灯心堂漢方薬局

【半夏白朮天麻湯】わかりやすい解説(はんげびゃくじゅつてんまとう)~めまい、ふらつき

半夏白朮天麻湯

半夏白朮天麻湯の働きを添付文書の効能効果から掘り下げて、考えたいと思います。

 

半夏白朮天麻湯はめまいにつかう漢方薬で代表的な方剤です。

 

半夏白朮天麻湯の効能効果には

「体力中等度以下で、胃腸が弱く下肢が冷えるものの次の諸症:頭痛、頭重、立ちくらみ、めまい、蓄膿症(副鼻腔炎)」

と記載されています。

 

頭痛、めまいがあるのはわかりますが、蓄膿症にも効くとなると想像しにくいと思います。

 

添付文書の意味がわかるように解説したいと思います。

 

ただし、商品によって効能効果は異なるので、ご購入の際は商品説明をきちんとお読みください。

 

構成

半夏白朮天麻湯には、半夏・白朮・蒼朮・陳皮・茯苓・麦芽・天麻・生姜・神麴・黄耆・人参・沢瀉・黄柏・乾姜から構成されています。

気を補う

半夏白朮天麻湯には気を補う生薬がたくさん入っています。

 

半夏白朮天麻湯はめまいにつかいますが、めまいの原因の1つが気の不足です。

 

気が不足しているため、頭まで気がめぐらず、めまいとなります。

 

白朮・陳皮・茯苓・麦芽・生姜・神麴・黄耆・人参・乾姜は気を補う働きがあります。

 

とくに人参・黄耆は気を補う代表的な生薬です。

 

白朮・茯苓・陳皮は気を補いつつ、たまりやすい水を追い出す働きがあります。

 

麦芽・神麴は消化を助ける消導薬です。消化を助けることで、胃腸の働きを整え、気を補うのを助けます。

 

生姜・乾姜はどちらもショウガで、温める強さが異なります。乾姜の方が温める働きが強いです。ショウガも胃腸の働きを助け、気を補います。

 

半夏白朮天麻湯には気を補う生薬がたくさん入っています。

 

痰湿を追い出す

半夏白朮天麻湯には痰湿を追い出す生薬がたくさん入っています。

 

痰湿というのは、漢方でいう湿気や動きの悪い水のことを指します。

 

痰湿という動きの悪い水によって、重だるい症状がみられます。

 

頭重、立ちくらみ、めまいはすべて重だるい症状です。

 

重だるい症状は痰湿によって生じています。

 

半夏・陳皮・蒼朮・沢瀉は水を追い出す生薬です。

 

蒼朮、沢瀉は比較的さらっとした水を追い出し、半夏・陳皮が痰湿を追い出します。

 

痰湿が取り除かれることによって重だるい症状は緩和され、痰湿によって邪魔されていた気の流れが本来の流れに戻り、気が頭まで行き渡ることでめまいなどを緩和します。

 

また気の不足と痰湿はつながりがあります。

 

気が不足すると余分なものを追い出す力が弱くなり、痰湿をため込みやすくなります。

 

気の弱さは痰湿がたまりやすい原因です。

 

気の弱さと痰湿は表裏一体であり、半夏白朮天麻湯では補気薬と去痰薬がどちらもしっかり配合されており、きれいな組み合わせになっています。

 

風を追い出す

半夏白朮天麻湯には風(ふう)を追い出す天麻という生薬が入っています。

 

風というのは、漢方ではめまいなどの急迫的な症状のことを指します。

 

天麻はめまいの原因となる風を取り除きます。

 

半夏白朮天麻湯はめまいの薬ですが、めまいに直接的に効く生薬は天麻のみです。

 

ほかの薬でめまいの根本的な原因となっている気の不足、痰湿を治していきます。

 

熱を追い出す

半夏白朮天麻湯には黄柏という生薬が入っています。

 

黄柏というのは清熱燥湿の生薬で、熱を冷ましつつ、湿気を追い出す働きがあります。

 

痰湿が鬱滞することで鬱熱となっている部分が生じ、その熱を冷まします。

 

また黄柏は乾かす性質もあり、鬱滞している熱を冷ます、湿を乾かす、2つの役割があります。

 

気を補い、胃腸を助ける生薬
 
 
 
 
 
 
 
痰湿を取り除く生薬
 
 
 
 
 
 
 
まとめ

半夏白朮天麻湯は天麻がめまいを緩和し、気を強く補い、痰湿を取り除くことで根本的な原因を治していく処方です。

 

性質

生薬が合わせることで漢方薬としての性質がわかりやすくなります。

 

熱める・冷ます、上昇・下降、補う・瀉す、潤す・乾燥させるなどの性質があります。

 

漢方薬は西洋医学と異なり、複数の生薬から構成されています。

 

複数の生薬が合わさることで、お互いの良い所をさらに強化することができます(人参に黄耆を加え、補う働きを強化するなど)。

 

