漢方での気の5つの働き~推動(すいどう)・温煦(おんく)・防御・固摂・気化~
気の働き
漢方薬で使われる「気」という用語について解説します。
「気」というとわかりにくいですが、エネルギーという言葉に置き換えることができます。
日常的にも「元気がない」という表現しますよね。そのイメージに近いです。
気の5つの働き
漢方において気は大きく5つの働きがあります。
・血液・水をめぐらせる(推動)
・体をあたためる(温煦)
・免疫(防御)
・血液などを漏らさないようにする(固摂)
・気血水精を変換(気化)
・血液・水をめぐらせる(推動)
気の働きによって血液・水が正常に循環します。
気が弱っていると、血液・水が循環せず、冷えやむくみなどにつながります。
・体をあたためる(温煦)
気は陽の気であり、体を温める働きがあります。
冷え性は気の温める力が弱っているといえます。
・免疫(防御)
気は免疫とも関連があります。
外から入ってきた悪いものと戦う働きがあります。
元気がないときは、調子も崩しやすいですよね。
・血液などを漏らさないようにする(固摂)
気によって血液・汗などは血管などから漏れないようになっています。
気が弱っていると血液が血管から漏れ出て、あざができやすくなります。
運動による汗は正常なものですが、風邪ひいたときや少し動いただけで汗をかいてしまうのは気が弱っている症状です。
・気血水精を変換(気化)
気によって、気血水精を互いに変換しています。
気の不調
気虚とは?
気虚というのは文字の通り、”気”が”虚”している、つまり気が不足している状態を指します。
気の働きには血・水を動かす作用、免疫、温める作用、血・汗などが漏れないようにする作用があります。
気虚で気が不足していると、気の働きが失調し、さまざまな症状があらわれます。
・声に力がない
・息切れ
・食欲不振
・消化不良
・軟便
このようなときには気を補う必要があるため、いわゆる人参が入った漢方薬がよくつかわれます。
衛虚
衛虚というのは衛気(体表をめぐる気)が不足している状態です。
身体の表面の気が不足しているため、体表での不調がでてきます。
体表は汗やバリア機能と関わっています。
・寒気がする
・かぜをひきやすい
黄耆などの体の表面の気を補う薬をつかうことが多いです。
気虚下陥
気の働きによって、臓器が正常な位置になるように保たれています。
気によって臓器が正しいところに持ち上げられているため、気が不足すると臓器が正しい位置を保てなくなります。
・ふらつき
・内臓下垂
そのときは上へ気を持ち上げるような方剤をつかいます。
陽虚
陽虚というのは、陽気が不足している状態です。
陽気は身体を温める働きがあり、陽気が不足すると冷えに関する症状が多くみられます。
・手足の冷え
・舌質が淡胖
このようなときは陽気を補う、温める必要があります。
気滞
気滞というのは文字の通り、気が滞っている状態のことです。
気の流れが悪くなることで、めぐりの不調、空気のたまった症状がでます。
・発作的な症状
・ゆううつ
・いらいら
鬱滞している気が原因であるため、気を動かす必要があります。
気逆
気逆というのは、下へ降りるべき気が、下に降りきれず、上にあがってします症状です。
気が上に突きあがっている状態です。
・呼吸困難
・悪心
・嘔吐
・げっぷ
・頭痛
・めまい
そのときは気を下向きに降ろす漢方薬をつかいます。
漢方で気といっても、上向きの気、温める気など様々な働きがあります。
気が不足しているのであれば気を補い、気の鬱滞があればめぐらせる漢方薬をつかう必要があります。