灯心堂漢方薬局

【2022年】漢方で考える夏の過ごし方~日本の気候に合った食事とは?

2022年夏

 

今年は梅雨明けが例年より早く、関東では電力がひっ迫し、熱邪によって体調を崩しやすくなります。

 

そういった例年よりも暑くなりそうな夏に合った食事について考えたいと思います。

 

 

日本の気候

 

日本の気候は温暖湿潤気候に属し、世界的にも温かく、湿気の多い気候となります。

 

日本は縦に長いため、北海道などの北の方は亜寒帯になり、南の方が亜熱帯となりますが、多くは温帯です。

 

そのため、日本では熱と湿気に対処する必要があります。

 

とくに今年は暑いため、熱に対する配慮が重要になります。

 

熱による脱水も怖いですが、日本は湿度が高いことで身体に湿気をため込みやすくなります。

 

周りの環境に湿気が多いと、身体も外環境の影響を受けます。

 

夏場は暑く、脱水を防ぐためにも多めに水分をとるようになり、さらに水分をため込みやすくなります。

 

水分をため込んでも、冷房の効いた部屋にいると水の動きが悪くなり、さらに水が溜まりやすくなります。

 

夏は脱水で水分を不足しやすい時期であるのですが、日本の気候などを考慮すると水が溜まりやすい時期でもあります。

 

熱を追い出す食事、湿気を身体から追い出す食事、水分を補う食事について説明します。

 

夏と五臓

 

漢方では季節と、五臓には関連があります。

 

五臓というのは、肝・心・脾・肺・腎のことです。

 

春と肝

夏と心

長夏と脾

秋と肺

冬と腎

 

というように、季節と五臓のかかわりがあります。

 

夏は心とつながりがあり、心の不調を来しやすくなります。

 

夏にイライラしやすくなったり、不眠になったりするのは、心に熱がこもったり、心の陰が不足したりすることで起こると考えられます。

 

 

 

食事

 

熱を追い出す食べ物

熱を追い出すには、苦味が重要になります。

 

漢方では苦味のある生薬に冷やす働きがあります。

 

黄連解毒湯という冷やす漢方薬で代表的な方剤があります。

 

黄連解毒湯には、黄連・黄芩・黄柏・山梔子の4つの生薬が配合されていますが、すべて苦味の生薬となっています。

 

黄連解毒湯はとても苦く、苦味にて熱を冷ますことで、赤ら顔体質の方につかいます。

 

 

苦味で身体の熱を冷ますことを食事で応用してみましょう。

 

夏の食事で、苦味が強いものにゴーヤがあります。

 

ゴーヤは漢字では苦瓜と書くことからも苦いことは想像できます。

 

ゴーヤが有名な都道府県に沖縄県があります。

 

ゴーヤチャンプルーは特に有名ですね。

 

日本で一番南の県でゴーヤがよく食べられるのは、漢方で考えると当然のことと考えられます。

 

ゴーヤの強い苦味で、熱を冷まします。

 

沖縄でゴーヤがよく食べられるのは意味があります。

 

 

苦味が夏と相性がいいのには、ほかにも理由があります。

 

夏は心の季節であることを説明しました。

 

漢方では食べ物の味と、五臓にも関係があります。

 

とくに苦味は心に入りやすい味です。

 

夏という心の不調を来しやすい季節と、苦味で心に入りやすい食べ物は相性がいいのです。

 

 

湿気を追い出す食べ物

夏場に体がおもだるく、食欲不振、軟便になった経験はありませんか?

 

おもだるい、はっきりしない症状は湿気が原因の可能性があります。

 

湿気を追いだすには、味が淡いものが重要です。

 

漢方薬に淡滲利水薬(たんじんりすいやく)というものがあります。

 

利水(身体の水はけを良くする)生薬に淡味の生薬が多いため、淡滲利水と表現します。

 

味の淡いものは水をさばく働きがあります。

 

漢方では茯苓・猪苓・沢瀉などが淡滲利水薬になります。

 

 

淡味で湿気を追い出すことを食事で応用してみましょう。

 

夏の食べ物で、味が淡いものにキュウリ、トマト、緑豆もやし、冬瓜、スイカなどがあります。

 

実際にキュウリ、トマト、緑豆もやし、冬瓜、スイカには利尿作用があることが知られています。

 

夏場の湿気や水分を取りがちな季節に、淡い味の野菜が過剰な水分を追い出してくれます。

 

キュウリはカロリーが低いことが有名で、食べる意味がないといわれることもありますが、漢方での性質を考えると湿気を追い出す働きがあり、日本の気候に合った食べ物といえます。

 

夏野菜はどれも味が淡いものが多いですが、それにはちゃんと意味があります。

 

 

キュウリ、トマト、緑豆もやし、冬瓜、スイカはどれも利尿作用があるとともに、冷やす働きもあります。

 

夏の身体にこもった熱を冷やしてくれます。

 

夏場の暑さにも対応し、夏野菜はまさに夏に食べるべきです。

 

反対にいうと身体を冷やしてしまうため、冷房で身体が冷えすぎて、水分のめぐりが悪くなっているときは温めてあげる必要があります。

 

