灯心堂漢方薬局

【柴胡加竜骨牡蛎湯】わかりやすい解説(さいこかりゅうこつぼれいとう)~精神不安、いらだち、不眠

柴胡加竜骨牡蛎湯

 

柴胡加竜骨牡蛎湯の働きを添付文書の効能効果から掘り下げて、考えたいと思います。

 

 

薬局製剤 柴胡加竜骨牡蛎湯の効能効果には「体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う次の諸症:高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年神経症、小児夜泣き、便秘」と記載されています。

 

医療用ツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯の効能効果には「比較的体力があり、心悸亢進、不眠、いらだち等の精神症状のあるものの次の諸症:高血圧症、動脈硬化症、慢性腎臓病、神経衰弱症、神経性心悸亢進症、てんかん、ヒステリー、小児夜啼症、陰萎」と記載されています。

 

高血圧の随伴症状から、神経症、小児夜泣きまで記載されています。

 

添付文書の意味がわかるように解説したいと思います。

 

ただし、商品によって効能効果は異なるので、ご購入の際は商品説明をきちんとお読みください。

 

構成

柴胡加竜骨牡蛎湯は、柴胡、半夏、茯苓、桂皮、大棗、人参、竜骨、牡蛎、生姜、大黄から構成されています。

 

大黄はツムラ商品には入っていませんが、大黄が入っている商品がほとんとです。

 

気をめぐらせる働き

柴胡加竜骨牡蛎湯で一番重要な生薬は柴胡(さいこ)です。

 

柴胡は理気薬の代表的な生薬です。

 

精神不安やいらだちの神経症の原因となる気の鬱滞を柴胡がめぐらせます。

 

気を降ろす働き

柴胡加竜骨牡蛎湯には半夏、桂皮、竜骨、牡蛎、大黄が入っています。

 

そのなかでも気を降ろす働きの中心になるのが竜骨(りゅうこつ)と牡蛎(ぼれい)です。

 

竜骨と牡蛎は重量のある生薬であり、不安な気持ち、いらだちを鎮める働きがあります。

 

竜骨・牡蛎があることで、不安、いらだち、不眠の高ぶった気を鎮めます。

 

 

半夏は上がってくる気を降逆する働きがあります。

 

半夏は半夏厚朴湯にも入り、鬱滞している痰飲、気を下に降ろします。

 

 

桂皮はシナモンのことです。

 

桂皮は上がってきた気を降逆する働きがあります。

 

桂皮によって気の流れが改善すると、不安な気持ちが降りていきます。

 

気を補う

柴胡加竜骨牡蛎湯には人参、大棗、生姜が入っています。

 

人参は気を補う代表的な生薬であり、強く気を補います。

 

柴胡加竜骨牡蛎湯のもともとの使い方が、カゼをひいたときに下剤をつかい、体調がめちゃくちゃになってしまったときに使われていました。

 

そういったときは人参で気を強く補う必要があります。

 

現在では体調を崩したときに柴胡加竜骨牡蛎湯は使うことがありませんが、人参が入ることで気の土台がしっかりし、ほかの不調も治りやすくなります。

 

大棗、生姜はどちらも胃腸の働きを整え、気を補います。

 

熱を冷ます

柴胡加竜骨牡蛎湯には黄芩、大黄が入っています。

 

黄芩(おうごん)は柴胡と相性が良く、柴胡で気のめぐりを改善しつつ、黄芩が鬱滞している熱を冷まします。

 

気血の鬱滞があることで熱が生じやすく、熱があることでイライラが生じやすくなります。

 

 

大黄は瀉下薬として有名な生薬です。

 

柴胡加竜骨牡蛎湯に入っている大黄はあまり量は多くありません。

 

大黄は人参の半分以下の量しか入っておらず、便秘を改善するよりも、熱を冷まし、鬱滞している気を下へ引っ張ってくる意味合いが強いと考えられます。

 

気をめぐらせる生薬
 
 
 
 
 
 
 
気を鎮める生薬
 
 
 
 
 
 
 
まとめ

柴胡加竜骨牡蛎湯はイライラの原因となる気をめぐらせ、不安な気持ちを鎮める漢方薬です。

性質

生薬が合わせることで漢方薬としての性質がわかりやすくなります。

 

