており、よく考えられた処方です。
気をめぐらせる働き
五苓散の桂皮が気をめぐらせる働きがあります。
桂皮が入っていない五苓散は四苓湯といわれます。
五苓散はもともと『傷寒論』では蓄水証といわれる、カゼひいて、水のめぐりが悪い状態につかわれていました。
桂皮は葛根湯にも入っているように、桂皮は陽気を補い、外邪を追い出す働きがあります。
水様性下痢や急性胃腸炎は外邪によるものなので、五苓散の桂皮が外邪を追い出すのを助けます。
気の働きに推動(すいどう)というものがあります。
気が血・水の流れを助けているという働きです。
気が十分にあることで血・水が順調に流れることができます。
五苓散の桂皮が気を補うことで水のめぐりも助けます。
構成のまとめ
五苓散は白朮・茯苓・沢瀉・猪苓の水のめぐりを改善する生薬と、桂皮の気を補う生薬から構成されています。利水の生薬が過剰な水を追い出し、桂皮が気を補うことで水が流れやすいように助けます。
効能効果なぜ?
薬局製剤 五苓散の効能効果には
「体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔」
と記載されています。
なぜこのような効能効果なのか考えたいと思います。
体力に関わらず使用でき
→五苓散には人参のような気を補う生薬が入っているわけでもなく、大黄のような瀉下薬が入っているわけでもないため、体力に関わらず、多くの方が服用できる漢方薬になっています。
のどが渇いて尿量が少ないもの
→のどが渇いて、尿量が少ないのは、水のめぐりが悪い状態を指しています。漢方では腎が水をつかさどっています。腎から全身に水を送ることができなければ、のどが渇いてきます。腎の働きが失調すると尿をしっかり出せなくなり、尿量が少なくなります。のどの渇き、尿量が少ないは水のめぐりが悪くなっている意味合いがあります。
めまい
→過剰に溜まっている水が頭に影響を与え、水によって気が正常にめぐれなくなるとめまいとなります。五苓散が過剰な水を追い出します。
はきけ、嘔吐
→過剰に溜まっている水が胃に影響を与えることで、吐き気・嘔吐となります。五苓散が余分な水を尿から排出することで、吐き気・嘔吐にも対応しています。
腹痛
→過剰に溜まっている水がお腹に影響を与えることで、腹痛となります。五苓散が過剰な水を追い出します。
頭痛
→過剰にたまっている水が頭に影響を与えることで頭痛となります。五苓散が過剰な水を追い出し、頭痛にも対応しています。五苓散の頭痛は水と関連があり、雨の日になりやすい頭痛、生理前にむくんで頭痛がするとき、二日酔いの頭痛などと相性がいいです。
むくみ
→身体に過剰に水がたまることでむくみになります。五苓散が過剰な水分を追い出し、むくみを解消します。
水様性下痢
→胃腸に過剰に水がたまることで下痢となります。過剰な水分のため、下痢も水様性になります。五苓散は過剰な水を追い出すのに特化した漢方薬であり、水様性の下痢に適した漢方薬です。
急性胃腸炎
→急性胃腸炎にも五苓散はつかうことができます。急性胃腸炎の症状の嘔吐・下痢は、原因自体は菌やウイルスかもしれませんが、症状を見ると水が過剰になっている状態です。胃で水が過剰になれば嘔吐、腸で水が過剰になれば下痢になります。五苓散は過剰な水を尿として排出するのを助けます。また五苓散はもともとの使われ方ではカゼの蓄水証につかわれており、急性胃腸炎はある意味本来の使い方に近いともいえます。五苓散には桂皮が入り、桂皮が外邪を追い出すのを助けます。五苓散の良いところとしては、腸の動きを止めないところがあります。一般的な下痢止めの場合は、腸の動きを悪くすることで下痢を抑えます。菌やウイルスが原因の場合は、下痢止めによって腸の動きが悪くなると、菌が腸にとどまり、菌がいつまで経っても排出されなくなります。その点、五苓散は水のめぐりを改善することで下痢を抑えるため、菌やウイルスが原因の急性胃腸炎でも服用することができます。
暑気あたり
→暑気あたりとは簡単にいえば夏バテことです。夏の暑さで、冷たい水を過剰に摂取し、暑気あたりになった場合は五苓散が水の偏在をなくし、身体を整えます。
二日酔い
→二日酔いで頭痛がしたり、身体がしんどい原因に浮腫みがあります。二日酔いは実は脳が浮腫んでいる状態です。脳が浮腫んでいるため、頭痛、けん怠感となります。五苓散は水のめぐりを改善し、浮腫みをとる漢方薬です。脳の浮腫みを取ることで二日酔いに効果を発揮します。
五苓散が効かない理由は?
漢方薬は体質が合っていないと効果を発揮しません。五苓散は過剰な水を追い出し、浮腫みをとる漢方薬です。水の鬱滞と気の鬱滞があわさっているときは分消湯、生理不順と浮腫みがあるときは当帰芍薬散、多汗などがあるときは防已黄耆湯、頻尿を伴うときは六味丸・八味地黄丸、気虚が強い方の浮腫みには補気建中湯など、体質によってつかいわける必要があります。ただ五苓散は体力に関わらず使用でき、使いやすい漢方薬のため、浮腫みの第一選択の1つです。五苓散で効果がみられないときに、次に体質から考慮し、漢方薬を選択する必要があります。

まとめ
五苓散の働きについて、添付文書から解説しました。
五苓散は気の流れを邪魔している気滞と痰をとることで「体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔」の効能効果があります。