反対に生薬が合わさることで悪い部分を互いに消しあうこともできます(冷やして潤す知母と、冷やして乾かす生薬の黄柏を合わせることで、潤燥を互いに相殺し、冷やす働きだけが残るなど)。

 

半夏白朮天麻湯の生薬が合わさった性質を説明したいと思います。

 

補う・瀉す
補う
 
 
 
 
 
瀉す
上昇・下降
上昇
 
 
 
 
 
下降
潤す・乾かす
潤す
 
 
 
 
 
乾かす
温める・冷やす
温める 
 
 
 
 
 
冷やす 

 

半夏白朮天麻湯の性質をまとめると上記のグラフになります。

 

半夏白朮天麻湯には、人参・黄耆をはじめとし、補う生薬がたくさん入り、補う力はとても強いです。

 

めまいの原因の1つに痰湿が考えられます。

 

痰湿に重だるく、痰湿が気の流れを邪魔し、気が頭までめぐることができず、めまい、頭重感となります。

 

半夏白朮天麻湯には陳皮・半夏・蒼朮・沢瀉・白朮・茯苓の水・痰湿を追い出す生薬も多く入っています。

 

半夏白朮天麻湯は補う働きと痰湿を追い出す働きが特徴的です。

 

効能効果なぜ?

 

半夏白朮天麻湯の効能効果には

 

「体力中等度以下で、胃腸が弱く下肢が冷えるものの次の諸症:頭痛、頭重、立ちくらみ、めまい、蓄膿症(副鼻腔炎)」

 

と記載されています。

 

なぜこのような効能効果なのか、説明したいと思います。

 

体力中等度以下

→半夏白朮天麻湯のめまいは、気の不足が原因です。そのため、半夏白朮天麻湯をつかう対象は体力中程度以下の方になります。

 

胃腸が弱く

→気の不足は胃腸の弱さともいえます。半夏白朮天麻湯には人参などの胃腸の働きを助ける生薬が多く入っています。

 

下肢が冷えるもの

→半夏白朮天麻湯は気の不足と痰湿が原因のめまいと説明しました。痰湿は動きの悪い水のことであり、重力によって足に溜まりやすくなります。動きの悪い水がたまることで、足がむくみ、冷えやすくなります。気の不足は、温める力が弱っていることにもなります。温める力が弱いため、下肢が冷えるともいえます。

 

頭痛

→頭痛の原因は気滞、瘀血、風熱などありますが、半夏白朮天麻湯の頭痛は痰湿という動きの悪い水が原因です。水が原因であるため、頭痛でも刺すような痛みではなく、重だるい、ボーッとするような頭痛です。

 

頭重、立ちくらみ、めまい

→動きの悪い水が溜まることで頭重感となります。水の重だるい性質が頭に影響しているといえます。動きの悪い水によって、気の流れが邪魔されて、頭重感、立ちくらみ、めまいとなります。

 

蓄膿症

→半夏白朮天麻湯は痰湿を追い出すことでめまいを緩和します。痰湿が鼻にたまると蓄膿症となります。半夏白朮天麻湯は痰湿を取り除くため、蓄膿症の記載があると考えられます。ただし、蓄膿症の場合は一般的には熱がこもっていることが多く、辛夷清肺湯などが使われることが多いです。

 

 

苓桂朮甘湯と半夏白朮天麻湯の違いは?

 

めまいにつかう苓桂朮甘湯と半夏白朮天麻湯の違いは、胃腸の強さです。苓桂朮甘湯も半夏白朮天麻湯も水飲、痰湿の停滞によってめまいが生じています。苓桂朮甘湯に入っている桂皮が温め、水にめぐりを改善することでめまいに効果を発揮するのに対し、半夏白朮天麻湯は胃腸の働きを強くし、水がめぐりやすい土台をつくることに重点を置いています。

 

半夏白朮天麻湯が効かない理由は?

 

半夏白朮天麻湯は気の不足によって生じた痰濁によるめまいに効能効果を発揮します。気の不足による痰濁が原因でないめまいには効果を発揮できません。

 

漢方薬は体質が合うことで効果を発揮します。

 

めまいの原因はほかに水飲の停滞、気滞、肝陽化風、瘀血、心火などが考えられます。

 

めまいといっても人によって原因は異なるため、体質を選んで服用する必要があります。

 

 

 

 

まとめ

半夏白朮天麻湯の効能効果は幅広く、どうしてこれにも効能効果があるのか、疑問に思っていた方もいると思います。

 

半夏白朮天麻湯は気を強く補い、痰湿を取り除くことで「体力中等度以下で、胃腸が弱く下肢が冷えるものの次の諸症:頭痛、頭重、立ちくらみ、めまい、蓄膿症(副鼻腔炎)」の効能効果があります。

 

まとめ

半夏白朮天麻湯は気を補うこと、痰湿を取り除くことが特徴的です。

ただし、効能効果はメーカーによって記載内容が異なるため、ご購入の際は商品の説明をしっかりお読みください。

 

 

 

 

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