熱める・冷ます、上昇・下降、補う・瀉す、潤す・乾燥させるなどの性質があります。

 

漢方薬は西洋医学と異なり、複数の生薬から構成されています。

 

複数の生薬が合わさることで、お互いの良い所をさらに強化することができます(人参に黄耆を加え、補う働きを強化するなど)。

 

反対に生薬が合わさることで悪い部分を互いに消しあうこともできます(冷やして潤す知母と、冷やして乾かす生薬の黄柏を合わせることで、潤燥を互いに相殺し、冷やす働きだけが残るなど)。

 

柴胡加竜骨牡蛎湯の生薬が合わさった性質を説明したいと思います。

 

補う・瀉す
補う
 
 
 
 
 
瀉す
上昇・下降
上昇
 
 
 
 
 
下降
潤す・乾かす
潤す
 
 
 
 
 
乾かす
温める・冷ます
温める
 
 
 
 
 
冷ます

 

柴胡加竜骨牡蛎湯の性質をまとめると上記のグラフになります。

 

大黄が入っているため、瀉の性質にやや偏っているとしていますが、大黄の量はそこまで多くなく、人参の補気の生薬も入っていることからも強く瀉に偏っていません。

 

上昇と下降のどちらにもチェックをつけていますが、柴胡加竜骨牡蛎湯はどちらの性質もあるため、上昇にも下降にもチェックを入れています。

 

柴胡が気をめぐらせ、竜骨・牡蛎で気を鎮めます。柴胡加竜骨牡蛎湯はどちらの性質も持ち合わせているため、多くの方に使いやすい漢方薬といえます。

 

潤す・乾かす、温める・冷やす、については偏っていないと考えられます。

 

柴胡加竜骨牡蛎湯には、黄芩・大黄の冷やす生薬も入っているのですが、桂皮という温める生薬も入り、寒と温は相殺し、バランス良く配合され、その点では人を選ばず、使いやすい漢方薬です。

 

効能効果なぜ?

 

柴胡加竜骨牡蛎湯の効能効果には「体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う次の諸症:高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年神経症、小児夜泣き、便秘」、「比較的体力があり、心悸亢進、不眠、いらだち等の精神症状のあるものの次の諸症:高血圧症、動脈硬化症、慢性腎臓病、神経衰弱症、神経性心悸亢進症、てんかん、ヒステリー、小児夜啼症、陰萎」と記載されています。

 

記載されている内容はメーカーによって異なります。

 

なぜこのような効能効果なのか説明したいと思います。

 

体力中等度以上、比較的体力があり

→大黄が入り、瀉下作用があるため、多少体力が必要であることが記載されていると考えられます。実際には柴胡加竜骨牡蛎湯には、人参の気を強く補う生薬の方が多く入っています。

 

精神不安、いらだち

→気の鬱滞があることで、いらだち、不安になりやすくなります。柴胡加竜骨牡蛎湯は柴胡で気をめぐらせ、竜骨・牡蛎が気を鎮めることで高ぶったいらだち、不安を鎮めることができます。

 

動悸、心悸亢進

→気が高ぶりが精神症状となってあらわれるといらだち、不安になりますが、気の高ぶりが心臓にあらわれるときは動悸、心悸亢進となります。高ぶった気を鎮めることで、動悸にもつかうことができます。

 

不眠

→いらだち、不安の気持ちの高ぶりがあると、眠ることができません。柴胡加竜骨牡蛎湯は不眠の原因となる気の鬱滞を柴胡が気をめぐらせ、竜骨・牡蛎が気を鎮めます。

 

便秘

→瀉下薬の大黄が入っているため。

 

高血圧症、高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)

→イライラなどの気が高ぶりがあることで血圧があがりやすくなり、気の高ぶりによって動悸、不安、不眠にも影響します。高血圧症の効能効果がありますが、直接的に血圧を下げるというよりも高ぶっている気をめぐらせ、鎮めることで結果的に血圧が下がる印象です。

 