温め、余分な水分をめぐらせるものにショウガがあります。

 

とくに生のショウガは辛味にて温め、水分をめぐらる働きが強いです。

 

ほかにもネギ、ミョウガも冷えと水分がたまっている状態には良いです。

 

 

水分を補う食べ物

夏は暑く、水分を失いやすい時期でもあります。

 

心の水分が少なくなることで、イライラ、不眠にもつながります。

 

心の陰を補う食べ物に、蓮の実、ゆり根があります。

 

 

身体の水分が強く失っているときには、甘くて酸っぱいものがおすすめです。

 

漢方では甘味は潤す性質があります。

 

そして酸味は収斂し、引き締める性質があります。

 

甘味で潤し、酸味で引き締め、気・水分が漏れ出ないようにします。

 

甘味と酸味を組み合わせた漢方薬に生脈散(しょうみゃくさん)があります。

 

生脈散は人参・麦門冬・五味子から構成されています。

 

人参・麦門冬が甘味で潤し、五味子の酸味で収斂することで気・津液を留めるように働きます。

 

この甘味で潤し、酸味で引き締める働きを酸甘化陰といいます。

 

酸甘化陰とは、甘味と酸味の組み合わせで陰(水分のこと)を生じることです。

 

 

甘味・酸味の組み合わせを食事に応用すると、はちみつレモンになります。

 

はちみつレモンは、スライスしたレモンをはちみつにつけたものです。

 

はちみつの甘味で潤し、レモンの酸味で水分が漏れ出ていかないように引き締めます。

 

部活の差し入れ、運動した後に、はちみつレモンを食べるのは漢方でみると、理にかなっているといえます。

 

たくさん汗をかいたあとは、はちみつレモンで甘味と酸味を一緒に摂取しましょう。

 

 

夏におすすめできない食べ物

 

夏におすすめの食べ物で、苦い食べ物、淡い味の食べ物、甘味と酸味の食べ物について書いてきました。

 

反対にどういった食べ物は夏と相性が悪いのでしょうか?

 

 

辛い食べ物

夏は辛いものが食べたくなりますが、食べ過ぎには注意です。

 

夏は暑さで、身体に熱がこもりやすくなります。

 

辛いものは身体を温め、発散する性質があります。

 

身体に熱がこもっているときに、さらに辛い物を食べると熱を蓄えてしまいます。

 

熱で脱水傾向にあるときはさらに汗をかき、津液を失うことにつながります。

 

辛い物を食べるときはしっかり水分をとるようにしましょう。

 

薬味としてのショウガ、ミョウガ、ネギは水分のめぐりもよくするため、適度に摂取してもかまいません。

 

 

味の濃い食べ物

味の淡い食べ物は湿気を追い出す働きがあるといいました。

 

反対に味の濃い、脂っこいものは、湿気をため込む性質があります。

 

小麦、乳製品、脂っこいものは日本の気候にあっていないといえます。

 

 

和食は全体的に味があっさりしています。

 

湿度の高い日本では、味の淡い食べ物があっています。

 

和食のあっさりした味付けにも意味があると考えられます。

 

 

日本の夏によく食べる小麦の食べ物は何が思い浮かびますか?

 

夏はそうめんですよね。

 

日本で食べる麺類はそうめん、うどんです。

 

パスタ、パンは外国のものです。

 

そうめん・うどんと、パスタ・パンの小麦の違いがあるのはご存じですか?

 

パスタ・パンはグルテンが多く、もちもちとした食感の強力粉がつかわれます。

 

そうめん・うどんは、強力粉よりもグルテンの量が少なく、もちもちした食感が少ない中力粉がつかわれます。

 

強力粉
中力粉
  • パスタ・パンの材料となる
  • もちもちとした食感が得られるが、その分グルテンが豊富
  • そうめん、うどんの材料となる
  • もちもち感が少なくなるが、その分グルテンも少なくなる

グルテンは重たく、味が濃いものになります。

 

日本の気候を考えた場合、そうめん、うどんの方が適しています。

 

 

日本の主食はお米です。

 

日本だけに限らず、東南アジアはお米です。

 

お米は水田の水が豊富なところで育ちます。

 

水が多い所でも腐らず、育ちます。

 

植物自身の水はけが良く、水分をため込まないような性質があります。

 

そのため、水分が多い所でも育つことができます。

 

 

反対に小麦は乾燥した地域で育ちます。

 

乾燥した地域で育つと、水分を効率的に取り込もうと湿気を蓄えやすい性質になります。

 

極端な例だと、砂漠の植物は水分を蓄えるように肉厚の植物に育ちます。

 

同じように、乾燥した地域で育つ植物は水をため込む働きがあります。

 

小麦は日本では育ちにくく、とくに強力粉の原料となる小麦は育ちにくいといわれています。

 

湿度の高い日本で、湿気をため込みやすい小麦を食べるのは向いていないと思われます。

 

 

 

日本は湿気が多い気候です。

 

それに合った食事も考えていく必要がありますね。

 

全てを取り入れる必要はありませんが、食事のことを少しでも知っていただけるといいなと思います。

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