【白虎加人参湯】わかりやすい解説(びゃっこかにんじんとう)~ほてり、皮膚のかゆみ
白虎加人参湯
白虎加人参湯の働きを添付文書の効能効果から掘り下げて、考えたいと思います。
白虎加人参湯の薬局製剤での効能効果には「体力中等度以上で、熱感と口渇が強いものの次の諸症:のどの渇き、ほてり、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ」と記載されています。
のどの渇きから湿疹・皮膚炎、かゆみまであります。
白虎加人参湯の性質がわかれば、記載されている内容は違っても、意味することは同じであることがわかります。
白虎加人参湯がなぜこれらの効能効果があるのか、添付文書の意味がわかるように解説したいと思います。
商品によって効能効果は異なるので、ご購入の際は商品説明をきちんとお読みください。
構成
白虎加人参湯は知母、石膏、甘草、人参、粳米から構成されています。
漢方薬の名前からわかるように白虎湯に人参が加わったものが白虎加人参湯です。
石膏
白虎加人参湯のなかで一番重要な生薬が石膏です。
石膏は強く冷やす作用があります。
冷やす働きが強いことから石膏の性質は「大寒」といわれます。
石膏の強く冷やす働きで、熱感、ほてり、皮膚の熱、かゆみを緩和します。
石膏の色は白く、熱でも身体の表面の熱を冷やすことに特化しています。
後述しますが、冷やす漢方薬で有名なものに黄連解毒湯があります。
黄連解毒湯は身体の内側の熱、皮膚でも少し深い位置のところの熱を取ります。
白虎加人参湯の冷やす位置は皮膚でもさらに表面の方です。
知母
知母(ちも)も冷やす生薬です。
石膏に知母が合わさることで、冷やす働きを助けます。
知母には潤す働きもあり、渇いて熱感のあるところを潤し、冷やします。
甘草
甘草は甘味で気を補う生薬です。
甘草は多くの漢方薬にも入っている生薬で、甘味とともに、薬液を調和し、バランスを整えます。
甘草の甘味で脾胃の気も助けます。
粳米
粳米(こうべい)とはお米のことです。
粳米も甘草と同じように甘味が強く、気を補い、胃腸の働きを助けます。
甘草と異なるところは粘性があることです。
粘性があることで、漢方薬を飲んだときに薬液がすぐに腸の方に流れていかないように、胃にとどまりやすくなります。
白虎加人参湯は強く冷やす漢方薬のため、一気に腸まで流れていってしまうとお腹が冷える恐れがあります。
粳米の粘性で薬液を胃にとどめておくことで、身体の表面に薬効を利かせやすくするのを助けます。
人参
人参は生薬の中でも最も有名なものです。
人参は強く気を補う働きがあります。
人参には気を補うだけでなく、水を潤す働きもあります。
白虎加人参湯は水分が不足し、熱感が強い状態ですので、人参が入ることで気と水を強く補うことができます。
性質
生薬が合わせることで漢方薬としての性質がわかりやすくなります。
熱める・冷ます、上昇・下降、補う・瀉す、潤す・乾燥させるなどの性質があります。
漢方薬は西洋医学と異なり、複数の生薬から構成されています。
複数の生薬が合わさることで、お互いの良い所をさらに強化することができます(人参に黄耆を加え、補う働きを強化するなど)。
反対に生薬が合わさることで悪い部分を互いに消しあうこともできます(冷やして潤す知母と、冷やして乾かす生薬の黄柏を合わせることで、潤燥を互いに相殺し、冷やす働きだけが残るなど)。
白虎加人参湯の生薬が合わさった性質を説明したいと思います。
白虎加人参湯の性質をまとめると上記のグラフになります。
白虎加人参湯は人参が入っているため、補う性質があります。
知母・人参が入っていることからも潤す性質が強いです。
石膏・知母が入っていることからも冷やす働きはとても強いです。
効能効果なぜ?
白虎加人参湯の薬局製剤での効能効果には「体力中等度以上で、熱感と口渇が強いものの次の諸症:のどの渇き、ほてり、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ」と記載されています。
なぜこのような効能効果なのか説明したいと思います。
体力中等度以上
→白虎加人参湯は人参が入っているため体力が弱い方にも使えそうな印象はあるのですが、体力中程度以上と記載されています。石膏が強く冷やすため、胃腸が弱い方はお腹を冷やす恐れがあり、体力は中程度以上となっています。
熱感と口渇が強いもの、のどの渇き
→白虎加人参湯をつかう状況は身体に熱にやられ、水分を失ってきている状態です。そのため熱による熱感、水分不足による口渇もみられます。白虎加人参湯の石膏・知母で冷やし、知母・人参が渇いた身体を潤します。
ほてり
→熱がこもっている状態です。ほてりの部位については記載されていないため、顔のほてり、皮膚のほてりにもつかうことができます。白虎加人参湯がほてりを冷ましてくれます。
湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ
→白虎加人参湯の湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみは肌の表面の熱感が原因のときです。湿疹・皮膚炎の原因は漢方で見ると血虚、風、湿などが考えられますが、白虎加人参湯の場合は熱が強い状態です。皮膚にほてりの熱感があり、それとともに湿疹・皮膚炎、かゆみがあるときは白虎加人参湯が適しています。
ほかの漢方薬との違い
熱感、ほてりにつかう漢方薬に黄連解毒湯があります。
白虎加人参湯と黄連解毒湯の違いについて説明します。
薬局製剤 黄連解毒湯の効能効果には「体力中等度以上で、のぼせぎみで顔色が赤く、いらいらして落ち着かない傾向のあるものの次の諸症:鼻出血、不眠症、神経症、胃炎、二日酔、血の道症、めまい、動悸、更年期障害、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ、口内炎」と記載されています。
白虎加人参湯は熱感、ほてりがある体質で湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ
黄連解毒湯はのぼせぎみで顔色が赤い体質で湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ
効能効果を切り取ってみると、似ていると思います。
白虎加人参湯と黄連解毒湯はどちらも冷やす漢方薬ですが、作用する深さが異なります。
白虎加人参湯の方が浅く、皮膚表面に働きます。
黄連解毒湯の方が深く、皮膚中層から血の領域に働きます。
白虎加人参湯の主薬の石膏をみてください。
石膏は色が白く、きれいな色をしています。
そのため石膏は肌表の熱に働きます。
黄連解毒湯の主薬の黄連をみてください。
黄連は色がとても黄色く、濃い色をしています。
そのため黄連はやや深い位置に働きます。
添付文書からみて、違いをみていきましょう。
白虎加人参湯の記載は「熱感」「ほてり」という表現に対し、黄連解毒湯では「のぼせぎみで顔色が赤い」とあらわされています。
ほてりではなく、のぼせという表現からも熱が身体の内側に入って来ている表現になっています。
黄連解毒湯の効能効果は、不眠症、神経症、更年期など精神症状にも効果を発揮することからも、身体の表面よりも内側に作用していることがわかります。
白虎加人参湯、黄連解毒湯はどちらも湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみにつかうことができますが、白虎加人参湯は肌表の熱を得意とし、黄連解毒湯は肌が荒れたり、慢性的な皮膚炎、赤みが強いときの湿疹・皮膚炎を得意としています。
まとめ
白虎加人参湯の働きを添付文書から解説しました。
白虎加人参湯は熱を冷ますことを得意としており、「体力中等度以上で、熱感と口渇が強いものの次の諸症:のどの渇き、ほてり、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ」の効能効果があります。