動脈硬化症、慢性腎臓病

→動脈硬化症になることで、血管が固くなり、弾力を失い、結果的に血圧が上がりやすくなります。慢性腎臓病になると、腎臓から水分を排出することができなくなり、結果的に血圧があがりやすくなります。柴胡加竜骨牡蛎湯の効能効果に動脈硬化症、慢性腎臓病の記載があるのは、それらの疾患を直接的に治すというのではなく、血圧があがりやすいという気が高ぶりやすい状態になるため、記載されていると考えられます。

 

神経症

→イライラの気、不安の気が高ぶりやすい状態が神経症です。そういった気を柴胡加竜骨牡蛎湯が鎮めてくれます。

 

更年神経症

→ホルモンの乱れによって、気が高ぶりやすくなっている状態です。柴胡加竜骨牡蛎湯が気をめぐらせ、鎮めてくれます。

 

ヒステリー

→ヒステリーは広い意味で神経症の1つです。柴胡加竜骨牡蛎湯が気をめぐら、鎮めます。

 

小児夜泣き、小児夜啼症

→小児夜啼症は小児の夜泣きのことです。気の鬱滞や、不安な気持ちが込みあがってくることで夜泣きとなります。柴胡加竜骨牡蛎湯は気をめぐらせる働きと、気を鎮める働きがあり、夜泣きを鎮めます。

 

陰痿

→陰痿は現代でいうインポテンツのこと。柴胡加竜骨牡蛎湯は不安を和らげる漢方薬であり、精神的なことからくる陰痿に向いていると考えられます。

 

ほかの漢方薬との違い

 

似た漢方薬に桂枝加竜骨牡蛎湯があります。

 

どちらも竜骨・牡蛎が入り、気を鎮める働きがあります。

 

柴胡加竜骨牡蛎湯と桂枝加竜骨牡蛎湯との大きな違いは、気をめぐらせる生薬が入っているかです。

 

柴胡加竜骨牡蛎湯には柴胡という気をめぐらせる生薬が入っているため、イライラ、いらだちにも使うことができます。

 

桂枝加竜骨牡蛎湯は竜骨・牡蛎の不安な気持ちを鎮めることに特化しています。

 

柴胡加竜骨牡蛎湯はいら立ちに対する気のめぐりと、不安な気持ちを鎮めることのどちらにも対応しています。

 

柴胡加竜骨牡蛎湯
桂枝加竜骨牡蛎湯
  • 気のめぐりと、気を鎮める働きのどちらもある。
  • イライラ、不安にも使える。
  • 気を鎮める働きに特化している。
  • 不安な気持ちに特化している。

 

柴胡加竜骨牡蛎湯が効かない理由は?

 

柴胡加竜骨牡蛎湯は柴胡が気をめぐらせ、竜骨・牡蛎が不安・イライラを鎮める漢方薬です。柴胡加竜骨牡蛎湯が効かない理由としては、気の鬱滞が強いとき、気が弱っているとき、イライラが強いときが考えられます。一言でいえば、体質があっていないときです。

 

柴胡加竜骨牡蛎湯には気をめぐらせる理気薬は柴胡のみで、気をめぐらせる生薬は1種類だけです。気の鬱滞が強い場合は柴胡だけでは気を動かすことができません。気の鬱滞をメインに対応するなら四逆散があります。

 

柴胡加竜骨牡蛎湯には人参が入っていますが、心血を養う生薬は入っていません。不安・いらいらの原因が気虚・心血不足の場合は柴胡加竜骨牡蛎湯は力を発揮できません。気虚・心の血の不足による不安・いらいらのときは、帰脾湯、加味帰脾湯などがあります。

 

柴胡加竜骨牡蛎湯には気を鎮める生薬として、竜骨・牡蛎が入っていますが、いらいらの高ぶりが強いときには熄風薬といわれる釣藤鈎などが入った漢方薬をつかいます。いらいらの高ぶりを鎮める釣藤鈎が入った漢方薬に、抑肝散、釣藤散などがあります。

 

漢方薬は体質があることで効果を発揮します。

 

 

まとめ

 

柴胡加竜骨牡蛎湯は気をめぐらせ、気を鎮めることで「体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う次の諸症:高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年神経症、小児夜泣き、便秘」の効能効果があります。

 

ただし、効能効果は商品によって記載内容が異なるため、ご購入の際は商品の説明をしっかりお読みください。

 

 

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